【医師監修】妊婦健診の尿糖検査で陽性(+)になる原因と対策

【医師監修】妊婦健診の尿糖検査で陽性(+)になる原因と対策

妊婦健診の尿糖検査で「+(プラス)」が出たら要注意のサインです。尿糖検査プラスは、どういう健康状態の時に出るのでしょうか? 尿糖検査とは何か、なぜプラスになるのか、出るとどうなるのか、また尿糖検査がプラスにならないためにできることについてお話します。


この記事の監修ドクター
葵鍾会 ロイヤルベル クリニック勤務。福島県立医科大学、同大学院卒業後、社会保険二本松病院、南相馬市立総合病院産婦人科医長、福島県立医科大学附属病院総合周産期センター(母体・胎児部門)助教、東府中病院副院長、アルテミスウィメンズホスピタル院長を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、医学博士、J-MELSベーシックコースインストラクター。

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尿糖検査で陽性(+以上)になる主な原因

妊婦健診では、毎回、採尿して尿検査を行います。このとき調べられているのは、「尿糖」と「尿たんぱく」についてですが、「尿糖が陽性」になるとはどういうことなのでしょうか。まずはその原因を知っておきましょう。

血液中に含まれる糖の量が多い

尿糖検査陽性とは「血液中に含まれている糖の量が通常よりも多いこと」を示しています。
血液中に含まれている糖(ブドウ糖)の量のことを「血糖値」と言います。

血糖値が多少高くなっても尿にまでは普通出てきませんが、「血糖値が160~180mg/dL以上」くらいまで上がると、尿の中にも糖が出てくるようになります[*1]。血液中の糖が多すぎて、腎臓で再吸収しきれなくなるためです。

つまり、尿に糖が出ているということは、血糖値も高くなっているということになります。

食後すぐに検査を受けた

血糖値は、空腹時よりも食後の方が高くなります。食事から吸収したブドウ糖が血液中に取り込まれるからです。

そのため、尿検査の前に甘いものや炭水化物をたくさん食べると、一時的に血糖値がかなり上がって尿糖値も高くなることがあります。

さらに、妊娠中は妊娠前に比べると、「食後の血糖値がより高くなりやすい」という特徴があります(空腹時は血糖値がより低くなりやすいという特徴もあります)。

ですから、普段の血糖値は問題なくても、尿検査を受ける前に食べ物や飲み物、中でも甘いものや炭水化物を口にしていると、尿糖値が一時的にプラスになることもあります。

尿糖が出やすい体質

もともと尿糖が出やすく、尿糖検査でプラスになりやすい体質の人もいます。

これは血糖値はあまり上がっていなくても尿に糖が出やすいもので、「腎性糖尿」と呼ばれています。

この場合、他に異常がみられなければ、治療の必要はありません。

妊婦健診で尿糖検査を受ける理由

そもそも妊婦健診で毎回尿検査を行い、尿糖値を調べるのはなぜでしょうか?

妊娠糖尿病を早期に発見するため

妊婦健診で尿糖値を調べる理由は「妊娠糖尿病を早期に発見することが大切だから」です。

12.08%の妊婦さんが妊娠糖尿病だと言われているほど、妊娠糖尿病はよくある病気です[*2]。しかしよくあるからといって心配のない病気というわけではなく、発症するとママと赤ちゃんの両方に色々な悪影響を及ぼす可能性があります。

妊娠糖尿病がママに及ぼす可能性がある悪影響

・妊娠高血圧症候群
・軽症の場合は羊水が多くなり重症になると過少になる
・肩甲難産(お産の時、赤ちゃんの肩が引っかかって出づらくなり難産になる)
・網膜症
・腎症など

妊娠糖尿病が赤ちゃんに及ぼす可能性がある悪影響

・流産・早産
・体の形の異常
・軽症の場合は巨大児になり、重症化すると発育不全に
・心臓が異常に大きくなる
・新生児低血糖
・多血症(赤血球が異常に増える)
・電解質異常(体内の水分や電解質などの成分のバランスが崩れる)
・黄疸
・胎児死亡など

