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2021年01月29日 16:17 更新

【医師監修】骨盤底筋を鍛えて尿もれを予防「ケーゲル体操」について知りたい!

妊娠・出産により思わぬトラブルが体に生じることもあります。たとえば産後の尿もれ(尿失禁) もそのひとつ。ケーゲル体操は、そうした尿もれトラブルを改善する方法のひとつです。ケーゲル体操の概要や、やり方を解説します。

産後の女性の悩み、尿もれ

尿もれの症状緩和にケーゲル体操が有効
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成人女性の40%が経験する尿もれ

尿もれ(尿失禁)は成人女性の40%以上が経験する といわれるほど、じつはポピュラーな悩みです[*1]。しかし、その性質から誰にも相談できずに悩む人も多いもの。また尿失禁といっても、原因や病状の程度によって、対策法もさまざまです。そこでまずは尿失禁のおもな症状、原因などを知るところから始めましょう。女性に多い尿失禁には以下のようなものがあります。

腹圧性尿失禁

尿 道括約筋を含む骨盤底筋(詳細は後述)の機能低下により尿道を閉める働きがうまく作動しなくなり、くしゃみやせきをしたり、重い物を持ったりしたことで腹圧が上がると 尿もれがおこる。おもな原因は妊娠、出産や加齢。女性の尿失禁のなかでもっとも多い。

切迫性尿失禁

な んらかの原因で膀胱が過敏になることによって急に強い尿意が生じ、我慢できずに尿もれをおこしてしまう。膀胱炎や過活動膀胱、脳血管疾患などの病気が原因のことが多い。

混合性尿失禁

腹圧性 尿失禁と切迫性尿失禁、その両方の症状と原因をもつもの。

産後、尿もれに悩む人も

産後、女性の体はホルモンバランスの急激な変化や出産によるダメージなどから、さまざまなトラブルや悩み事が生じやすくなります。尿もれもそうしたトラブルのひとつとしてよく起こります。「恥ずかしいから」と我慢している人が多いのですが、症状や原因に応じて適切に対処すれば治療や改善が可能です 。ここではその対処法の一部をご紹介します。

骨盤底筋を鍛えて尿もれを予防

骨盤底筋(骨盤底筋群)とは

「骨盤底筋(骨盤底筋群)」とは、骨盤の底で膀胱や子宮などが下がらないように支えている筋肉群の総称です。通常、骨盤底筋はハンモックのようにそれらの臓器を支えていますが、なんらかの影響でその機能が低下してしまうと、尿もれや便もれなどが生じてしまうことがあります。

骨盤底筋の機能低下に影響を与えるおもな要因としては妊娠、出産、肥満、便秘、加齢、ホルモンバランスなどが挙げられます。骨盤底筋が弱まった場合、骨盤底筋体操を行うことで筋肉を鍛え、強化することが可能です。

骨盤底筋
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骨盤底筋群(イメージ)
いくつかの筋肉で構成されており、骨盤の底でハンモックのように子宮や膀胱、腸などの内臓を支え、排尿や排便のコントロールを行っている

骨盤底筋を鍛えることで得られるメリット

骨盤底筋を鍛えることで得られるメリットを紹介します。

尿もれ(尿失禁)の予防・改善

骨盤底筋は腹圧性尿失禁の発症に関係しています。腹圧性尿失禁では、くしゃみやせきなどでお腹に力が入った(腹圧が高まった)とき、弱くなった骨盤底筋が尿道をしっかりと閉じることができないため、隙間ができて尿がもれてしまうことで起こります。 骨盤底筋を鍛えれば、腹圧が高まったときでも尿道をしっかりと閉じることができるので、尿もれ(尿失禁)を予防できます。

便もれ(便失禁)の予防・改善

骨盤底筋には排便にかかわる肛門括約筋も含まれます。この肛門括約筋の機能が加齢などにより弱まることで「知らない間に下着が便で汚れていた」「トイレに駆け込んだが間に合わなかった」といった便もれ(便失禁)を引き起こすことがあります。骨盤底筋の強化はこうした便もれの予防法としても紹介されています。

