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2021年06月21日 17:30 更新

【医師監修】旦那に!上の子に!実母に!義母に!<相手別>産後のイライラ解消法

産後はちょっとしたことで心がゆらぎ、イライラすることが多いもの。感情が抑えきれず、つい家族に当たってしまう……なんてこともあるのでは。そんな、産後に陥りがちなイライラの原因と解消法を紹介します。

産後のイライラはいつまで続く?

イライラする産後の女性

出産後、赤ちゃんのお世話を始めてまだまもない時期は、他の人に対してイライラしてしまうことが少なくありません。たとえ相手が大切な家族であっても、威嚇(いかく)するような態度を取ってしまうこともあるでしょう。それは一体なぜなのでしょうか。そして、それはいつまで続くのでしょうか。

イライラの原因は女性ホルモンのバランスかも

出産することで変化する女性ホルモン

産後は、ママ本人の意思に関わらず、いたずらにイライラしてしまうというケースが多々あります。それには産後に大きく減少する女性ホルモンが関わっていることが考えられます。

女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンという2種類があり、これらの分泌のバランスが崩れると、体調や感情に影響が出ることが少なくありません。

たとえば、月経前症候群(PMS)や閉経前後の女性に起こる更年期障害の症状のひとつとしてイライラがあげられますが、これはエストロゲンの分泌量の減少が関与しており、普段なら気にならないことでもカッとなって、イライラしてしまうことが一因と考えられています。

出産による女性ホルモンの分泌量の変化は、生理前や更年期のそれよりも急激です 。自分では気が付かないうちにイライラして、人に当たったり、日常生活に不安を感じたりすることがあっても不思議はないでしょう。

ホルモンが安定するのは産後1年後ごろか

このような出産によるホルモン分泌の変化は、産後しばらくの間続きます。どれくらい続くのかには個人差がありますが、「生理の再開」がひとつの目安になるかもしれません。

出産後しばらくは、母乳の分泌を促すプロラクチンというホルモンが出て排卵を抑制することにより、排卵が起こりません。プロラクチンは卵巣機能そのものを抑制するため生理も止まり、女性ホルモンの分泌も抑えられた状態になります。しかしその後、授乳をしなくなっていくとプロラクチンの分泌が止まり、徐々に卵巣機能が回復、生理も再開して妊娠前と同じ状態に戻っていきます。

生理の再開までには短い人では数ヶ月、長い人では1年以上を要し、生理が再開した後も安定するまでには多少時間がかかることから、妊娠前のように安定した状態になるには、大体1年ほどかかると考えられます 。

【相手別】産後のイライラ解消法

産後のイライラには女性ホルモンの分泌が関わる可能性があるとわかりました。ではイライラが募ったとき、それを解消したり、相手にうまく伝えたりするにはどうするのがよいのでしょうか。パートナー、上の子、実母など、相手別の対処例を考えてみましょう。

離婚を考えちゃう!夫にイライラするとき

会話する夫婦

夫は大変身近な存在で、育児をしていく上でも協力体制を築かなければならない反面、衝突も少なくありません。

夫は、妻から育児に関しての批判を受けた場合、それを夫である自分自身への批判、すなわち自分への個人攻撃として捉える傾向が強いという調査結果があります[*2]。夫の育児に関して不満がある場合、伝え方次第では「自分自身が否定された」「攻撃された」と受け取られ、反発にあうこともあるでしょう。ただでさえ感情のコントロールが難しい中だと言葉尻も強くなってしまい、改善されるどころか余計にこじれてしまう恐れもあります。

そこで、夫に対して不満をぶつける前に「今の時期は自分の意思に関わらず感情がたかぶって、なぜかイライラしてしまったり、攻撃的になったりしてしまう」ということを伝え、その上で冷静に直してほしいところなどを話しあうのがよいかもしれません。

感情のコントロールが効かない面もあることをあらかじめ伝えておくと、パートナーが批判を自分への攻撃と受け取りにくくなったり、批判への対処法を考えてくれたりするようになる可能性が高まることもあるでしょう。

