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2022年06月25日 06:41 更新

【対談】第1回:子どもが主体性を持って遊べる保育を! 園の経営者が、令和の子育てについて思うこと #保育園・幼稚園の頭のなか

子育て中の家庭にとってなくてはならない、保育園と幼稚園。本連載(全3回)では東京と埼玉で複数の園を運営しているお二人に、3つのテーマについて話し合っていただきました。第1回のテーマは「保育における子どもの教育とケア」です。

令和の子育てについて、保育園・幼稚園側は何を思う?

これまで数々の子育て情報をお届けしてきたマイナビ子育て。保育士の先生や大学教授の先生、小児科の先生や管理栄養士の方など、乳幼児に関わるたくさんのスペシャリストにご登場いただきましたが、この度、東京と埼玉で人気の幼稚園・保育園経営者2名による対談が実現しました。

令和の幼稚園・保育園はいったいどう進化しているのか、最近の子育てニュースや流行の子育てキーワードについてどう感じているのか。保育園・幼稚園の運営元ががどう考えているのか、気になる保護者も多いのではないでしょうか?

この短期連載では、全3回に渡って、保育園経営者の“頭のなか”をのぞいてみました。第1回目は、「保育における子どもの教育とケア」をテーマにお届けします。

ご協力いただいた方々

<左>野上美希(のがみみき)さん
学校法人 野上学園社会福祉法人 風の森を運営。久我山幼稚園、認可保育所picoナーサリ、アフタースクール久我山キッズなどを展開している。基準の2倍以上の職員配置で、保育の働き方改革を実施中。

<右>中村敏也(なかむらとしや)さん
株式会社SHUHARIを運営。埼⽟県志⽊市・朝霞市・新座市に「保育園 元気キッズ」(認可保育所・⼩規模保育所)を展開している。そのほか、病児保育、学童保育、児童発達支援事業、保育所等訪問支援事業、相談支援事業などを開設。著書に『発達が気になる子どもへの関わり方を教えてください! 発達障がい、グレーゾーン…』『保育園運営の教科書 保育・療育で地域オンリー1になる』(ともにかざひの文庫)がある

地域の子育てを応援したい! 保育園経営者の熱い思い

中村さん(以下、中村):はじめまして。今日は、野上さんと保育についていろいろと話し合えるとうかがって、楽しみにしていました。

野上さん(以下、野上):はじめまして。私もです。いつも中村さんの素晴らしい取り組み、記事等で拝見していました。まず、それぞれの園の紹介から始めましょうか。

中村:はい。私は「元気キッズ」という名前の保育所を運営しています。埼玉県の志木市・朝霞市に認可保育所、志木市・新座市・朝霞市に小規模保育所があります。「元気キッズ」という名前にしたのは、子どもたちの体の元気も、心の元気も、さまざまな元気を全部受け止めていこう、という思いからです。地域に密着して、親子の「困った」に手が届く子育て支援を心がけています。
元気キッズ 第二朝霞根岸台園(提供:元気キッズ)
野上:私は72年前から続く学校法人 野上学園 久我山幼稚園を母体に、近年は保育のニーズにもお応えして複数の保育園を運営しています。中村さんと同じく地域の子育て支援をしたいという思いがあり、久我山幼稚園では預かり保育やアフタースクールも行なっているので、0歳から12歳までと年齢も幅広いです。茶道やリトミックなどのさまざまなメニューを用意しているところが特色です。
久我山幼稚園 園庭(提供:久我山幼稚園)
中村:72年! それは長い歴史がありますね。

野上:先々代が食料配給所を幼稚園にしたのが始まりで、すでに親子三代に渡って通ってくださっている方もいらっしゃるんですよ。

「預けるだけ」じゃない、さまざまな体験ができるカリキュラムも

中村:今、お話させていただいている場所は、久我山幼稚園の茶室ですが、すごく素敵です。子どもたちが茶道を体験できるとは驚き!

野上:茶道を行うのは、年中と年長の子どもたちなんですが、とても楽しんでいるんですよ! 茶道は必ずおいしいお菓子が出てきますから、それが子どもたちにとって何よりも魅力なはず(笑)。お茶室に入ると、まずは茶道の先生から季節にちなんだお話を聞くことができるんです。たとえば、七夕には織姫と彦星の話をしたり。そうして、お菓子とお茶を楽しみながら、自然と日本の伝統文化を知ることができます。

中村:素晴らしいですね。お抹茶が苦くて飲めない、ってことはないんでしょうか?

野上:子どもたちのお抹茶はかなり薄くしていますし、甘いお菓子を先に食べるからか、みんなおいしく飲めているようです。年長になると、毎月のお誕生会に保護者の方を招いて、子どもたちがお茶をたてて「今まで育ててくれてありがとう」とおもてなしをするイベントを行なっているんですが、みなさん、とても喜んでいます。そして子どもたちは誇らしそうです。
久我山幼稚園でのお茶会の様子(提供:久我山幼稚園)
中村:え〜それはいいですね。私が保護者なら、うれしくて泣いてしまいそうです。久我山幼稚園には、他にどんなカリキュラムがあるんでしょうか?

野上:リトミック、絵画、体操、英会話があります。いわゆる「お教室」や「お勉強」ではありませんが、少しずついろいろな体験ができるようにと思い、行なっています。

中村:そんなにさまざまな種類があるんですね! 楽しそうです。いろいろ体験してみないと、好きかどうかもわかりませんもんね。

野上:例えば、英会話は月2回ほどネイティブの先生を招いて英語で遊んだり、コミュニケーションを学んだり、異文化を知るといったことが目的です。私たちの世代だと、外国人に会うと緊張しちゃって話せないということがありますよね。だから小さなうちから、自然とコミュニケーションが取れるようにと思っています。そういうことでいうと、中村さんのところでは「サークルタイム」というおもしろい取り組みをされているとか?