骨盤底筋を鍛えるケーゲル体操

ケーゲル体操とは

ケーゲル体操は筋肉の収縮と弛緩を繰り返すことで骨盤底筋を強化する運動で、軽度の尿失禁や便失禁の改善策として勧められています 。1日30~100回行えば、早い人で2週間、通常3ヶ月~半年ほどで効果が現れることが多いとされ、とくに軽い腹圧性尿失禁の治療に役立つとされています[*2]。

ケーゲル体操のやり方

ケーゲル体操の準備運動をする女性
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基本の動き

【1】まずは骨盤底筋の場所を把握しましょう。「排尿を途中で止める」イメージで腟と尿道のあたりを収縮させます。そこが 骨盤底筋がある辺りです。
【2】その状態を5~10秒間キープしたら、力を抜いて5~10秒間リラックスします。
【3】1~2を10回繰り返すのを1セットとして、1日に3セット以上行います。

これがケーゲル体操の基本的な動きです[*3]。
トレーニングの回数は、個々の筋力の状態によって異なります。続けて何セットもやろうとすると疲れてしまうので、「朝目覚めたら起き上がる前に布団の中で」「移動中の電車やバスの中で」「テレビのCM中に」など、できるだけ分散して行うとよいでしょう。

なお、あくまで骨盤底筋の位置を把握するために「排尿を途中で止めるイメージで」行うだけで、実際、排尿している時にはケーゲル体操を行ってはいけません。尿路感染症のリスクが高まってしまいます。

また、産後に行う際は、出産により大きなダメージを受けている産後直後は避け、1ヶ月健診で問題がないことがわかってから始めるようにしましょう。

最初はあおむけ、慣れたら座った状態で

初めてケーゲル体操を行う場合、最初はあおむけで膝を立てて 行うことをおすすめします。あおむけはもっともリラックスしやすく、骨盤底筋を収縮させやすい姿勢です。

その後、慣れてきたら、床にひざをついたり、机やカウンターにもたれたり、いすに座ったりして行ってみましょう。とくに手を肩幅に広げ、机やカウンターにもたれた姿勢は骨盤底筋の動きがわかりやすく、運動効果を感じやすいでしょう。
最初に紹介したとおり、ケーゲル体操は、始めてから効果が現れるまで半年程度かかることもあります。あきらめずに続けましょう。

ケーゲル体操はできるだけ毎日行い、生活の中に取り入れて継続していくことが大切です。尿もれ等の症状が良くなったと感じても、そこで止めるのではなく続けて行っていきましょう。

妊娠中は、事前に医師に確認を

ケーゲル体操は妊娠中にも行えます。妊娠中から骨盤底筋を強化することは、産後の回復をスムーズにしたり、妊娠中、大きくなったお腹を支えるためのバランスをとったりすることにも役立つといわれています。

ただし、妊娠の状態には個人差があります。必ず事前にかかりつけの医師に確認してから行い、異変を感じた場合はすぐに中止して、病院に連絡をしてください。

尿失禁は適切に受診を

ケーゲル体操が有効なのは軽度の尿もれに対してです。また、先ほどもお伝えしたように効果が出るまでには個人差もありますが、基本的に時間がかかります。尿失禁の度合いによっては治療法としてふさわしくない場合があるので、自己判断で行わず、尿もれで悩んでいる場合は、まずは適切に専門医を受診しましょう。尿失禁は泌尿器科の領域ですが、産後まもない場合はかかりつけの産婦人科に相談してもよいでしょう。

まとめ

ケーゲル体操の相談をする女性
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産後の尿もれには多くの人が悩んでいます。そうした人の中には、ケーゲル体操で骨盤底筋を鍛えることで症状が改善される人もいるでしょう。ですが、尿もれはケーゲル体操でかならず改善できるということではありません。尿もれを自覚したら、まずは医療機関を受診し、主治医に相談しながらケーゲル体操も活用して症状の改善を目指してください。

(文:山本尚恵/監修:窪麻由美先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]メディックメディア「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版」P.112
[*2]メディックメディア「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版」P.115
[*3]Kegel exercises: A how-to guide for women - Mayo Clinic

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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