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2021年06月29日 16:42 更新

【医師監修】産後の陰部のかゆみ、原因と対処法

産後、デリケートゾーンのかゆみを訴えるママは少なくないようです。不快な症状ですが、なかなか周囲に相談できずどう対処したらよいのか困っていたり、受診をためらっているママもいるのではないでしょうか。ここでは、産後に陰部がかゆくなる原因やその対処法について解説します。

産後の陰部|かゆみの原因は?

陰部がかゆい女性のイメージ
Lazy dummy

産後、陰部や内腿などの皮膚がかゆくなったり、荒れることが多いのはなぜなのでしょうか?

産褥パッドなどによるかぶれ

産後ママのデリケートゾーンのかゆみの原因として第一に考えられることは、産褥パッドなどによる「接触皮膚炎」です。

一般的に、産後は出産直後~4週間程度の間[*1]、「悪露(おろ)」といって分娩後の子宮から血液や粘液、細胞などが排出されるので、入院中から産褥パッドを当てて過ごします。

産褥パッドは通気性があまりよくないためムレやすく、また、デリケートゾーンや内腿などの皮膚がこすれるので、かゆみや雑菌の繁殖を伴う皮膚の炎症を起こしやすいのです。

松峯先生
「接触皮膚炎は、生理用品を長時間、交換せずに使っているときに起こることもありますが、産褥パッドを使用している際も同じ理由で起こります。

産後、産褥パッドは多めに渡されることが多いと思います。こまめに交換してムレや雑菌の繁殖を抑えましょう。

また、悪露の量が減ったら、産褥パッドから生理用ナプキンに変えましょう。産褥パッドに比べて通気性がよくなり、肌への刺激が軽減します」。

感染症が原因のことも

産後の陰部のかゆみは感染症が原因のこともあります。

性器カンジダ症

カンジダというカビの1種によって外陰部や腟に炎症が起こる病気で、多くの女性が一生に一度は経験する言われるくらいよくみられるものです。外陰部の炎症と、腟の炎症は同時に起こることが多いので、「外陰腟カンジダ症」とも言われます[*2]。

この病気では外陰部のかゆみや腫れが出るほか、「カッテージチーズや酒粕のよう」とよく言われる特徴的なおりものがみられます。

細菌性腟症

性成熟期の10~30%の女性がかかっていると言われる病気です。黄色〜緑で魚臭いおりものがみられるほか、軽いかゆみを伴う場合があります[*1, 3]。

その他、陰部にかゆみの出る感染症には「トリコモナス腟炎」もあります。性行為で感染する病気のひとつです。公共の入浴施設などで感染することもありますが、衛生環境の良くなった現代ではこうした感染経路は稀です。

傷が治る過程でかゆくなることも

出産の際は、会陰を切開したり、裂傷ができる場合もあります。傷ができると「炎症期」→「増殖期」→「成熟期」という大きく分けて3つの時期を経て治っていきますが、この過程でかゆみが出ることもあります。

産後に陰部のかゆみが生じたら

トイレに座る女性
Lazy dummy

症状を軽減したり、予防するには清潔がいちばん大切です。

産褥パッドなどはこまめに取り替える

産褥パッドやナプキンはこまめに取り替えましょう。また、ムレを防ぐため、できるだけ通気性のよい素材で、締め付けの少ない下着を身に着けるようにするとよいでしょう。

ゴシゴシ洗いは NG!

デリケートゾーンや内腿などの皮膚は比較的薄く、まさに“デリケート”です。腕やボディなどよりやさしく洗って、なるべく刺激しないようにしましょう。

なお、腟内は常在菌による自浄作用があるので、温水のシャワーで流し洗うだけでOK。石鹸などを使用する必要はありません。

外陰部や会陰部(腟と肛門の間)は、恥垢が溜まったり、排せつ物などの汚れがつくので、無香料の石けんやデリケートゾーン用の弱酸性の洗浄料を使います。これらを使う際もよく泡だて、泡でなでるようにやさしく洗います。その後、洗浄成分をシャワーでよく洗い流します。

睡眠不足やストレスのケアも!

赤ちゃんを迎えた新生活で産後ママはますます多忙となり、つい自分自身のことは後回しになって、寝不足やストレス過多が続くこともあるかもしれません。それらは間接的に肌トラブルなどを増悪させる原因になることがあります。

とくに産後6~8週は「産褥期(さんじょくき)」と言って、体調の回復をいちばんに考えて過ごしたい時期です。忙しい中でも、なるべくしっかり寝て、十分な食事をとり、できるだけストレスを溜めないように過ごすようにしてください。

ケアしてもかゆいときは?

診察を受ける
Lazy dummy

産褥パッドやナプキンをこまめに取り替え、清潔を心がけてもかゆみが続くときの対処法をまとめます。

こんなときは受診を!

衛生面に気を付けているのにかゆみが続く場合や、悪露の状態の変化・臭いなどが心配なときは、産婦人科を受診しましょう。

松峯先生
「妊娠中に何らかの原因で腟炎などを起こしても、しっかり治療して出産するのが一般的なので、産後すぐのママの場合、かゆみの原因が腟炎などの病気であることは少ないです。

しかし、産後はどうしても悪露のある期間が続くので、陰部で雑菌が繁殖し、腟炎などを起こすことがないとは言えません。ママが分娩・育児で気力・体力ともにダウンしているときなので、普段より病気にかかりやすい場合もあります。

数日、セルフケアを心がけても症状が改善しないときは産婦人科を受診してください」。

市販薬の使用は薬剤師に相談してから

デリケートゾーンのかゆみを緩和する市販薬も販売されています。人によっては市販薬の利用で症状が改善する場合もあるので、ドラッグストアの薬剤師に相談したうえで、試しに使用してみるのは問題ありません。

ただし、使用時は薬に添付されている説明書をよく読んで使い、数日使っても症状が改善しない場合は使用をやめ、使用していた薬を持って産婦人科を受診しましょう。

まとめ

デリケートゾーンのかゆみは不快で、つらい症状です。産後の場合、原因は悪露の処置のための産褥パッドによる接触皮膚炎であることが多いですが、感染症の可能性もゼロではありません。清潔を心がけてもかゆみが続いたり、かゆみのほかに悪露やおりものの変化・臭いなども心配なときは、産婦人科を受診して相談し、早めにつらい症状から解放されましょう!

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア), p173 p366-367.
[*2] 産婦人科外来パーフェクトガイド.医学書院, P386〜388、P389〜391
[*3]標準産科婦人科学第4版

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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