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2022年10月11日 11:51 更新

【医師監修】妊婦さんのお腹はいつから出てくる?お腹が膨らむ時期・目立つ時期

街中で見かける妊婦さん。大きなお腹が目立つ人もいれば、マタニティマークがなければ一見そうとはわからない人もいます。妊婦さんのお腹の膨らみが目立ち始めるのは妊娠いつごろのことが多いのでしょうか。ここでは、妊娠の経過をお腹の膨らみから追ってみましょう。気になる妊娠線についても解説します。

お腹が目立ち始めるのはいつごろから?

お腹が目立ち始めた妊婦
Lazy dummy

生理が来なくて、妊娠検査薬を使ってみたら陽性。いそいで産婦人科に行ったら、超音波検査で赤ちゃんの袋が見えた!妊娠確定後、定期的に受診して赤ちゃんの様子も見ているけど、お腹の中に赤ちゃんがいる実感がいまいちない……妊娠初期はそんな妊婦さんも多いかもしれません。

赤ちゃんの動きを実感できる胎動もだいたい妊娠中期に入ってから感じ始めることが多いようです。では、お腹が膨らんで目立ち始めるのはいったいいつごろからなのでしょうか。

妊娠後期には、子宮の大きさが初期の1,000倍にも

そもそも妊娠していない時の子宮は、出産経験の有無でも異なりますが、重さはおよそ40~70g、長さ約7cm、幅は4cmほど、ちょうど鶏卵ぐらいの大きさの袋状の臓器です[*1]。

妊娠が成立した後の子宮は中で育つ赤ちゃんの成長にあわせて大きくなり、妊娠後期ともなると重さは(赤ちゃんを除いて)1,000g前後、長さは約36cmに達します。つまり、妊娠初期と比べると、重さは約15倍、長さは約5倍にもなり、容量はおよそ10mLだったものが500~1,000倍の約5Lにもなります[*2]。

外観からわかるようになるのは妊娠4~5ヶ月ごろが多い

このような変化が外観からわかるようになるのは、元々の体形にもよりますが、妊娠中期にさしかかる妊娠4ヶ月ごろのことが多いようです。妊婦さん自身、下腹部がなんとなくふっくらしてくるのに気づき始めるでしょう。そして妊娠5ヶ月ともなると、ますますお腹のふくらみがはっきりしてきます。

また5ヶ月になると、早い人では赤ちゃんがお腹の中で動く「胎動」を感じるようになります。初めての胎動を感じると、「母親になる」ことを改めて強く実感することでしょう。

妊娠中の外見の変化~どんな感じでお腹が大きくなる?

妊娠中の外見の変化について、もう少し詳しく解説します。お腹の膨らみ(子宮の増大)について妊娠の月数別にみていきましょう。

子宮底の高さと子宮底長について

お腹のふくらみ:子宮の増大

妊娠2ヶ月(4~7週)

子宮の大きさは、妊娠前の元のサイズである鶏卵大から1.5倍ほどに大きくなっています[*3]。

妊娠3ヶ月(8~11週)

子宮は、握りこぶし大ほどに大きくなっています[*3]。

妊娠4ヶ月(12~15週)※14週0日~27週6日:妊娠中期

子宮底長(子宮の上端の「子宮底」から恥骨結合上縁に該当する部分を体表で測った長さ)は、妊娠4ヶ月末には約12cm[*2]。子宮の大きさは幼児の頭ぐらい[*3]になり、このころから外見でも下腹部がなんとなくふっくらしてくるのがわかり始めます。

妊娠5ヶ月(16~19週)

5ヶ月末の子宮底長は15cm程度[*2]。大きさは大人の頭ぐらいになります[*3]。外見からもお腹のふくらみが目立ち始め、また、皮下脂肪がついてきて体全体がふっくらとしてくる人が多いです。

妊娠6ヶ月(20~23週)

子宮は大人の頭より大きくなり、6ヶ月末の子宮底長はおよそ21cm[*2]。ほとんどの妊婦さんは胎動を感じるようになっています。子宮底はお臍の位置まで上がってきており、他の内臓を圧迫し始めます。その影響で身体の重心が変化し、転びやすくなります。また腰痛になる妊婦さんもいます。

妊娠7ヶ月(24~27週)

7ヶ月末の子宮底長は約24cm[*2]で、子宮底がお臍の位置よりも上にまでに達します。お腹がせり出してきて動きにくくなり、腰や背中の負担も大きくなってきます。

妊娠8ヶ月(28~31週)※28週0日~:妊娠後期

8ヶ月末の子宮底長は27cmくらい[*2]。みぞおちのあたりまで子宮が広がってきます。せり出したお腹で自分の足元が見えづらくなります。

妊娠9ヶ月(32~35週)

9ヶ月末では子宮底長30cm程度[*2]。いよいよお腹が大きくなり、大きな子宮に胃や肺、心臓が圧迫されて、動悸、息切れ、胃もたれなどが現れることがあります。眠れないときは、側臥位(横向き)になるなどして楽な姿勢を探したり、抱き枕を用いたりすると良いでしょう。なお、この9ヶ月から出産までの間に、赤ちゃんの体重は倍以上に増加します。

妊娠10ヶ月(36~39週)

10ヶ月末の子宮底長は33cmくらい[*2]。体重は妊娠前から7~12kg増えていることでしょう[*4]。間もなく出産というこの時期になると、お腹の赤ちゃんの位置は少し下がってきて、下腹部はより大きくせり出します。この変化に伴って、動悸や胃もたれは改善し食欲が出てくることがあります。一方で尿漏れや頻尿などが起こりやすくなります。

妊娠線を作らない方法はある?

