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2021年07月09日 17:09 更新

【医師監修】妊婦に多い悩み! お腹の毛が濃くなったら脱毛していいの?

妊娠したら「体毛が濃くなった」というのはよく聞く話ですよね。とくに妊婦健診でお腹を出す機会が普段より多いので、「お腹の毛」が気になっている妊婦さんもいるかもしれません。ここでは、妊娠中にお腹の毛が濃くなる理由と、気になったら妊娠中に脱毛しても問題ないのかについて解説します。

妊婦のお腹の毛が濃くなるのは自然なこと

妊娠後期のお腹のイメージ

妊娠がわかってから、「お腹の毛が濃くなった」と気にしている人がいるかもしれませんが、心配は無用です。妊娠中、体毛が濃くなるのは、よくあることなのです。

ホルモンバランスの影響

妊娠中にお腹の毛が濃くなる主な原因と考えられるのが、「ホルモンバランスの変化」です。

妊娠中は、「エストロゲン」というホルモンの分泌量が増えます。エストロゲンは女性ホルモンの一種ですが、その元となっているのは、実は男性ホルモンである「アンドロゲン」です。

アンドロゲンは体のなかで男性ホルモンとして働く物質の総称で、よく耳にする「テストステロン」はアンドロゲンの一種です[*1, 2]。エストロゲンは、女性らしい体をつくり、維持するのに欠かせないホルモンですが、これの元となっているのが男性ホルモンとは面白いですよね。

妊娠中は、妊娠の維持と分娩の準備などのため、出産までの間ずっとエストロゲンの分泌量が増加していきます。ということはつまり、その元となる男性ホルモンの分泌量も増えているということです。この増加した男性ホルモンの作用により、妊娠中には体毛が濃くなることがあるのです。

お腹の毛以外も濃くなる

なお、男性ホルモンの増加による影響なので、妊娠中、濃くなる可能性があるのはお腹の毛に限りません。髪の毛を含む体毛は、男性ホルモンの影響を受けるものとそうではないものに分かれています。

男性ホルモンの影響を受けるとされるのは、おもに「顔面(上唇、あご、もみあげ)」「体幹(乳首の周囲、胸部、下腹部、背中)」「腕や脚(肩やももの内側)」などに生える体毛です。

そのため、人によっては妊娠中、お腹の毛だけでなく、これらの部位の毛が濃くなることもあるでしょう。

出産後に元に戻ることが多い

妊娠中に生じる体毛の変化は、妊娠による一時的なものであることがほとんどです。個人差はありますが、だいたい出産後半年~1年くらいすると体毛の状態は、妊娠前と同等に戻っていきます。

妊娠中はお腹の毛が気になっても脱毛はしないほうがいい

脱毛の施術を受ける女性のイメージ
Photo by Nacho Fernández on Unsplash

妊娠中、人によってはお腹の毛など普段はあまりない体毛がフサフサに増えることもあるようです。そうなると気になってしまい、処理しようかどうしようか、悩むこともあるでしょう。妊娠中の体毛の処理は、どうするのがよいのでしょうか?

サロンでの脱毛は産後に

妊娠中は比較的時間があるから、どうせならサロンで脱毛を……と考える人がいるかもしれませんが、美容皮膚科やサロンでの脱毛は、産後しばらくして落ち着いてからの楽しみにとっておきましょう

レーザーなどを利用した施術であっても、通常、脱毛機器による作用が及ぶのは毛根周辺の狭い範囲に限られるので、脱毛そのものによる母体や胎児への影響を心配する必要はほとんどないと考えられます。

ただし、妊娠中にこうした機器を使用しても妊娠や胎児にまったく影響がないかどうかはよくわかっていないので、そもそも妊婦さんに施術してくれる施設自体あまりないはずです。

肌トラブルが起きやすい

また、妊娠中はホルモンバランスの影響で肌の状態が不安定になっています。色素沈着や肌荒れをしやすくなっているので、非妊娠時にはなんともない施術でも、妊娠中は肌トラブルを起こす可能性があります。さらに、妊娠中はホルモン変化の影響で脱毛効果が得られにくいこともあるようです。

