『生理痛』の感じ方は、人それぞれ。ベッドから起き上がれないほどの痛みを感じる人がいる一方で、あまり痛みを感じない人もいます。「生理痛がつらいのは当たり前」だと思っていたけれど、普通の生理痛ってどのくらいのレベルなの? さっそくチェック!
ひまわりレディースクリニック 院長。思春期ネット会長、日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会認定医、日本東洋医学会認定医。一般婦人科診療のなかでも、月経異常や子宮内膜症の治療、月経調節、卵巣がん予防に力を入れている。
痛みだけでなく、月経周期や経血量にも病気のサインは潜んでいます。当てはまるものに、チェックを入れてみて!
いかがでしたか? ひとつでも当てはまるものがあれば、それが、なんらかの異常を知らせるサインかもしれません。早めに婦人科で受診することをオススメします。
子宮の内側は、子宮内膜と呼ばれる組織で覆われています。子宮の左右には卵巣があり、その中では卵子の元となる細胞がたくさん蓄えられています。卵巣からは毎月1つずつ卵子が排出され、卵管を通って子宮内膜の上まで転がっていきます。
一方、カラダは女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)を使って、妊娠する準備を始めます。
子宮内膜は、少しずつ厚くなり、フカフカのベッドのような状態で受精卵の着床を待ちます。このとき卵子が受精できなかったり、受精しても受精卵が着床しない(妊娠しない)と、フカフカの子宮内膜が剥がれ落ち、血液とともに子宮から排出されます。これが生理です。
月経痛の感じ方は人によってさまざまですし、痛みの程度は人と比べることができません。このため、自分の月経痛が普通レベルなのかどうか、不安になる人も多いのではないでしょうか。そんなとき、正常かどうかの判断材料のひとつとして、自分の月経痛が以前と比べて「重くなっているのか」「軽くなっているのか」を考えてみてください。
通常は、痛み・量ともに年々、軽くなっていくもの。思春期のころはつらくても、社会人になるころには落ち着いてくるのが普通です。でも、「20歳を過ぎても月経痛がつらい」「だんだん月経痛がひどくなって、量も増えてきた」という場合は、子宮・卵巣などに異常があるかもしれません。
※医療用語では「生理」を「月経」と言います。
ここでは「生理」と「月経」の二つの言葉を同じ意味で使用しています。
では、生理の異常に関連する病気にはどんなものがあるのでしょうか。まず、強い生理痛がある場合に疑われるのは『子宮内膜症』や『子宮腺筋症』です。子宮筋腫でも生理痛が起こることがあります。また、月経の量が多い場合にも『子宮腺筋症』や『子宮筋腫』などの可能性があります。
それでは、痛みはなくても、生理以外の出血(不正出血)がある場合はどうでしょうか。
異常な出血ではないこともありますが、病気が隠れている場合もあるので注意しましょう。不正出血があると子宮がんが心配ですよね。皆さんは子宮がん検診を受けているでしょうか?子宮がんには『子宮頸がん』と『子宮体がん』があり、いずれも早期発見が可能です。しかし、子宮頸がんは若い女性に多く、初期では症状が出ないので、不正出血がなくても1年に1回は婦人科検診を必ず受けましょう。
本来は子宮の内側にしか存在しない『子宮内膜』の組織が、子宮以外の別の場所にもできてしまう病気です。卵巣・卵管・腸管などで、内膜の組織が月経と同じタイミングで増殖、剥離を繰り返します。主な症状は、生理痛、下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛など。進行性で、放置していると痛みはどんどん激しくなります。さらに、悪化すると不妊や卵巣がんのリスクが高まると指摘されています。
『子宮内膜』の組織が子宮筋層内に発生する病気です。子宮内膜症は卵巣など子宮以外に子宮内膜に似た組織ができますが、子宮腺筋症は子宮の壁の中(子宮筋層)にできるものです。主な症状は生理痛や過多月経(月経の量が多いこと)です。子宮内膜症と同じく、放置していると痛みが激しくなり、不妊の原因になることもあります。
30歳以上の女性の4人にひとりは『子宮筋腫』をもっているというほど、一般的にみられる良性腫瘍です。経血量が増加したり、生理痛が起きたりすることがありますが、症状がなければ普段は特に気にする必要はありません。ただし、閉経までは腫瘍が大きくなる可能性があるので、定期的に検査して状態を確認しましょう。
子宮がんには、『子宮頸がん』と『子宮体がん』の2種類があります。
● 子宮頸がんはセックス経験者なら誰でも可能性が
『子宮頸がん』が発症する原因の多くは、性交渉によるヒトパピローマウィルス(HPV)の感染です。以前は30歳代以上に多くみられる病気でしたが、近年20歳代にも急増しています。初期の子宮頸がんは自覚症状がほとんどないので、早期発見には婦人科の検診が必須です。
クリニックには、月経のトラブルで来院される方も大勢いらっしゃいます。月経痛に関しては、「市販の鎮痛剤が効かなくなった」「仕事中、どうしても痛みに耐えきれなくなった」など、緊急事態になって初めて受診される方もいますが、そうなる前に早めに受診することが大切です。でも最近は、「生理痛を放置してはいけないと聞いた」「婦人科の受診を職場の先輩から勧められた」などと、検診希望でいらっしゃる方も増えています。
「生理痛はつらいのが当たり前」ではありません。日常生活に支障が出るほどの痛みは、病気のサインかもしれないので、放置は厳禁! 早めに婦人科を受診してください。また、月経痛が普通レベルだからといっても、油断はできません。初期症状があまりない病気もあるので、20歳を過ぎたら年に1回は定期的に検診を受けることを強くおすすめします。
毎月の月経は、自分のココロとカラダの状態を知らせる『健康のバロメーター』です。健康をキープするためにも、自分の月経の状態がどのように推移しているのかを客観的に見ることが大切です。『月経の期間』『痛みの程度』『経血の状態』や、『イライラ』『むくみ』などを記録しておくと、いつもと違う症状があったときにいち早く気づくことができるでしょう。
日々の基礎体温も記録しておくとよいですね。毎朝、目覚めたときにベッドの中で測るのがベストですが、忘れてしまったら週に2~3回でもOKです。2~3ヵ月分のデータがあれば、月経周期、排卵日(または無排卵)のほか、女性ホルモンの状態が読み取れるので、診察の際にも役立ちます。
毎月、規則正しく生理が来るのは、女性ホルモンが一定のリズムで分泌されている証拠です。ココロやカラダもこのホルモンバランスの影響を受けて変動するので、自分の生理の状態を知っておくことはとっても大切。そのために、皆さんにもっと活用してほしいのが婦人科検診です。深刻なトラブルがなくても、年に一度は受診しましょう!
提供:持田製薬株式会社