ママと赤ちゃんにこうした異常が起こるのを防ぎ命を守るために、妊娠糖尿病の早期発見と早期治療は欠かせないのです。

妊娠中は血糖値が高くなりやすい

妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモンの影響で、血液中の糖がママの細胞に取りこまれにくくなります。そのため、血糖値が高くなりやすいのです。これはお腹の赤ちゃんに効率よくブドウ糖を供給するために必要な変化です。

この傾向は妊娠中期ごろから始まりますが、特に妊娠後期になればなるほど強くなり、妊婦さんの血糖値は妊娠前よりも高くなっていきます。

尿糖検査で陽性(+)になったらどうなるの?

妊娠中、尿検査で「尿糖が陽性(+)」になったらどうなるのでしょうか?

1回程度ならあまり心配いらない

尿糖は、食事の影響などで「一時的に陽性」になる時もあります。ですから、一度「尿糖陽性」になったとしても、あまり心配はいりません。

なお、最初に、血糖値が「160~180mg/dL以上」になると尿糖陽性になると解説しましたが、実は、妊娠後半からは生理的に腎臓の機能が少し落ちるので、血糖値がこれより低いのに尿糖陽性になることもあります(妊娠糖尿)。この場合も血糖値に異常がみられなければ病気というわけではなく、とくに心配いりません。

「2回以上陽性や強陽性」ではさらに検査を受ける

ただ、何度も尿糖プラスが続いたり、尿糖が強陽性(3+以上)となった場合は、妊娠糖尿病の可能性が高くなります。

この場合は、空腹時に砂糖の入った液体を飲んで、飲んだ後の血糖値を1時間ごとに3回調べる「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」を行い、妊娠糖尿病かどうかをより詳しく調べることになります。

なお、次のような人は、もともと妊娠糖尿病になるリスクが高いと言われています。そのため、尿糖値がプラスになったら要注意です。

妊娠糖尿病になりやすい人

・肥満
・家族に糖尿病の人がいる
・35歳以上の高年妊娠
・尿糖の陽性が続いている
・過去に大きな赤ちゃんを産んだことがある
・原因不明の流産・早産・死産をしたことがある
・羊水過多と診断されている
・妊娠高血圧症候群になった、または過去になったことがある
・多のう胞性卵巣症候群(PCOS)の人 など

妊娠糖尿病を予防するための対策

妊娠糖尿病にならないか心配なママのために、高血糖の予防方法を紹介します。

安定した血糖値のために注意すること

糖分の摂り過ぎに注意

糖分がたくさん含まれているお菓子は量を減らしましょう。はちみつやドライフルーツも、糖分が多く含まれているので摂り過ぎに注意します。

料理は薄味にして、みりんや料理に入れる砂糖などの調味料からの糖分も摂り過ぎないようにします。

おやつを食べる時にはお菓子より、さつまいもやヨーグルト、牛乳などにして、糖分以外の栄養を補うのもおすすめです。なお、果物やフルーツジュースは一見健康的なようですが、摂り過ぎると糖分もたくさん摂ることになるので気をつけましょう。

炭水化物の多い食事も摂り過ぎ注意

ご飯やパン、麺類、ジャガイモやサツマイモなどの炭水化物が多い食べ物もたくさん食べると、血糖値が上がります。
炭水化物はほどよく摂るように注意しましょう。

食べすぎもダイエットもNG。バランスを大切に

血糖値を気にし過ぎて極端に食べ物を制限するのも、ママと赤ちゃんの健康にはよくありません。食べ過ぎを防ぐとともに無理なダイエットも控えて、栄養バランスを考え色々なものを食べましょう。

なお、肥満かどうかは見た目ではなくBMI(ボディマスインデックス)から判定できます。

BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m)÷身長(m)

