【医師監修】出産で痔になった時の対処法と6つのホームケア

【医師監修】出産で痔になった時の対処法と6つのホームケア

産後の悩みの1つとして話題にのぼることが少なくない「痔」のトラブル。先輩ママの中には「陣痛より、何より痔の痛みがつらかった」といった声も! その原因や症状と治療方法、ホームケアで気をつけるポイントについてまとめます。


出産を機に『痔』になる?

出産を機に痔になる人、症状に気づく人は少なくありません。

妊娠後期には出産に備えて赤ちゃんが下降することで、骨盤の中の血行が悪くなったり腸の動きが邪魔されて、便秘になりやすくなります。便秘になると、排便時に普段以上にいきんでしまうことも影響し、とくに“いぼ痔”と呼ばれる「痔核(じかく)」ができやすくなります。これに加えて分娩のいきみでも痔核はできます。

こうした理由で、産後には痔と付き合うことになる人が多くなります。痔の診療ガイドラインにも、発症のきっかけの1つとして「妊娠・出産」が挙げられているほどです[*1]。

松峯先生
「分娩の際に、肛門の内側にあった痔核が出てきたり(脱出症状)、刺激を受けて腫れがひどくなったりするので、違和感や痛みが強くなり、出産前は気にならなかった人も痔に気づくことが珍しくありません」

また、頑固な便秘によって硬くなった便が肛門を傷つけるなどしてできる“切れ痔(裂肛)”に悩む人もいます。

そもそも『痔』って?

痔には3つのタイプがあり、いずれも腫れや痛み、出血を伴うなどして生活の質に影響する病気です。

どんな病気?

3つのタイプとは、さきほど紹介した、「いぼ痔」、「切れ痔」に加え、肛門に膿のトンネルができる「痔ろう」です。これらのうち、妊娠・出産と関係することが多いのは「いぼ痔」です。

「いぼ痔」の原因は、いきみや何かの刺激などにより直腸や肛門付近の血流が悪くなり、そこがいぼ状に腫れてしまうことだと言われています。先にも述べた通り、妊娠後期には血流悪化や便秘といった負の条件がそろってしまうことが多いわけです。

いぼ痔にも2種あり、肛門の内側にある「歯状線」という場所を挟んで肛門の内側にできると「内痔核(ないじかく)」、外側にできると「外痔核(がいじかく)」と呼ばれます。

内痔核

痛みはほとんどないものの、排便のときに出血する場合があります。肛門に圧力がかかると痔核が肛門の外に飛び出すことがあり、こうなると痛みも生じるようになります。

外痔核

強い痛みがあります。炎症を起こすと腫れが悪化し、血のかたまりができて大きな腫れを引き起こし、さらに強く痛みます。

なぜ痛い?

肛門の外側の皮膚には痛みを感じる神経がたくさん集まっています。そのため、内痔核が飛び出たり、神経が通っている場所に外痔核ができると、強い痛みが生じます。

松峯先生
「重症化した痔の痛みはとてもつらいものです。適切なタイミングで治療をするためにも、1人で悩まないでください!」

どんな治療?

一般的に痔の治療は、「保存療法」と言って、生活の中で悪化させない工夫について指導を受け、腫れや痛み、出血をやわらげる薬物療法で経過を見ることが基本となります。

松峯先生
「一般的な痔の薬物療法では内服薬と塗り薬が利用されますが、一部、妊娠中は使用できない薬もあります。そして、できてしまった痔の治療には時間がかかるので予防が肝心です。

後に紹介する『ホームケア』は予防法でもあるので、特に妊娠後期から産褥期(産後6~8週までの時期)には気をつけてください。

痔核の肛門外への脱出がひどい場合や、保存的治療では改善しない、痛みによって生活に支障があるなどといった場合には手術が検討されることもあります」

分娩時に痔が分かったら?

分娩の際、痔核が外に出るなどして痔が発見されることはよくあることのようです。松峯先生は塗り薬を処方し、1ヶ月健診で診察すると多くの場合は症状が改善していると話します。

松峯先生
「基本的には、1ヶ月健診の際に改善していない場合は肛門の専門医に引き継ぎます。ただし退院後、痛みが強く、生活に支障がある場合は1ヶ月健診を待たずにまずは産科を受診してもらっています。

なぜなら、このころは産褥期で、子宮が非妊娠時の状態に回復する『子宮復古』の過程であり、悪露も出ている時期だからです。肛門科など専門医を受診する前に、産科で子宮復古の状態を確認してもらうとともに、専門医受診のタイミングについても産科の主治医からアドバイスを受けるのがよいのではないでしょうか」

ホームケアでできること

痔の予防や重症化予防には、次のようなことに気をつけることが勧められています[*1]。

・毎日の食事で十分に食物繊維をとり、水分をとる

・アルコールの過剰摂取はNG
 (そもそも妊娠中のアルコール摂取はNG。また、授乳中も制限あり)。

・排便時にいきみ過ぎない。
便秘でも、長い時間、便器に座り続けるのは避け、便意をもよおしたときに我慢しないで短時間で済ませる

・座りっぱなしなど同じ姿勢でいることを避け、適度に体を動かし、特に骨盤内や肛門周囲の血流を促す

・体(特に下半身)を冷やさない
 (温めると痛みと腫れがやわらぐこともある)

・排便後に拭くとき、痔核に大腸菌がつくなどすると感染症の原因になることもあるので、肛門周囲の清潔を保つ

まとめ

産後のマイナートラブルの1つとも言える「痔」で困ったら、産褥期で、悪露も出ている期間については、まず産科で診察を受けると良いでしょう。肛門科など専門医受診のタイミングなどについてアドバイスを受けましょう。

この記事の監修ドクター
松峯美貴先生
医学博士、東峯婦人クリニック副院長、東峯ラウンジクリニック副所長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(いずれも東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします! どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
http://www.toho-clinic.or.jp/

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛・直腸脱)診療ガイドライン

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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