「無邪気」の意味は? 使い方や類語を紹介(例文つき)
「無邪気」は「悪気がなくあどけないこと」を意味し、文脈によって良い意味にも悪い意味にも取ることができます。今回は、ライティングコーチの前田めぐるさんに「無邪気」の意味や使い方、類語を例文と併せて解説してもらいました。
「無邪気」とは、「悪気がない、あどけない」という意味です。また、深い考えがないという意味も持ち合わせています。
こうした幅広い意味を持つ言葉を使う際には、ちょっと注意が必要。
そこでこの記事では、「無邪気」の意味や使い方などを、注意点とともに紹介します。
「無邪気」の意味と語源
まずは「無邪気」の意味を、語源も併せて確認してみましょう。
「無邪気」の意味
「無邪気」という言葉を辞書で引くと、次のように書かれています。
むじゃき【無邪気】
(1)邪心のないこと。わるぎのないこと。
(2)深い考えのないこと。考えの単純なこと。
(3)あどけなく、かわいらしいこと。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
このように、「無邪気」とは基本的に邪心や悪気がない素直な様子や、あどけないこどもの様子を表現したい時に良い意味で使う言葉です。
一方で、「深い考えがなく、浅はかで単純である」という意味もあり、こちらはネガティブなニュアンスで使われます。
「無邪気」の語源
「無邪気」とは「邪気が無い」と書きます。それでは、「邪気」とはどのような意味なのでしょうか?
じゃき【邪気】
(1)病気などを起こす悪い気。悪気。
(2)悪意。
(3)もののけ。
(4)風邪。感冒。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
「邪気」には、人が持つ「悪気、悪意」という意味だけでなく、「もののけ」という霊的な意味もあります。
また、風邪そのものや風邪などの「病気を引き起こす悪い気」という意味もあります。
「無邪気」とは、そうした悪い気である「邪気」が「無い」ことを表すので、「よこしまな悪い心がなく、素直」という意味になります。
「無邪気」はどんな時に使えるのか?(例文つき)
上段で調べた意味をもとに、「無邪気」という言葉をどんな場面で使えるのか、例文を示して解説します。
こどものかわいらしい様子を表現したい時
赤ちゃんや子どもの屈託ない様子は見ているだけでほほえましいですね。
「無邪気」という言葉で、邪心や悪気がない、あどけないこどもの様子を表したい時は、次のように使います。
例文
・散歩をしている時、ちょうど登校中の小学生たちが無邪気にじゃれあっているのを見かけた。
世慣れをしていない純朴で清らかな様子を表現したい時
大人であっても、世慣れをしておらず、良い意味でこどものようにピュアな人がいます。そのような人の様子も「無邪気」と表現することができます。
例文
・彼女は、私より10歳年上だというのに、時折ハッとするような無邪気でピュアな表情を見せる時がある。
安易な行動をせず、思慮深くあってほしい時
世慣れをしていないことは、時に、社会の裏の事情や大人の分別を知らないことにもつながります。
そこで、もう少し思慮深く、じっくり考えて行動してほしいと相手に注意する時にも「無邪気」という言葉を使います。
例文
・感染が拡大している今、スタッフのみなさんには、大勢で会食するような無邪気な行動を慎んでもらいたい。
「無邪気」を使う時のポイント
「無邪気」は幅広い意味を持つため、誤解を招くこともあります。意図を正しく伝えるコツを確認しておきましょう。
「無邪気」を使う時の注意点
「無邪気」という言葉には、良い意味とネガティブな意味の両方があることを解説しました。
こうした幅広い意味を持つ言葉は、気をつけて使う必要があります。
何気なく言った「無邪気」という言葉が、本人の意図しない形でネガティブな意味に受け止められてしまうこともあります。
例えば、あなたが営業マンだったとして、営業トップの人に対して素直に助言を求めた時に「あなたは、無邪気な人ですね」と言われたら、どう感じるでしょうか?
言う側はストレートにその素直さを褒めたつもりでも、言われた人や周囲の人は「あなたは浅はかで思慮が足りない」という意味に受け止めるかもしれません。
このように、良い意味で「無邪気」という言葉を使っていても、場面や文脈によっては、ネガティブに受け止められてしまうことがあるのです。
「無邪気」の意味を正しく伝える方法
良い意味で「無邪気」と言っていることを正しく伝えるために、「無邪気」で終わらせず、文脈に留意して文全体を良い意味に変える方法があります。
例えば、「彼女は無邪気で誰からも好かれる人だ」と言えば、「好かれる人」とある以上、悪い意味に受け取ることは難しいでしょう。
それでも誤解される懸念がある場合には、同じ意味でもネガティブなニュアンスを持たない言葉を選ぶと良いでしょう。
「無邪気」の類語(例文つき)
「無邪気」と同じような意味を持つ言葉として、類語や言い換え表現を紹介します。
「天真爛漫」
読みは「てんしんらんまん」。「性質があるがままで、飾り気がないこと」を意味します。
「無邪気」とほぼ同じ意味ですが、大人に対して使うと、場合によってはネガティブなニュアンスになることもあります。
「天真爛漫」で終わらせず、次のように「愛されている」など、ポジティブな言葉も添えると良いでしょう。
例文
・あの人は、子どものように天真爛漫で、誰からも愛されている。
「無心」
読みは「むしん」。「心に邪念や雑念がないこと。無邪気」を意味します。
「無心に」と副詞的に使う場合に、さほどネガティブなニュアンスは与えません。
ただし、動詞の「無心する」は、「金品をねだる」という意味になるので要注意です。
例文
・私たちは勝敗を考えず、ただ無心にゴールを目指した。
「天衣無縫」
読みは「てんいむほう」。
天の衣には、縫い目がなく、人工的でないことから、「技巧に走らずあるがまま。天真爛漫」という意味を示します。
「無邪気」が「悪気のない」ということを示すのに対し、「天衣無縫」は「技巧に走らない」ということも意味しています。
例文
彼の油絵は天衣無縫で、その雄大さは見る人の心を打つ。
「裏がない」
「裏」とは、表に現れない隠れたところ、という意味です。
見たまま、あるがままの様子を示すので、「邪心や悪気がない」という意味で使えます。
「無邪気」のように、「あどけない、子どものようだ」という意味は含まれていません。
例文
・あの人は、見たとおりの人で、本当に裏がない。
幅広い意味を持つ言葉には気を付けて
私たちが普段何気なく使う言葉の中には、使い方を間違うと思いがけずトラブルになるものがあります。
特に、幅広い意味を持つ言葉や、良い意味と悪い意味を持つ言葉には注意が必要です。
ほとんどの人が意味を知っている言葉でありながら、使う場面によってはネガティブな受け止められ方をすることがあるからです。
「無邪気」もそんな言葉の1つだと言えるでしょう。リスクを避けるためにも、まずは、正確な意味を知ることから始めましょう。
(前田めぐる)
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