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2021年07月19日 16:57 更新

【医師監修】子供の偏食の原因と対策まとめ! 改善するためのポイントは?

工夫して心を込めて作った食事を、子供が思ったように食べてくれないとガッカリしたり困ったりしますね。特に偏食がひどいと、栄養が不足したり偏ったりしないかと心配にもなります。そこで今回は、子供の偏食の原因や対策をまとめました。

子供の偏食の原因は?

離乳食を食べる赤ちゃん
Lazy dummy

一口に「偏食」と言っても、食べられないのは子供なりにいろいろ理由があります。本能的な原因から発達や性質上の原因まで、さまざまあることをまず知っておきましょう。

食べ慣れていないのでなんだか怖い!?

子供は、食べ物の好みをまず見た目で判断します。見慣れない食べ物に対しては、子供は「何だろう?」と警戒心を抱いて「モンスター」のような存在と感じてしまい、何となく怖いと思うことがあります。

これは特に、「慎重で用心深い」子や「心配性」の子、「気が散りやすい」タイプの子に多く見られるようです。

味やにおいが苦手……

また、見た目だけでなく、初めて食べたものの味などに警戒心を抱き、スムーズに受け入れられないこともあります。

私たちは生命を維持するため栄養を外から摂取しなければなりませんが、その際、体にとって害がありそうなものを避けるために、特定の味やにおいを「食べてはいけないもの」と判断する能力が本能的に備わっているといいます。

「甘味」「塩味」「うま味」「酸味」「苦味」の5つの味のうち、とくに酸味は「腐ったものの味」、苦味は「おもに植物に含まれる毒素の味」であることが多いので、ヒトを含め動物は生まれた直後から、「酸味や苦みを嫌う」ことが知られています。また、ヒトの赤ちゃんは腐敗臭を嫌がることもわかっています。

大人になれば、こうした味でも食べて問題ないものがあることは経験からわかってきますが、まだ食べることに慣れない時期の子供には、食べ物の好き嫌いにこのような本能的な感覚が大きく影響することがあります。

嫌な記憶が付いてしまった

子供は酸味や苦味を本能的に嫌だと感じることがあるといわれています。逆に「甘味」「塩味」「うま味」は好んで食べる傾向があるそうです。

ただ、この好みは経験によって変化することがあります。例えば、それまで好んで食べていたのに、食後に腹痛やアレルギー症状などの体調不良が起こると、直前に食べたものの味に対して嫌悪感を抱くこともあるのです。これも、味を手掛かりに体にとって害のありそうなものを避ける仕組みのひとつです。

上手に食べられていないだけ

子供は何か食べるときに、次のような様子を見せることがあります。

・食べ物を口に入れない
・口に入れた食べ物を出してしまう
・食べ物をかじったりかんだりしない
・食べ物を投げる

食事のときの困った行動として、これらに悩んでいるママやパパもいるでしょう。でも、こうした行動のほとんどは、「子供がまだ食べることに慣れていない」ことが原因です。

とくに下記のような特徴のある食品は、まだ上手に噛み取ったり咀嚼することができない1、2歳の子供にとって食べにくいとされています[*1]。

1~2歳児にとって食べにくい食品の例

弾力の強いもの:かまぼこ、こんにゃく、いか、たこなど

皮が口に残るもの:豆、トマトなど

口の中でまとまりにくいもの:ひき肉、ブロッコリーなど

ペラペラしたもの:わかめ、レタスなど

唾液を吸うもの:パン、ゆで卵、いもなど

誤嚥しやすいもの:もち、こんにゃくゼリーなど

噛みつぶしにくく口の中に残りやすいもの:薄切り肉など


年齢が上がり上手に食べられる食品が増えれば、こうした食事の際の困った行動も徐々に減ってくるはずです。それまでは頭ごなしに叱ったりせず、大らかに見守ってあげましょう。

子供の偏食がもたらす影響

泣いている幼児
Lazy dummy

子供の偏食は、あまりひどくなると発育に影響する心配が出てきます。子供の体にはどのような栄養素が必要でどんな食品から摂れるのかを知って、栄養不足にならないような食事作りの参考にしてくださいね。

栄養の不足

子供のすこやかな発育のためには、さまざまな栄養素を食事からバランスよく摂取することが大切です。そのためには、「2~6歳くらいの幼児の場合、食べられる食品の数が50品目以上」になっているのが理想的と言われています[*2]。

偏食がひどく、食べられる食品の数が極端に少ない場合は、栄養が偏って必要な栄養素が不足してしまうことも考えられます。すると、発育不良を招いて体重が標準よりかなり少なかったり、低身長になったりする心配も出てきます。

子供に必要な栄養素って

私たちが生きていくために必要な栄養素は、「炭水化物」「脂質」「タンパク質」「ビタミン」「ミネラル」の5つです。この5種類には、以下のようにそれぞれ違った大事な働きがあるため、バランスよく摂ることがとても大切です。

