教育 教育
2023年12月02日 08:00 更新

子どもを本好きにするなら小さい頃の働きかけが大事? 読書習慣は家庭の蔵書量や幼少期の読み聞かせと関係する可能性

勉強にスポーツはもちろん、ゲームやSNSなど何かとやることが多い今どきの子どもたち。こうしたなか、読書時間が減少傾向にあることは少し心配です。今回は、ベネッセ教育総合研究所が行った「子どもの生活と学びに関する親子調査」の分析をもとに、家庭環境が子どもの読書時間に与える影響について見ていきます。

約2万組の親子を対象にした横断調査をもとに読書の実態を分析

「子どもの生活と学びに関する親子調査」はベネッセ教育総合研究所と東京大学社会科学研究所が共同で実施しているもので、2015~2022年にかけて同じ親子2万組を対象に行った7年間の追跡調査となっています。この調査結果をもとに、さらにベネッセ教育総合研究所は、子どもたちの読書行動に関するデータをまとめ、「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」を発表しました。

本記事ではその中から、今の子どもたちの読書習慣と家庭環境との関係に関するデータを中心にご紹介します。

家庭の蔵書数が子どもの読書量に影響

子どもたちの平日の読書時間をそれぞれの家庭の蔵書数で比較してみると、蔵書の数が多い家庭の子どもほど、読書にかける時間が長いことがわかりました。

蔵書数30冊未満と100冊以上を比べると、小学1~3年生、小学4~6年生、中学生のいずれにおいても2倍ほどの差があらわれています。また、全体的に読書時間が減ってくる高校生でも、30冊未満と100冊以上では1.5倍の違いがあります。

この結果から、身近に本があるという環境が子どもたちの読書習慣につながっていると言えそうです。

ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より
ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より

親の働きかけは子どもが小さいほど効果がある

子どもたちの平日の読書時間を、「本を読む大切さ」を伝える保護者からの働きかけの有無で比較したデータもあるので、次に見てみましょう。

小学1~3年生では「伝えている」場合の読書時間が「伝えていない」の約2倍、小学4~6年生でも1.7倍以上となっており、中学生や高校生と比べて両者に開きがあります。

平均読書時間が「0分」の割合も、小1~3年生では「伝えている」と「伝えていない」の差が、他の学年と比べて顕著にあらわれました。

子どもが小さいときほど、保護者の働きかけが子どもの読書習慣につながりやすいといえるでしょう。

ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より
ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より

幼少期の読み聞かせが、その後の読書量にも影響

子どもが小さいほど保護者の働きかけが影響するのであれば、幼少期の「読み聞かせ」はどうなのでしょうか?

そこで、小学校入学前の保護者の本の読み聞かせ体験は、小学校入学後の読書時間にも影響があるのかを調べたデータを見てみます。これは同じ子どもを、小学1年生から中学2年生まで追跡調査した結果となります。

これによると、小学校入学前に「週4日以上」保護者から本の読み聞かせを受けた子どもは、読み聞かせが「週1日未満」だった子どもに比べて、小学1年生から中学2年生まで約1.5~2倍以上の読書量を維持し続けていることがわかりました。

読み聞かせの日数が多いほど、その後の読書時間が長くなる傾向にあるようです。

ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より
ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より

小学1年生での読書量がその後の習慣化にも影響

同じく小学1年生から中学2年生までの読書時間の個人変化を追ったデータを見ると、小学1年生の頃から多くの本を読む機会を持った子どもは、年齢を重ねて徐々に読書時間が減っていくものの、ある程度の読書量を保ち続ける傾向にあることもわかりました。

小学1年生のときに1日の平均読書時間が67.9分だった「多読層」の子どもは、小学1年生のときに1日の平均読書時間が0分だった「不読層」の子どもに比べ、中学生になってからも約2~3倍の読書量をキープし続けていました。これにより、年齢が小さいうちに本に親しむ時間が多いと、その後も読書の習慣が持続しやすいということがわかります。

ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より
ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より

家庭環境が子どもの読書時間を左右する

子どもはある程度の年齢になってからいきなり「本を読みなさい」と言っても興味を持てなかったり、そもそもどんな本を読んだらいいのか、どんな本が面白いのかがわからない、ということがあるのではないでしょうか。かといって、学校などからの指定図書ばかりでは「読まされている」という感覚があり、本当の意味で楽しめてはいません。

そこで大事なのは、家庭での環境です。まだ字が読めないような時期から、保護者が読み聞かせを行うことで子どもが本に興味を持ち、その中にある「物語」から想像力を膨らませることができるようになります。また、身近なところに本がたくさんある環境を作ることで、自分が興味のある本を選ぶ能力も身につけることができるようになるはずです。こうして「読書は楽しいもの」と子ども自身が感じることで、より多くの本に触れたいという欲求や、読書を習慣化させることが可能になるのではないかと感じる調査結果でした。

(マイナビ子育て編集部)

調査概要

【分析データ】
「子どもの生活と学びに関する親子調査」
調査テーマ:子どもの生活と学習に関する意識と実態(子ども調査)/保護者の子育て・教育に関する意識と実態(保護者調査)……同一の親子を対象に2015年から継続して追跡する縦断調査
調査対象:各回ともに約2万組の親子の調査モニターに依頼
調査時期:2015年~2022年の各年7~9月

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-