【医師監修】水中出産のメリット・リスクは?選べる条件と注意点

【医師監修】水中出産のメリット・リスクは?選べる条件と注意点

歌手やモデルが自身のブログなどで明かした「水中出産」。セレブの出産法というイメージもあって興味を持つママも多いのではないでしょうか。ここでは水中出産のメリット・リスクのほか、条件や注意点について解説します。


水中出産とは?

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昨今、ママが主体的に出産する「アクティブバース」が注目されていますが、その一つの方法として、分娩台による出産ではなく、さまざまな場所や体勢でお産をするフリースタイル分娩を推奨する産院も出てきています。

「水中出産(水中分娩)」もこうしたフリースタイル分娩の一つ。近年、著名な歌手やモデルがこの方法で出産したことをブログやインタビューなどで明かしたこともあって、関心が高まっているようです。

水中出産の方法

水中出産とはその名の通り、「専用の温水プールや浴室を利用して、水の中で子どもを産む」というもの。水の持つさまざまな特性を活かした分娩法として、1980年代にフランス人産科医のミッシェル・オダンが広め 、現在ではヨーロッパを中心に 痛みを和らげる分娩法の一つとして実施されています。

水中出産といっても、そのやり方は施設によってさまざま。分娩第一期(分娩開始から子宮口全開大までの期間)から出産直前まで水中で過ごし、出産は別の場所という方法をとっている施設、出産まで水中で行う施設などがあります。パパも水着になってプールに入り、ママの出産に立ち合える施設もあります。

水中出産の流れ

ある院内助産所の資料を見ると、以下のような流れで水中出産を実施していました。水中出産の流れが大方イメージできると思います。

<水中出産の流れ>
①陣痛が始まったら、そのタイミングを見計らってプールに入る。お湯の温度は36.5~37℃ぐらい。湯に浸かってからは水分補給をこまめに行う
②ママのペースで分娩を進める
③出産後、プール内で赤ちゃんをママの胸やお腹に抱かせる
④プールから出て布団で休む(水中滞在時は長くても2時間ほど)

水中出産ができるママの条件とは?

もちろん、どんなママでも水中出産ができるかといえば、そういうわけではありません。

基本的には、ママもお腹の赤ちゃんも健康であることが前提で、「妊娠の経過が良好で早産ではないこと」、「胎児の推定体重が低出生体重児にあたらないこと(2,500g以上)」、「胎児の心拍に異常がないこと」といった条件を満たす必要があるとされています。

こうした基準は施設によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
なお、水中出産では長い時間お湯の中に浸かることから、長湯で気分が悪くなりやすいママはこの分娩法は向きません。

水中出産のメリット・リスク

水中出産は、温水がママの緊張をほぐして陣痛をやわらげるなどのメリットが謳われる反面、感染のリスクが比較的高い、万が一のときの対処が遅れる可能性などのリスクもあります。
具体的にどんなメリット・リスクがあるのか見ていきましょう。

ママ側のメリット

水中出産のママ側のメリットには、以下のようなものがあると考えられています。

・重力の影響を受けにくい水中では自由な体位がとることができる
・お湯による鎮痛効果やリラックス効果が期待できる
・生まれた赤ちゃんをすぐに胸に抱えることができる

医学的にみた水中出産のメリットについては、研究結果がいくつか報告されています。これらの研究をまとめて分析した報告によると、分娩第一期の水中出産に関しては、硬膜外麻酔の使用を減らす可能性があることが示唆されています[*1]。
ただ、ここで分析した研究の質はさまざまで、この結果をもって現段階で水中出産の医学的なメリットを断言するのは難しいということです。

赤ちゃん側のメリット

一方、赤ちゃん側のメリットですが、「よく分からない」というのが実情です。というのも、先の研究ではママ側のメリットは調べられていたものの、新生児側のメリット・リスクは触れられていなかったからです。

リスクと注意点

水中出産では、感染、赤ちゃんが水を飲んでしまい溺れそうになる、へその緒の異常などの深刻な事態を引き起こすことが心配されています。
そのなかでもっとも危惧されているのは、感染です。

少し古くなりますが、1999年に自宅の24時間風呂を利用した水中出産で生まれた女の子が感染症であるレジオネラ肺炎を発症し、死亡するという出来事がありました。出産時に助産師が立ち合わなかったり、浴槽の湯の中にレジオネラ属菌などの微生物が繁殖するリスクのある24時間風呂を使用していたりするなど、このケースは少し特殊ですが、一般的に水中出産は分娩台による出産よりも感染のリスクは高いとされています。

「私自身が経験した例では、ママが敗血症性ショックになった人がいました。赤ちゃんの分娩だけではなく胎盤を出すところまで水中で行ったために、血管がむき出しの子宮の中にプールの水が入り込んでしまい、ばい菌が全身に回ってしまってショックになったのです。自然が第一という考え方の助産院だったために、プールの消毒を ”塩” で行っていたというビックリなものでした。
水中分娩であっても、胎盤はプールを上がって陸上で出すことが基本ですし、また、プールの消毒はしっかりしてあることが大前提です」(太田先生)

