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電気自動車には変速ギアがないって本当?―軽自動車に例えると、つねに4速で走っている状態

海外で人気の電気自動車が日本でも販売開始された。排気ガスも出なければ停車時のエンジン音もしないので、幹線道路沿いに住むひとには有り難い存在だ。

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電気自動車には変速ギアがないのはご存じだろうか? エンジンよりも大きなトルクが得られるモーターは、スタートから最高速度までギア比を変える必要がなく、ラジコンや模型と同じ「1速・マニュアル」状態で走っている。

発進時に「キーン」と音を発するインバータこそが変速機で、電車が走り出すときに「プーン」と鳴るのと同じ回路でモーターを制御しているのだ。

モーターの利点は大きなトルク

自動車のカタログをみると、エンジンの性能は「最高出力」と「最大トルク」で表されるのが一般的で、どちらも値が大きいほどパワフルなエンジンを意味する。最高出力は現在kW(キロ・ワット)が単位となるが、以前は「馬力」で表現されていた。

そのため現在でもPS(馬力)が併記されている場合が多い。

出力とトルクは、なにが違うのか? スポーツ選手に例えると、

・出力 … 短距離走

・トルク … 相撲

のイメージで、瞬発力と粘り強さの違いと考えればわかりやすいだろう。馬力に目が奪われがちだが、トルクは軸を回転させる力なので、重い荷物を積んだときの発進や加速にはトルクが重要となる。

国産の電気自動車(EV)と、軽自動車のガソリン・エンジンを比較すると、

・最高出力(PS) … (EV)64 / (エンジン)64

・最大トルク(kgf・m) … (EV)16.3 / (エンジン)9.7

と、出力が同じでもトルクは1.7倍ほど電気自動車のほうが大きい。これはモーターの特徴で、とくに発進時はエンジンよりもはるかに大きな力が得られる。ハイブリッド車や電動アシスト自転車では発進~低速時にモーターがOnになり、ある程度の速度に達するとOffになるのは、理にかなったシステムなのだ。

シフト・チェンジ不要の「4速固定」!

マニュアル/オートマと呼ばれるように自動車には「変速機」がつきものだが、電気自動車には存在しない。発進から最高速度までシフト・チェンジせずに走行できるからだ。

これはまさに大トルクが得られるモーターならではの技で、例に挙げた電気自動車の場合、減速比は7.065、つまりモーターが7.065回転するとタイヤが1周する状態に固定されている。これを4速オートマと、5速マニュアルのガソリン・エンジンの軽自動車と比較すると、

・1速 … (4AT)15.453 / (5MT)26.168

・2速 … (4AT)8.428 / (5MT)15.462

・3速 … (4AT)5.375 / (5MT)9.779

・4速 … (4AT)3.741 / (5MT)6.478

・5速 … (4AT)なし / (5MT)5.125

となり、マニュアル車なら4速固定に近い状態だ。電車も同様で、スタートからトップスピードまでギア比固定のまま走ることができるのだ。

電気自動車は、どうやって速度を調整するのか? モーターと電池をつないだだけではOn/Offしかできないので、急発進と急ブレーキだけになってしまう。そこでインバータと呼ばれる装置で、モーターに流れる電気の量を調整しているのだ。

インバータは電圧や周波数を変えモーターが必要としている量だけしか流さないため、電池の消もうを抑え、長距離走行にも役立つ。欠点は「音」で、電車の発進時に「プーン」的な音を発するのもインバータのせいだ。一部の電車には音階のように音を発するものもあるが、これはインバータが発するノイズに味付けをしたものである。

電気自動車やハイブリッド車は、低速走行が静か過ぎるため、歩行者に気づかれにくい点が危険視されているが、耳を澄ますとキーンとかん高い音が聞こえる。これもインバータのノイズなので、低速時はあえて大きな音がなるようにすれば、事故が起きにくくなるだろう。

まとめ

・電気自動車には、変速ギアがない

・軽自動車に例えると、つねに4速で走っている状態

・エンジンに比べ、大きなトルクが得られるのがモーターの特徴

・走行時にキーン/プーンと鳴るのは、モーターを制御するインバータのノイズ

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年11月17日に公開されたものです

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