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2022年06月26日 06:41 更新

【対談】第2回:パパによる巨大迷路にマグロ解体ショー!? 保護者同士のコミュニケーション最先端 #保育園・幼稚園の頭のなか

子育て中の家庭にとってなくてはならない、保育園と幼稚園。本連載(全3回)では東京と埼玉で複数の園を運営しているお二人に、3つのテーマについて話し合っていただきました。第2回のテーマは「保育におけるコミュニケーション」です。

東京と埼玉で人気の幼稚園・保育園経営者2名による対談連載。第1回目では、「保育における子どもの教育とケア」をテーマに、中村さん・野上さんが運営する園についてお話をお伺いしました。

第2回目は、「保育におけるコミュニケーション」をテーマにお届けします。

ご協力いただいた方々

<左>野上美希(のがみみき)さん
学校法人 野上学園社会福祉法人 風の森を運営。久我山幼稚園、認可保育所picoナーサリ、アフタースクール久我山キッズなどを展開している。基準の2倍以上の職員配置で、保育の働き方改革を実施中。

<右>中村敏也(なかむらとしや)さん
株式会社SHUHARIを運営。埼⽟県志⽊市・朝霞市・新座市に「保育園 元気キッズ」(認可保育所・⼩規模保育所)を展開している。そのほか、病児保育、学童保育、児童発達支援事業、保育所等訪問支援事業、相談支援事業などを開設。著書に『発達が気になる子どもへの関わり方を教えてください! 発達障がい、グレーゾーン…』『保育園運営の教科書 保育・療育で地域オンリー1になる』(ともにかざひの文庫)がある

連絡帳アプリは、先生にとってもメリットが

野上さん(以下、野上):近年、保護者と園のやり取りは、紙からアプリに変わっていっています。うちの園は、すでに連絡アプリを使っていますが、中村さんのところはどうですか?
保育園の連絡帳(イメージ)
中村:うちも連絡アプリを使っています。じつは連絡帳からアプリに切り変えるときに「保護者のみなさんに、保育者の気持ちが伝わらないのでは」という危惧を持ったスタッフもいたんです。でも、やってみたら全然そんなことはなく、なんのクレームもなし! 保護者にとっても園にとっても、すごく便利でした。

野上:そうですよね。欠席や遅刻の連絡もアプリでできるので、保護者のみなさんはわざわざ電話しなくてよくなりましたし、園も職員の少ない朝の時間帯に子どもたちをみながら電話対応をしなくてよくなったのも素晴らしい点です。保育に集中できますからね。

中村:保護者の方にとっては、仕事などの合間や移動中に簡単に連絡帳を書いたり読んだりすることができるところもよい点だろうと思います。園としても行事のお知らせを一斉送信できるし、保護者側はそのお知らせを遡って、いつでもどこでもチェックすることができます。紙ベースだと、見当たらなくなることもあると思いますし。

野上:連絡帳アプリ以外に、保護者と園のコミュニケーションといえば、送迎時の会話が重要ですが、アプリで基本的なことを伝えられるぶん、子ども一人ひとりの細かな点についてお話できるようになっています。アプリで毎日の保育の様子がわかる写真もお送りしているので、ピンポイントで質問や相談もしていただきやすくなったのではないでしょうか。

中村:それは素晴らしいですね。うちは園の玄関や教室の入口に「ドキュメンテーション」といって、子どもたちが製作したものや、園での活動がわかる写真や動画を展示しているので、それが情報共有やコミュニケーションのきっかけになっていると思います。
先生たちが気づいた日常の何気ない一コマをドキュメンテーションにして、保護者誰もが子どもたちの園での過ごし方を感じられるようにしている(提供:元気キッズ)
工作のドキュメンテーション。この日は、丸、三角、四角を使って自由に制作。子どもたちの自由な発想が伺える(提供:元気キッズ)
野上:コミュニケーションといえば、個人面談も大事ですね。個人面談では、子育て全般や発達の悩みなど、いろいろな相談が寄せられます。普段から大事なお子さんを一緒にみている保育士に相談してもらうのはとてもいいし、ぜひ頼ってもらいたいですね。

中村:うちも同じです。お子さんの課題や発達などについてお話するにも、やはり普段からの信頼関係が大事だと思います。そのためにも、送迎時や行事のときの雑談なども大事ですね。子どもたちのためにも、保護者と園が上手にコミュニケーションを取っていけたらと思っています。

パパ同士のコミュニティが、自主的なイベントを企画

中村:保護者同士のコミュニケーションはどうですか? 園によっては公式の保護者会(役員会)があるようですが、うちにはありません。久我山幼稚園には「チームパパ」という会があると聞きました。どういう位置付けなのでしょうか。

野上:うちも公式の保護者会はなく、実は「チームパパ」はお父さん方が自主的に作られているグループです。約15年前に発足し、現在おおよそ300人くらいのお父さんがいらっしゃるなか、コロナにより少し減ってしまいましたが60人くらいが入られていて、年に4〜5回くらい、子どもたちのためにイベントを開催してくださっています。

中村:「チームパパ」は、どんなイベントをされているんですか?

