南海トラフ法ってどんな法律?「大地震の備えを国が金銭面で補助する法律」

2013年12月27日に南海トラフ法が公布された。マグニチュード9クラスの地震が発生し、最悪の場合32万人もの犠牲者が予測されるだけに、事前の準備が肝心だ。
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防ぎようがない地震に、どう備えるか? 避難場所の強化、学校や病院の高台移設など、地道ながらも多大なコストがかかり、十分な準備ができない自治体もある。そこで国が予算を補助し、きたる災害に備えるのが南海トラフ法だ。
南海トラフ巨大地震とは?
南海トラフとは、駿河湾から九州にかけて太平洋の海底にある総延長670kmにも及ぶくぼ地だ。プレートが接する境界線で、活発で水深4,000mほどと深いことから、大きな地震が発生する可能性が高いと考えられている。
地震が発生した場合、位置によって呼び名が異なり、
・東海地震 … 駿河湾~浜名湖
・東南海地震 … 浜名湖~和歌山県・潮岬(しおのみさき)
・南海地震 … 潮岬~四国沖
これらの総称が南海トラフ巨大地震だ。
南海トラフ巨大地震が起きたらどうなるのか? 平成24年度の内閣府のシミュレーションによると、最悪のケース(冬・深夜に発生)で想定される被害者数は、
・建物の倒壊 … 82,000人
・火災 … 10,000人
・急傾斜地の崩壊 … 600人
・ブロック塀や自動販売機の転倒 … 30人
で死傷者合わせて32万人強とされ、多くは寝ているあいだに被害を受ける。昼~夕なら脱出できるひとが増えるのだろうが、同時に火災も増加するし、ブロック塀などの下敷きになる可能性も増えるので、かたちは違えど甚大な被害を受ける。
津波の脅威も忘れてはいけない。東京都防災ホームページによると、予想される津波の高さは、
・静岡県 … 35m
・高知県 … 34m
・東京都(区部) … 11m
また、南海トラフは沖合百数十kmと近いため、
・静岡/和歌山県 … 2分
・高知県 … 3分
・千葉県 …31分
と、極めて短時間で押し寄せてくる。もっとも大きな被害が予測される静岡県では、地震発生からわずか120秒足らずの猶予しかない。早期呼びかけと避難はもちろんだが、あらかじめ被害を受けない場所への移転や、安全な避難場所づくりが重要となる。
そこで誕生したのが南海トラフ法だ。
国ごと防災活動!
南海トラフ法の正式名称は「南海トラフ地震対策特別措置法」で、その名の通り事前に対策をするための法律だ。
大別して2つの柱があり、
・避難場所の強化 … 津波避難タワーや避難道路などの建設
・高台移転 … 学校や病院などの施設を、事前に高い場所へ移転
地域によっては30m超の津波が押し寄せてくるのだから、防ぐよりも届かない場所へ避難するのが確実で賢明な方法だ。だが、これらは多大なコストを要するため、自治体によっては十分な準備ができない場合もある。そこで費用の一部を国が負担し、財政状況が被害につながらないようにするのが、この法律のかなめなのだ。
もとより防災に関する費用は国も負担していたのだが、南海トラフ法では負担率をアップし、例えば従来の2分の1から4分の3に引き上げるなど、内容別に定められている。
さらに頼もしいのが、各省庁も連動している点だ。
総務省・消防庁は、建物の倒壊や火災も地震の被害を増長させるものとしてとらえ、消防署の耐震改修、発電機、無線などの準備がおこなわれている。また「防衛省防災業務計画及び自衛隊の各種対処計画の改訂」では、震災対処の迅速化が記され、大臣からの命令発令前に移動が開始できるようになった。
また、関係各庁やNEXCO(旧・日本道路公団)との連携、場合によっては在日米軍への協力要請も盛り込まれているから、まさに国を挙げての「防災」と呼べるだろう。
まとめ
・地震発生後、最短2分で津波がやって来る
・地震が起きる前に、高い場所へ引っ越す「高台移転」
・高い場所に避難所を作る
・費用は国が大幅に負担
・震災発生後も、消防署/自衛隊などが迅速に対処
今年1月から、多くの市町村で一斉防災訓練(シェイクアウト)がおこなわれ、多数が参加している。南海トラフ法で安心せず、自らも落ちついて行動できるよう準備したい。防災グッズや非常食も忘れずに。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年02月20日に公開されたものです