宇宙で一番寒い場所はどこ?―「ブーメラン星雲」時速60万km近い風が吹いている

春夏秋冬の四季がある日本では、1年の間でも40℃近い気温差があり、冬を迎えると東京や大阪のような都心部でも氷点下になることがあります。
【星までの距離ってどうやって測っているの?】
でも、地球上には当然もっと寒いところもありますし、地球を飛び出して宇宙に目を向ければ想像を絶する世界が待っています。
今回はそんな極寒の世界に皆さんをご招待しましょう。
赤道付近より極に近い方が寒いのはナゼ?
地球上では、赤道に近い地域ほど暑く、北極や南極に近い地域ほど寒くなりますが、これはどうしてでしょうか。
それは太陽の光が当たる角度の違いによるものです。
太陽の光が地面に対して垂直に当たれば当たるほど、その地表は効率よく暖められて、気温は上昇します。
たとえば、日本にいると夏は暑くて冬は寒いのが常識ですが、これは夏の方が太陽は高く昇り、より地表に垂直に近い角度で光が当たるためです。
これと同じ理由で、1年を通して赤道付近は太陽が高く昇りますが、北極や南極では太陽がそれほど高く昇ることはありません。そのため、北極や南極の気温はあまり上がらないのです。
北極と南極、寒いのはどっち?
それでは北極と南極のうち、より寒いのはどちらでしょう?
どちらも赤道から同じ距離にありますので、大きな違いはないような気もしますが、実は北極の気温が-20~40℃であるのに対し、南極は-30~50℃程度…というわけで、正解は南極ということになります。
それにしても、なぜ北極よりも南極の方が寒くなるのでしょう…。
その違いは、世界地図を見ると分かります。
北極の付近には「北極海」という海が広がっていますが、南極の付近には「南極大陸」という大陸が広がっていますね。
実は、この違いこそが温度差が生まれる大きな要因になっているのです。
南極の方が寒くなる3つの理由
海よりも陸地の方が暖まりやすく冷えやすいという性質を持っています。
そのため、北極海は太陽の熱によって一度暖められると、しばらくはその温度を保つことができますが、南極大陸の場合は暖まりやすい一方、冷えやすくもあるため、北極に比べて南極の方が寒くなりやすいわけです。
なおかつ、そこに海流も影響します。
北極へは赤道方面からの暖かい海流(暖流)が流れ込んでいるため、気温も上がりやすくなります。しかし、南極へはそのような暖流が流れ込むことがありません。
また、北極の氷は、海に浮かんでいますがその厚さは10m程度。それに対して、南極の氷は大陸の上に積み重なっていて、その厚さはなんと平均で2,500m近くもあります。
つまり、南極の場合には2,500m級の山の上にいるのと同じわけですから、単純にその標高差から考えても寒くなるのは当然と言えます。
実際、北極圏での過去最低気温はシベリア地方のオイミヤコンで記録した-71.2℃だと言われていますが、南極の場合はボストーク基地(標高3,488m)で1983年に観測された-89.2℃という記録があり、これは最低気温の世界記録にもなっています。
二酸化炭素は-79℃で凍ってドライアイスになりますが、それよりも低い気温だったわけです。
宇宙で一番寒い場所は?
では、自然界の宇宙で一番寒い場所はいったいどこでしょう。
これまで分かっている限り、それは「ブーメラン星雲」です。ブーメラン星雲は、地球からおよそ5,000光年離れた場所にある星雲ですが、その星雲の中心からは時速60万km近い風(太陽風)が吹いていて、それが宇宙空間に広がって行く過程で温度が下がり、なんと絶対温度1K(摂氏-272℃)まで冷やされています。
…いくらなんでも過酷すぎますね。
まとめ
南極や北極はたしかに寒いですが、宇宙を見渡してみると、さらに想像を絶する世界もあることが分かりました。
真冬の寒い時期はふとんから出るのもおっくうになることがありますが、南極や北極、ましてやブーメラン星雲のことを思えば、まだまだ十分恵まれた環境にいるのだと感謝しなければいけませんね。
(文/TERA)