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2021年04月16日 13:43 更新

妊婦は昆布をどれくらい食べてよい?上限量と食べ過ぎたときの対処法【管理栄養士監修】

だしをとったり、煮物にしたりと料理に活躍する昆布は、ミネラルや食物繊維が豊富。妊娠中もたくさん食べたほうがいいのでは? と思いきや、妊婦さんは摂り過ぎに注意が必要なようです。今回はその理由や、昆布を食べる時のポイントなどを紹介します。

そもそも妊婦は昆布を食べないほうがよい?

ヨウ素が豊富な昆布

妊娠中、昆布の食べ過ぎに注意する必要があるのは、昆布に多く含まれている「ヨウ素」という栄養素が関係しています。まずは、ヨウ素とは何かを見てみましょう。

昆布に含まれるヨウ素に注意

ヨウ素は食品に含まれているミネラルの一種で、甲状腺ホルモンというホルモンの合成に必要な栄養素です。このホルモンは、体の代謝をはじめとした体内の重要な機能の調節や妊娠・授乳期における赤ちゃんの骨や脳の正常な発育に関わっています。

そんな体に必要なミネラルであるヨウ素ですが、摂りすぎに注意しなければなりません(詳しくは後ほど)。

昆布に含まれるヨウ素の量

ヨウ素を含む食品の中でも魚介類や海藻は含有量が多く、昆布のだしには以下の量のヨウ素が含まれています[*1]。

・昆布だし 水出し(3%の真昆布でとっただし)=5,300μg
・昆布だし 煮出し(3%の真昆布でとっただし)=11,000μg

(いずれも100g当たり)

ちなみに、水煮にした昆布やつくだ煮に含まれるヨウ素は以下のとおり。

・ながこんぶ 素干し=21,000μg
・まこんぶ 素干し 乾=20,000μg
・刻み昆布=23,000μg
・まこんぶ 素干し 水煮=1,900μg
・昆布のつくだ煮(ごま入り)=1,100μg

(いずれも10g当たり)

ヨウ素は少なすぎても摂りすぎてもよくない

ヨウ素の過剰摂取に注意が必要な妊婦

ヨウ素は妊娠中・授乳中の女性にとって、摂取量を注意したほうがよい栄養素のひとつとされています。

妊娠中、ヨウ素は胎盤を通じてママからお腹の赤ちゃんへと渡されます。赤ちゃんはそれを利用して中枢神経の発達に不可欠な甲状腺ホルモンを作り、体を成長させていきます。しかし、土壌中にヨウ素が少なく、海からも離れているヒマラヤ、アルプス等の山岳地帯など、ヨウ素摂取量不足による影響が懸念される地域もあります。

一方、日本では海産物を多くとるため、ヨウ素不足が問題になることはまずありません。むしろ、摂りすぎるで問題が引き起こされることの方が心配なため、ヨウ素の摂取を目的としたサプリメント類の利用には注意が必要です。

妊娠中は摂りすぎに気をつける

ヨウ素の摂取量が多くなりすぎると、一過性クレチン症など赤ちゃんの甲状腺機能低下がみられたり、ママ自身にも甲状腺機能の低下がみられることがあります。

しかし実例を見ると、毎日昆布を含むだしパックの中身をそのまま食べていたケースなど、とても極端なものです。「毎日昆布などの海産物を定期的に摂取する」ということを避けるようにすれば、過剰な心配は不要でしょう。

妊娠中の昆布、どのぐらいが限度?

昆布でとっただし

では、どれくらい昆布を食べると、ヨウ素の摂りすぎになるのでしょうか。

大人の場合のヨウ素の1日の耐容上限量(注1)は3,000μgとなっていますが、妊婦さんや授乳中の女性はそれよりも低い2,000μgとされています[*2]。

さきほど紹介した昆布に含まれるヨウ素の量をこれ(2,000μg)に当てはめて計算すると、素干しの昆布や刻み昆布は1gで1日の耐容上限量を超えます。また、昆布のつくだ煮は18g、昆布だしの場合、水出しで37g(大さじ2程度)、煮出しただしで18g(大さじ1程度)を超えると耐容上限量を上回ります[*1]。