かなりお腹が大きくなった妊婦
Lazy dummy

妊娠中、お腹がどんなスピードでふくらんでいくかについてはイメージがわいたでしょうか。最後に、お腹のふくらみと関係が深く、気にしている妊婦さんも多い妊娠線についても解説します。

妊娠線とは

妊娠線の図

妊娠線とは、6~7ヶ月ごろから現れ始め、妊娠後期でとくに多くなる赤紫色などの線です。約90%の妊婦さんに認められます[*5]。また、妊娠線が出始めた時に皮膚のかゆみとかさつきが現れることがあります。妊娠線はお腹だけにできるわけではなく、乳房や大腿(太もも)、臀部(お尻)などにも現われることがあります。

妊娠線はなぜできる?

妊娠線がなぜできるのか、はっきりと解明されているわけではありませんが、大きく2つの原因が考えられています。

ひとつは妊娠に伴う脂肪組織の増加によって皮膚が急速に伸びますが表面は伸びるものの中の組織は伸びにくいので断裂するという説です。実際、妊娠だけでなく、肥満でも妊娠線と同じような皮膚症状が認められることがあります。

皮膚の構造をみると、表面から「表皮」、「真皮」、「皮下組織」の三層になっています。この三層のうち表皮は伸びやすいのですが、真皮や皮下組織は伸びにくいために、急にお腹が大きくなるとその伸びるスピードのずれによって、隙間が生じます。そして真皮にできた隙間に表皮が引き込まれて凹んだようになり、妊娠線ができると考えられます。

皮膚の構造(イメージ)

もうひとつの説は、妊娠中に増加した副腎皮質ホルモンの影響で皮膚組織の入れ替わり間隔が抑えられて、やはり皮膚の組織が断裂しやすくなるというものです。

出産後に妊娠線は消えるの? 予防法は?

妊娠線は赤紫色なことが多いですが、出産後には白色に変わっていきます。ただ、一度できた妊娠線は、色はうすくなるものの、皮膚が萎縮した変化そのものは残るので、通常、完全には消えません。

妊娠4~5ヶ月目からケアをスタート

妊娠線は妊娠末期から出産直前の急激な体重増加の際にできやすいものです。ですが妊娠線に対するケアはそれ以前に始めた方がよいでしょう。具体的には妊娠4~5ヶ月ごろからが理想です。

妊娠線を予防するもっともよい方法は、できるだけ急激な体重の増加を避けることです。適度な運動をして、皮下脂肪をあまり急に増やさないようにすることも妊娠線予防に役立ちます。また、クリームやローションによる保湿でできるだけ皮膚が乾燥しないようにしておくのも良いでしょう。妊娠線を完全に予防できる方法はありませんが、あまり急激に体重を増やしすぎないことは、妊娠線をできるだけ少なくするだけでなく、妊婦さん、赤ちゃん双方の健康にとっても大切なことです。妊娠線ができてしまっても月日が過ぎるとともにだんだん薄くなりますから、あまり気にしないようにしましょう。

妊娠線とは違う「正中線」が目立つなどの変化も

正中線の図

妊娠線とは別に、妊娠中に正中線が目立ち始めることがあります。正中線とは体の正中、つまり左右の真ん中を通る線です。妊娠が進むにつれて、お腹の正中線、具体的にはみぞおちからお臍の下にかけて、メラニン色素が活性化して黒ずんでくることがあるのです。加えて正中線にそって体毛が濃くなることも。この正中線は出産後、徐々にうすくなって消えていきます。

このほか、臨月になるころには、皮膚が引っ張られて出べそになることもあり、それもまた妊娠に伴うお腹の変化と言えるかもしれません。この出べそは出産後、お腹が凹めば元に戻ります。

まとめ

妊娠の進行に伴って現われるお腹の外見の変化をまとめました。いろいろな変化が現れますが、どれもこれもお腹の中の赤ちゃんの成長を表すものです。元気な赤ちゃんが生まれるその日を楽しみに、毎日を大切に過ごしてください。

(文:久保秀実/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]医学書院「標準産婦人科学 第4版」p.22,319-321
[*2]メディックメディア「病気がみえるvol.10産科 第4版」p.38-39
[*3]内外出版社、宋美玄「新装版プレ妊婦編から産後編まで!産婦人科ママの妊娠し・出産パーフェクトBOOK」
[*4]「妊娠期の至適体重増加チャート」について 62p
[*5]これならわかる産科学, p.45, 南山堂, 2010.

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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