【弁護士監修】モラハラ夫と離婚はできる? 失敗しないための準備と方法

【弁護士監修】モラハラ夫と離婚はできる? 失敗しないための準備と方法

夫からのモラハラに悩まされ、「離婚」の二文字が頭をよぎっているのに、離婚なんて無理だとあきらめていませんか? 「あなたさえその気になれば、離婚できますよ」と、女性の法律相談に多く対応する弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の代表弁護士、中里妃沙子先生は語ります。必要な準備やとるべき行動を解説していきます。


目次

夫のモラハラに涙。このままでいいの? でも、離婚なんて……。

夫のモラハラを我慢するのが子どものためと思っていたけれど、本当にこのままでいいの……? モラハラで離婚は可能か、気になるお金や子どものこと、まとめて解説します!

夫から日常的に人格を否定されるようなひどい言葉を投げつけられていても、

「肉体的な暴力を受けているわけではないから」
「離婚は子どものためにならないから」
「離婚したら経済的にやっていけないから」

と、離婚をためらっている女性は多いもの。

でも実は、そうやって夫の支配から絶対に抜け出せないと思いこんでいること自体、モラハラ(モラルハラスメント)被害者の特徴的な考え方なのです。

モラハラ夫は「自分は悪くないから、離婚なんて認められるわけがない」「そもそも、離婚して生活していけるわけがない」なんていうかもしれませんが、惑わされないで。あなた自身が夫の支配から抜け出す心を決めれば、離婚に向けて、とれる手段はたくさんありますよ。

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の代表弁護士、中里妃沙子先生の取材協力および監修のもと、くわしく解説していきますね。

どうして夫はわたしにモラハラをするの?

「誰の金でメシ食っていると思っているんだ!」。

そんな言葉を言われたことはないですか? もし、日常的に言われているようなら……あなたの夫はアウト! あなたはモラハラ夫の被害者です。

モラハラ被害が起こりやすい夫婦関係

モラハラは「精神的暴力」や「嫌がらせ」のこと。加害側も被害者も「これがモラルハラスメントだ」という自覚を持ちにくいのが厄介な点です。

とくに専業主婦や、子育てのために仕事の一線を引いている場合など「夫の稼ぎがないと自活が難しい」と感じている人、歳の差婚の人など、夫婦間に上下関係ができやすいケースは要注意。

夫婦のトラブルには第三者が気づきにくいこともあり、被害を受けていた方の精神状態がボロボロになり、耐えきれなくなっても、なかなか発覚しないケースが多いのです。

夫が、わたしにモラハラをする理由

もともとの性格で亭主関白であったり、負けず嫌いだったり……。とにかく「人を打ち負かさないと気が済まない」という性分の夫は、妻を見下す傾向があります。

このほかにも社会的地位の変化によって、妻が自分よりも劣っていると感じてモラハラが始まることも。とくにプライドの高い夫は、妻が思いどおりにならないと、あの手この手で支配を始めようとします。

ここで、妻が言い返せず、夫の支配を受け入れてしまうと、モラハラは深刻化。夫は自分の態度に疑問を抱くことなく、さらにモラハラを強化させてしまいます。

モラハラ被害の原因を自分に探さないこと

「結婚した時はあんなにやさしかったのに。私が至らないばかりに……」

と思っているあなた。その考えは、典型的なモラハラ被害者の発想です。

モラハラ夫は過大な要求をあなたにしておきながら、それをうまくできないとみると、「そんなこともできないのか」と、あなたを責めて追いこみます。モラハラ夫の術中にはまっていると自覚して、自分自身を卑下するのは今すぐやめましょう。

「モラハラで離婚なんて無理」という誤解と思いこみ

「離婚なんて怖くてできない!」
「訴えてもモラハラは離婚理由として認められないって聞きました……」

その不安や思いこみ、ちょっと待って! できることはいろいろありますよ。

どうして別れられない? 原因をもう一度、探ってみよう

「そんなに苦しいなら別れてしまえばいいのに」

と、あなたは周囲に言われたことがあるかもしれません。では、別れを決意できない理由は何なのでしょう?

