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2023年09月10日 08:00 更新

コロナ禍により収入がほとんど無くなった人も1割、ひとり親家庭の実態とは【フードバンク利用者への調査】

コロナ禍や物価高で多くの家庭が大なり小なり経済的な打撃を受けていると思われますが、そのなかでも、ひとり親家庭への影響は大きいものがあるようです。ひとり親家庭への支援の1つとしてフードバンク事業も広がっていますが、そうしたフードバンクを利用する家庭の生活はどのような状況なのでしょうか。NPO法人による調査を紹介します。

ひとり親の収入や困難状況をアンケート調査

国際NGOグッドネイバーズ・インターナショナルの日本支部として2004年に設立したグッドネイバーズ・ジャパンが、困窮するひとり親家庭の生活状況を把握することを目的に、その支援活動のひとつ、フードバンク「グッドごはん」(※)を利用しているひとり親を対象にした2件のアンケートを実施し、その結果を公表しました。ひとり親世帯の収入や困難状況の実態が明らかとなった調査結果をご紹介します。

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グッドごはん:ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭を対象に、食品を無料で配付する事業

世帯年収|半数近くが200万円以下

2022年の世帯年収(各種手当・養育費・同居家族の収入含む)を聞いたところ、最も多かったのが「100万円以上200万円未満」で31%、次いで「200万円以上300万円未満」が30%という結果でした。「100万円未満」も16%と少なくない割合であり、半数近くは200万円以下の収入で暮らしていることがわかります。限られた世帯年収で食費や光熱費、教育費などを捻出しなければならない、厳しい状況がうかがえます。

「グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業利用者の収入に関するアンケート」より
「グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業利用者の収入に関するアンケート」より

コロナの影響|約6割が就労収入減を実感

「グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業利用者の収入に関するアンケート」より
「グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業利用者の収入に関するアンケート」より

新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と2022年の就労収入を比較して変化があったかを聞いた設問では、「ほとんど変わらない」と回答した人が31.2%だった一方、「少し(1~3割)減った」人が27.3%、「かなり(7~9割)減った」人が13.2%という結果でした。さらに「収入が半分程度(4~6割)減った」人が8.8%、「収入が無くなった、またはほとんど無くなった(9割以上)」と回答した人も10.7%と少なくありません。

コロナ禍によって就労収入が減ってしまった家庭が6割に及んでいることがわかりました。

暮らしの状況|9割近くが「苦しい」

ひとり親世帯の経済状況の厳しさがうかがえるアンケート結果ですが、次に、暮らしの状況に関する回答を見てみましょう。

現在の暮らしについて聞いた設問では、「やや苦しい」と回答した人が57.3%、「大変苦しい」と回答した人が28.9%と、9割近くが暮らしを「苦しい」と感じているようです。もともとの収入が多くはないひとり親世帯にとって、3年以上の及んだコロナ禍はやはり大きく生活に影響してしまっていることが想像される結果です。

グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親家庭の困難状況に関するアンケート」
グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親家庭の困難状況に関するアンケート」より

諦めたこと|家族旅行、自分の衣類が7割

ひとり親世帯になってから経済的な余裕が無くなったことから「制限したり諦めたことがある」と回答した人は95%近くに上りました。

具体的にどんなことを諦めたかというと、最も多かったのは「家族旅行・レジャー」が70.8%、次いで「自分の衣類を買うこと」(70.4%)、「子どもの習い事」(63.1%)となっています。

「家でエアコンやお風呂を使いたいときに使うこと」や「子供の衣類を買うこと」も4割を超えています。「必要な食事をとること」も22.5%に上っており、日々の生活そのものに影響が及んでいる家庭も少なくない様子がうかがえます。

また、「子どもの進学」も26.3%と4人に1人以上の高い割合でした。

グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親家庭の困難状況に関するアンケート」より
グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親家庭の困難状況に関するアンケート」より

回答者のコメント(一部)

・子供が部活や塾、 進学したい学校を諦めている
・収入が少ないために、子供に習い事を諦めさせたことがとても悔しい
・食料がない時には、土手の可食草をおかずにした
・土日祝日は家族みんな1日2食にしています。自分は平日も極力2食です。朝からお腹空いたー!と連呼しているのを引き伸ばすのは、可愛そうで申し訳なく思います
・子供のお誕生日にホールケーキを買ってあげることが出来ずみんなで泣いてしまった

親自身の困難|トップは「実親のサポートがない」

では、ひとり親がかかえている「困難」にはどのようなものがあるのでしょうか? まず、親が自分自身に関することで抱えている困難について聞いた結果が次の通りです。

最も多かったのが、実親が遠方に住んでいたり、他界しているなどの理由から「実親のサポートが受けられない」(28.8%)でした。さらに「日常生活の悩みやストレスを相談できる相手がいない」(20.7%)が続いています。ひとり親が生活や子育てを1人で担っている孤独な状況が懸念されるでしょう。

また、「持病がある」(20.4%)、「精神疾患をもっている/もっている可能性がある」(12.5%)など、健康になんらかの問題をかかえている人も少なくありませんでした。

グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親家庭の困難状況に関するアンケート」より

子どもの困りごと|「勉強・学力」が5割超

次に、子どもに関する心配ごとや困りごとを見てみましょう。

最も多かったのが「勉強・学力」で53.8%に上りました。次いで「こころの不調」(27.4%)、「栄養状態」(21.1%)と続いています。生活の困窮や家庭の経済的な事情が、子どもの学業や健康にも影響を及ぼさざるを得ないようなひとり親家庭の苦しい状況があるといえます。

グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親家庭の困難状況に関するアンケート」より

まとめ

2023年7月に厚生労働省が発表した最新の国民生活基礎調査(2022年実施)の結果では、わずかながらひとり親家庭の貧困率は2019年の調査時に比べ減少していたものの、今回の調査では、ひとり親家庭の厳しい状況が示されました。経済的な問題によって生じてしまうさまざまな影響は、子どもの将来にもかかわっていくと考えられます。貧困の不安を抱えずに、誰もが安心して子育てできると思えるためには、社会的な支援がもっと求められているといえるでしょう。

(マイナビ子育て編集部)

※画像はイメージです

調査概要

■グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業利用者の収入に関するアンケート/特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン
調査地域:首都圏(東京・神奈川・埼玉 )および 近畿圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者(利用者はひとり親家庭等医療費受給者証保有者限定)
調査時期:2023年1月26日~2月27日
有効回答数:922名

■ひとり親家庭の困難状況に関するアンケート/特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン
調査地域:首都圏(東京・神奈川・埼玉 )および 近畿圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者(利用者はひとり親家庭等医療費受給者証保有者限定)
調査時期:2023年6月1日~6月10日
有効回答数:2,537名

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