快速列車に乗れないのは運じゃない―時刻表の間隔のせい

サラリーマンの苦労の一つである通勤ラッシュ。つらい時間を短縮してくれる快速や急行に乗れればラッキーだが、運が良いのか悪いのか、なんで各駅停車ばかりに出くわすの?と思っている人も少なくないだろう。
もし快速列車になかなか乗れない人がいても、それは運だけではない。たとえ各駅列車と同じ本数でも、時刻表を気にせず駅に向かえば、乗れる確率が変わってしまう。運任せに行動していると、確率の神様はなかなか微笑んでくれないのだ。
6:6=43:12?
【問題】
Aさんは毎日電車で通勤している。最寄り駅には各駅と快速列車が止まり、どちらも利用可能。時刻表を気にせず出発するため、日によって駅に到着する時刻が異なるが、各駅/快速を問わず8時台に来る電車に必ず乗るものとする。
各駅と快速はどちらも10分間隔で到着し、出発時間は
・各駅 … 8時:03分・13分・23分・33分・43分・53分
・快速 … 8時:05分・15分・25分・35分・45分・55分
の場合、どちらに乗る確率が高いか?
もしもし?どちらも10分間隔で6本ずつなのだから、どちらも同じ50%で同じに決まっているでしょう?と思ったヒトは残念! 同じ本数が到着しても、駅に着く時刻がランダムだと、時刻表次第で乗れる確率が大幅に違ってしまうのだ。
到着時刻順に表すと、
・各駅 … 03 13 23 33 43 53
・快速 … 05 15 25 35 45 55
となり、もし8時ちょうどに駅に着いたら3分待って各駅停車に、8時25分到着なら待ち時間なしで快速に乗ることになる。
ここで、タッチの差で電車に乗れなかった場合を考えてみよう。8時03分の各駅を逃したら、次は05分の快速だから、待ちもたった2分だし早く到着できるのでラッキーだ。逆に45分の快速に乗れなかった場合は、8分待って53分の各駅に乗らなければならない。
つまり「先行が有利」の構図が見えてくるが、本当にそうなのか検証してみよう。
たった1秒でも遅れると、次の電車を待たなければいけないのがポイントで、同じ間隔・同じ本数の2種類の列車でも、駅に到着するタイミング次第で乗れる確率が大きく変わってしまう。今回のルールでは、来た列車には必ず乗ることになっているので、各駅停車を待つ時間は、
・00~03分(3分間)
・05~13分(8分間)
・15~23分(8分間)
・25~33分(8分間)
・35~43分(8分間)
・45~53分(8分間)
の計43分間なのに対し、快速に乗れる可能性は、
・03~05分(2分間)
・13~15分(2分間)
・23~25分(2分間)
・33~35分(2分間)
・43~45分(2分間)
・53~55分(2分間)
で、トータル12分間しかなく、乗れる確率は3.6分の1程度になってしまい、先行有利が否定できない。
逆に、快速が先に到着するダイヤではどうなるか?各駅列車はそのままにして、
・各駅 … 03 13 23 33 43 53
・快速 … 00 10 20 30 40 50
この場合、快速の待ち時間は0+7+7+7+7+7=35分間となり、対して各駅は3+3+3+3+3+3=18分間に短縮され、快速に乗れる確率は2倍近くにアップする。
どちらの列車も6本ずつ、ともに等間隔だから、単純に60÷6で計算してしまいがちだが、時刻表を見ずに電車に乗るルールでは、運以上にダイヤが決め手となるのだ。
3割アップは9割お得?

快速列車の本数を増したらどうなるのか? 6本から約3割アップの8本に増やし、8分間隔で出発すると仮定しよう。時刻表は、
・各駅 … 03 13 23 33 43 53
・快速 … 02 10 18 26 34 42 50 58
の場合、快速に乗れる確率は、各駅停車のおよそ1.9倍にアップする。
本数は6対8なのだから約1.3倍なら理解できるが、たった2本の差で90%向上なんて有り得ない!と思うのもごもっともだが、同様にそれぞれの待ち時間を計算してみれば一目瞭然だ。
最初に来るのは快速列車で、待ち時間は8時ちょうどから2、7、5、3、1、8、7、5分だから、合計38分間が快速に乗れるチャンスとなる。対して各駅停車を待つのは1、3、5、7、1、3分となるので、合計で20分間しかない。
つまり(58分の38):(58分の20)=1.9:1で、ほぼ2倍の確率とひょう変する。これで先行=有利の構図も覆せたはずだ。
まとめ
どちらも模式的な例で、仮定の話ながらも、
・本数が同じでも、乗れる確率はダイヤ次第
・本数が3割アップすると、乗れる率は2倍になる場合もある
ことが分かった。
実際のダイヤは極端な偏りが生じないよう工夫されているが、時間と本数だけで計算すると、遅刻の常連になってしまうのでご注意を。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2013年11月10日に公開されたものです