経済的な理由

世帯収入の多くを夫に頼っている場合、離婚にはなかなか踏みきれないかもしれません。

でも、夫婦であったときに作った財産は、離婚時に一部をもらう権利があります。もちろん、未成年の子どもがいれば、養育費の請求も可能です。

子どものことが心配

離婚して、夫婦がそろわない環境で子どもを育てることで、子どもに与える悪影響があるのではと心配される方もいるでしょう。

でも、結婚していたとしても、両親の不仲が子どもに与える影響は無視できません。精神が不安定になったり、人を信じられなくなったりなど、いろいろな悪影響が出るとも言われています。

本当に、夫と一緒にいることが子どものためになるのか、もう一度考えてみましょう。

夫が許すわけがない

もっとも検討する必要がない理由です。

「離婚したい」といっても、モラハラ夫はすぐには許さないことが多いでしょう。でも、そういった夫の支配からまず逃れないと、この状況は変わりません。離婚は、夫の支配から抜け出すための選択肢。夫の顔色を見ながらビクビク暮らす生活を、一生続けていきたいですか?

仮に夫が許さなくても、法が許せば、離婚は可能です。そのためにとれる方法を考えましょう。

モラハラを理由に離婚は認められるの?

「離婚すると決めたら、一刻も早く別れてしまいたい!」

と、はやる気持ちは抑えて、不利な結果にならないように、法律上の要件を確認してみましょう。民法に定められている、裁判で離婚が認められる5つの事由は、次のとおり。

民法770条
一 配偶者に不貞な行為があったとき
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
五 その他、婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

長年にわたる夫の罵声をノートに記録していたり、録音しているなど、モラハラを証明できた場合は、「婚姻を継続しがたい事由がある」などに当てはまる可能性はあります。

「当てはまっている」と申し立てることができる証拠があれば、夫が拒絶しようがなんだろうが、裁判で離婚を勝ちとることができるわけです。

いざ離婚裁判となったとき、裁判に必要なもの

でも、「モラハラ」だけを理由にして「裁判で」離婚を申し立てるのは、なかなか難しいというのも事実です。離婚が認められる可能性はあるものの、認められず、棄却される可能性もかなり高いということです。

たとえば、夫が「不倫(つまり「不貞な行為」)」をしている証拠があれば、民法に定められているとおり、相手が同意していなくても、即、裁判で離婚事由として認められます。

しかし、モラハラによって婚姻生活が継続し難い局面にあることを、裁判所に確実に認めてもらうための証拠集めというのが、なかなか難しいのです。

必要な証拠にはどんなものがある?

とにかく被害状況を記録しましょう。夫の暴言を録音する。メールやLINEで心ない言葉を向けられていれば、それを残しておきます。

日記として残す場合は年月日を明記し、ノートに、時系列に細かく記録しておきましょう。あとから追記などしていないこと(=捏造ではないこと)を証明するために、ルーズリーフなど前後を入れ替えられる形ではなく、しっかりと綴じられたノートを使って、1ページ目から空白を開けずに書くことが有効。また、日付は「月日」だけでなく、「年月日」で記しましょう。

あきらめないで。モラハラで離婚するための確実な方法

モラハラだけで裁判に訴えるより、時間はかかるけれども離婚につながる、より有効な方法もあります。別居することです。

別居は「夫婦関係が破綻している」とみなされ、離婚事由として認めてもらいやすい要素です。離婚に必要な別居期間は、ケースバイケースではありますが、20~40代夫婦であれば3年、熟年離婚のケースでも6~7年が、ひとつのめやす。

別居によって、モラハラ夫の支配下から、あなたが物理的に解放されることも重要です。低くなっていたあなたの自己肯定感も、少しずつ回復するはずです。

「別居」なんて夫が許すはずない?

別居に夫の許可は必要ありません。荷物をまとめ、家を出ましょう。別居の意志を記したシンプルな置手紙やSNSにメッセージなどが残してあれば、それに夫が同意する必要はないのです。

ただ、別居の意志が夫に伝わっていないと、捜索願などを出されて、別のトラブルになってしまうことも。また、後に離婚を訴える際に「いつから別居しているか」を明確にするためにも、この日から別居したという証拠は必要です。

子どものこと、お金のことなど、別居するにしても、どこかで話し合いは必要になってきます。ですが、そうした細かい交渉については、家を出た後で弁護士を通じて連絡することもできます。専門家の力を借りることで、あなた自身の権利も正しく守られますし、夫にあなたが本気であることを伝えることもできます。

別居中も生活費がもらえる「婚姻費用」!

