堂本剛、27年ぶりの単独主演映画に込める思いを語る。『まる』公開記念舞台挨拶レポ
美大卒だがアートで身を立てられず、人気現代美術家のアシスタントをしている男・沢田が、自ら描いた○(まる)を発端に、日常が○に浸食され始める奇想天外な映画『まる』が、 10月18日(金)に公開されました。
主人公・沢田を演じるのは、監督と企画プロデューサーによる約2年前からの熱烈オファーを受け、27年ぶりの待望の映画単独主演となった堂本剛。公開翌日に行われた映画『まる』公開記念舞台挨拶には、沢田の隣人で売れない漫画家の横山を演じる綾野剛はじめ、小林聡美、吉岡里帆、森崎ウィン、戶塚純貴、そして荻上直子監督が登壇。映画の見どころについて語ってくれました。
“売れないアーティストに勝ちなんてない”名台詞への想い
主演だけでなく、本作では劇中の音楽そして主題歌も務めている堂本さん。「この映画はフィルムで撮っているということもありまして、役者さん1人1人の呼吸や間がたっぷり使われている映画だなというのを、最初に仕上がった映画を見て思いました」と映画の魅力について語りました。
音楽についても「どういう音がいいかなと非常に悩みました。初めて映画音楽を務めさせていただきましたが、とても難易度の高い音楽の仕事だったと思います。普段自分が制作している音楽とは違ういろいろな学びが非常にありましたので、本当に貴重な経験させていただけました」と喜びを滲ませました。
作中で好きなシーンについて話が上ると、堂本は劇中の“売れないアーティストに勝ちなんてない”というセリフについて、「あれは結構いろいろ僕は考えてしまいましたね」と本音を吐露。
「アーティストのお仕事もさせていただいてるので、すごくいろんな考えが巡ったシーンだった。いつまでも純粋にいることがあるとか、そのシーンでいろいろ問われたことというか、投げかけられたことというのは、アーティストの方じゃなかったとしても、いろんな気持ちになるシーンなんじゃないかなってちょっと思いました」と自身のアーティストとしての活動と重ねて考えさせられたことを明かします。
さらに、アーティストの沢田ではなく、コンビニ店員の沢田と接するミャンマー人の青年・モー役を演じる森崎さんは「今日僕を初めて見た方はこんな日本語喋るんだってびっくりされたり思うんですけど」と会場を笑わせ、好きなシーンについて“人間丸くないと”というセリフを紹介。
「僕自身も10歳でミャンマーから日本に来て、丸いっていう丸って言葉って、言葉角を立たないとか、優しいとかっていうイメージもありますけど、“生き延びるための心のための◯”っていう意味もすごく僕の中には感じて」と明かし、「本当にもう読んだ時は“うわっ!”ってなりました」と、セリフを書き上げた荻上監督に感謝の言葉を口に。
一方、堂本演じる沢田と、綾野演じる横山の長回しでのセリフのやりとりが印象的だったと語ったのは小林さんと吉岡さん。小林さんが「“どこまで深いんだ”みたいな感じでずっと引き込まれて、そこは何か、監督もすごく思い切ってやったなと思って、とても印象的なシーンでした」と語ると、吉岡さんも「めちゃくちゃ分かりみが強い。私もあの2人のシーンをみた時にこの映画大好きって思いましたね」と共感。
「横山が“社会の役に立てているのか?”って話をした時に、“君は何ができるの?”って沢田さんにいうと、“うーん、口笛”って。そのシーンを見た時に、沢田は堂本さんにしかできないって感じました」と沢田を演じた堂本さんを称賛していました。
堂本剛、ノリノリで小ボケ連発?
また、荻上監督自身が作品の好きなシーンについて、「“僕が沢田です”って、2ミリくらい前に出て言うシーンが好き」と語ると、堂本さんは「試写とかを見てくれた知人から“あれは志村(けん)の間”だと言われました。“わたす(私)が……の間ってことでよろしいですか?”と言われた」と告白。
続けて「そんなつもりでやってないよと言ったら“あれは、わたす(私)が……の間でしたよ”“自然にやってらっしゃるんですね”っていじられたんですけど。後でもう1回映画を見直したら確かに“わ、わたすが……”でした(笑)」と志村けんさんの“変なおじさん”並のなまりを再現し、会場を笑わせました。
さらに、本作のキャッチコピーが“みんな○に夢中になる”とのことから、今夢中になっている〇〇を紹介することに。
堂本さんが「あんみつ。きっかけは覚えていないんですけど、急にあんみつが好きになりまして」と明かし、「黒蜜がいいじゃないですか。ステージドリンクでもいい」と言い出すと、綾野さんは「剛さん、ふざけてます?」と思わずツッコミ。吉岡さんからも「面白くしようとしてる」と言われた堂本さんは「こういうの欲してらっしゃるかなって。そっちもできるぞ、と」と笑いが取れることもアピール。
さらに綾野さんが「駅伝に夢中」とずっと好きだという駅伝について話し、「選手によっては一切かかとをつけず、つま先だけで最後まで走ってます」と豆知識を披露した際にも、すぐさま堂本さんはかかとを浮かせて「アーティストによっては、ちょっとかかとがついてない日があってもいいわけですからね。これから僕もこの形でMCやったりライブをやったりする可能性が出てきます。ちょっとだけ浮いてます」と会場を笑わせていました。
心のピントが合っていく映画
また、イベントでは、気温と強い照明の暑さで汗が止まらなくなってしまった綾野さんに、堂本さんがサッとハンカチを差し出す場面も。綾野さんが「一瞬拭いてきていいですか?」と一時的に降壇した際には、堂本さんが「綾ちゃんと僕は、極度の暑がりなんです。僕はノースリーブにしました」とフォロー。
手に扇子を持って無事戻ってきた綾野さんは「朝からトレーニングをして代謝があがっていて」と説明し、「すごいんですよね。僕たち」と堂本と共感し合うなど、息の合ったやりとりを見せていました。
最後に堂本さんは「本当にいろいろな方々の“今”に向かってメッセージを投げかけている映画だなと思います。“映画の見どころは?”とよく聞かれますが、それこそ映画のタイトル通り、“丸投げ”という形で、皆さんそれぞれの中に見どころというものが存在する、そういう不思議な映画になったと僕は思っています」と改めて作品について紹介。
さらに、「丸っていうのは柔らかかったり、優しかったり、平和的であったり、そういう印象が強い図形ではありますけれども、この映画の中にある丸っていうのは非常に強い丸。丸の通常の印象で優しい、柔らかい、っていうものプラス、強い、凛としている、そういうものを+αされたような映画なんじゃないかなというふうに思っています」と説明しました。
最後に、「この映画は、本当に2度、3度、4度、繰り返していく度に、どんどんどんどん自分の心のピントが合っていくようなそんな不思議な映画だなっていうふうに僕は思いました。皆さんもしお時間またいただけるようでしたら、ぜひ2回、3回と見ていただけたら。たくさんの人々のそれぞれの人生が明るい未来になるよそんな思いを込めてこの作品を皆さんにお届けしておりますので、ぜひ今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます」と願いを込めました。
映画『まる』の沢田のように、目指すものがありながらも上手くいかず、頑張りたい気持ちがどんどん薄れていって無気力になっていってしまう日々を経験したことがある人も少ないはず。そんな映画の中の世界ではあるものの、どこか自分と重ねてしまうシーンや心に響くセリフがこの映画を、ぜひ劇場で見届けてみてくださいね。
(瑞姫)