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2021年12月17日 11:05 更新

教育費って結局いくら貯めればいいの? 中学受験に課金しすぎて破綻も……【大学まで計画的に貯める方法】

子育てで一番お金がかかるものといえば、将来の教育費。でも「国公立でも教育費が2000万必要」「私立なら倍以上」といった話を聞くと、「何千万円も用意するなんて無理!」と混乱してしまうこともありますよね。でも、出産のタイミングから計画的に貯め始めることができれば……!

子供1人につきかかる「教育費」の総額は、おおよそ800万~2400万円ほどと言われます。でも、妊娠・出産を経てすぐの時点ではまだ赤ちゃんなのでなかなかピンときませんよね。

自身も大学1年生と高校1年生のお子さんを育てるファイナンシャルプランナー・鈴木さや子さんに、マネーリテラシー初心者のママ編集者が、長いスパンで教育費について考えるコツをききました。

「中学受験のための貯蓄」はおすすめできません

(photoAC)
鈴木FP 教育費の不安をお持ちの親御さんはとても多いですよね。その不安をなくすためにはまず、全部でいくらかかるかの目安を知ることだと思います。たとえば公立小学校の学費をわざわざ貯金しておくという家庭はあまりないと思うのですが、中学から私立を目指すと一気に教育費は膨れ上がりますので、私も「中学受験の費用や私立中学の学費を貯金しておいたほうがいいでしょうか」という相談を受けることがしばしばあります。ただ……中学受験のために生活費を切り詰めて貯金する、というのは私はおすすめできません。

ーーどうしてですか? 小さいころから中学受験や私立中進学を見据えてお金を貯めておくというのは、悪いことではないように思うのですが……。

鈴木FP もちろん継続的に貯める力があるご家庭ならいいと思いますが、「中学受験のための貯金」というのは、正直おすすめできないんです。
というのも、私立中学に入ってから、公立の3倍近くのお金がかかりますし、その後も教育費はずっとかかるわけです。
ですから中学受験をするのであれば、中学進学後も塾の費用以上の学費がかかることを見越して、受験の段階から「手取りでやりくりできる範囲で」というのが理想ですね。そこを手取りで出していけないと、その先が厳しいと思います。

ーー中学受験の塾に通うと、具体的にどのくらいかかりますか?

鈴木FP 一般的に、中学受験は小学4年生(小3の2月)からスタートします。4年生で70万、5年生で80万、6年生で90万ほどかかるイメージですね。もちろん塾にもよりますし、都立の中高一貫校を目指す場合は5年生からのケースも多いのでその分少なくなるかも知れません。6年生では月に5~8万はかかります。塾の夏期講習や冬期講習などでも一度に20万円くらいポンと飛びますし、トータルで大体200~300万くらいでしょうか。
(photoAC)
ーーやっぱり結構かかりますよね……。手取りから捻出するのは多くの家庭にとって厳しいような。でも中学受験をテーマにしたドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系)を見ていると、ごく普通の家庭の子も私立中学を受験していますよね。最強の塾講師が「中学受験は課金ゲーム」「親はスポンサー」と堂々言い放ちます。

鈴木FP ドラマとはいえ、見ていてマネープランが心配になります(苦笑)。世帯年収が500~600万ほどでも、上手に生活費を切り詰めていたり社宅で家賃が低かったりすれば、可能かもしれません。しかし年収1000万でも家賃が高額だったり無謀な住宅ローンを組んでいたりすると厳しいのではないでしょうか。高校3年生までの教育にかかるお金は、できるだけ手取りから出せる進路選びをしてほしいですね。

ーーうーん、でもドラマなどメディアの影響もあるのかもしれませんが、東京近郊では中学受験を検討するご家庭は多いですよね。

鈴木FP そうですね。私のところにも、頑張って子どもを私立中学に行かせてあげたいから……とマネープランのご相談をしてくださるお客様は多いのですが、実際のキャッシュフロー表をつくると「え、足りない。どうしよう?」となる人も少なくありません。
公立の学区の中学が荒れていてとても進学させられないというケースもあるとは思いますが、一方で「みんな受験するからうちも」と安易に塾通いを始めるパターンも。よくあるのが、学童の代わりに塾へ行かせ始めたら、そのままなんとなく受験コースになってしまったというパターンです。
もちろん子ども自身にも、友達と同じところへ行きたいとか、いじめっ子と同じ公立には行きたくないとか、やりたいことがあるとか、様々な受験の動機はありますし、お子さんを応援したいという親御さんの気持ちもわかります。であるならば、しっかりしたマネープランを立てないといけません。
家計に見合わない進路選びで、家計が崩壊してしまうおうちもあります。お子さんの進路選択は、「この先ずっと余裕を持って教育費を払い続けられるか」を念頭に置いてください。

児童手当を全額貯金すれば200万円貯まる

(photAC)
ーーうちは中学受験を考えていないのですが、それでも高校受験はありますよね。今から憂鬱です……(子どもは小学4年生)。もし都立にどこも受からなくて私立の高校に進学することになったら、やっぱり学費が高いんですか?