妊娠前のBMIが25以上の場合は、標準体重の場合と比べて妊娠糖尿病になるリスクも高まります[*3]。ただ、妊娠中の体重のコントロールについては一人一人の状態を見て判断する必要があるので、まずはかかりつけの産婦人科で医師や助産師に相談しましょう。

血糖値を上げすぎないために摂取したい食べ物

食物繊維をしっかり摂ろう

食物繊維には、「食後の高血糖を抑える働き」があります。
また、不溶性食物繊維を含む食品は噛み応えがあるのでカロリーを抑えて満腹感が出せ、食べ過ぎを防ぐこともできます。

さらに妊娠中には便秘になりやすいものですが、食物繊維を摂ると腸のぜん動運動が促進されて便秘の改善にもつながります。

食物繊維は、野菜や海藻、キノコなどに多く含まれています。また、白米を雑穀米や玄米、麦ごはんにするだけでご飯からも摂れるようになります。

バランスの取れた食事を心がけて

健康のためにはバランスの取れた食事が大切です。主食、主菜、副菜の3品が揃った食事にして1日の摂取カロリーが多過ぎないようにするだけで、栄養バランスは整えやすくなります。

・主食は「エネルギー源となるご飯やパン、麺類など」
・主菜は「筋肉や血液を作る、タンパク質をたっぷりと含んだ肉や魚介類、大豆製品などのメインのおかず」
・副菜は「体の調子を整えるビタミンやミネラルが含まれている、野菜やキノコなどのサブのおかず」

食物繊維が血糖値を抑えるからといって野菜ばかり食べたり、炭水化物はよくないと炭水化物を絶ってしまうのはやめましょう。

食べる順番も重要

食事の時には野菜から食べ始めましょう。
最初に食物繊維を取ることで、ご飯などの糖質がゆっくりと吸収されるようになり、血糖値の急上昇を防ぎます。

また、野菜を最初に摂ると満腹になりやすくなり、食べ過ぎなくても満足できるようになります。

よく噛んでゆっくり食べる

よく噛んでゆっくり食べると、血糖値が上がる前からインスリンが分泌され始めるようになるので、血糖値が急上昇しにくくなります。

早食いや慌てて飲み込むのはやめて、意識してよく噛んで食べるようにしましょう。

食事は寝る2~3時間前までに終える

時間栄養学の研究では、夜遅くに食べると血糖値が上がりやすくなることがわかっています。夕食は早めに摂るとともに、寝る2~3時間前には食事を終えるようにしましょう[*4]。

一回の食事量を減らし小分けにして食べる

1日に摂るエネルギー量が同じでも、1度に食べずに何回かに分けて食べるようにすると、血糖値の急上昇を抑えられるようになります。逆にまとめ食いをすると、食後に血糖値が急上昇してしまいます。

特に妊娠中は、食後の血糖値が高くなりやすいものです。尿糖値がプラスになって心配な場合は、同じ量の食事を1日4~6回に分けて食べる「分食」をすると、食事の後の血糖値の急上昇を防ぎ尿糖も出にくくなるのでおすすめです[*4]。

まとめ

妊婦健診では妊娠糖尿病を早めに発見するために、尿検査で尿糖について確認します。ただし、妊娠中は尿糖がプラスになりやすいので1度だけプラスが出ても心配し過ぎなくて大丈夫。ただ、やはり尿糖がプラスになるのはできるだけ避けたいので、毎日の食事内容を見直し、食べる時間や回数も考えて、まず食後に血糖値が急上昇するのをなるべく防ぎましょう。妊娠糖尿病予防に役立つかもしれません。

(文:大崎典子/監修:浅野仁覚先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]「糖尿病と関連する検査」国立国際医療研究センター糖尿病情報センター
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/030/010/02.html#011
[*2]日本内分泌学会 妊娠糖尿病 http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=94 [*3]産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2020 - 日本産科婦人科学会 http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2020.pdf [*4]「早い時期からの食事の見直し・改善が糖尿病予防の秘訣」日本栄養士会
https://www.dietitian.or.jp/assets/data/learn/marterial/teaching/2014-3.pdf

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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