妊娠 妊娠
2023年02月15日 16:56 更新

【医師監修】がっつり生理があったけど妊娠している可能性ってある?

直前に生理のようにがっつり出血があった。そんな時でも、実は妊娠しているという可能性はあるのでしょうか。起こりうるケースごとに考えてみました。また、その出血が本当に生理かどうかの見分け方のポイントも紹介します。

がっつり生理があった後、妊娠する可能性はあるの?

がっつり生理があったのに妊娠 びっくりする女性
(イラスト:mico Ꮚ•ꈊ•Ꮚ @gogo_aokun

普通、生理(月経)が来たら妊娠しなかったと考えますよね。直前に生理があったのに妊娠していることもあるのでしょうか。

直前に「生理」があったなら妊娠してないはず

検索すると、「直前に生理のような出血があったのに妊娠していた!」という体験談を見かけることがあります。でも、この場合、その出血が本当に生理であった可能性は低そうです。

妊娠すると生理は起こらない理由

生理の経血は、もともと赤ちゃん(受精卵)を受け止め育てるために子宮の内側に用意された「布団」のようなもの。受精卵がこの布団のような子宮内膜にくっつき潜り込んでいくことを「着床」と言いますが、着床があってはじめて妊娠が成立したと言えます。

着床が起こるには、子宮内膜に受精卵を受け入れる準備ができていて、かつこの準備が整っている限られた期間に、受精卵が子宮内に到着する必要があります。

排卵から受精、着床までの流れのイメージ
排卵から受精、着床までの流れのイメージ

受精卵がタイミングよく子宮内に来ないと、古くなった子宮内膜はやがてはがれ落ち、経血として排出されます。これが「生理」です。つまり、本当に直前に生理があったのであれば、受精卵が子宮内に到着しても「着床できない」ので、妊娠は成立しないはずなのです。

「実は生理じゃない出血」だったなら可能性はアリ!

でも、それが生理に見えて実は違う原因による出血だった場合は、妊娠している可能性はあります。本当は違う原因で起こった妊娠発覚直前の出血を「生理と勘違い」していて、「生理後妊娠が発覚したと考えた」ことのほうがありそうな話なのです。

がっつり生理があった後妊娠が発覚するケース

生理用品とカレンダー

この可能性はほぼないと考えられることを説明しましたが、それがなぜなのか、もう少しくわしくみていきましょう。

「生理が来る前」にしていた性行為によって妊娠する?

通常、精子が女性の体内で生きていられる期間は約72時間、3日間程度と言われています[*1]。ところが、「最大5日間」生きられると言われることもあります[*2]。

生理前に性交し、腟から子宮を経て卵子と出会う場所である「卵管膨大部(卵管の先にある広くなった箇所)」に精子が到達していたとします。ちなみに、射精された精子は数秒で腟から子宮頸部へ、そこから卵管には早いときで数分、だいたい15分以内にはたどり着けると言われています[*3]。

その時、卵子は卵胞とともに成長しながら排卵されるのを待っている状態です。この期間は「卵胞期」と呼ばれますがその長さは個人差が大きく、生理周期が正常範囲内の人では、生理初日から数えておよそ11~24日間続きます。卵胞期が終わると排卵が起こります。

生理初日~排卵までが5日間で終われば妊娠可能!?

卵胞期には卵胞が成長とともに「エストロゲン(卵胞ホルモン)」を分泌するようになりますが、この分泌量が一定以上に高まることで排卵が起こります。エストロゲンがきちんと分泌されないと排卵は起こりません。

エストロゲンには、「子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に準備しておく働き」もあります。最初に説明したとおり、たとえ通常より早く排卵しうまく受精できたとしても、子宮内膜の準備が整っていないと着床がうまくいかないので妊娠には至りません。子宮内膜が着床に適した状態になるのは、排卵からおよそ1週間後からです。

「生理前」の性行為による妊娠はほとんどなさそう

さて、精子が女性の体内で生きられる期間を「5日間」として考えてみましょう。生理直前に精子が卵管に到着しており、たとえば生理期間が2日間ほどで、生理終了の3日後くらいに排卵が起これば、理屈の上では精子の寿命が尽きる前に卵子は受精できるということになりますね。

とはいえ、この場合だと、卵胞期が「生理初日から数えて5日間しかない」ことになってしまいます。これは通常のおよそ11~24日間よりとても短いので、排卵や子宮内膜の準備がうまく行かないと考えられます。そのため、妊娠に至ることはほとんどないと考えられるのです。

生理周期と女性ホルモンの変動イメージ
生理周期と女性ホルモンの変動イメージ(1サイクル28日の人の場合)

「生理中」の性行為は妊娠する可能性アリ!