生活費を夫に頼っている場合、お金が原因で別居をためらうケースもあるかもしれません。

しかし、民法には、次のように定められています。

民法760条
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する

夫婦は、お互いに助け合うことが義務。そのため、収入が少ない方は「婚姻費用」として、配偶者に生活費や子どもの学費を請求することができます。

これは別居していても同じ。もしあなたが家を飛び出しても、夫婦間で夫のほうが収入の高いのであれば、生活費をもらうことができます。未成年の子どもがいれば、学費の支払いなども当然のこと。「お金がないから、モラハラ夫と暮らすしかない」と諦めず、正しい知識を持って、夫との決別に挑みましょう!

婚姻費用はどれくらいもらえるの?

婚姻費用は

・夫婦双方の年収
・自営業か、給与所得者か
・子どもは何人いるか

によって、ほとんど機械的に算定されます。

たとえば、妻の年収が250万円、夫の年収が450万円、ともに自営業でなく給与所得者で、妻が子ども1人を養育する場合、夫が妻に支払うべき婚姻費用の相場は、1ヶ月あたり6~8万円。

妻に収入がなく、夫の年収が700万円、自営業でなく給与所得者で、妻が子ども2人を養育する場合、夫が妻に支払うべき婚姻費用の相場は、1ヶ月あたり16~18万円です[*1][*2]。

モラハラ夫のほうから「逆らうなら離婚だ!」と言われてしまったら?

モラハラ夫があなたをますます不安にさせようと「離婚してやる」などと言い出したら?

不安になる必要はまったくありません。むしろ、大チャンス。離婚のタイミングや条件の交渉で、有利に立てるのはあなたのほうです。

あなたに不倫している証拠があるなど、民法に定められた離婚事由が存在しない限り、夫がどんなに離婚を切り出しても、あなたの同意なしでは離婚は成立しません。相手から言い出した離婚であれば、あなたは「この条件をのんでくれたら離婚してあげるわ」と自分に有利な条件を引き出すことだってできるのです。仮に内心ではあなたも離婚を望んでいたとしても、すぐには離婚に同意せず、慰謝料や養育費などについて、しっかり交渉することをおすすめします。

ちなみに、中里弁護士によると、「離婚してやる」と言い出すモラハラ夫は、あなたを怯えさせるのが目的であって、離婚しようなんて本音では思っていないことがほとんどだそう。弁護士を通した本格的な交渉がはじまると、途端に離婚を渋りだす、といったことも少なくないようです。

モラハラ夫も「思いこみ」にとらわれている

モラハラ夫はいつも「自分が正しい」と思っています。あなたが離婚を拒否しても、「俺が離婚と言ったら離婚なんだ」と、自分ルールを振りかざしてくるかもしれません。

でも、法律は、夫の自分ルールとは違います。いつも強気なモラハラ夫は、離婚の調停中も、裁判に至っても、この事実に気がつかないことが多いそう。

モラハラ夫とずっと一緒にいると、妻のほうでも「夫の言うことはいつも正しい」と思ってしまいがちですが、現実の社会を動かすルールは違うということに、ぜひ早く気づいて、利用してください。

モラハラ離婚で慰謝料、財産分与、養育費、親権はどうなる?

当面の生活費も気になるし、散々傷つけられた時間を「せめてお金で返して欲しい!」って思いますよね。やっぱり生きていくうえでお金は大事です。

慰謝料、財産分与、養育費はどう決まる?

いざモラハラで離婚となったとき、今までの苦痛の分や今後の生活のためにも、そして子どものためにも、受けとれるお金はしっかりと受けとりたいもの。

モラハラ離婚では、どんなお金を、どれくらい受けとることができるのでしょう? また、子どもの親権はどんな風に決まるのでしょう?

慰謝料はどのくらい?

