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2022年05月26日 08:21 更新

宋美玄先生解説|出産後のセックスが痛い4つの理由|性交痛対策で本当にやってほしいこと

産後のセックスについては不安がつきまとうもの。特に「痛みが心配」という人は多いのではないでしょうか。痛みが原因で産後にセックスレスとなる人も少なくないといいます。産後の性交痛はどうすれば改善するのでしょうか。産婦人科医で日本性科学会学会員、女性の性に関する著書も多数ある宋美玄先生に教えていただきました。

産後、セックスが痛い場合に考えられる4つの原因

そもそも産後のセックスで痛みを感じるのはなぜなのでしょうか。考えられる原因を宋先生にお聞きしました。

1.濡れにくいから

妊娠とともに変化するホルモンは出産によっても大きく変化し、特にエストロゲンなどの女性ホルモンはガクンと減少する。

「腟のうるおいは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが関係しています。さまざまな働きがあるエストロゲンですが、その中には俗に「濡れる」などとも表現する性的興奮時に潤滑液を分泌させるというように、スムーズにセックスを行えるようにする働きもあります。

エストロゲンは出産と同時に一気に減少するため、産後しばらくの間は分泌量が少なくなります。それによって腟のうるおいが減り濡れにくくなるのが、産後の女性の体の特徴です。

プロラクチンという母乳の分泌にかかわるホルモンの影響で、母乳育児をしている場合は特にエストロゲンの分泌量が低下するため、腟のうるおいの減少に加えて腟上皮という組織が縮み、痛みが生じやすくなるといわれています。」

2. 会陰の傷あと

「切開や裂けたりして出産時にできた会陰の傷は、ほとんどが産後の1ヶ月健診で治っていて、セックスをしても問題ない状態になっています。ですが、傷が治っていても違和感があったり、傷があることが気になっていると、セックスの際に痛みや引き攣れを感じることがあるかもしれません。」

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会陰切開・会陰裂傷の痛みについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

3.骨盤の形状の変化

「妊娠中はリラキシンというホルモンの影響で恥骨結合がゆるみ、骨盤周辺が不安定になります。骨盤の形状や傾きが変化することもあり、それが産後も続くため、性交痛(セックスの際に感じる痛み)が生じている可能性も考えられます。」

4. 触り方や場所

宋美玄先生

女性の敏感な部分は、やさしく触れたほうが感じやすいです。ソフトに一定のリズムで淡々と刺激されると、女性は絶頂に達しやすくなります。男性の中にはアダルトコンテンツの影響などで強く刺激する人もいますが、それは女性にとっては痛いだけ。産後に限らず、パートナーの触り方が原因でセックスの際に痛みを感じている人は少なくないのです。

また、赤ちゃんが同室にいる状況でセックスすることを後ろめたく思うことで、それが性欲や性的興奮のブレーキとなって快感が得られにくい状態となり、痛みを感じているケースもあるでしょう。」

産後のセックスの痛みを改善するための4つの方法

産後に感じるセックスの痛み、これは我慢するしかないのでしょうか。それとも改善方法があるのでしょうか。

改善策1. 濡れにくい場合は「潤滑ゼリー」をプラス

宋美玄先生

「産後、特に授乳中は先ほど説明したようにエストロゲンの分泌量が少ないため、濡れにくいことにより性交痛を感じやすくなります。その場合、潤滑ゼリーを使ってみるのがよいでしょう。海外の論文でも、産褥期のセックスでは水溶性の潤滑ゼリーの使用をすすめるものがあります。

潤滑ゼリーは『感じているのに濡れにくい』という人にとって、セックスを円滑に進めるためにとても役立つアイテムです。濡れにくいことが原因の性交痛では、すべてが物理的にうるおいを足せばよいというわけではないですが、産後のように一時的なうるおい不足の場合、潤滑ゼリーは有効です。無理して痛みを我慢するよりも、ゼリーを使ってうるおいを足したほうが、女性も男性も気持ちよくなれるはずです。」

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産後の夫婦のローションセックスについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

改善策2.「やさしく触ってほしい」と伝える

「パートナーが力強く刺激することで痛みを感じる場合は、力の入れ具合を調整してもらいましょう。

そのときには『強く刺激されるのが嫌』とマイナスな伝え方をするのではなく、『こうやってやさしく触られると、もっと気持ちいい』というようにプラスな伝え方をすると、パートナーにネガティブな印象を与えず、要望を伝えることが可能です。

時間をかければ濡れるという場合は前戯に時間をかけて、しっかりと性反応が起こるのを待つのもよいでしょう。」

改善策3. 本当にしたいと思うまで待ってもらう

宋美玄先生

「慣れない育児や自分自身の体調回復に精一杯で、産後はセックスどころではないという女性も少なくないでしょう。

経腟・帝王切開など分娩方法を問わず、心身ともに疲労困憊の中だとセックスでの痛みは生じやすくなります。どちらか一方が我慢しないと成り立たないような性行為は決していいものではありません。ママの心身の状態も大切にして、セックス開始の時期は無理のないタイミングを選び、それまでは別な方法でスキンシップをとって夫婦関係を深めてみてはいかがでしょうか。」

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夫婦間のセックスの変化・頻度について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

改善策4. 痛みが改善しないなら医師に相談

「会陰の傷が痛む場合はかかりつけの産婦人科医を受診し、傷の状態を確認してもらうのがよいでしょう。

また、中には体位を工夫することで会陰の痛みが軽くなるケースもあります。それも含めて、相談できる医師を見つけられるとよいですね。

なお、様々工夫しても痛みがある場合は、婦人科疾患や精神的な問題が原因となっていることも考えられます。適切な治療やカウンセリングを受けるためにも、一度婦人科などで医師に相談してください。」

妊娠前から痛みがあるケースは?

中には産後だけでなく、妊娠前からセックスのときに痛みを感じていたけれど我慢していたという人がいるかもしれません。そうした場合、どのような原因や対策が考えられるでしょうか。

こんなものだ…と諦めずに専門家に相談を

骨盤痛によってセックス時に痛みが生じることがあります。腟の奥のほうにずっと痛みを感じている場合はこの可能性が高く、骨盤のかたちや角度などが影響して挿入の際に痛みが出るのが主な原因と考えられます。

ずっとこうした状態が続いていると『こんなものなのかな』『セックスは痛みを伴うもの』と思い、我慢してしまうケースもあるようです。多少の痛みがあってもセックスを楽しめていればよいのですが、出産をきっかけにそれが難しくなることもあるでしょう。その場合は我慢をせず、医師や専門のカウンセラーなどに相談をしましょう。」

まとめ

産後は出産に伴うホルモン分泌の急激な変化などが影響し、腟の潤滑液が減少することによってセックスの際に痛みを感じることがあります。その痛みが、濡れにくいことなどによる一時的なものであれば、あまり気にする必要はないでしょう。必要に応じて潤滑ゼリーなどを使っていけば、ホルモン分泌が元に戻るのにともない、潤滑液も分泌されやすくなっていくので、痛みも感じにくくなっていくでしょう。一方、潤滑ゼリーを使っても痛みがあったり、妊娠前から続いている痛みの場合などは、医療的介入が必要なこともあります。悩みの度合いによっては専門家の力を借りて、改善を目指すのもよいですね。なお、産後に生理再開前でも妊娠の可能性はあります。必要に応じて避妊をしてくださいね。

(文:山本尚恵/監修:宋美玄 先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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