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2022年12月23日 16:08 更新

<妊活>妊娠しやすい体位とは? 妊娠の確率を上げるセックス6つのヒント【医師監修】

妊活についてはさまざまな情報が飛び交っており、セックスの体位に関しては「正常位のほうが、騎乗位よりも妊娠の確率が上がる」などと言われることもあります。果たして妊娠しやすい体位は本当に存在するのでしょうか。

妊娠しやすい体位ってあるの?

仲の良い夫婦のイメージ

妊娠のしやすさとセックスの体位に関係はあるのでしょうか? その疑問に対する答えを調べてみました。

妊娠のしやすさと体位は関係なさそう

結論から言うと、妊娠のしやすさにセックスの体位はそれほど影響しなさそうです。

妊娠は、射精された精子と排卵された卵子が卵管の先端(膨大部)で合体して「受精卵」となり、それが子宮内膜に「着床」することで成立します。つまり、「セックスの体位により妊娠のしやすさが変わるかどうか」というのは、「体位によって受精・着床が影響を受けるかどうか」と言い換えることができます。

着床するまでの流れ

正常位や後背位は受精する確率が上がる!?

精子と卵子が「受精卵」になるためには、両者が卵管膨大部で「タイミングよく」出会う必要があります。精子が女性の体内で生きていられるのは約72時間。一方、卵子の寿命はおよそ24時間ですが受精できる時間はさらに短く、排卵後10数時間と言われています[*1, 2]。

このようにともに寿命が短いので、腟で射精された精子が卵管膨大部にたどり着くまでにあまり時間がかかりすぎると、受精する確率は下がりそうですよね。

たしかに、体位によって、射精された精子が泳いでいかなければならない卵管膨大部までの「物理的な距離」が多少変わることはあるかもしれません。例えば、男性が女性の上になる「正常位」や、女性の後ろから男性が挿入する「後背位」では、腟の深くまで挿入することが可能なため、子宮頸部(子宮の入り口部分)により近い位置で射精をすることになります。

でも、実は精子は「性交の体位に関係なく」「射精後数秒で」子宮頸部にたどり着くことがわかっています。また、子宮頸部付近から卵管までは15分以内に到達しており、腟内が精子の移動に適した状態になる卵胞期(排卵期の前)には「数分」でたどり着いていた、とする報告もあるくらいなのです[*3]。

精子が卵管にたどり着くまでにかかる時間は、イメージしていたよりだいぶ短いのではないでしょうか。精子の運動機能が正常で、子宮や卵管にその移動を妨げるものがないのであれば、精子はこのように短時間で卵管までたどり着けます。どんな体位で性交するかはあまり関係がないようです。

なお、女性のオルガスムには精子を子宮内でよりスムーズに輸送するのを助ける可能性があるとは言われています[*1]。ただし、これに関しても女性のオルガスムがあると出産数が増えるというはっきりした報告はいまのところないようです。

セックスの後は腰を高くして安静に!?

さて、精子と卵子が出会い受精卵になっても、それが子宮内膜に着床しないと妊娠したことにはなりません。受精から約1週間後に受精卵(胚盤胞)は子宮内膜に着床し始め、さらに1週間ほどかけて完了します[*4]。

受精卵が着床できるかどうかで大切なのは、「子宮内膜が着床に適した状態に準備できているかどうか」です。これは自分とは異なる細胞である受精卵を受け入れたり、着床後の受精卵に栄養を供給するために必要な変化で、黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用により起こります。

子宮内膜は受精後の数日間だけこの準備ができた状態になりますが、この期間以外では受精卵はうまく着床できません。つまり、着床のしやすさにも、体位はあまり関係なさそうです。

なお、「セックスの後にはあおむけのまま、腰を高くして安静にしておいたほうが妊娠しやすくなる」といわれることもありますが、これもこうしたら妊娠の確率が上がったというような根拠があるから言われていることではないようです[*1]。

妊娠の確率を上げるポイント~セックス編

寄り添う夫婦のイメージ

ここまでで、体位が妊娠のしやすさに影響を与えることはあまりなさそうなことはわかりましたが、妊娠の確率を高めるため、自分でできることがあるならばやっておきたいもの。

ここからは、妊娠の確率を高めるために大切なポイントを紹介します。まずはセックスの際に気を付けておくとよいといわれるポイントからです。

1. セックスの頻度が多ければ妊娠の確率も上がる

「妊娠を望んでいるけれど、セックスの回数が月に1~2回」という場合は、セックスの頻度をもう少し上げたら妊娠の確率は高まるかもしれません。

妊娠が成立するにはまず、精子が卵子のもとにたどり着き、受精する必要があります。ですが前半で解説したとおり精子と卵子にはそれぞれ寿命があり、精子は約72時間、卵子の寿命はそれより短い約24時間で、なおかつ受精できるのは排卵後10数時間です。

週2、3回以上できると常に精子が待機中に

精子に比べ卵子の寿命は短いので、排卵された時、すでに精子が卵管で卵子を待ち受けているのが効率の良い状態です。精子の寿命は約72時間つまり3日程度なので、2~3日おきつまり週2~3回以上の頻度でセックスできると、先に射精された精子の寿命が尽きる前に、また新しく射精された精子が卵管で待機する状態にできます。