罪悪感でいっぱい!上の子にイライラするとき

兄弟と母

2人目、3人目の出産では、産後のイライラが上の子に対して向けられることもあるようです。

こちらとしてはどの子にも均等に目をかけたいものの、どうしても生まれたばかりの子にかける時間が多くなってしまいがち。その結果、上の子にストレスがたまったり、上の子の気持ちをわかりつつ、それを受け入れる余裕がなかったりすることに、自分自身のイライラが募ってしまうこともあるでしょう。

上の子へのイライラは、そのような「かまってあげられない」というママの罪悪感に端を発していることが多いものです。それを解消するには、”上の子だけに目を向けられる時間”を作るのが有効かもしれません。短い時間でもいいので、たまには上の子と1対1で過ごせる時間を作ったり、子供の年齢によっては洗濯物畳みなど簡単な家事を一緒にやったりして、上の子がママを独り占めできる時間を取れるといいですね。

頼りになるはずが!実母にイライラするとき

母と娘

実母にイライラしてしまうという人も意外に多いようです。里帰り出産などで頼りになるはずの実母ですが、「誤った知識による育児の押し付けにイラつく」というのはよくあるケースです。

そんな実母に対しては、まず育児情報のアップデートをしてもらうよう働きかけるのがおすすめです。ただし、ママから伝えると、きちんと聞いてもらえない可能性があります。そのため、できれば第三者から実母にアドバイスしてもらえるようにするのがよいかもしれません。子供の健診に実母に一緒に行ってもらい、医師や保健師からアドバイスをしてもらったり、信頼性の高い子育ての新常識の本やパンフレットを渡したりして、こちらの要求や考えを間接的に伝えてみるのがよいでしょう。

抱っこされるのも嫌!義母にイライラするとき

赤ちゃんを抱っこする義母

実母だけでなく、義理の母に対してイライラが募ることも。遠慮なくモノが言える間柄ならいいですが、なかなかそうはいかないものです。義母はよかれと思ってやっていても、ママにとってはそれがイライラの原因になっていることもあります。

嫌なこと、やってほしくないこと、やり方を変えてほしいことについては、その理由を含め、きちんと伝えておいたほうがよいでしょう。ただし、直接要望を伝えると軋轢が生じる可能性がなきにしもあらず。義母の性格にもよりますが、守ってほしいことは息子である夫から伝えてもらい、嫁vs義母という直接的な対立関係に持ち込まないことは、定番ながらも効果があるやり方です。

薬でイライラを緩和できる?

漢方薬のイメージ

産後のイライラを、漢方薬で改善できることがあります。「え、薬で?」と思うかもしれませんが、西洋医学では対応しにくい症状や不調を、漢方薬で治療できることは少なくありません。

授乳中は医師に相談を

ただし、漢方薬は同じ薬であっても人によって得られる効果が異なることがあるほか、授乳中にはママが飲んだ漢方薬の作用が赤ちゃんにも現れる可能性があります 。そのため、できれば漢方専門医を受診するなどして、授乳中であることを伝えたうえで適切な漢方薬を処方してもらうのが安心でしょう。

お近くの漢方専門医は日本東洋医学会のホームページの「専門医検索」から探すことができます。

産後のイライラに効果的とされる漢方薬

産後のイライラに効果的とされる漢方薬の一例を紹介します。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

女性疾患に用いられることの多い漢方薬のひとつです。のぼせ、肩こりといった上半身の症状のほか、精神不安やいらだちなどの精神神経症状を改善する応答も引き出します。

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

神経のたかぶりやイライラなど、不安感や怒りを和らげる応答を引き出す漢方薬です。子どもの夜泣きなどにも効果があるとされ、親子での服用も可能です(乳児の場合はまずは受診することを優先)。

まとめ

赤ちゃんと夫婦

産後の女性の心と体はホルモン分泌の変化などの影響を受けており、自分の意思によるコントロールが難しいことが少なくありません。このことをママ自身が理解し受け入れておくと、イライラとの付き合い方が少しはラクになるのではないでしょうか。
また、心の中に生じてきたイライラについては、イラつく相手や背景に応じた対処をすることで、ママのストレスを多少なりとも少なくできることがあるでしょう。場合によっては漢方薬でイライラを和らげるのもひとつの方法です。
自分なりの解消法を見つけながら、産後のイライラ期を乗り越えていきましょう。

(文:山本尚恵/監修:宋美玄 先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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