(1)エネルギー源となる「炭水化物」

糖質と食物繊維から構成されています。糖質はエネルギーのもとになり、ごはん、パン、麺類などの穀類やイモ類に多く含まれます。食物繊維もおもに腸内環境を整えるなどの面で健康に役立ちます。

(2)細胞膜や血液のもとになる「脂質」

少量でも高カロリーのため、効率のよいエネルギー源となります。細胞膜や血液成分として役立ったり、ホルモンを合成する働きなどがあり、植物の種子や乳製品、肉や魚などに多く含まれます。

(3)体を作る「タンパク質」

体を作る細胞の主成分となります。タンパク質が消化によって分解されてできる「アミノ酸」のうち、9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、体内で作ることができないため食べ物から摂取する必要があります。多く含まれるのは、肉類、魚介類、豆類、卵、乳製品などです。

(4)生命の維持に不可欠な「ビタミン類」

糖質、脂質、タンパク質の代謝を助け、生命維持のために不可欠な栄養素です。ビタミンAは目や皮膚などを健康に保つ作用、ビタミンB群は成長を促すなどの作用、ビタミンCは血管を健康に保ったり抵抗力を高めるなどの作用があります。

また、ビタミンDはカルシウム吸収を促し骨を強く保つなどの作用、ビタミンEには抗酸化作用など、それぞれに違った大切な働きがあります。多く含まれるのは、野菜、果物、豆類、魚介類などです。

(5)骨や筋肉に必須な「ミネラル」

丈夫な骨や歯を作ったり、筋肉などの働きを保つため必要な栄養素で、子供の発育のためにも欠かせません。カルシウムは丈夫な骨と歯を作るだけでなく血液・筋肉・神経の正常な働きに欠かせません。

また、鉄分は不足すると貧血を引き起こします。 多く含まれるのは、乳製品、野菜、魚介類、海藻類、キノコ類などです。

食べないときのチェックポイント

離乳食を食べさせてもらっている幼児

偏食含め、子供が食事を積極的に食べないときには、食事時間や調理形態などを見直すと食べるようになることがよくあります。

お腹はすいているか

偏食がひどかったり食事をあまり食べないからといって、いつでも何か食べられるようにと食べ物を用意している家庭もあるようです。でも、ちょこちょこ何かを食べているようだと、空腹感を感じにくくなって、食事時にますます食欲がわかなくなってしまいます。

食事の間隔は十分に空ける

食事時間は、お腹をすかせて迎えることが大切です。食事の間隔を2時間半~3時間ほど空けると、ほどよい空腹を感じておいしく食べられるようになります[*3]。

なお、1日3回の食事に加えて、幼児のうちは「1日1~2回の軽食」も食べさせたいところです。幼児期は体の大きさに対して必要とする栄養の量が多い一方で、まだ胃袋が小さく消化機能も未熟なので、1日3回の食事だけでは必要な栄養量を満たすのが難しいからです[*1]。

食事の合間に食べさせる軽食は栄養を補うものなので、お菓子やジュースなどではなく、おにぎりやパン、イモ類や果物などにし、牛乳や麦茶などで水分補給します。

食事の時間を決めるのも大事

軽食も与える時間が不規則だと、次の食事の際の食欲に影響してしまいます。毎回の食事前に空腹感の出てくる食生活を定着させるには、生活リズムを整えることがポイントです。朝は早起きを心がけ、食事は時間を決めて、毎日だいたい同じ時間帯に食べさせるようにしましょう。

また、食事時間が長くなると、子供は食べることに疲れたり嫌になったりしてしまいます。「1回の食事は15~30分を目安」に、長くても40分くらいで切り上げることが大切です[*3]。

量や固さは適切か

この記事の前半で、子供にとって食べにくい食感の食べ物もあると解説しましたが、その子の発達段階に合った食べ物を用意するのも大切です。

とくに生後5、6ヶ月~1歳半ごろまでの離乳期は、食べる機能が大きく発達するころで、食べ方の練習をしている時期です。そのため、発達の段階に食べ物の固さなどが合わないと食べられないことがあります。

月齢や年齢に限らず、子供の食べ方をよく見て、食事は発達に合った調理形態にすることが大切です。 固さの目安は、以下を参考にしてください[*4]。

離乳時期ごとの食べ物の固さの目安

離乳初期(生後5~6ヶ月ごろ): なめらかにすりつぶした状態

離乳中期(生後7~8ヶ月ごろ):舌でつぶせる固さ

離乳後期(生後9~11ヶ月ごろ):歯ぐきでつぶせる固さ

離乳完了期(1歳~1歳半ごろ):歯ぐきで噛める固さ


量が多すぎないかもチェックしておきましょう。食べる量も子供により個人差が大きいものですが、時期ごとの1回当たりの目安量は、以下を参考にしてください[*4]。

離乳時期ごとの1回当たりの目安量

離乳初期(生後5~6ヶ月ごろ)
「1さじ」から始めてだんだん増やしていく

離乳中期(生後7~8ヶ月ごろ)
全がゆ(5倍がゆ) 50~80g
野菜・果物 20~30g
肉・魚10~15g、または豆腐30~40g、または卵黄1個~全卵1/3個、または乳製品なら50~70g

