育児 育児
2021年01月28日 17:25 更新

【医師監修】赤ちゃんの向き癖 | 頭の形への影響と対処法

赤ちゃんに向き癖があると、頭の形にも影響すると言われています。向き癖はなぜつくのでしょうか? また、向き癖がついた赤ちゃんにはどんなことが起こりやすいのでしょうか? 向き癖の対処方法とともにお話しします。

向き癖って?

向き癖とは
Lazy dummy

赤ちゃんの向き癖とはどんなものなのか、また向き癖がつく原因についてお話しします。

同じ向きで寝る癖

向き癖とは「赤ちゃんが右側・左側など毎回同じ方向を向いて寝る癖のこと」です。
向き癖が強いと、赤ちゃんを違う方向を向けてもすぐにまたいつもの向きに戻ってしまいます。

向き癖の原因って?

向き癖には次のように、いくつかの原因が考えられます。

お腹の中でついた頭の形により向きやすい方向があるから

赤ちゃんはママのお腹の中でさまざまな姿勢を取っていますが、分娩が近づくと頭を下にした状態(頭位)に落ち着いてきます。頭位では、赤ちゃんの頭はママの骨盤に守られるので変形することがあまりなく、また変形があったとしてもある程度治るので、頭の形は丸くなりやすいと考えられます。

その一方で、赤ちゃんの頭が上の方や横を向いている「骨盤位(いわゆる逆子)・横位」の場合、生まれる直前まで外からの圧力が頭にかかり、赤ちゃんの頭は変形しやすくなります。ちなみに、生まれる直前まで骨盤位でい続ける赤ちゃんは、全体の3~5%ほどと言われています[*1]。

頭位・骨盤位・横位のいずれにしても、ママのお腹の中で頭の形が変形した赤ちゃんは、生まれた後、楽に寝られる向きとそうでない向きができることがあり、そのため向き癖がつくことがあるのです。

誕生後によく同じ向きで寝かしつけられていたから

生まれた後にいつも同じ向きで寝かしつけられていると、頭の決まった箇所に頭の重みがかかるようになります。そのため、頭の形が変わってそちらを向きやすくなり、向き癖となってしまうこともあります。

病気が原因となることも

筋性斜頸や先天性股関節脱臼、肢体不自由などの病気がある赤ちゃんは、向きやすい方向が決まっていることがあります。それにより、向き癖ができることもあります。

赤ちゃんに向き癖がつくとどうなるの?

赤ちゃんに向き癖がつくとどうなる

向き癖がつくと、どのようなことが起こるのでしょうか? 可能性として考えられることをお話しします。

頭の変形が進みやすい

生まれて間もない赤ちゃんの頭蓋骨は柔らかいものです。そのため、向き癖がつくといつも下になっている箇所に頭の重みがかかり、頭が少しずつ変形していきます。

最初は気づかないくらい小さな変形でも、毎日同じ向きで寝ることで頭蓋骨に圧がかかり続け、少しずつ変形は大きくなっていきます。

こうして起こる赤ちゃんの頭の変形には、大きく分けて「斜頭症」「短頭症」「長頭症」の3タイプがあります。ある医療機関では、病気以外の原因で頭が変形した赤ちゃんのうち斜頭症になった子は54%、短頭症になった子は42%、長頭症になった子は3.5%だったというデータもあります[*1]。

赤ちゃんの頭の変形 (イメージ)

斜頭症のイメージ
斜頭症のイメージ。赤ちゃんの頭の変形のなかでもよく見られると言われています。後頭部がいびつになっています
短頭症のイメージ
短頭症のイメージ。後頭部全体が平たくなっています。長時間の仰向け寝で起こると言われます
長頭症のイメージ
長頭症のイメージ。上から見ると前後に長く見えます。横向きばかりで寝ていると現れやすいと言われています。極低出生体重児や超低出生体重児などでNICUに入院していた赤ちゃんにもよく見られます

股関節脱臼になりやすくなる

向き癖がついていつも同じ方向ばかりを向いていると、上側の足が立て膝になりやすくなります。そのため、股関節脱臼が引き起こされることもあります。

股関節脱臼は、脚の付け根の関節がはずれる病気で、なったまま放置されていると股関節の軟骨がすり減って変形してしまったり、スムーズに歩けなくなることがあります。

股関節脱臼を防ぐためにも、向き癖はできるだけ直してあげたいですね。

向き癖の対処法

向き癖の対処法

赤ちゃんに向き癖がつくと、違う方向を向かせてもすぐにいつもの方向を向いてしまいます。向き癖が強い子ほど、なかなか向き癖を直しにくいものです。
向き癖を直すためには、どんな方法があるのでしょうか?