ただし、妊娠率とセックスの回数は必ずしも比例するものではなく、「セックスの回数が多ければ多いほど、妊娠の確率も上がる」という単純な関係ではありません[*2]。次に紹介する「セックスするタイミング」も重要だからです。

2. 排卵日の2日前からセックスをする

セックスの回数が多くても、それが必ず妊娠に結びつくとは限りません。精子と卵子が出会えるのはおよそ1ヶ月に一度、排卵が起こる時期だけです。このときに精子が女性の体内で卵子を待ち受けておくには、排卵が予想される日の2日くらい前からセックスの頻度を高めるのがよいと言われています[*5]。このように排卵日を予測して性交する方法のことを「タイミング法」と言います。

ただし、タイミング法によって妊娠する確率は、1周期あたり5~6%、継続した場合の妊娠率は、1年間の累積で50%、2年間で60%となり、それ以降は横ばいとされています[*6]。年齢や生殖器の状態にもよりますが、複数回~1年間、タイミング法を試みても妊娠にいたらない場合は、専門の医療機関を受診してくわしく調べてもらったほうが良いでしょう。

なお、排卵日を推測する方法にはいくつかあります。くわしくは下記の記事を参照してください。

3. 男性の禁欲は逆効果になることも

では、排卵日2日前までの間は、男性は禁欲しておいたほうがいいのでは?と考える人もいるでしょう。そのほうが、精液中に含まれる精子の数が多くなるような気がしますよね。

しかし、約1万検体の精液を調べた研究によると、もともと精液の質が正常な男性では、毎日射精を行っても精子の濃度と運動性は変わらないことがわかっています。むしろ、10日以上禁欲生活を送った男性では、正常な運動性と形を持つ精子の割合が明らかに減ったとも報告しています[*3]。

頻繁にセックスすると精液が薄まりそうと心配する必要はなく、逆に適度に性交しておいたほうが精子の質を保つためにも良さそうです。

とはいえ、あまり頑張りすぎると、精神的なストレスによって、今度は性的自尊心が傷ついたり、満足感の低下などから性交の頻度が低下する可能性も。性交のタイミングを排卵予測に基づいて決めたり、厳密にスケジュール立てることでもさらにストレスはかかると言われています。自分たちにとって心地よい頻度を大切にしながら、性交するようにしてくださいね。

妊娠の確率を上げるポイント~日常生活編

たばこ

日常生活においては、以下に挙げるような「妊娠の確率を下げる危険因子を避けること」が、結果として妊娠の確率を上げることにつながると考えられます[*3]。自力で改善できるものはなるべく改善したほうが、妊娠につながりやすくなるでしょう。

妊娠の確率を下げる危険因子

・太りすぎ(BMI35以上)
・やせすぎ(BMI19未満)
・喫煙
・違法薬物、毒素、溶剤など

※「BMI」とは、痩せ~肥満の判定に用いられる体格指数で「体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)」で求められます

喫煙のリスクについてはこの後、詳しく説明します。

4. 男女ともに禁煙を心がける

タバコは男女ともに、妊娠の確率を下げる要因になるとされています。女性の場合は、喫煙によって卵子の質が下がるなど、妊娠する能力そのものが低下するといわれています。妊娠前だけでなく妊娠後も喫煙習慣が続いていると、低出生体重児のリスクにもなります。

男性の場合は、精子の数や運動率に影響を受けます。タバコを吸わない人に比べて、吸う人は、精子の数や精子の運動率が低いといわれています。妊娠を望むのであれば、男女ともに禁煙を心掛けるのが望ましいでしょう。

5. 栄養バランスを考えた健康的な食事をする

健康な体でいることは、妊娠するための大切なポイントといえます。健康な体をつくるには、毎日の食事が大きく影響します。1日3食、さまざまな食材を取り入れて、栄養バランスのとれた食事をとるように心掛けてみましょう。たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素は、とくにしっかり摂取を。健康な体でいることは、妊娠後の健康管理にも役立ちますよ。

6. 普段からパートナーとスキンシップをとる

セックス編でもお伝えしたように、セックスの回数をやみくもに増やしたからといって、妊娠に結びつくとは限りません。だからと言って、排卵日前だけしようとしても、うまくいかないことは少なくないはず。できれば排卵日以外のときも、普段からパートナーとスキンシップをとり、自然な流れでセックスができるようにしておくことも大切です。

なお、赤ちゃんを望むカップルは「プレコンセプション・チェック」といって、妊娠出産に向けて何か気になることがないか、妊活を始める前に一度医療機関でチェックしてもらっておくと安心です。ブライダル検診という名前で受け付けている医療機関もあります。

人それぞれ体の状態は異なるので、その人に合った妊活方法や日常生活を送るうえでの注意点などをアドバイスしてもらえるはずです。

まとめ

赤ちゃんの生まれた家族のイメージ
Lazy dummy

セックスの時の体位が、妊娠のしやすさに影響を与えることは、基本的にほとんどないと考えられています。体位を気にするよりも、自分と相手の体調や健康状態に気を配りながら、まずはコミュニケーションの手段としてセックスを楽しみましょう。しばらく試してみて妊娠しない場合は、早めに専門家に相談するのも大切です。パートナーとの絆を深めながら、希望のタイミングで妊娠もできるとよいですね。

(文:山本尚恵/監修:浅野仁覚先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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