モラハラに限らず、どんな離婚理由であっても、150万~200万円が裁判所での離婚慰謝料の相場。「とれるだけとってやりたい!」という人もいるでしょうが、実はそうそう多くはもらえないのが現実です。

財産分与は受けられます!

慰謝料よりも、現実的なのは財産分与でしょう。結婚していた間に購入した家や車、預貯金や有価証券などの財産は、妻も受け取る権利があります。これらは、共働き夫婦の場合はもちろん、モラハラ夫が言う「稼ぎのない」専業主婦でも、半分はもらえるので安心してください。

また、もし婚姻期間中に夫が貯めこんでいたお金があれば、それも当然もらう権利があります。

仮に分けるべき財産がない場合であっても、「扶養的財産分与」といって、経済的に自立できるまでの期間、生活するための金銭を要求し、とれることもあります。

子どもの養育費は?

未成年の子どもがいて、あなたが養育するのであれば、養育費ももちろんバッチリもらえます。

養育費は、上で説明した婚姻費用と同じように

・夫婦双方の年収
・自営業か、給与所得者か
・子どもは何人いるか

によって、ほとんど機械的に算定されます。モラハラ離婚だからどう、ということはないのです。

たとえば、妻の年収が250万円、夫の年収が450万円、ともに自営業でなく給与所得者で、妻が14歳未満の子ども1人を養育する場合、夫が妻に支払うべき養育費の相場は、1ヶ月あたり2~4万円。

妻に年収がなく、夫の年収が700万円、自営業でなく給与所得者で、妻が14歳未満の子ども2人を養育する場合、夫が妻に支払うべき養育費の相場は、1ヶ月あたり12~14万円です[*1][*3]。

親権は? モラハラ夫には絶対に渡したくない!

親権は、当事者間の協議で決まらない場合には、家庭裁判所が決定します。その際は「どちらの親に養育されるのが子どもにとってよいか」がポイント。子どもが小さいうちは、母親が日々面倒を見ているケースが多いので、離婚後も引き続き母親側に親権が渡る傾向があります。

親権を何としても手にしたいモラハラ夫が「お前は生活力がないからダメだ」「お前は子どもを育てられるような人間じゃない」と責め立てても、裁判所はそんな意見だけで親権を決めることはありません。

「日々面倒を見ている」証拠として重要になるのは?

夫が積極的に子育てに参加していることを主張し、親権を争うことになるケースも、最近では増えてきました。

夫婦のどちらが主に子どもの面倒を見ているか、裁判所が判断する際の材料になるものとしては、

・保育園や幼稚園の送迎
・保育園や幼稚園の連絡ノートの記入
・非常時の連絡先は夫婦どちらか
・学校の行事に参加しているのは夫婦どちらか

などがあります。

あなたは子どもから見て「守ってくれる強い母」?

離婚の際に、子どもが意見を言える年頃(小学校高学年以上)であると、父と母の「どちらかと暮らしたいのか」という子どもの意見も尊重されます。

モラハラ被害を受けている母を見て、「パパがいなくなってしまうと、ママだけでは頼りない」と子どもは不安に思うかもしれません。子どものためにも、強い自分を取り戻しておきましょう!

モラハラが原因の離婚にはこんな例も……

実際にモラハラを原因とした離婚にはどのような例があるのでしょうか。

一般的に、離婚の交渉は、

1.まずは当事者同士で話し合い(協議離婚)
2.当事者間で合意が成立しなければ、裁判所が間に入って交渉を仲介(調停離婚)
3.調停でも合意が成立せず、一方が訴えれば、裁判で争うことに(裁判離婚)

と進んでいきます。実際に、モラハラがきっかけになった離婚の事例を見て見ましょう。

借金まみれで破産を予定するモラハラ夫から養育費を得て協議離婚

夫の借金と、精神的に攻撃されることに疲れきった洋子さん(仮)。離婚を決意しますが、子どもを育てていくにあたって、お金の不安がありました。しかし、夫は借金まみれで、破産申し立てを予定しています。

そこで、洋子さんは弁護士に相談。夫の破産手続がスタートした場合でも支払いを継続できる可能性をなるべく高くするため、財産的給付はすべて「養育費」の名目で取り決めるようアドバイスを受けました。