鈴木FP 2020年4月から国の「私立高校授業料実質無償化」がスタートしたので、私立高校の学費は今はそれほど心配しなくても大丈夫だと思います!
これまでは、公立高校に通う場合の高等学校等就学支援金(年間11万8,800円)に、保護者の所得に応じて支援額が加算される仕組みだったのですが、制度改正により支援金が年間39万6,000円にUPしました(所得制限あり)。
さらに東京都では独自の助成制度「私立高等学校等授業料軽減助成金」もあるので、私立高校へ進学する場合でも実質、授業料はタダ、もしくはかなり抑えられます。その他の自治体も学費補助の助成金を用意しているところもあります。もちろん授業料以外に、制服代や修学旅行の積立金はありますし、定期代など交通費もかかりますが、この支援は大きいですよね。
ちなみにこれは申請制度なので、子どもが高校から案内の封筒をもらってきたら、絶対にチェックして申請するようにしてください。所得制限がありますので、対象になるかどうか調べておくと良いですね。ただし、支援制度がいつまで続くかはわかりませんので、ニュースにもしっかりアンテナを張っておいてくださいね。

ーーめちゃくちゃ安心しました。そしたら次は、大学受験ですよね。公立の小中学校から高校まではそれほど学費がかからず手取りで回せたとしても、大学はそうはいきません。

鈴木FP そうです。でも、産後のタイミングで大学進学を見据えた教育費のマネープランを立てておき、それに沿って18年間貯蓄などでお金を用意できていれば大丈夫です。

――「学資保険をかけてるから大丈夫じゃない?」なーんて思っちゃったりもするんですけど……(笑)。

鈴木FP 学費保険だけで、大学卒業までにかかるお金を賄えると思いますか?

――えっ……(絶句)。

鈴木FP 大学時期にかかる教育費は、国公立で年間105.8万円、私立文系は143.2万円、私立理系は183.3万円ほどになります(入学金除く、授業料・施設設備費・通学費・教科書代など含む)。学資保険では「18歳満期200~300万円」のコースに加入している人が多いと思うのですが、上記を加味すると、受験費用~入学金~2年目の途中くらいまでの授業料で300万円は消えると考えてください。

ーー大学2年生以降の授業料は……老後用の貯金を切り崩したりするんですかね?

鈴木FP うーん、まあ、大抵の親御さんはまだ働いて稼いでいる時期だという想定で、なんとか捻出していくんですが……不安にはなりますよね。だから私は、学資保険が300万円では本当は足りないなと思ってます。

ーーいくら用意しておけばいいんですか?

鈴木FP 理系だともっとかかりますが、文系なら500万あればいいのではないでしょうか。私はお客様には学資保険を含めて「中3で200万、高3で300万」を準備することをおすすめしています。とはいえ、児童手当を生まれてからずっと一度も使わずに貯金しておけば、約200万円になりますから、意外と貯められるものですよ。

ーーなるほど、児童手当を! しかし……振り込まれるたびに生活費の一部にしちゃうというケースも「あるある」ですよね。

鈴木FP 生活費用口座に振り込まれると、どうしても使ってしまいがちです。そこで、児童手当の振込先は「絶対に触らない、貯金専用の口座」にすることをおすすめします。所得制限にかからなければ、3歳までは毎月1万5000円、それ以降は毎月10000円が15歳まで自動的に貯まります。是非、児童手当は貯める仕組みにしてください。
私がおすすめしているのは、教育費として積立預金・児童手当の貯蓄・学資保険・つみたてNISAなどを組み合わせることです。一例をお見せしますね。
①積立預金=月々8000円、15年間で約144万円
②児童手当=15年間で約200万円
③学資保険=18歳で300万円
④つみたてNISA=月々5000円積立、18年間で約128万円(年利2%の場合)
鈴木FP この組み合わせなら、成長とともに積立が楽になります。10歳で学資保険の払い込みが終わり、15歳で積立預金も貯まれば、15~18歳はつみたてNISAの月々5000円だけになりますよね。

ーーそう考えると、なんだか貯められそうな気がしてきました。

鈴木FP 教育費は「子どものため」ですから、親としては湯水のように使ってしまいがちです。その結果、家計が破綻してしまった方も見てきました。ですから、親の「これ以上は出さない」という確固たる意志が必要になります。
特に中学受験に関してはついつい、個別塾を併用したり家庭教師をつけたりと、ズブズブ課金してしまいがちなのですが、気をつけていかないとおそらく気づいたときにはすっからかん。習い事や留学なんかもそうですね。大学まではお金がかかることを踏まえて、マネープランを立ててくださいね。

(取材・構成:マイナビ子育て編集部)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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