中村:よくご存じですね! やはり自分の気持ちを言葉で表現すること、自分の意見を伝えることは大事ですが、幼児期はまだ上手に話せないことが多いですよね。そこでうちの園では、みんなで輪になって座って話し合う時間「サークルタイム」を設けています。どんな発言も先生は否定しないので、みんな自由に話せるんです。
サークルタイムの様子(提供:元気キッズ)
野上:いいですね。やはり自分の意見を言うことを歓迎してもらえると、話しやすくなります。子どもの主体性を大事にされていると感じます。

子どもが主体的に遊び込める保育が基本! 親が知りたい園の学びの姿勢

中村:保育において、子どもの主体性って大事ですよね。たとえばうちの園の場合、園にもよりますが、公園、園庭、室内などでの遊びを子ども自らで選択できるプランニングボードを用意したり。やりたいことだからこそ、しっかり集中して遊ぶことができると思うんです。公園に行くときも、それぞれに「〇公園」「△公園」など、複数から選べるようにしている園もあります。

野上:なるほど! 自分で遊びや行き先を選べるのはいいですね。

中村:外遊びでは、体を大きく動かすことだけでなく、季節を感じてもらえるよう工夫しています。例えば、冬の寒い日にバケツに水を張っておくと凍りますよね。そうすると、子どもたちはびっくりして「どうして凍ったんだろう」と考えたりして探究心の元にもなりますし。
中村敏也さん
野上:季節感、大事なことですよね。うちでも外遊びも大事にしています。園庭で遊んだり、近隣の公園に出かけたり、その季節の植物を愛でたり。室内遊びはどうですか?

中村:工作ができるコーナー、絵本が楽しめるコーナー、実験などができるコーナーなどのなかから、その日に自分がしたい遊びを選ぶことができる「コーナ保育」をしている園もあります。

野上:自分の好きなことを選べると、より主体的に遊べそうですね! うちの園でも「ままごとコーナー」を中心にコーナー保育をやっています。抽象的な形のものを揃えて、「見立て遊び」が楽しめるようにしたり。

中村:想像力が伸びそうですね! 私は最近、改めて絵本の可能性はすごいなと思っています。ただ読み聞かせするだけではなくて、子どもたちが想像力を働かせて眺めて楽しんでもいいし、自由に使えますよね。そのまま、劇に発展させたりすることもできます。

野上:絵本の世界は、広がりがありますよね。うちは最近、絵本のなかの食べ物を、栄養士さんがおやつにしてくださっています。先日は「桃太郎」を読んだあとに、おやつとしてきび団子が出されたんです。すると、これまできび団子が何か知らなかった子どもたちが「これがきび団子なの?」とすごく喜んでくれて。「おいしいから元気が出て戦えるね」なんて言ったり。ぐりとぐらのパンケーキも出ていました。

中村:それはうらやましい! 大人も食べたいおやつですよ。食育にもつながっていくとは、やはり絵本の可能性はすごいですね。

話題のSDGsやジェンダー、おむつのサブスクって、園はどう考えている?

野上:そうそう、絵本といえば、外務省で国内外の持続可能な開発目標(SDGs)推進を担当してきた原琴乃さんの絵本『わたしがかわる みらいもかわる SDGsはじめのいっぽ』(汐文社)に関わる機会があったんですが、SDGsも絵本なら子どもたちに伝えやすいと思いました。

中村:SDGsも身近になってきましたね。うちの園でも、普段から食品の廃棄を減らすこと、電気を無駄遣いしないこと、コンポストを使うことなど、子どもたちに伝わる平易な言葉で話しています。

野上:大事なことですよね。あと近年すごく変わったことといえば、ジェンダー感ではないでしょうか。昔は「男の子らしく、女の子らしく」といったことを、幼稚園や保育園でも言うことがありましたが、今は性別で「らしさ」を押し付けることはなくなりました。

中村:本当にそうですね。男の子の遊び、女の子の遊び、といった分け方もしません。みんなが「その子らしく」遊べることが重要です。

野上:じつは、うちの幼稚園の制服は、男の子はズボンのみ、女の子はスカートのみでしたが、近いうちに女の子もズボンを選べるようになります。
野上美希さん
中村:時代は進んできていますね。あと最近の流れといえば、おむつのサブスクがスタートしたことでしょうか。うちもやっていますが、毎月定額料金を負担いただくことで、保育園がおむつを用意するサービスです。もちろん、使用済みおむつの持ち帰りもしなくてOK。おむつに名前を書いて持っていき、さらに使用済みおむつを持ち帰るのは、保護者のみなさんも大変だと思って導入しました。

野上:うちもです。帰りに使用済みおむつを持っていたら、密閉したらわからないとはいえ、お買い物にも行きづらいですもんね、それに、じつはそれぞれのお子さんのおむつを管理するのは、先生たちにも負担です。うちでは先生たちの働き方改革のひとつとしても、おむつのサブスクは重要だと思っています。

中村:なるほど! それもそうですね。

野上:保育は、先生です。子どもたちにさまざまな経験を積ませてあげるためにも、余分な手間を減らしていくことこそ、大事だと思います。

中村:確かに、そうですね。先生方の無駄な手間をなくすことも、保育の質の向上につながると思います。

次回は、保護者と園、保護者同士、地域と園など「保育におけるコミュニケーションの取り方」についてお届けします。

(取材・文:大西まお、撮影:佐藤登志雄、編集:マイナビ子育て編集部)

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