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なぜ都市伝説が誕生するのか? うわさを伝播させる人の心理に迫る!

ちまたでささやかれる口裂け女などの都市伝説は、どのように生み出されたのでしょうか。これらのうわさが誕生したのは、インターネットのない時代。それなのに、全国に伝搬した理由とは? 謎だらけの都市伝説について、心理学教授の皆川順氏にうかがいました。

●元祖都市伝説、「口裂け女」について

口裂け女とは、1979年の春から夏にかけて日本で流布され、社会問題にまで発展した都市伝説のこと。皆川教授によると、この都市伝説は有名ではあるが、実際にうわさをする人が「どのようなタイプの人間なのか」という観点での実証的研究は多くないそうです。

――早速ですが、皆川教授と、都市伝説としての「口裂け女」の接点について教えてください。

「当時私は、中学校教師として学校現場にいました。そこで早速、研究に取り掛かりました」

――どのような観点で研究をしたのか教えてください。また、その手段についてお聞かせください。

「観点としては、どのようなタイプの生徒がうわさの担い手になりやすいのか、うわさはどのような特徴を持つのか、の2点。手段は、質問紙法による性格検査と、うわさを毎日記録することにより、その変容過程を考察しました」

――調査対象は、うわさに対してなんらかの行動特性がみられましたか?

「はい、結果として、うわさを積極的に広めるのは『外向的であり、気分の波がやや大きい子』です。また、うわさの伝搬に消極的だったのは、知的レベルが極端に高い子や、それほど高くない子でした」

――情報に対して感情を高揚させるタイプの子が噂を広める「担い手」になりやすいのですね。知的レベルの高い子は「自ら冷静な判断」ができるため、うわさを広めることには無関心だと。では、「うわさの担い手」となった子の情報伝達の特性はどうでしたか?

「通常の情報・流言の拡散過程と同様に、『内容の極端化』、『部分的強調』等が見られました。

これには、学業成績の高低が影響していたようです。つまり、高い学力の子は、話が全体的に合理的になるような方向に変化し、学力の低い子の話は、大げさで極端になる傾向があります。そのため、伝言ゲームのように、うわさの内容がさまざまな形に変化していきました」

――担い手によって、省略や変形、独自の解釈が加えられて、うわさの内容が変容するということですね。これでは「口裂け女」も大変ですね。うわさの担い手、つまり「外向的であり、気分の波がやや大きい子」の人数割合によって、伝達速度の変化はありましたか?

「人数割合がどうだからうわさの伝達がどうなる、という研究はしていません。人数・割合よりも集団の構造、人間関係が問題なのです。

例えば、人気者の発言が優先されたり、目立たない子が多くても意見が取り入られにくいということです。全くありえないことですが、仮に同じ学力、性格の子ばかりだったとしましょう。うわさの担い手が5%未満だった場合、うわさの伝達速度は遅く、消滅する可能性があります。20%だったら加速度的に広がるのではないでしょうか?」

●なぜ「口裂け女」は生まれた?

――次に、なぜ「口裂け女」の噂は作られたとお考えですか?

「このような伝説に登場する主人公のほとんどは、決して、美しいもの、優れたもの、あこがれるものではなく、むしろその反対に近いものです。

私たちは無意識のうちに、不気味なもの、得体の知れないものへの恐れを抱いています。そして、そのようなものを表に出し攻撃することによって、攻撃欲求、自分たちと異なるものを排除する、という気持ちが満たされ、また集団で話し合うことによって意見と行動を共有し、安心感を得るのです。

これは、インターネットのなかった時代でも、うわさが瞬く間に広がった理由でもあります」

――「恐ろしいモノ」を生み出し、それを攻撃することによって自己満足を得るとともに、友人に話して仲間意識を確認して安心する。そして多くの子がその行為をしたために全国に広がったのですね。つまり人間には元来そのような欲求があると。

「はい、だからこそ、このような伝説は国を超え、時代を超えて出現するのです」

――「口裂け女」のうわさの伝達速度ですが、内容により特徴はありましたか?

「一般論として、人々が奇異に思っているもの、また、内面を含め自分が嫌っている部分など、『排除したい』と考えている情報が最も先に伝わります。次に、あいまいな部分を補う情報が付加されるのです。

口裂け女の場合、まずは口が裂けている、どのようなセリフを話す、などの『人物像』、次に『出没場所』などの付加情報の順となります。出没場所がいわくのある場所であったりすると、うわさは説得力を持ち、伝達速度が速くなります」

――最後に、インターネットが普及していない時代と現在を比較し、情報の伝達手段やスピードの違いについて教えてください。

「現代はメール、ツィッター、携帯電話など、伝達媒体が多く存在し、情報の伝達速度自体は非常に速くなりましたが、すべての人が共有しているとは限りません。まず情報量と種類とが大きすぎ・多すぎて、選択肢も広がったため、人々は多様な情報を各自取り入れています。それにより、どれが本当なのか、と疑心暗鬼に陥ったりします。

しかし、同時に多様な意見・見解も発信されますので、以前に比べて『誤った信念に凝り固まる』という人は相対的に減ったのではないでしょうか」

――ありがとうございました。

都市伝説は、元来人間の持つ「欲求」であるというお話で、少なからずショッキングな内容でした。自ら生み出し、攻撃し、仲間とともに安心する。そのような人間の心の奥底を垣間見た気がします。


皆川順
1950年栃木県生まれ。現在、山陽学園短期大学大学教授。幼児教育学科 学科長。学校心理士。ガイダンスカウンセラー。認知心理学専攻。心理学博士(筑波大学)。人間が他の人や世の中を見る時、心の中でどのように知識としてまとめるのかをテーマに研究活動中。中学生の本音を知るために中学校で調査研究し、また、高校生の心の働きを知るため、高校の非常勤講師となって研究。教育現場での実績をもとに記述した論文は、ヨーロッパやアメリカなどでも評価が高い。

(OFFICE-SANGA 秋田茂人)

※この記事は2013年07月06日に公開されたものです

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