家でできること

ドイツやアメリカの医学的なガイドラインでは、頭が変形しないように向き癖を直すよう推奨しています。特に生後2~6ヶ月ごろまでの早いうちに、向き癖を直すのがおすすめとされているそうです[*2]。
まずは自宅でできる向き癖の直し方を紹介します。

向き癖とは反対側からいつも話しかける

ママやパパ、家族のみんなは、向き癖とは反対の方向からいつも赤ちゃんに話しかけるようにしましょう。
赤ちゃんがママやパパ、家族の方を向こうとすることで、向き癖が直りやすくなります。

マットを使う

向き癖のある方向の(右側に向きがちなら右側の)頭と身体が少し持ち上がる程度に、硬めのマットなどを敷いて少し高くするのもおすすめと言われています。ただし、柔らかいクッションやバスタオルは赤ちゃんが窒息する危険性があるので、使わないようにしましょう。寝返り防止クッションも窒息の危険があるとして、米国食品医薬品局(FDA)では、使用しないよう呼び掛けています[*3]。

なお、赤ちゃんの枕と言えばドーナツ枕が一般的ですが、ドーナツ枕で頭の変形が治るかどうかはあまりよくわかっていないとされ、向き癖に効果があるかも何とも言えなさそうです。また、柔らかい枕も窒息の危険があるため、寝返りのできない赤ちゃんへの使用はおすすめできません。

抱っこの時間を増やす

どうしても向き癖が治らない場合は、赤ちゃんが寝たまま過ごす時間を減らせるように、できるだけ長く抱っこするようにするのもおすすめです。
ママやパパ、家族のみんなで協力して抱っこタイムを増やしてみてくださいね。

診察を受ける目安と治療方法って?

自宅で工夫しても向き癖が治らない場合は、家庭内だけでがんばりすぎずに専門家の手も借りましょう。

病院で診てもらうタイミングの目安は次の通りです。

頭の変形が目立つ時、寝ている時に脚がM字に開かない時

向き癖があって心配なのは、ここまでで説明したように、それによる影響が心配されるときです。

具体的には、「頭の変形が目立って心配な場合」や、「仰向けにした時に両足がM字に開かない(どちらか一方の脚が立膝になったり、内側に倒れる)場合」には、かかりつけの小児科でくわしく診てもらいましょう。頭や股関節に異常がないか、赤ちゃんの状態をチェックしてもらえます。

なお、頭の変形については、大学病院や県立病院などの医療機関では、形成外科や脳神経外科に「赤ちゃんの頭の形外来」「頭蓋変形外来」などの専門診療科を設けているところもあります。

ただし、こうした専門外来の受診には医師による紹介状が必要です。また、検査の結果、ヘルメットによる頭蓋形状誘導療法の適応と診断され治療を受けることにした場合、自費診療のため、治療費が40万円以上かかることも珍しくありません。ヘルメット治療の場合は、半年間ほど、おおよそ3~6週間おきに通院することが多いようです。

赤ちゃんの頭の変形は、成長に伴って目立たなくなることもよくあります。また、頭に変形がある赤ちゃんのすべてに専門的な治療が必要とは限らないので、まずはかかりつけの小児科で相談してみてくださいね。

まとめ

赤ちゃん向き癖のまとめ

向き癖とは、寝かせるといつも同じ方向を向いてしまう赤ちゃんの癖のこと。
病気以外の原因としては、頭の変形があげられます。生まれる直前まで骨盤位や横位になっていた赤ちゃんは、生まれつき頭が変形していることもあります。そのため、向きやすい方向が決まっていることがあるのです。また、生まれた後にいつも同じ方向に頭を向けて寝かされていても、頭が変形して向き癖がついてしまいます。

向き癖がつくと、ますます頭が変形しやすくなります。また、上側になった足が立て膝になりやすいので、股関節脱臼のリスクも高まります。
首が座るまでは向き癖と反対側から話しかけたり、マットなどで調整したり、抱っこの時間を増やすと向き癖が治りやすくなります。頭の変形や股関節脱臼が心配な場合は、まずはかかりつけの小児科で相談してみましょう。

(文:大崎典子/監修:丘 逸宏 先生 )

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-