「買え買えサギ」って、どんな手口?―2014年の特殊サギ被害は、500億円を超える
被害が拡大の一途をたどる振り込み詐欺。オレオレ詐欺や架空請求など手口が多様化し、最近は「買え買えサギ」とも呼ばれる劇場型が急増している。
他人のふりをした二者が「買います」「売ります」と連絡してくるのが劇場型サギの典型パターンで、差額でもうかる的な話が進められ、代金を支払ったとたんに連絡が取れなくなるのが定番だ。面識のないひとから突然「もうけ話」を振られるはずもないので、おいしい話は疑ってかかるのが良さそうだ。
複数の人物が登場する「劇場型」
電話やメールで始まる詐欺(さぎ)は総じて「特殊詐欺」と呼ばれ、いわゆるオレオレ詐欺も特殊詐欺に含まれる。警視庁の資料によると、大別して、
・振り込め詐欺 … オレオレ、架空請求、融資保証金や還付金
・それ以外 … ギャンブル必勝法、異性との交際あっせんなど
の2つにわかれ、どちらの被害が拡大している。2010年からのおよその被害総額(円)は、
・2010年 … (振り込め)100億 (以外)11億
・2011年 … (振り込め)127億 (以外)76億
・2012年 … (振り込め)160億 (以外)203億
・2013年 … (振り込め)258億 (以外)230億
・2014年8月末まで … (振り込め)221億 (以外)134億
で、このペースが続くと2014年は532億円にも及ぶ。2013年度の日本のGDPが約530兆円(実質)なので、1万分の1に相当する金額なのだ。
近年急増しているのが「買え買えサギ」で、他人をよそおう二者が登場するのが特徴だ。たとえば、
・A社から「○○を買いませんか?」
その後に、
・B社から「○○を高く買い取ります」
の連絡があり、差額でももうかると信じて購入すると、どちらとも連絡がつかなくなってしまう。ドラマ仕立てで盛り上げるため「劇場型」と呼ばれるこの手口は、ひとりの人間が「必ずもうかる」と言っても疑われるが、複数の人物が登場するため信じやすい。
東京オリンピックのチケットやiPS細胞の関連事業など、旬の話題を持ちかけられることもあって、急速に被害が拡大しているのだ。
もうかる話は、突然やって来ない
「名義を貸して欲しい」的な話も劇場型の特徴だ。たとえば、
・A社から「B社の株を買いたいので、名義を貸して欲しい」
・「代金は不要。あとで謝礼金を支払う」
とアプローチし、その後にB社から「名義貸しは違法」「裁判がイヤならお金を支払え」的に請求される手口もある。口調はともかく、脅しているにほかならないので「恫喝(どうかつ)型」とも呼ばれるパターンだ。
被害にあわないためには、どうすれば良いか? まずは日突然みず知らずのひとからもうけ話を持ちかけられたら「不自然」と考えるべきだ。
宝くじも買わなければ当たらないように、なにもしていないのにお金がもらえるはずはない。また、ある品物を売りたい/買いたいひとが同時に連絡してくるのは、偶然にしても天文学的な確率だと気づくべきだ。突然のもうけ話に冷静さを失ってしまうのかもしれないが、そんなにもうかるなら自分でやれば?
と考えるべきだろう。
電話だけでなく、DMやチラシで信ぴょう性を持たせるのが常とう手段だが、千部も印刷すればチラシは1枚あたり2~3円で作れるので「安心」の保証にはならない。たとえ名刺を渡されても、まずはどんな会社なのか、相手を知ることが重要だ。
まとめ
・2014年の特殊サギ被害は、500億円を超える見込み
・「買いたい」「売りたい」二者が連絡してくる劇場型が急増中
・シェールガスやiPS細胞など、旬の話題が使われた「もうけ話」が多い
・「名義を貸して欲しい」的な話は、とくに注意が必要
(関口 寿/ガリレオワークス)