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2021年01月07日 16:41 更新

【医師監修】妊娠中に眠れない原因は? 今日からできる対策

妊娠中には睡眠のトラブルを感じる人が少なくないようですが、「眠れない」と訴える人がいる一方で、「眠くて、眠くてしかたがない」と訴える人もいて、その悩みは多様です。妊娠にともなって生じる睡眠障害についてまとめます。

「眠れない」も「無性に眠い」も妊娠に伴う睡眠障害

横になる妊婦
Lazy dummy

妊娠随伴睡眠障害について

妊娠による体調の変化の影響を受け、「眠れない」や「無性に眠い」「寝すぎてしまう」など人により多様な睡眠のトラブルが起こることがあり、それらをまとめて「妊娠随伴睡眠障害(にんしんずいはんすいみんしょうがい)」といいます。

生理的な体の変化が原因なので、「妊娠随伴睡眠障害」は必ず治療が必要な病気ではないものの、妊婦さんの生活の質に影響する状態なので、暮らしの中でケアをして、なるべく改善したいところです。まず妊娠時期別に原因を知っておきましょう。

・妊娠初期

妊娠によって分泌量が増したプロゲステロンの影響で眠気が強くなります。体の深部体温も上昇した状態が続き、1日の中で体温リズムのメリハリがなくなるため、日中の眠気に拍車をかけ、夜の眠りを浅くします。

・妊娠中期

一般的には体調の変化も落ち着き、睡眠のトラブルも軽減する時期ですが、人によっては大きくなってきたお腹や赤ちゃんの胎動が気になって、夜の眠りが浅くなってしまう人もいるかもしれません。

・妊娠後期

大きなお腹や子宮の収縮、赤ちゃんの胎動、頻尿、背腰痛などから寝苦しさや、熟眠感の乏しさを感じる人が多いようです。
また、産休に入ってから日中の活動量が低下することで夜によく眠れなくなる場合も。

松峯先生
「つい昼寝をしすぎて、夜に眠れないと訴える妊婦さんが少なくありません。産休前は忙しかった人など、ようやく産休に入ってほっと一息つきたくなるのかもしれませんね。気持ちはとてもよくわかるのですが、日中、適度に活動をしなければ、夜の安眠は得にくいです」

妊婦の「眠れない」のパターンとは?

睡眠障害には次のように4つのタイプがあります。

① 入眠障害 寝つきが悪い
② 熟眠障害 熟眠感が得られない、眠りが浅い
③ 中途覚醒 夜中に何度も目を醒ます
④ 早朝覚醒 起床したい時間よりも2時間以上前に目を醒まし、再び眠れない

妊婦の睡眠の質については、とくに「睡眠維持の悪化(中途覚醒)」「入眠困難」が多いとされています [*2]。

妊婦の眠れない問題、対策7つ

クッションに顔をのせる女性
Lazy dummy

就寝時間に自然な眠気を覚えて眠り、朝までぐっすり眠るために、生活の中でできることを試してみましょう。

松峯先生
「睡眠のトラブルのある妊婦さんの中には、冷えてはいけないと過剰に厚着して寝たり、室温を高く設定していて、寝苦しさを感じている妊婦さんが多いという印象です。妊娠経過が順調なら基本的に体温は高く、お腹の赤ちゃんが冷えてしまう心配はないので、自分が快適と思う睡眠環境を整えてください」

生活の見直し編

① 日中は適度に活動する
体調が悪くないなら日中は体を動かし、昼寝をするときは遅くない時間帯(夕方などは避ける)に20〜30分以内にとどめると、夜の睡眠に影響しにくいと考えられています。

② 夕食は就寝3時間前までに
夕食の消化が終わってから就寝するのが寝つきをよくするコツ。食べ物によって消化にかかる時間が異なり、脂質が多い食事などは時間がかかります。そこで夕食はあっさり、比較的消化のよいものを、就寝3時間前(遅くても22時前) に食べ終わるようにしましょう。

③ 入浴は就寝2時間以上前に
就寝予定時刻の2時間以上前にしっかり温まって出ると、自然に体温が下がっていく間に眠気が強まります。お風呂から出た後すぐは寝つきが悪いので、ボディケアなどをして眠気を待って、のんびり過ごしてください。

④ 就寝前はなるべくブルーライトカット
ブルーライトは脳を覚醒させ、睡眠に影響を与えます。寝つきが悪い人は寝る前はスマートフォンやタブレット、パソコン、テレビなどの利用を控えましょう。

睡眠環境の見直し編

⑤ ラクな寝姿勢を
妊娠が進む過程では、体型が変わっていくので、ラクな寝姿勢も変っていきます。クッションなどで補正しながらそのときどきの自分にとってラクで、快適な寝姿勢を探して寝ましょう。

「妊娠前から使っていた枕が合わなくなる人も多いので、寝苦しいときは見直してみるといいかもしれません。バスタオルなどで高さ調整するだけでも、少しラクになることもありますよ」(松峯先生)

⑥ パジャマ、下着、寝具を快適なものに
厚着(暑さ)も、薄着(寒さ)も、睡眠に影響してしまいます。また体を締め付ける下着、重い布団、体が沈むマットレスなども、程度によっては寝苦しく感じるので、自分の感覚を最優先して快適な状態を整えましょう。

⑦ 室温・湿度をコントロール
眠りに適した温度は、夏は25〜28℃、冬は15〜18℃とされていますが、寝室の条件にもよるので自分が快適な温度に調整をしましょう。湿度の目安は通年40〜60%です。夏は除湿、冬は加湿をするとより快適な環境を整えられるでしょう。

まとめ

妊娠中にホルモン分泌などの影響で起こる睡眠障害は病気ではないものの、心身の健康づくりやQOL(生活の質)の維持のためにも「いい眠り」は大切です。日常生活でできる工夫をして、夜の安眠を確保していきたいものです。生活上の工夫をしても眠りの質が改善しない場合は、主治医に相談してアドバイスを受けましょう。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 女性の睡眠とホルモン
渋井佳代,バイオニズム学会誌,Vol.29,No.4,205-209,2005
[*2]妊婦の睡眠習慣と睡眠健康に関する横断的探索的研究
駒田陽子,廣瀬一浩,白川修一郎, 日本女性心身医学会雑誌 Journal of JSPOG Vol.7,No.1,pp.87-94,2002

病気がみえるVol.10産科 第4版 , メディックメディア, 2018.
松峯寿美「やさしく知る産前・産後ケア 」高橋書店,2019.
古賀良彦「脳の疲れをとる本」方丈社,2018.

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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