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2022年06月20日 17:46 更新

【宋美玄先生解説】出産後すぐにオナニーはしていい?いつからOK?どの程度ならしていいかの目安

育児で大変な産後であっても性欲があり、オナニー(マスターベーション)をしたくなるのは決しておかしなことではありません。ただし、産後すぐの体は出産でダメージを受けているため、普段よりは注意が必要です。今回は産婦人科医で日本性科学会学会員、女性の性に関する著書も多数ある宋美玄先生に産後の自慰の開始時期や注意点を伺いました。

出産後にオナニーがしたいとき、いつから可能?

産後のオナニーについて説明する先生

女性にとって産後は、出産で傷ついた体を癒やす時期にあたり、全般的には性欲自体が減退しがちな時期といわれます。ですが、そういわれる時期であっても性的快感を求め、「オナニーで心と体を癒やしたい」と思うことは当然あります。その場合、産後の自慰行為は、いつから再開してよいのでしょうか。

オナニーの再開は健診で医師からOKが出てから

「産後のマスターベーションについては、セックスの再開時期と同様、基本的には1ヶ月健診などでママの健康状態をチェックし、医師から異常なしと言われてからと考えましょう。帝王切開で出産したママの場合でも同様です。

下着の上からバイブレーターなどを当てるなどクリトリスを軽く刺激する程度なら、産後1ヶ月未満からでも行えますが、悪露や会陰の傷が気になってしまう人も多いようです。産後の傷や体の回復具合には個人差があるので、回復状態を確認してもらってからのほうが安心できるのではないでしょうか。」

<調査結果>産後のオナニー開始時期、最多は「1年以降」

産後の女性を対象としたアンケートによると、産後のオナニーの再開時期で最も多かったのは「産後1年以降」で38.6%でした。続いて多かったのが「産後4~6ヶ月」で20.5%でした。中でも「産後1ヶ月未満」が13.6%と、産後まもない時期から再開している人も意外と多いようです(対象:アンケート回答者の中で出産した後にオナニーの経験がある44人)。

産後のオナニー開始時期調査結果
※マイナビ子育て調べ  調査期間:2021年11月17日~2021年11月26日 調査人数:106人(23歳~40歳以上の女性)
※ここで紹介した結果は個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。

なお、産後のマスターベーションの頻度についても質問したところ約6割(61.9%)の人が「妊娠前と変わらない」と答えました。ちなみに「妊娠前より減った」人は24.8%、「妊娠前より増えた」人は5.7%でした。

産後の体と性欲の状態はどうなっている?

産後の健診で問題がなければオナニーを再開しても大丈夫というものの、まだ心身は妊娠前と完全に同じ状態には戻ってはいません。産後の女性の体と心、そして性欲はどのような状態にあるのか、宋先生に詳しく伺いました。

産後は心も体もジェットコースター並みの変化

「産後6~8週間は『産褥(さんじょく)期』と呼ばれ、妊娠~出産によって疲れた心身を回復させる時期にあたります。この時期の母体には、体を回復させるためのさまざまな変化が生じます。特に影響が大きいのが子宮や骨盤周りです。妊娠によって大きくなった子宮が妊娠前の状態に戻ったり、妊娠・出産で広がった骨盤の位置が戻ったり、出産によって引っ張られたり傷つけられたりした骨盤底筋群が回復したり、妊娠中に約10ヶ月をかけて生じた変化が、約2ヶ月間で元通りになろうとするため、大きな負担がかかります。」

「また、産後はホルモンの急激な変化などにより、体だけでなくママの心にも大きな変化が生じます。『エストロゲン』や『プロゲステロン』といった女性ホルモンは出産を境に、まるでジェットコースターのように急激に低下し、気持ちに変化をもたらします。さらに、精神を安定させるのに欠かせない神経伝達物質『セロトニン』の低下によってネガティブな感情が高まるほか、母乳の分泌をコントロールしているホルモンも気分の変動に影響を与えるといわれています。これらに加えて、連日の睡眠不足や慣れない赤ちゃんのお世話による疲労の蓄積なども手伝って、産後の女性は感情のコントロールそのものが難しい状態にあります。

こうした心の状態も、体の回復とともに少しずつ良くなっていくことが多いので、産後はなによりもまず、体をしっかりと休めることが大切です。」

授乳や育児が性欲に影響することも

「先ほど説明した産後に生じる体と心の変化は、性欲にも影響を与えます。特に母乳育児をしている場合、卵巣から分泌されるアンドロゲンというホルモンの量が低下し、それに伴い授乳期間中は性欲が低下する傾向にあるといわれています。

