育児 育児
2021年07月14日 17:58 更新

【医師監修】新生児の横向き寝は危険? 寝かしつけやゲップが出ないときはどうする?

新生児の寝姿はとてもかわいいですね。でも、横向きで眠っていると、「仰向けでなくていいの?」と気になるのでは。そこで今回は、新生児を横向きで寝かせていいのか、新生児を寝かしつける場合の注意点は何か、などを説明します。

新生児が横向きで寝る……これって大丈夫?

抱っこされて眠る新生児のイメージ
Lazy dummy

生まれてしばらくの赤ちゃんは、「仰向け」で寝ていることが多いと思いますが、もし新生児が「横向き」で寝ていたら、何かリスクはあるのでしょうか。

SIDSのリスクがあるので勧められない

赤ちゃんの発達は個人差が大きいものですが、「首すわり」は早い子では生後2ヶ月後半から、多くの子では生後3~4ヶ月ごろにできるようになります。また、「寝返り」は早くて生後3ヶ月ごろから、だいたい生後6ヶ月までにできるようになると言われています[*1]。通常、首がすわったあとに寝返りができるようになります。

つまり、生まれてからひと月も経っていない新生児では、寝返りはもちろん、首すわりもまだのはずです。ところが仰向けに寝かしつけたはずなのに、どういうわけか寝ているうちに横向きになってしまうこともあります。

横向きからうつぶせになるのが心配

実は、新生児含め、それ以降の月齢であっても「自分で自由に寝返りできないうちは、赤ちゃんの“横向き寝”は勧められない」とされています。横向きで寝ていると、体を動かした拍子に「うつぶせ」になってしまうことがあるからです。

赤ちゃんのうつぶせ寝で心配なのが、「SIDS(乳幼児突然死症候群)」です。厚生労働省は、SIDS は、うつぶせ、仰向けのどちらでも発症するが、寝かしつけのときに仰向けよりもうつぶせにしたときの方が明らかにSIDSのリスクが高くなるとして、「赤ちゃんは仰向けで寝かせる」よう勧めています[*2]。

また、アメリカ小児科学会では、「仰向けに寝ている赤ちゃんは、“うつ伏せ”や“横向き”に寝ている赤ちゃんよりも、SIDSで死亡するリスクがはるかに低い。横向き寝の問題は、赤ちゃんがうつぶせになりやすくなること」としています[*3]。

いつも同じ向きだと頭の形がゆがむ可能性

赤ちゃんの頭の骨は、脳が成長するのに合わせられるようやわらかく、頭蓋骨のつなぎ目はまだくっついていないので、変形しやすい状態です。

毎日、同じ向きだと頭の変形が心配

そのため、いつも同じ方向を向いて寝ていると決まった箇所にだけ頭の重みがかかり、そこが平らになって頭の形がゆがんでしまうことがあります。

横向き寝ばかりしていると、「長頭症」といって上から見たとき頭が前後に長く見える形に変形しやすいと言われています。また、頭の形が変形すると向き癖がつきやすくなり、頭の形のゆがみがさらに進むことも考えられます。

頭の変形は「仰向け寝」でも長時間続ければ起こりますが、赤ちゃんを寝かしつける際はやはり「仰向けにするのが基本」です。

頭の変形は、「同じ向きで寝続けること」で起こるので、それに対処すれば予防に役立ちます。赤ちゃんの頭の変形を防ぐ方法についてくわしくは、下記の記事を参照してください。

横向き寝では股関節脱臼も心配

赤ちゃんの脚は、仰向け寝の状態で両ひざと股関節が十分曲がり、上から見たとき両側の太ももとすねで「M字型」を描くのが自然な状態です。

横向け寝をすると、片方の脚が立膝になっていたり、内側に倒れた状態になりやすく、そのため股関節が徐々に脱臼してしまうことがあります。

股関節脱臼を予防するためにも、赤ちゃんは脚を自由に動かせる状態で仰向けに寝かせ、基本的にM字型に開脚している状態になっているのが大切です。股関節脱臼についてくわしくは、下記の記事を参照してください。

ゲップが出ないときも仰向けでいいの?

縦抱っこでゲップをしている赤ちゃんのイメージ

授乳後に赤ちゃんがうまくゲップを出せないときは、「顔を横に向けて寝かせるのが良い」と言われることもあります。ゲップが出ないまま赤ちゃんを仰向けに寝かせていると、「吐いたものをのどに詰まらせて窒息するのではないか」と心配になりますよね。

そんなときはどうすればよいのでしょうか。

やはり仰向けで寝かしつけるのがおすすめ

授乳後にゲップが出ていない赤ちゃんであっても、基本的にはやはり「仰向け」で寝かしつけることが推奨されています。

健康な赤ちゃんでは、気道の構造と反射によって、仰向け寝をしているときに吐き戻した母乳やミルクや唾液などが出ても、無意識のうちにうまく飲み込んだり咳をして出したりするので、これらをのどに詰まらせて窒息するようなことはほとんど心配ないと言われています[*2, 3]。

ちなみに、溢乳や吐乳による胃酸の影響を心配されるご両親もいますが、赤ちゃんの胃酸は基本、それほど酸性度が強くないので、それで食道や口腔内が溶ける心配はありません
(監修:丘逸宏先生)

ただ、健康面で気がかりがある赤ちゃんで、かかりつけ医師から何か特別な指示がある場合は、それに従ってください。

仰向けにしているのに、なぜ横向きになるの?