夫の言うことがコロコロ変わり、離婚協議は難航しましたが、弁護士の協力を得て、最終的には離婚が成立。条件に、養育費の支払いを盛りこむこともできました。

モラハラ夫が海外転勤する前に、調停申し立てでスピード離婚成立

夫のモラハラに耐えかねて別居に踏みきった晶子さん(仮名)。6ヶ月の別居期間を経て、離婚を希望しますが、夫は拒否。交渉のため会おうとしても、断られてしまいました。

しかも夫には、海外転勤の予定が。そこで、晶子さんは、転勤前に離婚を成立させるため、早めに協議を打ち切ることを決意。弁護士とともに裁判所に、「婚姻費用分担請求調停」と、「離婚調停」の申し立てを行いました。

すると夫からは、調停取り下げを条件に、離婚に応じるとの回答。Aさんの第一の希望はお金よりも離婚成立だったことから、夫の要求に応じることで、スピード離婚を成立させることができました。

モラハラ夫からの離婚申し立てを争い、提示額の2倍の解決金を獲得

夫のモラハラが原因でやむなく家を出た博美さん(仮名)。すると夫は、別居を理由とした離婚を請求してきました。

博美さんは弁護士とともに、「別居の理由は夫のモラハラであり、夫からの離婚請求は認められない」と争います。これまでの経緯や夫の言動を詳細に記載した書面を作成し、録音テープやメールなどのモラハラ証拠も整理して提出。ただし、解決金の金額によっては離婚に応じるとの条件をつけました。

結果的に、裁判所の心証を味方につけることに成功し、夫は当初提示額の2倍以上の解決金に同意。金銭的に優位な条件で、離婚を成立させることができました。

モラハラ離婚のためにできる準備

いざ離婚を考えるときには、大きく3つのことを考えておく必要があります。それは

「お金のこと」
「子どものこと」
「離婚の同意」

の3つです。

お金について、夫の資産や収入を把握する

前述のとおり、婚姻中に作った財産は半分もらう権利があります。きちんと財産の半分をもらうためには、夫名義の資産にどのようなものがあるか、知っておく必要があります。とくに夫が隠し持っているかもしれない貯蓄などがあれば、離婚の前に何としてもその金額を把握するようにしましょう。

なお、夫の収入は、婚姻費用、養育費を決めるための資料となります。夫の給与明細、源泉徴収票などは、しっかり入手しておきましょう。

子どもと夫との今後について考える

親権、養育費についてはすでに説明したので、ここでは「面会交流権」の説明をしましょう。

親権が取れなかった親でも、子どもとは会う権利があります。これを「面会交流権」といいます。親権を持つ方が「子どもと会わせたくない」と言っても、親と会うのは子どもの権利でもあります。面会交流の方法や回数などは、当事者同士で話しあってもまとまらなければ、裁判所に判断してもらうことになります。

シングルマザーには国や自治体のサポートもある

シングルマザーになると、国や自治体から児童扶養手当や公共料金の割引などのサポートが受けられます。そういった情報をあらかじめ調べておけば、不安な気持ちも少し薄れることでしょう。また今後どんな風に働き、いくらくらい稼げばよいのかなどの指針にもなります。

地方自治体にはシングルマザー向けの相談窓口が設けられていることも。必要に応じて相談しながら、離婚後の生活を検討していきましょう。こういった検討をすることは、夫の力を必要とせず、自分の足で立つ新しい未来に目を向けるきっかけにもなるはずです。

夫から離婚の同意は得られそうですか?

モラハラだけを理由に裁判で離婚することは難しいとはいっても、相手が離婚に応じていれば、裁判に頼ることなく、協議離婚ができるわけです。

離婚を決意したらいつも離婚届を手に持っておいて、相手が離婚を口走った瞬間に、サインをもらう。そのくらい強い気持ちをもって、モラハラ夫との決別を目指しましょう。

「婚姻費用」がきっかけで離婚の同意に至るケースも

別居中にも「婚姻費用」を払う義務があることを、知らない人は多いです。モラハラ離婚の実例としても紹介しましたが、離婚に同意しない夫に婚姻費用の金額を提示することで、「別居してこんなに払うくらいなら離婚する」と、離婚への同意を得られる場合もあります。