また、授乳の際にしょっちゅう赤ちゃんとふれあっているため、『ふれあい過多』と呼ばれる状態になっていて、そこからさらに、人とふれあう性的な行為をしたいという欲求が起こりにくい状態であるともいわれています。

実際、授乳育児中の女性の性欲について調べた研究では、授乳中に性的な関心が「減少した」と答えた人が42.4%いたという報告もあります[*1]。個人差があるので一概には言えませんが、これらの女性の中には、授乳を終えるころから徐々に性欲が回復していく人もいると考えられます。

また、先ほど紹介した研究でも、約半数にあたる48.9%の人は性欲が「変わらない」と答えているほか、「性欲が増加した」という人も8.7%いました[*1]。以上のことから、産後の性欲の回復には個人差が大きいといえます。性欲の回復に時間がかかっても、すぐに性欲がたかぶっても、どちらもおかしなことではないでしょう。」

産後にオナニーをするときに知っておきたい4つのこと

さまざまな変化が生じる産後の体は、妊娠前よりもデリケートな状態といえます。この時期にオナニーをする場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

産後のオナニーについて説明する宋先生

1. オナニーの刺激|強く刺激しないように注意

「まずは、強く刺激しないように注意が必要です。特に産後まもない時期は会陰の傷の回復も完全ではない可能性があるほか、腟の組織の回復も十分ではないこともあります。大きめのセックストイを使ってアグレッシブに行うマスターベーションは、産褥期を過ぎてからのほうがよいでしょう。」

2. 会陰の傷|健診で問題なければ開くことはまずない

「会陰の傷の回復具合は人それぞれですが、産後の健診で回復具合を医師が確認した後であれば、傷が開いてしまう可能性は限りなく低いといえます。とはいえ、痛みがあったり違和感があったりする場合は、我慢せずに医師に相談してください。」

3. 感度|低下することもあるが、一時的なもの

産後はセックスやマスターベーションで得られる性的快感が下がるといわれることもあります。女性ホルモンの一種であるエストロゲンの低下により、腟の潤滑液の量が減るため、あまり気持ち良くないと感じることから、『感度が下がる』といわれることがあるようです。

ですがその一方で、授乳中は乳房と乳頭への感受性が増加するといわれることもあります。いずれにせよ個人差が大きく影響することですし、一時的なことなので、あまり気にする必要はないでしょう。」

4. 濡れやすさ|産後はホルモンの関係で濡れにくい

「上記でも少し触れたように、腟の潤滑液を分泌させる女性ホルモン(エストロゲン)は出産と同時に一気に減少します。その後もエストロゲンの分泌量が妊娠前と同じ、安定した状態に戻るまでには少し時間がかかります。そのため、産後は腟が濡れにくい状態にあることが多いです。

濡れにくさが気になる場合は、潤滑ゼリーを使ってみるのもひとつの方法です。体の生理的な変化によって濡れにくくなっているだけなので、無理して我慢するよりも、ゼリーを使って徐々に体を慣らしていくほうがよいでしょう。

潤滑ゼリーに抵抗がある場合はその代わりに、腟の保護を目的とした保湿効果のあるジェルを使うという方法もあります。保湿ジェルはデリケートゾーンのお手入れとして日常的に使えるスキンケアの一種なので、恥ずかしさが少しは軽減され、抵抗が薄れるかもしれませんね。

そのほか、腟の潤滑液は乾燥や水分不足で体液の分泌が少なくなることでも減少することがあります。しっかりと水分補給も忘れずにしましょう。」

まとめ

性に関する悩みの治療では、オナニーをすることによって自分の体になじみ、その感覚を知るという治療を行うことがあります。産後のオナニーにもそれと同じく、単に性的快感を得るだけでなく、妊娠~出産によって変化した自分の体に、もう一度親しみを持つという効果があるかもしれません。セックスを再開する前に、まずはオナニーで自分の体を確認しておくのも、ひとつの方法といえるでしょう。
もちろん個人差があるので、無理に行う必要はありません。ですが、オナニーをしたいという気持ちがある場合、それを無理に我慢する必要もありません。妊娠前とは体の状態が違い、戸惑うことがあるかもしれませんが、出産という大役を終えた、産後の自分の体をぜひいたわり、いつくしんであげてください。

(文:山本尚恵/監修:宋美玄 先生)

参考文献
[*1]「セックス・セラピー入門」(日本性科学会)p289

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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