ただし、「生理中の性交渉で妊娠する」のは十分あり得ることです。とくに「もともと生理周期が短めの人が生理の終わりかけに性交した場合」に起こりやすいでしょう。

例えば、生理周期25日の人の場合、生理7日目から数えて4日か5日後に排卵が起こります。生理7日目に性交したとすると、精子の寿命は最大5日間なので、排卵日にも精子が生き残っている可能性はあります。そのため生理中の性交で妊娠してもおかしくはないというわけです。

生理だと思っていた出血が生理でなく妊娠が発覚するケース

妊娠検査薬

ここからは、妊娠前に起こることがあって、生理と勘違いする可能性のある出血の原因を解説します。

着床出血

「着床出血」は、受精卵が着床したとき、子宮内膜が少し傷ついて起こる出血のことです。通常は生理より出血量は少なく、オリモノに血が混じる程度や下着に少しつくくらいと言われますが、もともと経血の量が少ない人では生理と勘違いすることがあるかもしれません。

出血の原因が着床出血であった場合は、妊娠は成立しています。その後も妊娠が継続していれば、治療などはとくに必要ありません。

異所性妊娠(子宮外妊娠)

卵子と精子が出会い受精卵ができますが、赤ちゃんが育っていくのに不適切な場所に着床してしまうことです。この場合、最初はとくに症状がないことも多いのですが、少量の出血や起きたり治まったりする腹痛がみられることもあります。

異所性妊娠でも妊娠検査薬は陽性を示すので、これによる出血を自覚したあと自分で検査することで、生理後に妊娠したと勘違いする可能性もあります。

ただし、異所性妊娠は、着床場所によっては大量出血を起こして命にかかわることがあります。妊娠検査薬で陽性が出たら医療機関で超音波検査をしてもらうことが大切なのは、異所性妊娠であった場合なるべく早く見つけるという意味合いもあります。

胞状奇胎

受精卵は子宮内膜に着床すると、「絨毛」というのちに胎盤となる組織を根のように伸ばしていきますが、この絨毛が病的に増殖する病気です。精子と卵子が受精する際の異常で起こるとされ、この場合も妊娠を継続するのは困難です。

胞状奇胎では妊娠初期から出血がよくみられます。この場合も妊娠検査薬は陽性を示します。超音波検査でこの病気が疑われたら、組織を採った検査などを行い、手術などの治療を受けることになります。

切迫流産・流産

生理だと思っていた出血が、実は流産しかけたことが原因で起こっていた場合もあります。

予想より早い時期に排卵があり妊娠していたが、切迫流産による出血を生理と勘違いするケースです。その後運よく妊娠が続き、生理が来ないことなどで妊娠検査薬や受診によって妊娠が発覚すれば、生理後に妊娠したと勘違いするかもしれません。

同様に、予想より早く排卵して妊娠していたが、切迫流産ではなく実際に流産してしまったことで出血し、これを生理と勘違いする可能性もあります。この場合も出血後に妊娠検査薬を使うと陽性と判定されることがあります。なお、一度着床し妊娠検査薬で陽性が出たものの、超音波検査で妊娠を確認する前に流産してしまうことを「化学流産」と言います。

生理・妊娠・その他の原因による出血の見分け方

女性 悩む

ここまでで解説したとおり、生理が来る時期には生理以外の原因による出血が起こる可能性もあります。出血の原因を見分けるポイントは何かあるのでしょうか。

出血の量や時期

まず、量や時期にいつもの生理との違いがないかチェックしてみましょう。

はっきりした病気などがなくても、ストレスなどによって生理が起こる時期が変動することもありますが、いつもより「だいぶ早い」または「だいぶ遅い」場合は、生理のようでいて実は別の原因で出血している可能性もあります。

量によって生理と生理以外をはっきり区別するのは難しいのですが、いつもの生理の時よりかなり出血量が多かったり、激しい腹痛を伴う場合は異所性妊娠の可能性もあります。また、着床出血では生理より軽い出血のことが多く、出血が続く期間も生理より短いとされています。

出血に血の塊があるか

着床出血に限って言えば、通常、生理の時のような血の塊はないとされています[*4]。ただし、出血原因を、血の塊の有無で見分けるのは難しいでしょう。

検査薬で陽性になるか陰性になるか

妊娠検査薬で陽性が出れば妊娠している可能性が高くなります。ただ、出血があった場合、それが着床出血によるものか異所性妊娠や胞状奇胎などの異常によるものかは妊娠検査薬ではわからないので、陽性が出たら医療機関で超音波検査を受けましょう。

頭痛や吐き気などつわりのような症状があるか

頭痛 女性

妊娠している場合、人によってはかなり早い段階からつわりのような症状を感じる場合もあります。ただし、つわり自体、妊婦さんの全員が経験するものではないため、この有無で妊娠しているかどうかを知ることはできません。つわりのような体調不良があるなら、やはり妊娠検査薬を使ってみて、陽性の場合は受診しましょう。

また、陰性の場合も何か別の病気が隠れている可能性があるので、出血とともにこういった症状が続くようなら医療機関を受診してください。

まとめ

がっつり生理があった後に妊娠している可能性について、いろいろなケースを想定して考えてみました。排卵、受精、妊娠の成立に大きくかかわる女性の生理周期はさまざまな要因の影響を受けて変動するので、絶対に起こらないとは言い切れませんが、本当に生理があったあとに妊娠する可能性はかなり低そうです。

妊娠発覚の直前に出血を起こす要因はここで解説したようにさまざまなので自己判断で原因を決めつけず、まずは自分の体調を注意深く観察し、出血以外に異常がないか気を付けましょう。いつもと違うと感じたら、あまり放っておかずに医療機関で一度きちんと調べてもらうことをお勧めします。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:窪麻由美先生)

※画像はイメージです

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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