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2024年05月29日 07:07 更新

子育てにおける理想を手放してみたら…元気なだけで花マル!|ぼくのママはプロサッカー選手 #5

出産前に、「理想の子育て像」「理想の母親像」を描いていたママは多いのでは? しかし、現実はなかなか理想通りにはいかないものですよね。

妊娠・出産=現役引退……そんな女子サッカー界の常識を覆し、WEリーグ初の「ママプロサッカー選手」として活躍する元なでしこジャパンの岩清水梓選手。そんな岩清水選手による出産・子育てエッセイ『ぼくのママはプロサッカー選手』(小学館クリエイティブ)より一部抜粋して、連載(全5回)でお届けします。

第5回となる本記事のテーマは子育てにおける理想と現実について。

出産前はSNSで目撃した完璧なママを「すごいなぁ」と見ていた岩清水選手でしたが、実際に息子さんが生まれてからは、ただの幻想だったと解釈するようになったそうで……

がんばらなくたっていい

ぼくのママはプロサッカー選手,小学館クリエイティブ
写真:佐野美樹
『ぼくのママはプロサッカー選手』より

たまにSNSの投稿とかで、ものすごい完璧なママを目撃する。身だしなみもきちんとしていて、ごはんは手の込んだものをすべて手作りで子どもに出したりしていて。出産前はただただ「すごいなぁ」とぼんやり見ていたけれど、実際に子どもが生まれてからは、それはただの幻想だったと解釈している。うん、きっと私はなにも見ていない。

だって、ウチはそんなの全然無理! いかにしてごはんを「普通に」ちゃんと食べてもらうか。もう食事の時間は息子との戦いだ。よその家はよその家。そのスタンスじゃないと、とてもじゃないがやっていられない。子育てとは、ちょっとした戦争であると同時に、いかにしてうまく手を抜くかが、勝負のカギだと思っている。

あるとき、保育園の先生から「私たちがちゃんと育てるから安心してください!」と言われたことがある。うれしかった。そうでなくても安心していたが、今では「本当にお願いします。育ててください!」というメンタルで、どっぷりお願いしている。全部自分でやるのもいいけれど、仕事もしていると、やはりどこかで疲れてしまう。子どもの前で自分の笑顔が薄れてしまわないように、私は結構早い段階から、全力でお願いするスタイルをとっている。その分、仕事をがんばりますんで! と。

おかげで、息子はいろんなことを園で学んできてくれて、家で教えることはあまりない。ありがたい。だから、お迎えに行ってから家で一緒に過ごす時間は、大変なことも多いけれど、いつも楽しくて幸せだ。

そんな息子も、今は幼稚園に通っている。本当はそのまま保育園がよかったのだけど、体力がありあまってきて、少しでも寝ると充電がフル満タンになるようになってしまった。保育園には必ずお昼寝の時間があって、まだ本人は活動量的に余裕があっても必然的に睡眠を取る。その結果、ほぼ活力満タンで家に帰ってくることになり、夜になってもなかなか寝てくれないという事案が発生していた。これが幼稚園だった場合、お昼寝はないと聞いた。彼の活動量も大幅にアップした今、転園したほうがいいのかもしれないね、という話になった。とはいえ、やはり環境が大きく変わることになるので、なかなかすぐには決断ができないでいた。そうこうしていると、幼稚園の見学の日が来た。園庭もあり、元気がありあまる息子には、好きなだけ走り回れるのでベストかも、と思い、それを機に転園を決めたのだった。

ぼくのママはプロサッカー選手,小学館クリエイティブ
写真:佐野美樹
『ぼくのママはプロサッカー選手』より

私たち夫婦の予想は的中した。お昼寝のない幼稚園になった途端、息子は遊び疲れて毎晩18、19時には寝てしまい、朝まで起きず。思いっきり遊んで、体力の限界まで消費しているからか、幼稚園から家に着くころには目が二重になり、もう完全に眠い顔をしている。それがまたかわいいのだけど。

もし、転園の勇気が出なくて、そのまま保育園に預けていたら、毎晩、寝てくれないことに頭を抱えていたかもしれない。もちろん保育園にはとても感謝しているけれど、結果的に私たちにとっても、息子にとっても、いい決断になったと思っている。

これは私の個人的な意見だが、もちろん子どものことを一番に考えるのは当たり前だけど、私たち親にも負担が大きくなりすぎないような決断をすることが、結果的に子どもにとってもプラスになるのかな、と思う。

子育てにおける理想は、出産前からある程度あった。でも、そんなに理想どおりにうまくいくことって、あまりない気がする。そこに固執して、心がすり減ってしまうくらいなら、自分のやりやすい方法、生活していくうえでラクな道を選んでもいいんじゃないかと思っている。

そりゃあね、私だって本当なら、子どもにスマホとか、動画とかはあまり見せたくないって思っていた。でも、それを見ながらだったらごはんをちゃんと食べてくれるのなら、結局、見せてしまっているのだ。だって、なかなか食べてくれないんだもん! なんなら、お菓子で釣ってごはんを食べさせたりすることさえある。白状します。私がアスリートだから食事の栄養には人一倍こだわってきたとか、そんなのは関係ない。今はとりあえず、「なんでもいいから栄養を取ってくれ!」ですよ。静かにしていてほしいときも、つい、お菓子をあげちゃう。よくないのはわかっている。わかっているけれど、育児のラクさを求めて、結局のところは天秤にかけてしまうのだ。

ただ、そのおかげで私のメンタルは保たれているわけなので、自分のなかで暗黙の了解としている。

二人の子どもを持つ私の友人が、育児の相談をしたときに言っていた。

「元気なだけで花マルだよ」

そうだよね、生きているなら、元気なら大丈夫。そんなにがんばりすぎなくても。

著:岩清水 梓『ぼくのママはプロサッカー選手』(‎小学館クリエイティブ)より再編集/マイナビ子育て編集部

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