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2022年05月26日 08:11 更新

宋美玄先生解説|妊娠中の中出しはOK?妊娠初期・臨月は?精液の胎児への影響

妊娠中にセックスするときには、コンドームを使うなどして腟内に直接射精(通称「中出し」)しないほうがよいといわれることがあります。その理由は「胎児に影響が生じる可能性があるから」とのことですが、いったいどのような影響があるのでしょうか。今回は妊娠中の中だしについて産婦人科医の宋美玄先生にお話をおうかがいしました。

妊娠初期にセックスで中出ししてしまった…赤ちゃんへの影響は?

女性の腟内で男性が射精することを一般的に「中出し」と呼んだりします。妊娠中に中出しすることで、妊婦さん自身や赤ちゃんに生じるとされる影響について、妊娠経過ごとに詳しく見ていきましょう。

まずは、妊娠初期に中出しした場合の影響です。

妊娠初期、中出ししてもとくに影響なし

妊娠初期には、妊婦さん自身も妊娠していることに気付かないまま、中出しセックスを重ねることも少なくないはずです。また、そのことで不安になることもあるでしょう。

結論から言うと、妊娠初期にセックスで中出しによって赤ちゃんに影響を与えることはとくにないと考えてよいでしょう。

妊娠初期の流産の多くはセックスが原因ではなく、赤ちゃん自身の染色体異常によって起こるものです。セックスそのものや中出しが妊娠初期の赤ちゃんや妊婦さんに影響を与えることはほぼないといえます。

心理的に気になるようなら、セックスや中出しは避けたほうがベター

ただし、基本的に影響がないとはいえ、もしも流産してしまった場合「セックスをしたり、中出しをしたりしたせいで流産してしまったんだ」と、自責の念に駆られるケースがあります。また、妊婦さんの不安感など心理的負担につながることも考えられます。加えて、妊娠初期はつわりなどもあり、心身ともに変動が多く不安定な時期です。

妊娠を知る前に中出しのセックスをしていた場合は問題ないとしても、妊娠がわかって以降、メンタル面や体調に不安がある場合は性生活を含め無理しないようにしましょう。

妊娠中期~後期のセックスで中出しは大丈夫? 早産のリスクは?

妊娠中期〜後期の妊婦

続いて、妊娠中期~後期にかけての、中出しの影響を確認してみましょう。精液には子宮収縮を促す物質が含まれているといわれることもありますが、影響はあるのでしょうか。

精液には「子宮収縮を促す物質」が含まれる

精液の中には子宮の収縮を促すプロスタグランジンという物質が含まれています[*1]。プロスタグランジンは分娩誘発や陣痛促進の際に使用される子宮収縮薬にも含まれるものなので、「中出しによって腟内に精液が入ってしまうと、子宮の収縮が促されて早産につながるのでは?」と考える人もいるでしょう。

早産のリスクが高い妊婦さんは注意が必要

たしかにプロスタグランジンには子宮収縮を促す作用がありますが、妊娠中に中出しをしただけで早産につながるわけではありません。

ただし、早産の経験があって医師から早産のリスクが高いことを告げられている場合などは、中出しだけでなくセックス自体を控える必要があります。

性感染症のリスクを考慮すると、コンドーム使用がおすすめ

なお、性感染症には注意が必要です。

妊娠中に性感染症にかかると、母体と胎児に大きな影響を及ぼします。特定の相手と行う夫婦間のセックスは決してハイリスクではありませんが、感染リスクがゼロなわけでもありません。

したがって、できることなら妊娠中のセックスは中出しではなく、コンドーム使用がおすすめといえるでしょう。

臨月の中出しは効果的ってほんと?