野上:巨大迷路とか、マグロ解体ショーとか、雪を運んできて雪遊びをするとか、ダイナミックなものが多いですね。子どもたちは大喜びです。
有志のパパが集合し、子ども向けイベントの企画・運営をはじめとしたさまざまな取り組みを行っている(提供:久我山幼稚園)
2021年11月に実施したチームパパの謎解きイベントの様子。感染対策を徹底しながら、のべ531名の親子が参加した(提供:久我山幼稚園)
中村:ええっ? すごすぎませんか?(笑)

野上:そうなんです。さまざまな道のプロの方がいらっしゃるせいか本格的で、年々規模が大きくなっている気がします。ここ2年はコロナで活動が縮小していますが……。

中村:確かに。ここ数年は特に新型コロナウイルス感染症の影響で、パパ友やママ友を作る機会がない、出会えないという方も多いと思うんですが、保護者仲間とのコミュニケーションがうまくいくと子育てはラクになりますよね。うちの園では保護者の会はないんですが、行事などで出会って連絡先を交換したりされているようです。

野上:そうなんです。一番大変な保育園・幼稚園時代を共に過ごした保護者仲間は、きっと大事な存在になると思うので、保護者会や行事の際にぜひ話したりしてみてほしいなと思います。もちろん無理のない範囲で、ですが。

「送り迎えはパパ」が当たり前の時代に

中村:20年前からある久我山幼稚園の「チームパパ」は別としても、最近は本当にお父さんの育児参加が増えてきたように思います。うちの園も、朝の送りがお⽗さんという家庭がかなり増えました。10年前には、朝の登園時も夕方の帰宅時も、お母さんばかりが来られていたのが嘘のようです。

野上:うちの園は、送迎どちらもお父さんというご家庭が非常に増えています。たぶん、新型コロナの影響で在宅ワークが進んだ結果、お父さんも家にいるので送迎を担当されているんだと思いますが、とてもいいことですよね!
野上美希さん
中村:今では「イクメン」という言葉は古くて、もう当たり前の「お父さん」になったんでしょう。いいことです。お子さんの様子や発達、体調などについても細かく知っているお父さんが多いし、「子育てを手伝う」のではなく、当事者意識を持たれているなと感じます。

野上:そうですね。うちのオンライン説明会や見学にも、ご両親で参加される方が増えました。以前はお母さんがおひとりで来られることが多かったので、大きく様変わりしていると思います。そういう意味では、ご夫婦・ご家族のコミュニケーションもうまく取られているご家庭が多いのではないでしょうか。

地域とのコミュニケーションは、子どもにとって貴重な体験の場

中村:地域と園とのコミュニケーションはどうでしょうか?

野上:以前は夏祭りやハロウィンなどのイベントに地域の親子を招いたり、また園に無料のカフェを開設して子育て相談を受けたりしていたんですが、今は新型コロナの影響で休止しています。今年こそ再開できたらいいなと思っていますが、まだわかりません。まずは、屋外でのイベントなどからでしょうか。

中村:うちも新型コロナウイルスが流行してからは、いつもお世話になっている地域のみなさまとの交流はほぼできていません。すごく残念なことですよね。

野上:これまで中村さんの園では、どんな交流をされていたんでしょうか?

中村:以前は近くの介護施設に子どもたちと一緒にうかがったり、反対にご招待したりして交流していました。一緒に歌ったり、ゲームをしたり。年配の方たちは子どもたちがとにかくかわいいと喜んでくださるし、年配の方たちに褒めていただいた子どもたちもうれしそうで、とてもいい機会でした。
中村敏也さん
野上:そういった地域との繋がりは大事ですよね。お互いに助け合ったり、交流したり、いろいろな取り組みがまたできるようになるといいなと思います。

中村:本当にそうですね。子どもたちがさまざまな人とのコミュニケーションを体験するためにも、新型コロナが早く収まってほしいなと思います。

次回3回目は、最終回。「子どもを守るための、保育における安全性」をテーマにお届けします。

(取材・文:大西まお、撮影:佐藤登志雄、編集:マイナビ子育て編集部)

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