「既成事実」の意味は? 類語と使い方を解説(例文つき)
「既成事実」とは「もう起こっていて変えることのできない事実」という意味で、「既成事実化」という形でも使われます。ビジネスコミュニケーション指導に従事する大部美知子さんに、詳しい意味や類語、言い換え表現を例文とともに紹介してもらいます。
「既成事実」という言葉を聞いたことがありますか? 四字熟語のため堅い印象がありますが、ビジネスだけでなくプライベートな場面で使うこともあります。
具体的にどのような使い方をするか、確認してみましょう。
「既成事実」の意味
既成事実は、「きせいじじつ」と読みます。辞書で調べると、下記のような記載があります。
きせいじじつ【既成事実】
すでに起きてしまっていて、今更変えられない事実
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
また、「誰もが認めざるを得ない事柄や事実であり、認めたくない人でも認めるしかない」というニュアンスが含まれる表現でもあります。
「既成事実」はどんな時に使えるのか?(例文つき)
次のような場面・状況で「既成事実」を使えます。
すでに存在している事実について言う時
意図的かどうかにかかわらず、その事実がすでに存在している時に「既成事実である」と表現します。また、すでに存在する事実を「既成事実」といいます。
例文
・周囲の反対を乗り切るには、これが既成事実であることを認めてもらうしかない。
・先方の責任者の同意が得られているかは分かりませんが、担当者がサインした契約書が存在しているのは既成事実です。
周囲に認めてもらうため先に事実をつくる時
事実を先に発生させ、それをもって周囲に認めさせる時に「既成事実をつくる」という言い方をすることがあります。
「既成事実をつくった」と過去形にすると、すでにその事実を発生させたという意味になります。
例文
・先に担当者が既成事実をつくってくれたおかげで、計画がスムーズに進んだ。
すでにあることを認めざるを得ない状況にする時
正式に認められていない事柄を、世間的に認めざるを得ない状況にすることを「既成事実化」といいます。
「既成事実をつくる」が「ゼロの状態から結果を生み出す」という意味で使われるのに対し、「既成事実化」は「すでにあるものを事実化する」という意味です。
例文
・想定される顧客のニーズをアンケートなどで既成事実化すれば、会社も新商品の開発を認めてくれるかもしれない。
「既成事実」の類語(例文つき)
ここからは、「既成事実」の類語・言い換え表現を紹介します。
「恒常化」
「常にその状態をキープしている。またそのことを周囲が当たり前だと認識する」という意味です。「既成事実」よりも「それが当たり前である」という意味合いが強い表現ともいえます。
例文
・彼は管理職ではないがこのプロジェクトのリーダーであるという認識は、恒常化されている。
・新入社員がその年の忘年会の幹事になることが、暗黙のルールとして恒常化している。
「事後承諾」
「既成事実」は「承諾せざるを得ない状況を先につくること」ですが、「事後承諾」は既成事実の後に来る「周囲に認められる」という部分にポイントを置いた表現です。
例えば、事前に許可が必要な事項を先に行い、その結果を後日報告して承諾してもらう場合に使います。
例文
・トラブル対応で現地に急行する必要があるのに、列車の指定席が満席だ。グリーン車を利用することを会社には事後承諾してもらうしかない。
・上司に相談できずに会議の予定を変更したが、無事に事後承諾を得ることができてほっとした。
「現状追認(げんじょうついにん)」
「追認」は「過去にさかのぼった上で事実と認めること」を意味します。
「現在起きていることを事実と受け入れて承認する」という点では「既成事実として認める」と同じ意味です。
例文
・最近○○さんの独断専行が目立ち、課長が現状追認の姿勢になっているのが問題だ。
・何でも現状追認になってしまい、事前に承認を得るというルールが形骸化している。
「既成事実」と周囲の理解
「既成事実」という表現は良い意味でも使われますが、反対意見がある中でどうしても何かを達成したい場合の手段として使われることが多いようです。
既成事実にする前に、周囲の理解が得られるような努力も大切かもしれませんね。
(大部美知子)
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