精液に子宮収縮を促す物質が含まれていることから、臨月になると「分娩を促すために中出しセックスをしよう」と考える人もいるようです。臨月の中出しは、本当に分娩の促進に効果的なのでしょうか。

中出しによって陣痛が促されるとは言い切れない

中には「お迎え棒効果で、出産予定日近くにセックスすると陣痛がくるよ」という話を聞いたことがある人もいるでしょう。お迎え棒とは医学用語ではなく、出産間近の性行為のことを指す俗称です。

「このお迎え棒=陣痛促進」の真偽についてですが、精液に子宮収縮を促す物質が含まれているものの、妊婦さん一人一人で状態は異なりますし、実際に妊娠中に中出しでセックスをしたことによってどのぐらい陣痛が促されるかはわかっていません

臨月にセックスをしてはいけないわけではありませんが、陣痛促進効果についてはクエスチョンマークが付き、といったところでしょうか。

セックスの回数も陣痛発来に影響を与えない

中出し以外に、セックスの回数も陣痛が起こる時期に影響を与えないようです。

分娩時の妊娠週数と、分娩前最後の4週間のセックスの頻度を調べたところ、そこに関連性を見いだせなかったという報告や、分娩前最後の2週間にセックスを行っていた群と控えていた群を比較したところ、自然分娩となる確率は同じだったという研究結果があります[*2]。

予定日が近づくと、頻繁にセックスをして分娩を促そうと考える人もいるようですが、それについてはあまり効果がないと考えてよいようです。

陣痛を促す行動について、詳しくは以下の記事で取り上げています。

妊娠中のセックス、守ってほしい5つのルール

最後に、妊娠中にセックスをする際に守ってほしい5つのルールを紹介します。

1.前置胎盤や流早産のリスクがある場合はNG

妊婦さんの状態によっては妊娠中のセックスを控える必要があります。
過去に流産・早産をしたことがある(あるいは流産・早産のおそれがある妊婦さん)妊婦さん、前置胎盤、子宮頸管無力症、原因不明の性器出血や羊水漏れがある場合などは、事前にかかりつけの産科でよく相談しておきましょう。

2.コンドームは付けて

今回説明したように、精液中には子宮収縮を促す物質が含まれるほか、性感染症のリスクも考えられます。夫婦間でコンドームを付けてセックスするのはハードルが高いかもしれませんが、赤ちゃんを守るためにも、装着することをおすすめします。

3.おなかに負担がかからない体位で

セックスの際の体位によっては、妊娠中の大きなおなかの負担になるものもあります。横向き(側位)など、おなかが大きくても、なるべく負担が少なくなる体位で行いましょう。おなかの張りが気になるようであれば無理して続行せず、休みましょう。

妊娠中のおすすめの体位・NGな体位については以下の記事で詳しく解説しています。

4.オーラルセックスは避ける

これは主にクンニリングスについてですが、腟内に空気を送られた結果、致命的な空気栓塞症が生じた例が報告されています[*2]。挿入は、健康な妊婦さんであれば基本的に問題ないとされていますが、オーラルセックスについては、妊娠中は避けたほうがよいでしょう。

妊娠中のフェラチオについては、以下の記事で詳しく解説しています。

5.乳頭への刺激にも要注意

妊娠中はセックスの際の、乳頭への刺激も避けたほうがよいといわれています。乳頭を刺激すると、オキシトシンという子宮収縮を促すホルモンの分泌が高まり、陣痛につながることがわかっているからです。そのため妊娠中期以降はとくに、セックスの際、乳頭への刺激は避けることをおすすめします。

まとめ

妊娠中にセックスをすることは、健康な妊婦さんならば基本的に問題はなく、胎児に影響を与えることもほぼ、ありません。ただし、精液には子宮収縮を促す物質が含まれていることや、夫婦間ではそこまで高くないものの性感染症のリスクもゼロではないため、できることなら妊娠中は中出しを避け、コンドームを付けてセックスすることをおすすめします。
また、中出しをする・しないに関わらず、妊娠中は週数を追うごとにセックスを避けたい傾向が出てくることもあります。そうした場合はパートナーに事情を話したうえで、無理をしないのも大切なことです。
夫婦でよく話し合い、理解を深めて、楽しい夫婦生活を送ってください。

(文:山本尚恵/監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]寺尾. 日本産科婦人科学会雑誌. 1996;48:660-665
[*2]「ウィリアムス産科学 原著 24版」(南山堂)p216

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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