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仕事ができる女性に見られる「育児ストレス」の正体――「これでいい」の確信が持てない

公園で遊ぶ子ども母親が子どもを虐待する事件が後を絶ちません。その原因はほとんどが育児によるストレスだといわれています。では、こうした育児のストレスを少しでも軽減させるには、どうすればいいのでしょうか? 行政ではどんな取り組みがされているのでしょうか? 東京都練馬区の光が丘保健相談所の所長、宮原惠子さんにお話を伺いました。

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■自分のペースで育児するためにストレスが増える

――子育てのストレスが重なることで、精神的に追い詰められてしまうお母さんが多くなっていると聞きますが、そうした育児ストレスの大きな原因というのは何なのでしょうか?

宮原さん:大きな原因のひとつに、子どもが生まれたことで行動が制限されてしまうことが挙げられます。妊婦の段階では、まだ自由に出歩けますが、子どもが生まれて小さいときには、外出の機会も減り、行動が制限されることでストレスがたまるようです。

――自由がなくなるとつらいものですよね。ほかにはどんなケースがありますか?

宮原さん:最近では女性の結婚年齢が遅くなり、社会で十分にキャリアを積んだ女性がお母さんになる場合も多くあります。今まである程度自分で成果を出せていた世界から、子育てという未知の世界に入るわけですから、当然うまくいかないことも多くなります。しかし、それが受け入れられず「なぜ子育てをうまくできないのか」と悩み、ストレスをためてしまうケースも増えているように思います。

――思いどおりに進まないことにイライラしてしまうのですね。

宮原さん:赤ちゃんのペースをつかめず、どのように毎日を過ごしたらいいかわからないことが、ストレスをためてしまう原因でもあります。0~1歳くらいの赤ちゃんは十分意思表示ができませんし、お母さんは「これでいいのか」と確信が持てず、不安になるようです。

また、育児雑誌などに掲載されている育児パターンに、自分の赤ちゃんを当てはめて育児をしようとするお母さんも見られます。そうすると、パターンに当てはまらないことがストレスになってしまうのです。

――「思ったとおりにならないこと」によるストレスが大きいのですか……。

宮原さん:それ以外では、子どもが生まれたことで夫婦間の役割分担でギクシャクしてしまう場合や、赤ちゃんがちゃんと育ってくれているかわからず不安になってストレスをためてしまうケ-スもありますね。

――育児のストレスの原因というのは、本当に多岐にわたるものなのですね。

■お母さんのストレス軽減のために行政がやっていることは?

――さまざまな要因で育児のストレスを感じてしまうわけですが、これらを軽減させるためにはどうすればいいのでしょうか?

宮原さん:私ども自治体では、お母さんの育児ストレスの軽減、子育ての支援のために「こんにちは赤ちゃん事業」というものを行っています。これは生後4カ月までの赤ちゃんのいる家庭を全戸訪問し、母子の健康状態の確認をしながら不安や悩みなどの相談を行う事業です。

――育児の悩みや不安を専門の人に聞いてもらうことは大切ですよね。「誰にも相談できない」というお母さんも、少しでも安心できるでしょう。

宮原さん:ほかにも、訪問した際に赤ちゃんの身長・体重を計測するなど具体的な見える支援をすることで、お母さんに「赤ちゃんがちゃんと成長していること」を伝え、安心していただいています。

――先ほど、成長しているか不安に感じているお母さんもいると伺いましたし、安心させてあげることは大事ですね。

宮原さん:お子さんが小さい月齢で、外出の機会が少ないお母さんには、こうした家庭訪問を行うことで負担を軽減できます。お母さんとお子さんが一緒に外出できるようになりましたら、今度は「育児栄養相談」という事業があります。これは来所してもらい相談を受ける事業です。こうした対面型の相談事業は各自治体で行っています。

――ただ相談するだけでなく、人と対面して話をするのもストレスの軽減になりそうですね。

宮原さん:それは本当に大事なことです。子育てをしているお母さんに地域の方が声をかけてあげる、がんばって子育てしていることをほめてあげる、ということが重要です。しかし核家族が多い現在では、家族でも積極的に声をかけてあげることが難しくなっています。だからこそ、対面での相談は大切なかかわりです。

外に出られるようになれば、ほかのお母さんと交流したり、ほかの人の育児を見る機会も増えます。そうなれば、自然と安心感も高まります。一緒に外に出られるようになったら、ぜひ積極的に外出することをおすすめします。

――ずっと家にいると、お母さんでなくてもめいってしまうものですし、外に出ることは大事なことなのですね。

宮原さん:子育て支援に関しては、どの自治体でも地域ぐるみで積極的に取り組んでいますので、どんなささいなことでも気軽に問い合わせていただきたいと思います。

 

育児が忙しいという理由で、ほとんど外に出ないお母さんもいるそうです。ストレスを少しでも軽減させるためにも、まず、大変でも少しでも外に出てみることがよさそうです。また、育児の相談相手がいなくて不安に思っている人は、自治体に頼ってみるのもひとつの方法です。

(貫井康徳@dcp)

※この記事は2013年09月10日に公開されたものです

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