
【医師監修】妊娠初期の腹痛はいつまで続く? お腹が痛くなる理由と対処法
妊娠初期に腹痛が起こった場合、少し痛んでもすぐ治まったならそれほど気になりませんが、痛みが長引いたりたびたび起こったりすると、いつまで続くのか不安になりますよね。妊娠初期に起こる腹痛の主な理由、対処法とあわせて紹介します。
- 妊娠初期の腹痛はいつまで続くの?
- 妊娠4ヶ月くらいまで起こりやすい
- 妊娠初期に腹痛が起こりやすい理由
- 妊娠による自然な変化のせい
- 妊娠初期の腹痛は流産などの場合も
- 痛み方で異なる! 妊娠初期に起こる腹痛の原因と対処法
- (1)子宮のあたりがチクチクとする腹痛
- (2)わき腹が引っ張られるような痛み
- (3)生理痛に似た鈍い腹痛
- (4)お腹全体が張るような腹痛
- 注意が必要な妊娠初期に起こる腹痛
- 安静にしても治まらない/強く痛む/痛みが急激に増す腹痛
- 多量の出血を伴う腹痛
- 痛みが徐々に増す/発熱を伴う腹痛
- いつもと違うと思ったら早めに受診を
- 妊娠初期の腹痛に悩まされないために
- 体を過剰に冷やさない
- 便秘対策をする
- まとめ
妊娠初期の腹痛はいつまで続くの?


妊娠初期には、腹痛を起こすことがよくあります。これはいつごろまで続くものなのでしょうか。
妊娠4ヶ月くらいまで起こりやすい
妊娠初期には、軽い腹痛やおなかの張りを感じやすいものです。これは「妊娠15週(4ヶ月)ごろまで」起こりやすいといわれていますが[*1]、少し休んでやわらぐようであれば、特に心配はいりません。
妊娠初期に腹痛が起こりやすい理由

妊娠初期に腹痛を起こす主な理由を調べてみました。
妊娠による自然な変化のせい
妊娠初期には、妊娠したことで子宮への血流が増えて筋肉が伸び、子宮を支える「靱帯(じんたい)」や「広間膜(こうかんまく)」といった組織が引っ張られて、たとえるなら「生理痛」のような、「お腹の張り」や「痛み」を感じやすくなります。
また、散発的に子宮の収縮が起こることもよくあります。これらのような生理的変化によるおなかの張りや痛みは、少し休めば治まることがほとんどです。
妊娠初期の腹痛は流産などの場合も
ただし、強い腹痛がある場合は、「異所性妊娠(子宮外妊娠)」や「卵巣嚢腫茎捻転」「子宮筋腫変性」「流産」などの可能性も考えられます。
「生理の時より出血量が多い」場合や、「しばらく経っても改善しないひどい腹痛」の場合は、夜間や時間外であってもすぐに医療機関に連絡し、受診しましょう。
痛み方で異なる! 妊娠初期に起こる腹痛の原因と対処法


妊娠初期に起こる腹痛の主な原因と対処法を、痛みの種類ごとに整理してみました。すべてがこのケースに当てはまるわけではありませんが、ひとつの目安として参考にしてください。
(1)子宮のあたりがチクチクとする腹痛
妊娠初期には不規則な子宮の収縮があります。一般的に「初期の子宮収縮は痛みを伴わない」といわれることが多いのですが、中には子宮のあたりにチクチクとした痛みや張りを感じることがあるかもしれません。これは一時的に子宮の筋肉が緊張することで起こります。
対処法
1~2分間で治まることが多いので、安静にして少し様子を見ましょう。しばらく経っても治まらなかったり、どんどん痛みが強くなったりする場合は、かかりつけの産院に相談してみましょう。
(2)わき腹が引っ張られるような痛み
妊娠中、大きくなっていく子宮の両端を支える靱帯などが伸ばされることで起こる痛みです。
対処法
これも安静にして少し待てば治まるでしょう。(1)のとき同様、治まらない場合は産院に相談してください。
(3)生理痛に似た鈍い腹痛
妊娠前の子宮の大きさは「鶏の卵くらい」ですが、妊娠3ヶ月になると「握りこぶし程度」にまで成長します。子宮が大きくなっていく過程では、血流が増えて筋肉が伸びたり、たまに収縮したりするので、生理痛のような鈍い痛みを感じることもあります。
対処法
これも安静にして少し待てば治まるでしょう。(1)のとき同様、治まらない場合は産院に相談してください。また、生理痛のような痛みだからといって、自己判断で市販の鎮痛剤などを飲むのは避けましょう。
妊娠初期、特に4~7週は、赤ちゃんの脳や神経、心臓、胃腸、手足などの重要な器官が形成される大事な時期で、薬の影響をもっとも受けやすい時期と言われています[*2]。
ただし、妊娠初期に薬を飲んだからといって、赤ちゃんにトラブルが起こる可能性はほとんどありません。不必要な薬は避けるべきですが、必要以上に薬を怖がる必要はありません。
(4)お腹全体が張るような腹痛
妊娠中はホルモンバランスの変化により、便秘しやすくなります。便秘のせいで溜まった便や腸内ガスによって、「おなかの張り」や「痛み」を感じることもあります。
対処法
これも、少し休めばおさまるような痛みであれば、問題ありません。普段から、便秘予防のために、「水分を十分にとる」「朝食をとる」「食物繊維を十分にとる」「適度に運動する」ことを心がけましょう。
注意が必要な妊娠初期に起こる腹痛


