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2022年04月23日 07:15 更新

老後はやっぱり夫婦で2000万以上必要? お金の話が苦手な共働き夫婦の「大問題」

30代共働きで子育て中のYさんは、値上げラッシュのダメージもあり家計管理に悩んでいるといいます。そこでファイナンシャルプランナーの鈴木さんに、Yさん一家の家計改善についてアドバイスしてもらいました。

Yさん一家の収支表

夫婦でお財布を別々にしていて、それぞれの収入も支出も把握していないというYさん。この企画のために夫婦とも、あらためて一ヶ月の支出を書き出してみました。

夫(39歳)、妻(37歳)、子ども(8歳)の3人家族。東京在住

月々の支出

▼夫(39歳)自営業:手取り月25万~40万
住宅ローン:145,000円(残り2000万)
食費:30,000円
お酒:8,000円
wi-fi通信費:6,000円
スマホ:3,000円
Netflix:990円
国民年金保険料:16,540円
国民健康保険料:45,880円
学資保険(2011〜2026年):10,684円(満期300万円)
米ドル建終身保険(2011〜2026年):7,500円(死亡保障:3.4万ドル)
医療終身保険A:4,620円
医療終身保険B:9,770円
都民共済:1,200円
ーーー
支出計=289,184円
余りは小遣い/貯金しても各種保険と税で毎年ほぼゼロになる

火災保険:79,200円/年
地震保険:45,000円/年
住民税:181,200円/年
固定資産税:214,300円/年

▼妻(37歳)会社員:手取り月27万
光熱費(電気ガス):52,000円
水道:5,000円
食費:30,000円
スマホ:4,000円
子の習い事(塾):17,000円
学納金・給食費:5,000円
学資保険(2017年〜2027年):29,715円(満期500万円)
米ドル建終身保険(2017〜2027年):16,500円(死亡保障:5万ドル)
医療終身保険:5,555円
都民共済:2,000円
医療費:15,000円/月(子の歯列矯正、自身の歯列矯正、耳鼻科)
ーーー
支出計=181,770円
定期積立(50,000円)/余りは小遣いとして昼食代やこまごまとした買い物に消える
現在の貯蓄額は定期積立預金の600万
洋服、化粧品、子供の服、本などはボーナス含め小遣いで購入
大きい買い物をするときは定期を崩している

Yさんのお悩み

悩み1 夫婦でお金の話をしづらい
悩み2 光熱費が1月から急激に高くなってしまった
悩み3 今後の物価上昇にも恐怖を感じている
悩み4 子どもの塾代など教育費が今後かかる予定
悩み5 家の修繕積立費を用意していない

Y家の資産総額が見えないことが大問題!

Yさん 過去にお金に関する話し合いを夫婦でじっくりしようとして離婚スレスレの喧嘩に発展してしまい、「家賃は夫」「光熱費と子どもの養育にかかるお金は妻」といった振り分けでなんとなくやってきました。でも、このままではよくないような気がしていて……。

鈴木FP 現在のYさんご夫婦はお互いの収入を正確に把握しておらず、「家計」というものが見えていないですよね。ご夫婦での話し合いができておらず、それが原因で、Y家の家計における全ての資産総額が見えないのが、一番大きな問題と言えますね。

Yさん 一家の全資産……考えたことなかったです。

鈴木FP 夫の貯金がいくらあるのかわからず、Yさんの貯金も個人的なものだとすると、家族としてのライフイベントや、老後に備えるお金など、不安ではないですか?

Yさん とても不安です。よく、老後に2000~3000万円必要とか言われますが、まったく貯められる気がしません。でもお金の話は喧嘩になりがちで。

鈴木FP 実は、夫婦でお金について話し合うと喧嘩になってしまうのは、すごくあるあるなんです。

Yさん なんででしょう?

鈴木FP お金のことをオープンに話したくない人は日本では多いですし、そもそもプライバシーにかかわることですから、たとえ夫婦でも踏み込まれたくない人は多いですよ。

Yさん 私も自分のお金の使い道について夫に口出しされたくないですね。

鈴木FP でもプライバシーに踏み込まなくても家計管理はできるんですよ。たとえば別に相手の収入が細かくいくらかなんて知らなくてもいいんですよね。

Yさん そうなんですか!?

鈴木FP お互いが「家計」にいくら入れるか、が大事なんです。これは一案ですが、たとえば毎月お互いに20万円ずつを家計に入れる、などと決めてしまうのはどうでしょうか? その40万円で、家賃や光熱費、食費、お子さんにかかるお金、保険など出費をやりくりします。そして家計の貯金用口座を二人で管理して、1人数万円ずつでもいいので、Y家としての貯金をするのです。
あとはそれぞれ、お小遣いでもいいし個人の貯金をしてもいいし、プライバシーということで踏み込まず自由に使っていいんです。

Yさん なるほど。

鈴木FP 旦那さんは毎月決まった額の収入ではないので、あまり大きい額を設定すると苦しくなると思います。ただ、その代わり、税金と国保に関しては、旦那さんの事業収入から払ってもらうようにしてください。

(photoAC)

老後資金は本当に2000~3000万貯めなきゃダメ?