お腹が大きくなると同じ体勢を続けるのが辛い

お腹が大きくなってくると、同じ体勢、とくに仰向けを続けるのが難しいのも、サロンでの脱毛をおすすめできない理由のひとつです。効果が得られるまで定期的に何度も通う必要があるので、最初はよくてもお腹がふくらむとともにだんだん体の負担は増していきます。

したがって妊娠中に脱毛を行うのは、避けたほうが無難です。妊娠前から脱毛サロンに通っていたという人は、妊娠がわかったら、サロンは一度お休みしましょう。サロンによっては契約期間中に妊娠がわかった場合は、休会や延長ができるところも多いようです。サロンの窓口に相談してみましょう。

剃毛も控えたほうが無難

自己処理による脱毛・除毛も、妊娠中は控えたほうが無難です。

また、カミソリで剃ると、肌には細かな傷ができたり、角質がはがれたりします。妊娠中は肌が敏感になっているので、こうした刺激により強く反応する可能性があります。

かゆみが出てかきむしったことにより色素沈着が生じたり、いつもよりヒリヒリした肌荒れが残りやすかったりするでしょう。こうした肌トラブルは必ず起こるというわけではありませんが、妊娠中は肌にできるだけ負担をかけないことをお勧めします。

気になるなら毛を短くしておくのがおすすめ

どうしても体毛が気になるという場合は、肌に負担のない「電気シェーバー」などを使って、毛を短くするのがおすすめです。電気シェーバーは設計上、肌に刃が直接触れないようになっています。そのため、肌への刺激が少なく済み、比較的肌荒れもしにくいでしょう。

帝王切開や会陰縫合の時には、お腹の毛や陰毛が多いと邪魔になります。肌は傷つけないようにして、毛を短くしておくのは良いですね(監修:太田寛先生)

お腹の毛が濃くなったら男の子が産まれるってホント?

疑問のイメージ
Lazy dummy

ところで、中には「妊娠中にお腹の毛が濃くなったら、男児が生まれる」という話を聞いたことのある人がいるかもしれません。これは果たして本当なのでしょうか。

科学的根拠のないデマのひとつ

「ママの顔つきがやさしくなったら女の子が生まれ、きつい表情になったら男の子が生まれる」など、赤ちゃんの性別にまつわるデマはいくつかあります。

お腹の毛のデマもそのひとつで、「ママの体毛が濃くなったら男の子、毛が薄く、つるつるになったら女の子」といわれることもありますが、残念ながら、この言い伝えにも科学的な根拠はありません

お腹の毛が濃くなった妊婦さんの赤ちゃんが女児のときもあれば、体毛が薄くなった妊婦さんから男児が生まれることもあります。

体毛が濃くなるかどうかはもともとの体質にもよる

ここまでで解説したように、妊娠中は体毛が濃くなる条件がそろっているのですが、実際は濃くなる人もいれば、変わりない人もいます。どちらになるかは、妊婦さんのもともとの体質によっても変わるようです。

どちらにしても、妊娠中の一時的な変化であることがほとんどなので、お腹の毛が目立つようになった妊婦さんもあまり気にしないようにしてくださいね。

まとめ

妊婦さんのお腹
Photo by freestocks on Unsplash

お腹の毛など体毛が濃くなるのは、妊娠中に生じる体の変化のひとつです。妊婦健診のときなどに恥ずかしい気持ちになるかもしれませんが、医師や看護師は「よくあること」とほとんど意識していないはずなので、あまり気にしないでください。産後は徐々に元に戻っていきますし、濃くなった体毛は妊娠中に処理すると肌トラブルなどを生じる可能性もあります。普段気にならないところが毛深くなるとちょっとびっくりしてしまいますが、「妊娠中だから体験できる、貴重な経験」と楽しむくらいの余裕を持てるとよいですね。

(文:山本尚恵/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]「病気がみえる Vol.10 産科 第4版」(メディックメディア)p36
[*2]「病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版」(メディックメディア)p18-19, 60

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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