このように妊娠初期に起こる腹痛は、心配のない痛みであることが多いですが、中には要注意の痛みもあります。以下のような痛みがある場合は、すぐに医療機関の受診を検討したほうがよいでしょう。
安静にしても治まらない/強く痛む/痛みが急激に増す腹痛
下腹部のズキズキとした強い痛みは、何らかの影響で子宮や卵巣などにトラブルが生じている可能性が考えられます。
例えば「卵巣のう腫茎捻転」という病気では、卵巣にできた「のう腫」というふくらみの根元がねじれ、急激な痛みを生じさせることがあります。卵巣のう腫茎捻転は、すぐに手術することで大きなトラブルを回避できるので、強い痛みの場合は夜でも病院に連絡して受診するようにしましょう。
また、「異所性妊娠」の可能性もあります。これは、卵管や卵巣など、赤ちゃんが正常に成長できる子宮内腔以外の場所に受精卵が着床している状態のことで、お腹の中に大量に出血して命にかかわることもあります。
婦人科以外だと、尿路結石が下腹部痛の原因になることもあります。
多量の出血を伴う腹痛
妊娠初期は出血しやすい状態のため、少量の出血があっても慌てる必要はないことも多いのですが、多量の出血を伴う場合は要注意です。
妊娠初期に多量の出血を起こしたとき、今まさに流産が起こっている「進行流産」の場合、陣痛のような規則的な下腹部の痛みとともに多量の出血が生じます。
痛みが徐々に増す/発熱を伴う腹痛
少しずつ痛みが強くなる場合、さらに発熱を伴う場合は、細菌やウイルスなどによる食中毒や感染症による痛みの可能性があります。
婦人科系ではありませんが、急性虫垂炎(盲腸)、胃腸炎などの病気が原因となっていることもあります。
いつもと違うと思ったら早めに受診を
いずれの場合も、腹痛が気になったらまずは横になって休み、少し様子を見てみましょう。それで痛みが治まるようであれば、心配はいらないケースであることがほとんどです。
ただ、しばらく安静にしていても痛みがおさまらない場合は、かかりつけ医に連絡するなどして、早めに医療機関を受診しましょう。
妊娠初期の腹痛に悩まされないために
どんなに対策をしていても、腹痛が起こることはありますが、少しでもリスクを減らすために有効と思われる方法をいくつか紹介します。
体を過剰に冷やさない
体が過剰に冷えた状態になっていると体の血流が悪くなり、腹痛や張りが強くなることがあります 。寒い時期はもちろん、暑い夏であっても、冷たいものを大量に食べすぎてしまうと体が冷えることもあります。
パーティーサイズのアイスを一人で食べてしまうようなことはやめましょう。
便秘対策をする


日ごろは便秘知らずの人でも、妊娠中は便秘をしやすくなります。妊娠すると「黄体ホルモン(プロゲステロン)」が多く分泌され、このホルモンの働きによって腸の働きが鈍くなるからです。
適度に食物繊維や水分を摂取するほか、医師から安静の指示がなければ、有酸素運動などで体を動かすのもよいですね。頑固な便秘でつらい時は、健診の際などに医師に相談し、便秘薬を処方してもらうのも、ひとつの方法です。
まとめ

妊娠初期の生理的な腹痛は、妊娠15週ごろまで続くことが多いといわれています。痛みがあっても、少し休めばおさまる場合、基本的に心配はいらないことがほとんどです。
しかし、痛みが強かったり、多量の出血を伴ったりする場合は病院で診察を受けた方が良い場合もあります。いつもと違うと感じたら、まずは焦らずに少し安静にしてみましょう。治まらない場合や悪化する、他の症状も伴う場合は、かかりつけの産院に相談してください。
(文:山本尚恵/監修:太田寛先生)
※画像はイメージです
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます