銀河系の中心を探してみませんか?

私たちが住んでいるこの地球。この惑星は太陽系に属していて、その太陽系はもっと大きな銀河系に属しています。
【世界で初めて地球の大きさを測った人物は?→「エラトステネス」】
きっと皆さんも渦巻き状になっている銀河系の写真を見たことがあるのではないでしょうか。
ところで、太陽系の中心はもちろん太陽ですが、銀河系の渦巻きの中心はいったいどこにあるのでしょうか。
そこで今回は、この広い夜空の中で銀河系の中心がどの方向に見えるのかをお話ししたいと思います。
銀河系のはずれにある地球
まず、銀河系の巨大な渦巻きの中で、地球はどのあたりに位置しているのでしょうか。
中心部から近い?それとも遠い?
実は、地球は銀河系の中心からおよそ28,000光年(光の速度で28,000年かかる距離)も離れています。銀河系の半径はおよそ50,000光年ですので、どちらかというと地球は銀河系のややはずれに位置していることが分かりますね。
また、銀河系は平べったい渦巻き状をしているため、地球から見るとその部分だけ星が集まったように見えます。それこそが皆さんにもおなじみの天の川なのです。
天の川がぼんやりと明るく見えるのは、そこに無数の星が存在するからです。
銀河系の中心はどこ?
地球から銀河系の中心までの距離が分かったところで、いよいよ本題に入りましょう。
果たして銀河系の中心はどの方向にあるのか…?
答えはズバリ、いて座の方向です。いて座は星占いの12星座にも登場するおなじみの星座ですが、日本では夏の星座としても知られています。
いて座は、7月中旬の23時頃、8月中旬の21時頃、9月中旬の19時頃に南の空で見ることができます。
銀河系の中心方向ということで、地球から見ると、このいて座付近は天の川が濃くなっています。いて座の探し方としては、近くに見える赤い1等星、さそり座の「アンタレス」が目印となります。アンタレスを見つけることができれば、その少し左側に位置するのがいて座です。
北の空に浮かんでいる「北斗七星」はよく知られていますが、このいて座には「南斗六星」という同じような柄杓(ひしゃく)型をした星が並んでいます。
銀河系の中心には何がある?
このいて座の方向にある「いて座A」と呼ばれる領域こそ、私たちのいる銀河系の中心です。
いて座Aはさらに、「いて座Aイースト」と「いて座Aウェスト」、「いて座A*(スター)」の3つの部分に分かれます。そして、この中のいて座A*からは、強い電波が放出されていることが分かっています。このように強い電波を放出していることは、いて座A*の近くにブラックホールが存在する可能性を示しています。
…と、ここで、電波の放出とブラックホールとの関係性について、簡単にご説明しておきましょう。
ブラックホールは、大きな重力で近くのものを吸い込んでしまいます。このとき、吸い込まれていく物質(塵やガスなど)は数百万度という高温になるまで加熱されますが、そのときに強い電磁波が放出されます。地球からはこれが観測できるわけです。
さらには、このいて座A*自体も数億度の超高温プラズマガスだと考えられています。けれども、それがブラックホールに吸い込まれていくものなのか、はたまたその近くから噴き出しているものなのかは今のところ明らかになっていません。
ですが、この謎を解明することは、銀河系の中心で起きている現象を理解するために、今後とても重要なものとなります。
ただ、いずれにしても私たちの住んでいる銀河系の中心に巨大なブラックホールが存在することは、ほぼ間違いないと言えるでしょう。
まとめ
私たちが住んでいるこの銀河系の中心。それは、地球から見るといて座の方向にあたります。そして、そこには「いて座A*」という強力な電波源と、それに付随する巨大なブラックホールが存在することが分かっています。
この夏、キャンプなどで山のような暗い場所に出かけることがあれば、ぜひ夜空を流れる天の川といて座を探して、いまだ謎多き銀河系の中心を眺めてみてはいかがでしょうか。
(文/TERA)
●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。
※この記事は2014年08月17日に公開されたものです