では、これらの食品を上限ギリギリまで毎日食べていいのかというと、そうではありません。昆布そのものや昆布の佃煮などだけでなく、昆布だしを使った合わせ調味料や、昆布エキスを使用したカップ麺などからも、意識せずにヨウ素を摂取しているものです。昆布を完全に除去する必要は決してありませんが、妊娠中は偏りなく食事をとることが大事です。

(注1)耐容上限量とは、この量を超えて習慣的に摂取した場合には、健康に悪影響をもたらすリスクがゼロではなくなることを表します。耐容上限量を超えたらすぐに健康を害するということではありませんが、習慣的に摂取する食品では、耐容上限量を超えないように注意が必要です。

妊婦が昆布・ヨウ素を摂りすぎないためのポイント・注意点

ヨウ素を多く含むため、妊娠中はたくさんの量を口にするのを避けたほうがよいとされる昆布。上手な取り入れ方や見落としがちなポイントなどをチェックしておきましょう。

昆布だしでなくかつおだしにして上手に減量

昆布よりヨウ素が少ないかつおの出汁

昆布は、だし(出汁)にしたときにもヨウ素を多く含みます。そのため、いつも昆布だしを使っているという人は、それをかつおだしに置き換えてみるとよいかもしれません。かつおだしに含まれるヨウ素の量は100g中1μgと、ごく少量です[*1]。ヨウ素の摂りすぎを気にせず使うことができますね。

サプリメントは飲む前に確認する

意外と見落としがちなのが、サプリメントに含まれているヨウ素です。サプリメントの場合、ヨウ素は「ヨウ化カリウム」または「ヨウ化ナトリウム」と表記されています。過剰摂取にならないかどうか、含有量を確認したうえで服用しましょう。またマルチビタミンやマルチミネラルといった名称で市販されているサプリメントのうち、特に海外製のものにはヨウ素が含まれていることが多々あります。含まれている具体的な量がわからない場合は、服用を避けましょう。

なお、手軽に栄養素を摂取できることから、重宝されることの多いサプリメントですが、妊娠中は葉酸を除き、安易な摂取は避けようといわれています。栄養はできるだけ食事から摂るように心掛けましょうね。

妊娠中の昆布に関するよくある疑問

そのほか、昆布に関する疑問をまとめて紹介します。

おしゃぶり昆布にもヨウ素は含まれる?

ヨウ素を多く含むおしゃぶり昆布

おしゃぶり昆布は、乾燥した昆布に味付けをした食品です。乾燥昆布を原材料としているため、ヨウ素が含まれます。乾燥昆布1gに含まれるヨウ素の量は約2,000μg[*1]と、1日の妊婦さんのの耐容上限量と同じです。おしゃぶり昆布1袋をすべて食べたりすると、1日の耐容上限量を大きく超えてしまうことになります。おしゃぶり昆布はおいしくてヘルシーなおやつとして人気がありますが、とくに妊娠中(授乳中も)は食べる量に注意しましょう。

昆布を食べすぎたらどうすればよい?

うっかりしがちですが、昆布エキスの入った調味料や加工品も多いので、原材料をチェックするようにしましょう。また、ヨウ素は昆布以外の食品にも含まれています。昆布ほどではないですが、比較的ヨウ素を多く含む食品には、たとえば以下のようなものがあります。

ヨウ素を多く含む食品の例

・ヨード強化卵
・海藻類
・寒天を使った食品
・貝類、かに類
・タラ(タラを使ったかまぼこなども)、たらこ
・あん肝

これらについても昆布同様、食べすぎには注意しておきましょう。

まとめ

昆布だし以外の味噌汁を飲む妊婦

昆布には多くのヨウ素が含まれており、妊娠中に毎日のように食べすぎると、お腹の赤ちゃんに影響が及ぶこともあります。直接口にする量を減らすほか、昆布だしをかつおだしに変える、昆布エキスを使った加工品に気をつけるなど、摂取方法を工夫するとよいでしょう。
また、ヨウ素に限らずどんな栄養素も、偏って摂取すると体に変調をきたすことが少なくありません。さまざまな栄養素をまんべんなく摂れるよう、食事の栄養バランスに気を付けておくとよいですね。

(文:山本尚恵/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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