衛生管理がしっかりなされていない水の中で出産すれば、赤ちゃんだけでなく、産道や会陰にダメージを受けたママへの感染もあるということです。

そのほかのリスクとして、長時間湯に浸かることによるママの疲労蓄積や、むくみ、出血なども挙げられます。また、水の中で大出血した場合、出血量がわからず対応が遅れる恐れもあります。

水中出産に対する米国産科婦人科学会の勧告

こうしたこともあり、海外の医学会からは水中出産に対して慎重な意見も出ています。
その一つが、2014年(2016年改訂)に米国産科婦人科学会が発表した勧告です[*2]。

同学会は、陣痛の初期に水に浸かることによるメリット(陣痛の短縮と脊椎や硬膜外麻酔の使用を減らす可能性がある)は認めつつも、分娩まで水中で行うことによるメリットとリスクについて結論を引き出すには、「データが不十分」としています。その上で、水中出産についての研究がもっと進み、信頼のできる報告が出るまでは「出産は水ではなく陸上で」行うよう求めています。
同学会が発表した具体的な勧告は以下の通りです(要約)。

<米国産科婦人科学会の勧告>
・陣痛の最初の段階(分娩第一期:陣痛発来~子宮口全開大まで)に水に浸かることは、陣痛の短縮と脊椎および硬膜外に使用する麻酔薬を減らす可能性があるため、妊娠37週~41週終わりまでの間に、合併症のない健康な妊婦になら提供される場合がある
・分娩や分娩第二期(子宮口全開大~赤ちゃんの娩出まで)の間、水中にいることによるメリットとリスクに関する結論を引き出すには、現状ではデータが不十分。水中出産についての研究がもっと進み、信頼のできる報告が利用可能になるまで、出産は水中ではなく陸上で行うことを、米国産科婦人科学会は勧告する
・水中出産を希望する妊婦は、そのメリットとリスクが十分に研究されていないことを知らされるべき
・水中出産の提供を計画している施設は、妊婦の選択、浴槽やプールのメンテナンスと清掃、感染予防の手順、水中にいる間の妊婦と胎児の状態確認、母体または胎児に緊急事態または合併症が発生した場合の妊婦の浴槽からの移動、といった厳格な手順を確立する必要がある

産院・施設選びのポイント

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ここまで読んでいただけたらおわかりのように、水中出産についてはまだきちんと調べられていない部分も多く、専門家によっても考え方が違います。

そんな状況を踏まえても水中出産のメリットを期待して、この方法で産みたいと願うママもいることでしょう。そこで、水中出産を希望する妊婦さんが安全に出産を迎えるためにはどんな産院を選べばいいか考えてみたいと思います。

事前に必ず見学を

すべての産院で水中出産を実施しているわけではありませんので、まずは事前に問い合わせし、水中出産を実施している施設かどうか確認しましょう。

そして、必ずやっておきたいのは見学会や説明会への参加です。
ほとんどの産院では見学や説明会を開いています。気になる産院があったら積極的に見学や説明会に参加し、産院のシステムや院内の様子(掃除や整理整頓が行き届いているか、スタッフの雰囲気がいいかなど)を見たり、助産師や看護師の出産に対する考え方を聞いたりしましょう。

水中出産の説明では、リスクや万が一の対応まで具体的に話してくれるかどうかが大切。全体の流れやメリットだけを強調するような産院は、あまりお勧めできません。

<確認しておきたいポイント>
・過去の実績(トラブル事例についても)
・使用するプールや浴槽、その周辺の清掃・消毒方法とその頻度
・使用していないときは乾燥させているか
・水温管理はどのように行っているか
・どんなときに水中出産から通常の分娩に切り替えるのか(判断基準)
・切り替える時の具体的な流れ(濡れたまま分娩台に移動するのか、など)
・緊急時の対応(産科医との連携、など)
・費用

水中出産の基準やルールは施設によって異なり、国として定めたものはありません。また、水中出産に対するスタンスは医師や助産師によって違います。
選ぶかどうか気持ちが揺れ動いているときは、水中出産を推奨しない産科や産院で意見を聞いてみるのもよいかもしれません。

まとめ

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自分の思うような出産したい――。そんなアクティブバースを希望するママが注目する水中出産。メリットだけを見るのではなく、リスクやそもそも医学的に十分に検証されていない状況も理解し、分からないことがあったら医師や助産師に聞いて、分からないままにしておかないこと。
その上で、家族ともよく話し合って決めるようにしましょう。

この記事の監修ドクター
産婦人科医 太田寛先生
アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

(文:山内リカ/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]Cluett ER et al.: Immersion in water during labour and birth, Cochrane Database of Systematic Reviews, 16 May 2018.
https://www.cochrane.org/ja/CD000111/fen-mian-jin-xing-zhong-yafen-mian-shi-nishui-nijin-karukoto
[*2]The American College of Obstetricians and Gynecologists: Immersion in water during labor and delivery. Committee Opinion No. 679. Obstet Gynecol 2016;128:e231–6.
https://www.acog.org/Clinical-Guidance-and-Publications/Committee-Opinions/Committee-on-Obstetric-Practice/Immersion-in-Water-During-Labor-and-Delivery?IsMobileSet=false

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
※新型コロナウイルス感染症についての最新情報は、[内閣官房][厚生労働省]妊婦に関する情報[日本小児科学会]幼児に関する情報など公的機関等で発表されている情報をご確認ください。

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