Yさん でもどうやって話を持ち掛けたらスムーズにことが運ぶでしょう?

鈴木FP おそらくですが、旦那さんも老後資金などは不安だと思うんです。退職金はなく、自営業なので年金も少ないです。ですから、「私自身も不安だから一緒に解決していこう」と持ちかけてはどうでしょうか。
Yさんご夫婦がとても素晴らしいのは、学資保険で800万用意されていて、大学資金の心配がほとんどいらないことです。とはいえ、お子様が大学進学する頃には、50歳手前ですので、その時貯金がほぼないと、老後に対する不安はあるかもですね。

Yさん 間違いなく不安だと思います。もちろん定年関係なく働き続けるつもりですし、私も会社員という形でなくても健康なうちは65歳過ぎても働きたいと思っています。その場合、結局いくら老後資金が必要なのでしょうか?

鈴木FP 先ほどYさんがおっしゃっていた「老後資金は2000~3000万必要」というお話って、数年前に出された試算なんです。老後に、年金だけだと不足する分を貯金から取り崩して生活すると、大体いくらぐらいお金がかかるか計算し、そこから65歳時点での必要な貯金を割り出したものです。
ただし、人によってこの金額は大きく変わり、ほとんど貯金はいらないという人もいれば、もっと必要な人もいるので、あまり鵜呑みにはしなくて良いデータなんですよ。
60代以降も働き続けて収入を得られれば、準備しておかないといけない老後資金は大きく減らせますので、できるだけ長くお仕事を続けることが、一番大事な老後資金対策と言えますね。
ちなみに旦那さんは年金の未納期間はないですか?

Yさん 恥ずかしながら年金は未納の時期もあって、払い始めたのはここ数年のようです。

鈴木FP そうすると満額もらえないので、もしYさんが年間で150万円など年金を受け取ったとしても、夫婦で生活するにはなかなか厳しいですね。今は月々、50万ほどの支出ですから……。

Yさん 大赤字ですね

鈴木FP もちろんお子さんにかかるお金や満期を迎えた保険、住宅ローンはなくなりますが、それでも赤字です。
その赤字はいくらなのか? そして赤字を補填するには、いくら老後資産を用意しておけばいいのか? ここをご夫婦で一緒に計算して割り出してください。
年金額は、「ねんきんネット」というWEBサイトで確認できますので、ぜひアカウントを取得して。Yさん夫妻の年齢だと、「ねんきん定期便」にはまだもらえる年金額は表示されていません。
また、終身保険も老後のために入っていると思うので、これは資産にカウントしてOKです。

Yさん やってみます。ただ正直、2000万って額が大きすぎて貯められる気がしません。老後も働き続ける前提なら、最低どのくらい資産を持っていればいいのでしょうか?

鈴木FP それでは、80歳まで就労収入で生活費を全部出せる前提で考えますね。まず、もし突然働けなくなっても1年間は大丈夫なように、生活費×12ヶ月分は用意しましょう。一ヶ月の支出が30万なら、360万です。プラス、大きな病気や介護のリスクもあるので、老後の医療費として1人当たり300万、合計600万。これで大体、1000万くらいでしょうか。就労収入だけで生活できる間は、年金を受け取らずにいると増やすことができますよ! 今は75歳まで受け取りを遅らせられます。また、年金を受け取り始めたら、80歳以降のために貯金しておきましょう。

Yさん なんだかイケそうな気がしてきました……!

鈴木FP ただ、もちろん未来は不確定ですから、これで万全! ではないですよ。ご夫婦の年金受け取り予定額や、終身保険や米ドル建保険などで、老後にどのくらい収入があるか、ご夫婦で一緒に調べて、自分たちのマネープランを試算してみてくださいね。
あとは、マイナビ子育ての読者さんはまだ若いですしお子さんも小さいのでピンと来ないかもしれませんが、50歳を過ぎたら生活レベルを落とす練習をしたほうがいいです。

Yさん 生活レベルを落とす、ですか?

鈴木FP 自分のもらえる年金額に見合った生活レベルにできるよう、意識的に下げていくんです。今は人生90年、下手したら100年あります。60代でもまだまだ元気でしょうが、50歳から65歳まで15年間かけて徐々にサイズダウンして、なるべく支出を抑えられるようにしていくと、お金の面で楽になるんじゃないかなと思います。


次回、後編では鈴木FPがY家の収支改善をさらに具体的にアドバイス。光熱費が5万ごえ、食費は予算を決めずに食べたいだけ買う!? それはやっぱり危険です。ではどこから手をつければいいのでしょう?

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