このほか、裁判で争って離婚を認められることは難しいケースでも、裁判以前の話し合いや交渉で離婚の同意に至ることは多いもの。夫が離婚に同意なんてしてくれるわけがない、との思いこみは捨てましょう。

モラハラを受けている場合、夫は弁が立つからかなわない、夫との交渉に自信がないという人も多いです。そんなときこそ、弁護士に代理人として交渉してもらうことを考えましょう。

モラハラ夫との離婚を考える女性たちへ、弁護士からのアドバイス

この記事の執筆にあたり取材・監修に協力いただき、これまで多くのモラハラ離婚を成立させてきた中里弁護士から、モラハラ夫との離婚を考えている女性に向けて、アドバイスをいただきました。

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所,代表弁護士,中里妃沙子先生中里弁護士
離婚を考えるなら、まずは別居の準備を始めてみるといいかもしれません。別居の覚悟が決まると、あなた自身のメンタルが変わってくると思います。また、モラハラ夫と2人の世界から抜け出すことによって見えてくる世界も変わり、自分のことを信じる心も次第に取り戻せるはず。

また、弁護士に離婚相談をする場合、1箇所だけでなく複数の弁護士事務所を候補にして、早くからインターネットなどで情報を集めておくといいですよ。離婚相談には、相談者と弁護士との相性もありますが、単に法律上のことを正確に答えるだけでなく、現実的な生活を考えてアドバイスする弁護士が向いています。離婚案件を多く扱っていて、事例をよく知っている事務所を選ぶといいでしょう。

最近は、オンライン相談ができる弁護士事務所も増えました。気になる事務所があれば、遠方でも連絡をとってみるとよいでしょう。いくつかの事務所からセカンドオピニオン、サードオピニオンをとって、納得できる方針を出してきた事務所を選ぶという相談者の方も多いです。

今までのあなたは、夫が振りかざす理不尽なルールに縛られていたかもしれません。でも、あなたを守ってくれる法律があって、あなたはその法律に守られて生きていることを、どうか知ってくださいね。

まとめ

モラハラは、民法で明確に定められた離婚事由ではありません。したがって、モラハラ夫との離婚を裁判で認めてもらうのは、難しいというケースも多いです。しかし、裁判以前の交渉で離婚の同意をとれることは多いですし、「モラハラ」だけでなく、「別居による婚姻関係の破綻」という理由との合わせ技で攻めるのも、ひとつの現実的な方法になります。

別居にあたっての生活費には婚姻費用をあてることができますし、別居をすれば、モラハラ夫と物理的な距離がとれることで、あなた自身がモラハラ夫の支配から逃れて、「養育費」や「面会交流権」など、離婚の具体的な条件を交渉しやすくなることも大きな利点です。

夫との離婚を考えつつ、「離婚なんてできるわけがない」と思いこんでいた方も、動き出さない理由が薄れてきたのではないでしょうか。自分らしく生きていくことができる毎日を取り戻すために、今、自分ができることを考えてみましょう。

この記事の監修者
中里妃沙子 弁護士
丸の内ソレイユ法律事務所 所長。東京弁護士会 所属。 離婚、相続、会社法務、労務管理、債務整理、交通事故、債権回収、賃貸借契約など幅広い分野に取り組むとともに、新聞、雑誌、テレビ、WEBメディアでも活躍。とくに離婚・男女問題については年間300件以上を法律事務所として受任し、豊富な実績を誇る。
◆丸の内ソレイユ法律事務所:http://maru-soleil.jp/
◆女性のための離婚相談:https://www.rikon-soleil.jp/

(取材・文:暮らしのチームクレア 川口裕子/監修:中里妃沙子弁護士/漫画:ぺぷり)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、弁護士に取材、および、その監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものです。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

参考文献
[*1]最高裁判所「養育費・婚姻費用算定表」 https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html
[*2]女性のための離婚相談「婚姻費用の簡易シミュレーション」 https://www.rikon-soleil.jp/konninhi-simulation/
[*3]女性のための離婚相談「養育費の簡易シミュレーション」 https://www.rikon-soleil.jp/yoikuhi-simulation/

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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