【医師監修】尿蛋白が陽性の妊婦のリスクとは? 原因と下げる方法

【医師監修】尿蛋白が陽性の妊婦のリスクとは? 原因と下げる方法

「尿蛋白(にょうたんぱく)が陽性」とは、柔らかく表現すると「尿に蛋白が降りている」とか「蛋白尿が出ている」と言われる状態です。つまり、尿の中に蛋白質が混ざっているということ。では、尿にたんぱく(蛋白)質が混ざっていているとは、どのような状態なのでしょうか?


尿蛋白とは

検査項目の「尿蛋白」では、どんなことがわかるのでしょうか。まずは、尿と関係が深い「腎臓」についての説明から始めましょう。

腎臓ってどこにある? なにをする?

尿は腎臓で作られます。腎臓は腰より少し高い位置に左右2つある握りこぶしぐらいの臓器。そこでは血液をろ過し、「体に必要なもの」と「体に不要なもの」により分けています。不要ないものは尿となり、膀胱へ送られます。

腎臓の位置を示すイメージ画像
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蛋白尿って?

たんぱく質は大切な栄養素で「体に必要なもの」ですから、本来は尿にほとんど排泄されません。それなのに尿の中に蛋白が混ざっているとしたら、腎臓に何かしらトラブルが起きていて、その働きが低下している可能性が考えられるのです。

なお、腎臓に問題がなくても、一時的に蛋白尿が見られる(尿蛋白陽性)ことがあります(後述します)。

尿蛋白が陽性の時の症状は?

「腎臓が悪くなると体がむくむ」とよく言われます。確かにその通りですが、体のむくみに気づくのは、腎臓の働きがかなり低下してからのこと。尿に蛋白が現れていても、ほとんどの場合、自覚症状はないと思ってください。

もちろん、自覚症状が現れないからといって尿蛋白陽性の状態を放っておいてよいというわけではありません。原因を確かめて治療しなければ、腎臓の負担がより強くなってしまいかねません。また、尿蛋白が陽性であること自体が腎臓にさらに負担をかけたり、血圧が上がってきたりしてしまいます。

尿蛋白の「+」「-」「±」って?

尿検査のイメージ画像
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試験紙法(採尿したカップに試験紙を浸して色の変化で判定する方法)の尿検査を受けて、尿に蛋白が出ていなければ結果は「-」(マイナス)、つまり陰性。

尿に蛋白がわずかに混ざっている時は「±」で弱陽性(擬陽性)。陽性まではいかない程度の微量のたんぱくが検出されているということです。

「1+」以上は陽性で、「2+」、「3+」と数字が大きいほど、尿により多くの蛋白が出ていることを意味します。数値が大きいほど、腎臓の働きが大きく低下していると考えられます。

妊娠すると尿に蛋白が出やすくなる?

妊娠中は血液の量が増加します。血液の量が最も増えるのは妊娠30~36週ごろで、その頃の血液量は非妊娠時の40~50%も多くなります[*1]。血液の量が多くなると、腎臓もそれだけたくさん仕事をしなければなりません。腎臓により多くの負担がかかるというわけです。

そのため妊婦健診では尿に蛋白が出ていないかを調べる検査が行われます。妊婦健診で尿蛋白を測定する目的は、妊娠の経過に伴い腎臓に負担がかかっていないかを調べるとともに、妊娠前からかかっている場合もある腎臓の病気を早期発見して、安全な妊娠・出産につなげていくためです。

尿蛋白が増える原因

 ・一時的に陽性になる

既に解説したように、妊娠中は血液量が増えるために腎臓に負担がかかります。もともと腎臓に持病のある人は、妊娠後期になるほど、腎臓の働きが低下することもあります。

このほかにも、精神的ストレス、運動の負荷、たんぱく質の摂り過ぎ、腟からの分泌液が尿に混ざるといったことが原因で、尿蛋白が一時的に陽性になることがあります。

 ・陽性が続く

一方、尿蛋白の陽性が一時的なものではなく連続して陽性の場合は、より注意が必要です。また妊娠初期に妊婦健診で陽性だとしたら、その頃はまだ血液増加量はそれほど多くないので妊娠したことによる影響は少なく、もともと腎臓に病気があった可能性があります。

蛋白尿の判定基準

先ほど解説したように、尿蛋白はまず試験紙法による検尿検査で「-」や「±」、「+」などと判定されます。この検査結果を受け、血圧が正常レベルか否かで対応が変わってきます。というのも、腎臓の働きは血圧の高低と密接に関係していて、血圧が高いと腎臓の働きが低下しやすく、より注意深く経過を観察する必要があるからです。

具体的には、妊娠高血圧症候群(以前は妊娠中毒症と言われていました)や妊娠高血圧腎症に注意が必要です。それらの病気については後で詳しく解説しますので、ここでは検尿検査の判定への対応について解説します。

 ・血圧が正常レベルの場合

血圧検査をする女性
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血圧が正常域(医療機関で測った血圧が140/90mmHg未満、家庭で測った場合はそれぞれ5mmHg低い値が上限)の場合は、試験紙法による尿検査で「1+」が2回続いたとき、または「2+」が1回出たときは、より詳しい検査が必要です[*2]。