こちらを見る新生児のイメージ
Lazy dummy

仰向けに寝かせたはずの赤ちゃんが、気づくと横向きになっているということはよくあります。寝返りができない時期の赤ちゃんでも横向きになっているのは、いくつかの理由が考えられます。

新生児は背中を丸めがちだから

生まれて間もない赤ちゃんは、手足の関節を曲げて「体を丸めた姿勢」をしていることが多いものです。これは、ママのお腹の中にいるときからで、狭い子宮のなかで自分を落ち着かせたり、お腹から出たあと外の世界になじむのに備えるためと言われています。

そのため生まれてしばらくは、寝ているときも背中を丸めた姿勢になりやすいので、ふとした拍子にころんと横向きになってしまうことがあるのですね。

生まれつきの頭の形で横向きになりやすい子も

さきほど、いつも同じ方向で寝ているうちに、頭の形がゆがんでしまうことがあると解説しましたが、中には、ママのお腹の中にいるときに何らかの力が加わったことで、生まれつき頭の形が少しゆがんでいる子もいます。

妊娠中にエコー(超音波)検査で様子を見ると、赤ちゃんはママのお腹の中で体を動かしたりいろいろな姿勢をとっていることがわかりますね。でも分娩が近くなると、ほとんどの赤ちゃんが頭を下にした「頭位」になります。この場合は、頭がママの骨盤に守られるため、頭の形は変形しにくいとされています。

ところが、分娩の直前まで「骨盤位」、いわゆる逆子だった赤ちゃんの場合は、生まれるまで頭に外からの圧力がかかり、変形しやすいと言われています。

このようにして生まれつき頭の形に変形があるので、それによって寝やすい方向ばかり向くことになり、向き癖がついて横向き寝になりやすくなっている子もいます。

なお、お腹の中にいるときだけでなく、お産のときに狭い産道を通ることで頭の形がゆがむ子もいます。

新生児を寝かせるときの注意点

聴診器を当てられている新生児のイメージ
Lazy dummy

新生児が眠っている間に一番心配なのは、SIDSと窒息です。赤ちゃんの命を守るため、以下のことに注意しましょう。

1歳までの赤ちゃんは必ず仰向けで寝かしつける

何よりも大切なのは、「1歳までの赤ちゃんは、必ず仰向けで寝かしつける」ということです。昼も夜も、ねんねのときは必ず仰向けにしましょう。

なお、これは「赤ちゃんは起きているときもけっしてうつ伏せにしてはいけない」ということではありません。「目が覚めていて、保護者が近くで見守っているとき」には、肩などの運動機能の発達のために、うつぶせにする時間もある程度は必要と言われています。

ときどき向きを直してあげる

寝返りができるようになる前の赤ちゃんが眠っているときはとくに、ときどき様子をチェックして、横向きになっていたら仰向けに直してあげましょう。

なお、寝かしつけは1歳までは必ず仰向けでしてほしいのですが、「寝ているときにうつぶせになった赤ちゃんを仰向けに直してあげるかどうか」は、「赤ちゃんが自分で自由に寝返りできるかどうか」によります[*2, 3]。下記を目安にしてみてください。

新生児~自分で寝返りができるようになる前

寝ている赤ちゃんが自分でうつ伏せになってしまったら、親が仰向けに戻します。

自分で寝返りができるようになったら

寝ている赤ちゃんが自分でうつ伏せになっても、仰向けに戻す必要はないとされています。

「自分で寝返りができる」とは:赤ちゃんが、「仰向け⇒うつぶせ」「うつぶせ⇒仰向け」のどちらも、自分だけで寝返りできるようになることです

※いずれの時期も、寝返りをしたときに備えて、赤ちゃんの周囲に柔らかな寝具やぬいぐるみなど窒息の危険があるものを置かないでください

腕が下になっていたら前に出す

寝返りができるようになる前の赤ちゃんが横向き寝をしているのに気づいたら、腕の位置も確認しましょう。横向き寝で腕が体の下になっていると、体を動かした拍子にうつぶせになりやすく、危険だからです。

こうしたときは、「体の下になっている腕をそっと出してあげる」か、仰向けに直してあげましょう。

枕や柔らかすぎる寝具は使用しない

柔らかくてふかふかした布団や毛布、枕などを使っていていると、これらが顔にかかったり、首をしめられることで窒息する危険があります。

同様の理由で、赤ちゃんが眠る場所には、クッションやぬいぐるみなどを置かないことも大切です。

寒さが心配なときは、季節にあった赤ちゃん用のスリーパー(着用できる寝具)を着せてあげるのが一番安心です。

なお、SIDS予防では上記以外に、赤ちゃんを温めすぎないようにしたり、喫煙者に近づけないほうがよいことなどもわかっています。また、赤ちゃんに必要な予防接種をきちんと受けることも、SIDSの予防に効果的と言われています。受けられる時期が来たら適切なスケジュールで、月齢ごとに必要なワクチン接種を受けさせることも忘れないようにしましょう。

まとめ

家族に囲まれている新生児のイメージ
Lazy dummy

まだ寝返りのできない新生児でも、気がつくと横向きで眠っていてビックリすることがあります。横向き寝をしていると、赤ちゃんが体を動かしたはずみなどにうつぶせになってしまい、SIDSのリスクを高めたり窒息を引き起こす心配があります。1歳前の赤ちゃんは、寝かしつけの際、横向きで寝かせるのはやめましょう。また、自由に寝返りができるようになるまではとくに、赤ちゃんが寝ているときは様子をときどき確認するようにし、もし横向けになっていたら仰向けに戻してあげてくださいね。

(文:村田弥生/監修:丘逸宏先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]『デンバー発達判定法 DENVERⅡ』W.K.Frankenburg.M.D,2005 ㈳日本小児保健協会 日本小児医事出版社
[*2]厚生労働省:11月は「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の対策強化月間です 
[*3]米小児科学会:眠っている赤ちゃんを安全に保つ方法:AAPポリシーの説明 

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-