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2024年07月21日 06:22 更新

夏休みの学童弁当は食中毒との戦い!? 弁当のプロが避ける『食材+調味料』の組み合わせとは?野上優佳子さんインタビュー#2

夏場のお弁当は、とにかく腐らせるのが恐怖ですよね。お弁当に入れがちな食材や調味料でも、使い方次第で危険な状態になることも。 今回は「マツコの知らない世界」(TBS系)に“お弁当の世界の人”として出演経験もあり、『学童弁当』(小学館クリエイティブ)の著者でもある野上優佳子さんに、安心なお弁当作りのコツをお聞きしました。

Lazy dummy

お話をしてくださった方
野上 優佳子 さん
(料理家・お弁当コンサルタント)

■夏場のお弁当、注意が必要な食材は?

――学童弁当が続く夏休みは、特に食中毒が気になります。どのような対策が必要でしょうか?

野上優佳子さん(以下、野上) 農林水産省のサイト「お弁当づくりによる食中毒を予防するために」に、基本的な予防法がまとめられています。

梅雨の時期や夏場は使い捨てのおかずカップを使う、そのままでも食べられるハムやかまぼこなども加熱するなど、まずはそちらをチェックしておきましょう。

――かまぼこやちくわは火を通さずにお弁当に入れてもいいと思ってました。

野上 かまぼこやちくわは買ってきたらすぐに冷蔵庫にしまいますよね。それが、かまぼこやちくわを買ってきたのに玄関にうっかり落としたままにしてしまい、それを4〜5時間経ってから見つけたとします。夏場に数時間、要冷蔵のものを室温で……なんだか食べるのが怖くなりませんか?

家庭で加熱調理せず、ちくわやかまぼこをお弁当に入れて数時間後に食べるのは、それと近い状態だって考えていただくといいと思います。

特に「ちくわキュウリ」は、私はお弁当には入れません。ちくわが生のままで水分の多いきゅうりと組み合わされてますし、さらに素手で触って作る人も少なくないでしょう。お弁当を作るときや詰めるとき、素手で食品に触れるのは避けたいことです。

――その他にも気をつけた方がいいポイントはありますか?

野上 まずは「お弁当箱の取り扱い」です。

お弁当箱は毎回パッキンを外して洗うと安心です。食洗機での洗浄は、90度以上でされているメーカーが多く、乾燥もできるとさらに衛生的に安心です。お弁当箱を「手洗い+自然乾燥」する場合は、お弁当箱に食品を詰める前に、直接食品にかけてもいいアルコールスプレーをお弁当箱に直接吹きかけるといいと思います。
さらにお弁当箱のフタはすぐ閉めないで、食品が接触する内側にもアルコールスプレーを吹きかけて、少し置いてからフタをします。

――衛生的なお弁当箱に詰めるようにするんですね。

野上 そうですね。それと「食品を冷ましてからお弁当箱に入れる」こともポイントです。

夏場は特に、キッチンは火を使うので他の部屋よりも暑いです。だから私は、食材の粗熱がとれたら保冷剤を下に置いて、お弁当箱に詰める直前まで冷蔵庫に入れておくようにしています。

冷蔵庫に入れられない時は、冷房の効いた部屋にお弁当箱を移動させて、下に保冷剤を置いたまま、扇風機で風を送りながら冷ますこともあります。

――食材をしっかり衛生的に冷ますということですね。そのほかにもあるでしょうか?

野上 いくら衛生的な環境で加熱した食品を詰めても、菌が繁殖しやすい環境で置いておけば腐ってしまいます。だから「お弁当を保管中も保冷する」ことも大切です。

登校してからお昼になるまでの保管状態は学童施設によって違います。冷房のない部屋に置いても無事なように、お弁当箱の上に保冷剤を入れて遮光性のある保冷バッグを使うことをおすすめします。特に夏場は、保冷剤をいつもの倍入れておいてください! 目安として、ケーキなどについてくる30gの保冷剤は1時間半、50gの保冷剤は2時間半くらい保つそうです。

冷気は上から下に動くので、保冷剤は基本的にお弁当箱の上に置いて使用します。保冷剤は、お弁当全体を冷やせるサイズがオススメ。フタに保冷剤を内蔵したお弁当箱もあり保冷剤がズレる心配がなく丸ごと洗えて便利です。外気温との温度差が特に激しい夏場は、ぜひ保冷バッグを併用して。冷気を保つのに効果的です。
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『学童弁当 月~金の5日間×6週間、30日分のマラソンレシピ』(小学館クリエイティブ)より

■お弁当に入れるのはどんな野菜がいい?

――生野菜はお弁当に向かないと聞いたことがありますが、入れない方がいいんでしょうか?

