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2021年05月12日 17:00 更新

【医師監修】妊婦は入浴剤は大丈夫? 妊娠中のおすすめ入浴剤と要注意な入浴剤は?

妊娠前は何気なくしていたことなのに、妊娠がわかると「これは妊娠中にやっていいのだろうか?」と、突然気になることもあるのでは。入浴剤もそのひとつかもしれません。妊娠中に使用を避けたほうがよい入浴剤はあるのでしょうか。

妊婦は入浴剤を使ってもよい?

入浴する女性

そもそも妊娠中、入浴剤を使っても問題ないのでしょうか。妊婦さんの入浴剤の使用可否について調べてみました。

入浴剤の効果とは

まずは入浴剤の概要とその効果を説明します。

市販されている入浴剤は、「医薬部外品」「化粧品」、そして「雑品」の3つに分類されます。

医薬部外品として販売されているものは、入浴剤によって得られる効能・効果を商品名や商品パッケージなどにうたうことができます。

また、化粧品として販売されているものも、化粧品として表示できる範囲の効能をうたうことが可能です。

一方で、雑品として売られている入浴剤は安全性や効果についての第三者による評価は行われていません。よって、客観的な指標がないために、人体に与える効能や効果を表示することはできません。

妊婦さんが使うなら、客観的な評価のある「医薬部外品」や「化粧品」として販売されている入浴剤ではないでしょうか。

医薬部外品の入浴剤は成分の違いにより、「無機塩類系」「炭酸ガス系」「薬用植物系」「スキンケア系」などの種類に分かれていて、それぞれ入浴後の保温効果を高める、新陳代謝を促して疲れや痛みを緩和する、肌の汚れを落とす、保湿するなどの効果・効能が期待できます。なお、医薬部外品として販売するには、厚生労働省による承認が必要です。

妊婦の入浴剤使用は基本的には問題ない

さまざまな効果が期待できる入浴剤ですが、妊婦さんが使うことに問題はないのでしょうか。

結論から言うと妊娠中であっても、入浴剤の使用を制限する必要はとくにありません。現在、医薬部外品として販売されている入浴剤も、妊娠中の使用についてとくに制限する必要はないとされています。

ただし、妊婦さんに限らず、成分によってはごくまれにアレルギー反応を示す人がいるので、入浴中に何か異常が見られたら使用を中止しましょう。また、妊娠中は肌が敏感になり、肌荒れしやすくなる人も少なくありません。例えば、メントールを配合した清涼系の入浴剤は、人によっては肌に刺激を感じることがあるので、肌が弱い人は避けたほうが良いかもしれません。

トラブルが起こったら、かかりつけ医に相談

肌荒れが起きて、なかなか治らないといった心配ごとがある場合はそのままにせず、かかりつけの皮膚科医に相談することをおすすめします。入浴剤が原因であるにせよ、ないにせよ、肌荒れや、特に激しいかゆみを伴うような症状がある場合は、不快感に加え、掻きむしることによる傷や色素沈着を生じることがあります。早めに医療機関を受診しましょう。

おすすめ&要注意なものは? 妊婦の入浴剤の選び方

入浴剤のイメージ

妊婦さんが入浴剤を使ってもとくに問題はありませんが、入浴剤のタイプによっては注意が必要なこともあります。妊娠中、入浴剤を選ぶときの注意点を確認してみましょう。

お風呂での転倒に注意

妊娠中は非妊娠時よりも入浴中の転倒のリスクが高まります。お腹が大きくなり、体の重心が変わるため転倒しやすくなるほか、妊娠によって血圧が不安定になることによってのぼせやすくなるからです。

保湿成分が多く配合されているタイプの入浴剤には、ぬめりで浴室の床や浴槽が滑りやすくなるものもあり、転倒のリスクが高まる可能性があるので、注意が必要です。

妊婦におすすめの入浴剤

妊婦さんには、体を温める効果のある「無機塩類系」または「炭酸ガス系」の入浴剤がおすすめです。

「無機塩類」はいわゆる「ミネラル」と呼ばれる成分のこと。硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの成分が肌の表面に膜を作ることで入浴後の保温効果が高まり、湯冷めしにくくなります。特に硫酸ナトリウムは、あせも、ひび、あかぎれなどの予防にも効果的といわれています。

一方、炭酸ガス系入浴剤は、お湯に入れるとシュワシュワと炭酸ガスが出てくるタイプの入浴剤です。お湯に溶けた炭酸ガスが肌から吸収されると、筋肉に働きかけて血管を広げ、血流を促して、身体を芯まで温めてくれるといわれています。

筋肉量の少ない女性は、もともと冷えに悩まされることが多いうえ、妊婦さんは、肩こり・腰痛などが生じやすくなっています。そのため、体を温める効果があるとされるこれらの入浴剤を使用することで、つらい症状が少しラクになるかもしれません。

入浴剤以外にもある!妊婦の入浴で知っておきたいこと

入浴剤の種類以外にも、妊娠中の入浴では気を付けたおいたほうがよいことがいくつかあります。妊婦さんは入浴時、以下のことに注意しておきましょう。

入浴はできるだけ家族がいる時間帯にする

入浴によって体が温まると、血圧は下がりやすくなります。加えて、妊婦さんはもともと起立性低血圧による立ちくらみが起こりやすいことから、浴室や脱衣所でふらついたり、転んだりする可能性もあります。

万が一、転んだり倒れたりした場合でもすぐに異変に気付いてもらえるよう、できれば家族が家にいる時に入浴することをおすすめします。

熱すぎる/ぬるすぎるお湯や長風呂は避ける

温度が42℃以上の熱すぎるお湯や30℃以下のぬるすぎるお湯では、交感神経が刺激され血圧が上昇しやすくなります。血圧が急上昇すると脳卒中や心疾患のリスクが高まります。

妊婦さんは40~41℃のお湯に10分程度、1日2回までを目安に入浴するとよいでしょう[*1]。外気温とお湯の温度の差が大きく、体感温度の急変が生じやすい冬の露天風呂、サウナなども妊娠中は避けたほうが無難です。

また、妊娠中は、比較的血液が固まりやすい状態になっています。これは出産による出血に備えた体の自然な変化ですが、そのために妊婦さんは通常時より血液中に血の塊(血栓)ができやすくなっています。長時間の入浴によって発汗が促され体が脱水状態に近づくと、血液はより固まりやすくなるため、長風呂は避けましょう。

水分補給をしっかりする

体が脱水状態にならないよう、入浴の前後や必要に応じて入浴中にも、水分をこまめに補給することも大切です。さきほどもお話ししたように体が脱水状態になると、もともと固まりやすくなっている妊婦さんの血液は、より固まりやすくなることがあるからです。

のどが渇いていなくても、入浴前にはコップ1杯の水分補給を習慣づけておくと良いですよ。

まとめ

お風呂上がりの女性のイメージ

妊婦さんも入浴剤を使ってとくに問題はありません。ただ、入浴剤の種類によっては肌への負担や転倒のリスクなどに少し注意が必要なことも。自分に合ったタイプのものを選ぶようにしましょう。なお、熱すぎる、ぬるすぎるお湯や長湯は体に負担をかけるので、妊婦さんは避けたほうが無難です。水分補給も忘れずに、心穏やかなバスタイムを過ごせるといいですね。

(文:山本尚恵/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]東京医学社「周産期医学」増刊「周産期相談300 お母さんへの回答マニュアル」,1998,p.184
・日本浴用剤工業会 入浴剤の効果とメカニズム

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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