離乳後期(生後9~11ヶ月ごろ)
全がゆ(5倍がゆ)90g~軟飯80g
野菜・果物 30~40g
肉・魚15g、または豆腐45g、または全卵1/2個、または乳製品80g

離乳完了期(1歳~1歳半ごろ)
軟飯90g~ご飯80g
野菜・果物 40~50g
肉・魚15~20g、または豆腐50~55g、または全卵1/2~2/3個、または乳製品100g

※食べる量は個人差があるので、上記の量はあくまでも「目安」と考えましょう。
※肉や魚、豆腐、卵、乳製品といったタンパク質源食品は、1種類だけ食べさせる場合の量です。何種類か使用する場合は、量を調節しましょう。

偏食による体の成長への影響が心配なときは受診を

子供の体重測定

なお、子供のひどい偏食が気になるときは、「体の成長が滞っていないか」にも気を付けてみましょう。

母子手帳には乳幼児の「身体発育曲線」のグラフがあるので、ここに子供の身長・体重を記録するとわかりやすいです。このグラフにある帯は、各年齢の94%の子が帯の範囲に入るという意味ですが、帯から外れているイコール何か問題がある、ということではありません。

下方に多少外れているとしても、この曲線のカーブに沿って成長していれば、その子なりに成長しているということなので、あまり心配はいりません。

ただ、「まったく横ばいのまま」とか「体重が減ってきた」という場合は、かかりつけの小児科医に相談してください。

子供の偏食を改善するために取り組みたいこと

にんじんの皮むきをする女の子

偏食をする子には、少しでもバランスのよい食事をなんとか食べられるようになってほしいですよね。ここでは、偏食の改善を目指すときに試してみてほしい、いくつかのポイントを紹介します。

調理を工夫する

食べない原因が、調理形態が発達に合っていないようなときは、固さを調節しましょう。繊維が多い野菜などは、細かく刻んでスープなどで煮込んだり、とろみをつけるなどすると食べやすくなります。

子供が自分で食べたい、と思うような工夫も大切なので、ごはんに野菜や肉類を混ぜて一口サイズのおにぎりにしたり、野菜はスティック状にして持てるようにするなど工夫してみましょう。

家族で楽しく食事を楽しむ

偏食をなくすには、食事や食べ物に対する良いイメージを持ってもらうことも大切です。まず、食事は家族みんなで「おいしいね」などと言いながら、楽しく食べられる雰囲気を作りましょう。子供の嫌いな食べ物を、親がおいしそうに食べているところを見せるのもいいですね。

また、食べる意欲を育てるために、子供が食べやすいメニューを作って手づかみ食べも思い切りさせてあげたいですね。ちょっと大変ですが、床に新聞紙やレジャーシートを敷いて汚れ対策をし、できるだけ自由に食べさせてあげましょう

ときには、食事をお弁当箱に詰めて、庭やベランダ、外などで食べるのもピクニック気分が味わえて楽しいものです。

前向きな姿勢が見られたらほめる

子供はほめられる経験をすると、親に認めてもらえたと思い、うれしくてもっとやろうと思うようになります。そこで、「食卓に座る」「嫌いな食べ物を触ったり持ったりする」といったことができただけでも、ほめてあげることが大切です。

もちろん、嫌いなものを食べようという様子を見せたり、少しでも食べたりしたときには、大げさなくらい思い切りほめてあげましょう。

一緒に料理をする

静岡市内の公立保育園児を対象に行った調査で、「親子で食事作りをしたことのある子供」は、食事作りの経験のない子に比べて「偏食の割合が低かった」と報告しているものもあります[*5]。

「レタスを1枚ずつはがす」「ピーラーで野菜の皮をむく」「配膳の準備を手伝う」など、ちょっとしたことでよいので、その子の年齢に合った内容で食事作りの手伝いをさせてあげてください。偏食によい効果が現れるかもしれません。

まとめ

スプーンを持って笑う赤ちゃん

偏食がひどいと、栄養が偏って発育に影響が出ないかと心配になりますね。でも、子供が偏食になる理由はさまざま。偏食をしたとき、頭ごなしに叱ったり無理に食べさせようとしたりすると、食べることや食事自体も嫌いになってしまうことがあります。まずは、子供が食べる様子をよく見て、調理形態や味付けなどを工夫するとともに、家族みんなで楽しく食事ができる雰囲気を作りましょう。あまり焦らず、成長とともに、少しずつ偏食を克服できるよう工夫していけるといいですね。

(文:村田弥生/監修:丘逸宏先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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