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2022年03月15日 09:29 更新

2023年に廃止の「ジュニアNISA」今からでもやっておいた方が良い? お金のプロに聞いた

2016年にスタートした「ジュニアNISA」。ジュニアと名がつく以上は、子どものためにやっておいた方がいいものなの? 投資未経験の編集者がファイナンシャルプランナーの鈴木さんに聞きました。

NISA(ニーサ)とは「少額投資非課税制度」といって、株式や投資信託をする際に得られる売却益と配当にかかる税金が、一定の制限つきで「非課税」になる制度です。

本来、貯金や投資で得た利益には税金はかかります。しかしNISAで投資すると、期間や限度額など一定の条件の上でかからなくなるのです。

この制度は家計における長期的な資産作りを支援・促進するために作られました。また、日本の個人の金融資産は貯蓄に偏っているため、NISAを通じた株式市場への資金流入で、市場を活性化させて経済成長を促すことも期待されています。

NISAには3つの種類があり、それぞれ非課税となる期間や投資対象、運用期間の条件が異なります。今回はそのうちのひとつ「ジュニアNISA」について取り上げます。

ジュニアNISAって何?

(photoAC)
ーー子どもがいるならジュニアNISAをやった方がいいのでしょうか?

鈴木FP ジュニアNISAでは0歳から子ども名義の口座を開設し、投資をすることができます。さて、このジュニアNISAをやった方がいいのかどうかですが……その前にどういう仕組みなのかを解説していきますね。

ーーなにしろ名前に「ジュニア」とついていますし、0歳の子どもから口座を開設できるんですよね?

鈴木FP 0歳から19歳の未成年者専用の制度で、主に子どもの大学進学や就職後に使う資金を作る目的での利用が想定されています。この4月からは18歳で成人なので、17歳までとなります。 0歳の子は自分で運用できませんので、子ども名義の口座ではありますが、親や祖父母など二親等以内の人が代わりに運用できる制度です。

ーー年間の投資上限額も定められているんですよね。

鈴木FP 年間の投資上限額は80万円まで。つみたてNISAでは40万円までなので、その2倍になります。たとえばご夫婦ではつみたてNISAを満額、お子さんが2人いたとしてどちらもジュニアNISAで満額投資したら、一家で年間240万円まで非課税で投資できますね。
ただし、前回お話ししたつみたてNISAの非課税期間は20年ですが、ジュニアNISAの非課税期間は一般NISAと同じ5年なので、5年経ったら、非課税で運用を続けるための手続きをしないと、課税口座に移されてしまいます。ここがちょっと面倒くさいです。

ーー別の口座ですか?

鈴木FP そうですね、「非課税口座」の中にある別の枠組みとでも言いましょうか。現在、ジュニアNISAは原則として18歳までは払い出しができません。なので、ややこしいのですが、ジュニアNISAでは3つの口座を作ることになります。といっても開設手続きは一度で済みますので、安心してください。
1つは非課税で運用するための「非課税口座」です。
2つめは、投資用のお金や、商品を売却したお金を管理する専用の払い出し制限付き「課税ジュニア口座」。
そして3つめは、いわゆる未成年用の証券口座である「未成年専用口座」で課税口座となります。この口座を元々持っていた場合は先の2つの口座を追加することになります。
そして、「非課税口座」には、非課税期間が終わった商品を非課税で保有し続けるための「継続管理勘定」という別の枠組みもあります。

ーーややこしいし面倒くさいです……。

鈴木FP そうですね(笑)。でもジュニアNISAは2023年で廃止となり新規に株など投資商品を購入することができなくなり、2024年以降は自由にお金を払い出せるようになります。この点はメリットと言えます。

ーーそこもわからないんです。ジュニアNISAをやってみた方がいいのかなと思ったけれど、2023年で廃止されてしまう。期限はもうすぐそこまで迫っているんですよね? 駆け込みスタートして意味があるのでしょうか?

鈴木FP では次にその点を解説しますね。

2024年以降は払い出しが自由になる

鈴木FP 2024年以降のジュニアNISAは新規の投資は不可で、2023年までに利用していた人の継続のみになりますが、2023年までに投資した資産は、ジュニアNISAの制度廃止後も、子どもが18歳になるまでは非課税で運用できます。

ーーなるほど、非課税での運用は続けられるんですね。そのうえで、いつでも払い出せるようになると。

鈴木FP ただし前述したように、非課税で運用を続けるには、5年の非課税期間が終了した商品を継続管理勘定に移す手続き(これをロールオーバーと言います)が必須です。また、商品はいつでも売却できますが、払い出す時には、売却して得たお金が入っている課税ジュニア口座から、すべてを払い出す必要があり、口座は廃止になります。
これだと使いづらいのでは? という声もききますが、ジュニアNISAを利用することで通常利益にかかる20%超の税金がなくなるというのはやはりメリットではないでしょうか。

ーー20%超ということは、たとえば株や金融商品を売却して10万円の利益が出た場合、2万円が税金として引かれてしまうということに?