野上 基本的に、生野菜はおすすめしません。入れるとしたらミニトマト(もちろんヘタはしっかり取って、キッチンペーパーで汚れを拭き取って)や、いちご、ぶどうなどの果物など、切らずにそのまま入れられるものを別容器に入れて持っていくのがいいと思います。

移動中の衝撃、周りで接触する食品の温度――例えば十分に冷めていなかったおかずやごはんなどですね、ほかにも塩分があると、野菜から水気が出やすくなって傷む心配があります。

――お弁当に入れても衛生的に安心で、栄養価が高い野菜をいくつか教えてください。

野上 お弁当に入れやすいのはニンジンとブロッコリーです。

ニンジンに含まれている、油に溶けやすい脂溶性ビタミン「β-カロテン」は炒め物や揚げ物にすると吸収率がアップするそうです。加熱後も変色しにくく、形が崩れにくいのもお弁当にぴったりです。

ブロッコリーはお弁当の王道野菜ですね。こちらもビタミンなどの栄養価が高いそうです。私は電子レンジで短時間蒸すか、焼くようにしています。ゆでるよりも水気が飛びますし、ニンジンと同じように油での加熱によって吸収率が上がります。

■ブロッコリーの塩こんぶナムル
材料:ブロッコリー(3~4房)、塩こんぶ(1~2つまみ)、ごま油(少々)
① ブロッコリーをゆでて水気をしっかりしぼる。
②塩こんぶ、ごま油と和える。
■にんじんガレット
材料(つくりやすい量):にんじん(小1本 約100g)、片栗粉・粉チーズ(各大さじ1)、塩(2つまみ)、オリーブ油(小さじ2)
① にんじんはせん切りにする。塩をまぶして数分置き、水気が上がってきたら片栗粉、粉チーズと和える。
② フライパンに油を熱し、スプーンで一口大に分けた①を入れて表面を平らにならす。弱めの中火で2~3分、両面をこんがり焼く。
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『学童弁当 月~金の5日間×6週間、30日分のマラソンレシピ』(小学館クリエイティブ)より
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【関連】
インタビューで紹介した「お弁当レシピ」一覧(全6ページ)はこちら

――ニンジンとブロッコリー、どちらもお弁当の代表的な野菜ですね!

野上 ただし我が家では、夏場は傷むのが心配なので、お弁当に無理に野菜を入れません。朝と夜、家庭で食事するときに野菜の量を調整をして多めに食べればよし、としています。

■お弁当に使うなら「マヨネーズ」にも ひと工夫を

――生野菜以外にも、ポテサラなどマヨネーズをたくさん使った野菜料理もやはり傷みやすいのでしょうか?

野上 マヨネーズそのものには、殺菌力のある酢と食塩などが入っているので、防腐作用があるとされています。だからマヨネーズ自体が傷むわけではないです。

ただ、野菜など他の食材をマヨネーズと合わせると、水分が出て傷みやすくなり、マヨネーズの防腐効果が弱まります。だから、例えばお肉をマヨネーズと一緒に炒めれば、お肉の水分は加熱調理で飛ぶので傷みにくくなります。

――マヨネーズをゆで野菜にかけてお弁当に入れるのはどうでしょう?

野上 我が家では「野菜+マヨの組み合わせ」は避けています。

娘が小さかった時に一度、夏場にゆでブロッコリーを残してきたことがありました。マヨネーズをブロッコリーの上にかけて持たせたら、保冷剤が少なかったのかブロッコリーが変色してまずかった、というフィードバックをいただきました(笑)……。

お弁当のマヨネーズ、使うなら加熱したオーロラソースが便利

■レンチン蒸し鶏ホットドッグ
・材料:ホットドッグ用のパン(2本)
・レンチン蒸し鶏とブロッコリー 材料:鶏むね肉(60~70g)、ブロッコリー(2房)
  材料A:塩(1つまみ)、砂糖・こしょう(各少々)、酒(小さじ1)
・いり卵 材料:卵(1個)、オリーブ油(小さじ2)
  材料B:塩(1つまみ)、こしょう(少々)
・オーロラソース 材料:ケチャップ・マヨネーズ(各小さじ1/2)
① 肉は皮を取り除いて、1cm幅程度のそぎ切りにして4枚に。Aを加えて軽くもむ。
② 耐熱皿に①を重ならないように並べ、ふんわりラップをして1分30秒レンジで加熱。ひっくり返し、ブロッコリーを加えて再度30秒加熱する。ブロッコリーを取り出し、ラップをしたまま冷ます。冷めたら水気を拭き取る。
③ 卵を溶いてBを混ぜ、フライパンに油を熱して、いり卵をつくる。
④ オーロラソースの材料を耐熱皿に入れて混ぜ、ラップをせずに30秒レンジで加熱。
⑤ 切れ目を入れたパンに④をたっぷり塗って、②と③を挟む。
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『学童弁当 月~金の5日間×6週間、30日分のマラソンレシピ』(小学館クリエイティブ)より

――マヨネーズをお弁当に生かすいい方法はありますか?

野上 オーロラソースは子どもたちが好きでお弁当に使いやすいですね。マヨネーズとケチャップを混ぜたら、電子レンジで1回加熱してオーロラソースの水分自体を飛ばすといいです。加熱すると色も鮮やかになりますよ。

――水分が減っておいしそうなのはいいですね!

野上 ただ、オーロラソースも直接野菜にくっつけると、野菜の水分が出ちゃいます。だから野菜とオーロラソースの両方が完全に冷めてから混ぜるといいですね。

――とにかく水分が出るのは避けた方がいいということですね。焼いた肉や炒め物も水分・油分が出ますが、どうしたらいいでしょうか?

野上 キッチンペーパーで余分な水分・油分を取ってからお弁当箱に入れましょう。気になる時には、ぜひ吸水性の高いおかずカップも試してみてください。

(解説:野上優佳子、取材・文:大崎典子)

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