 ・高血圧の場合

収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上(家庭で測った場合はそれぞれ5mmHg低い値が上限)は、高血圧に該当します[*3]。高血圧の場合、試験紙法で「1+」以上が1回出れば、より詳しい検査が必要です。

 ・24時間の尿中蛋白が0.3gを超えていれば「病的な蛋白尿」

より詳しい検査では、尿の中の蛋白質とクレアチニンという物質の量を測定し、その比率を計算します。尿中の蛋白質の濃さがクレアチニンの濃さの0.27倍を上回っている状態では、24時間の蛋白排泄量が0.3g以上に相当し、病的な状態と診断されます[*2]。

尿蛋白が陽性の場合の注意点

尿蛋白が「病的なレベル」と判定された場合、妊娠高血圧症候群や妊娠高血圧腎症のリスクが高いので、妊婦健診を欠かさないようにしてください。妊娠前から腎臓の病気があったと考えられる場合(妊娠初期の妊婦健診で蛋白尿が陽性の場合)も同様です。

塩分を控えるなどの食事の摂り方が説明されますので、それをしっかり守りましょう。また、家庭で血圧を毎日測定し、測定結果が上昇した時やむくみなどの変化に気づいた時には、次回の健診を待たずにかかりつけの産婦人科へ連絡をとり、指示を求めてください。

なお、尿蛋白が「±」程度であれば、あまり不安はいりませんが、食事指導の内容は守りましょう。また、妊娠の経過とともに尿蛋白の量が増えたり、血圧が上がってきた場合には、入院等が必要になる可能性があります。

妊娠中毒症って?妊娠高血圧症候群の影響・症状・治療法【医師監修】

https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/1278

妊婦さんを苦しめる「妊娠中毒症」は、現在「妊娠高血圧症候群」という呼び名に変更されています。今回は「妊娠高血圧症候群」による母子への影響、症状、治療法についてお伝えします。

妊娠中に尿蛋白が気になる時の過ごし方

妊娠中に尿蛋白が連続して出ている場合や量が多い場合などは、詳しい検査などによってその原因を突き止めることになりますが、時折1+になる、±が続くなどの場合でも、本人は心配になるものです。高血圧を防ぐためにも以下のようなことに気を付けましょう。

塩分の摂りすぎに気をつける

料理をしている女性
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塩分の摂りすぎは腎臓に負担をかけ、高血圧のリスクのひとつにもなります。一般的に塩分摂取量7~8g/日程度がよいと言われることが多いですが、その他の状況によって異なりますので、医師からの指示がある場合にはそれに従ってください。

塩分の摂りすぎを避けるため、調味料は計量して使う、減塩醤油に変える、塩や醤油でなく出汁の旨味や柑橘類の酸味を生かす、麺類の汁を飲まない、などの工夫をしましょう。

家庭で血圧を毎日測る

血圧測定を行っている妊婦
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腎臓の働きが下がると血圧が高くなりやすくなります。そして、血圧が高くなると腎機の負担がさらに増えて、腎臓の働きがより低下します。高血圧と腎機能低下の悪循環が起きてしまうということです。

妊婦健診の際に血圧測定は行いますが、それ以外の時に大きな変動が起こることもあります。もし高血圧になった場合は早く発見できるように、こまめに家庭血圧を測るようにしましょう。そして、血圧が上がってきた場合は医療機関に連絡をとって、指示を受けるようにしましょう。

疲れをためずに無理をしない

本を読んでリラックスしている女性
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疲れやストレス、睡眠不足なども尿蛋白が増える原因で、高血圧のリスク因子にもなります。妊娠中はなるべく無理をせずに、心身ともにゆっくり休養をとるようにしましょう。

気になることがあれば医師に相談を

産婦人科医に相談する妊婦
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その他、医師から生活上の指示があった場合はそれを守ってください。自己判断で食事制限などは行わないようにしましょう。例えば、尿蛋白が出ている時の対処として、たんぱく質の摂取を控えることがありますが、減らしすぎることが逆によくないケースもあります。

疑問や不安があれば、まず医師に相談することです。

まとめ

妊娠中には腎障害が起きていないかの確認のため、妊婦健診時で尿蛋白を調べます。妊娠中は蛋白尿が普段より出やすく、また、運動や発熱後などは一時的に数値が上がることも。そのような一時的なもので、血圧が正常ならあまり心配はないでしょう。ただ、尿蛋白が陽性の状態が続く場合は何らかの対処が必要となります。妊婦健診を欠かさずに受け、日々の生活で何か気になることが医師に相談しましょう。

この記事の監修ドクター
浅野仁覚先生
葵鍾会 ロイヤルベル クリニック勤務。福島県立医科大学、同大学院卒業後、社会保険二本松病院、南相馬市立総合病院産婦人科医長、福島県立医科大学附属病院総合周産期センター(母体・胎児部門)助教、東府中病院副院長、アルテミスウィメンズホスピタル院長を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、医学博士、J-MELSベーシックコースインストラクター

(文:久保秀実/監修:浅野仁覚先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]メディカ出版「ペリネイタルケア」2016年夏季増刊「正常の確認と異常への対応を極める!妊婦健診と保健指導パーフェクトブック」,p.114,2016
[*2]「産婦人科診療ガイドライン 産科編2017」(日本産科婦人科学会)p.191
http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2017.pdf
[*3]日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
[*4]主婦の友社「はじめてのママ&パパの妊娠・出産」,2014

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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