鈴木FP そうなります。銀行の預貯金の利子にも同じ税率がかかっていますが、利子はほとんど増えませんから普段意識しませんよね。でも額が大きければ引かれる税金も大きくなるので、その影響を感じますよね。

ーー意識してませんでした……なんだか、あらためてショックを受けました。それは「非課税で投資したい」ってなりますよね。

鈴木FP ですので、NISA自体はぜひとも活用したい制度なんです。

将来のお金を投資で作るには、長期&積立が大事と心得て

(photoAC)
ーージュニアNISAについてよくわかりました! 少し「つみたてNISA」についても教えて下さい。投資初心者には「一般NISA」や「ジュニアNISA」より「つみたてNISA」の方が良いと前回おっしゃっていましたよね?

鈴木FP 私はつみたてNISAをおすすめする理由は大きく三つあります。
ひとつは、つみたてNISAなら20年間非課税なのでロールオーバーの手間がかからないこと(ロールオーバーはできません)。
ふたつめは、いつでも払い出しができるので、突如子どもの留学などイベントが発生したときに、使いたい分だけ現金化することもできます。
そして最後、つみたてNISAは、購入できる投資商品が限られているから選びやすいことです。つみたてNISAでは株式投資はできず、投資信託しか買えません。しかも、買える投資信託は、数ある投資信託の中から、金融庁が厳選している、低コストなど長期投資に向いているものだけなので、大きな失敗(高コストの商品をえらぶなど)をしづらいんです。
また、株式投資では投資した企業の経営状態に大きな影響を受けますが、投資信託は、1つの商品を買えば複数の投資先に分散されるため、ゼロになることは考えづらいです。
一般NISAやジュニアNISAでは、投資信託だけでなく株式投資もできるため、投資が初めての方の場合、銘柄選びに迷ったり、大きく減ることに不安を感じると思います。
そう考えると、投資初心者の方が、将来的なイベントに向けて投資で資産形成したい場合は、まずはつみたてNISAを始めるのがいいと考えます。

ーーなるほど……。つみたてNISAの制度は2042年までなので、今年始めればちょうど運用益の非課税期間となる21年間、積み立て投資をすることができますね。できれば途中でやめないで、続ける方がいいんですよね?

鈴木FP はい、長期投資が基本です。なぜなら、積み立て投資では長期間続けることで、元本割れの可能性を減らせる傾向があるから。投資した年から最低10年は続けて欲しいですね。

ーーえ? どういうことなんでしょう?

鈴木FP 1985年から2020年までの各年にスタートして5年間保有した場合と、20年間保有した積み立てた場合の過去実績を比べてみましょう。この間には、リーマンショックなど世界的に株価が下がった金融危機も何度もありました。

資産・地域を分散して積立投資を行った場合の運用成果の実績【保有期間別(5年,20年】※

出典: https://www.fsa.go.jp
出典:金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」
※ 1985年から2020年の各年に、毎月同額ずつ国内外の株式・債権の買付けを行ったものです。各年の買付け後、保有期間が経過した時点での時価をもとに運用結果及び年率を算出しています。これは過去の実績をもとにした算出結果であり、将来の投資成果を予測・保障するものではありません。運用管理費用は含みません。
日本株式:東証株価指数(配当込み)、先進国株式:MSCIコクサイ・インデックス(円換算ベース)
日本債権:NOMURA-BPI総合、先進国債権:FTSE世界国債インデックス(除く日本、円ベース)
鈴木FP グラフを見ていただくと、5年間でやめた場合では、元本割れしているケースがありますが、20年間持っていた場合は、元本割れしたケースが全くありません。5年間の場合は、プラスに転じる前に止めてしまっているんですよね。なおこの実績は、世界中の株式と債券に分散投資をした結果なので、投資先を分散させていることも功を奏しています。

ーー5年で諦めず、10年20年やり続ける方がいいんですね。

鈴木FP はい、下がったときにも止めないことが大事です。また、毎月同じ金額を積み立てることにも意味があるんです。毎月1万円ずつ4ヶ月買うのと、最初に4万円で買うのとでは、投資額は同じですが相場は変動しているため、買える量は異なるんです。
ちょっとこの図を見てください。
出典: https://www.fsa.go.jp
出典:金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」
ーー分散させた積立投資の方が一括購入より多く買えることになりますね!

鈴木FP 積立投資のいいところは、毎月1万円と決めておけば、安い時は自動的に多く買えて、高い時はあまり買わなくて済むんです。この点でもリスク分散になります。

ーーつみたてNISAは20年間非課税ですが、20年以内に起こる可能性のあるイベント、たとえばマイホームの頭金とか子どもの学費などを用意するのには不向きですか?

鈴木FP そうですね、つみたてNISAは払い出しが自由ではあるものの、確実にかかるイベントの資金を用意するのには向いてないですね。確実にいつまでにいくら作れる、とは言えないからです。そういった目的には、減らさずに準備できる預貯金や保険など、元本割れをしない手段で用意するのがいいですね。とはいえ、プラスアルファとして一部投資で準備することはアリですよ。近い将来使う確実に用意したい資金は安全資産で、そして老後など時間をかけて作る資金は、家計から無理なく出せるお金で積み立て投資をするのがよいですね。

(取材・文:マイナビ子育て編集部)

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