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2022年11月08日 09:30 更新

大人にも多い「注射が怖い」に効果ありの対処法!子供の予防接種はいつ・どう伝える?【心理カウンセラー解説】

注射と聞くと、それだけで身構えてしまう子も少なくないことでしょう。大半の子どもにとって怖い注射ですが、病気の予防や治療のためには必要なものです。どうせ打たなくてはならないなら、子どもも大人も少しでも楽に済ませたいですよね。そのためにはどうすればよいか、効果的な乗り切り方をお伝えします。

(解説:臨床心理士・公認心理師 たかだちかこ/うららか相談室)

子どもが「注射を怖がる」よくある4つの理由

注射を怖がる理由は子どもによって様々で、同じ子どもでもその時々によって違う可能性もあります。激しく怖がる場合、もしかしたら大人が想像するのとは別の理由があるのかもしれません。

まずは、なぜ注射を怖がるのか、考えられる理由から見ていきましょう。

【1】以前の「痛い経験」が影響している

一番想像しやすい理由は、やはり痛いからですが、注射というものを知らなければ痛いことも予測できないので、注射を打つまでは痛みを怖がることはありません。

痛みを恐がるということは、過去に痛い思いをした経験があるからであり、経験から予測を立てられるようになったという意味では、精神的な成長の表れとも言えます。

【2】身体を抑えつけられるなどの「状況」が怖い

注射そのものよりも、注射にまつわる特別な状況を恐れるケースもよくあります。

身体を抑えつけられることやその時の苦しさが怖いという子もいます。

また、病院や子どもの年齢等によっては子どもだけで注射を受けることもあるので、保護者と引き離されて心理的に味わった恐怖が注射の恐怖と重なることもあります。

【3】「病院の雰囲気」が怖い

さらに、白衣、病院独特のにおい、注射器の視覚的な怖さ、慣れない場所など、注射をするところの雰囲気が大きな恐怖を引き起こすのは珍しいことではありません。

【4】注射に関して「叱られた経験」がある

注射にまつわる一連の経験も、その後の注射嫌いに繋がることがあります。

注射の前後に泣いたり、暴れて注射が打てなかったりすることも稀ではありませんが、そうなったときに医師や保護者から叱られてしまうと、注射がとても辛い体験になってしまいかねません。

注射を嫌がるという行動の背景には、注射ではなく周囲からの対応がつらいという経験があることも考えられます。

<年齢別>注射に行くこと、いつ、どんなふうに伝える?

注射とは言わずに連れていきたいと考える親御さんもいるかもしれませんが、子どもからの信頼感をなくさないためにも、注射に行くことは事前に伝えた方が良いです(特に配慮の必要な子はそうとは限りません)。

いつ、どう伝えればいいのかは、子どもの性格や年齢によっても異なりますが、大まかな傾向を見ていきましょう。

0歳|赤ちゃんでも声かけはすると良い

子どもの注射はワクチンが中心になります。一般的なケースでは、生後2か月から定期接種の推奨期間が始まりますが、0歳の赤ちゃんには注射の効能や「注射に行くよ」という声かけの意味を理解するのは難しいですよね。

赤ちゃんは周囲の人々の言葉かけによって、声のトーンや表情などから様々な情報を受け取り、それが言葉の発達や人への信頼感を育みます。ですから、日頃からお出かけの前などあらゆる場面で声かけをすると良いのですが、注射の場合も例外ではありません。いつも通りの声かけの一環で「今日はお注射に行こうね」などと話しかけてあげると良いでしょう。

赤ちゃんを注射に連れて行く時、保護者の方が緊張していることもあるでしょう。声をかけることで大人側の緊張がほぐれる効果も期待できます。

1~2歳|注射の意味を簡単に話す

1歳を過ぎると徐々に大人の話す内容を理解できるようになっていきます。病院という場所やワクチン接種も既に体験していることだからこそ、内緒で連れていかれた時のショックは大きくなってしまいますので、隠さずに話すことが大切です。

当日の朝からお家を出る前までに、子どもの理解度に応じて簡単に話しましょう。

3~6歳ごろ|見通しを立てやすくなる説明を

3歳~6歳くらいになると、注射をするメリットを大まかに理解できるようになってきます。
・ワクチンで予防できる病気があること
・たった数秒の注射を我慢するだけで怖い病気に対抗できること

などを日頃からお話しておくと良いでしょう。

そして、遅くとも当日の朝までに伝えます。子どもの反応によっては、病院についてから帰宅するまでの流れを説明してあげると、見通しが立つので安心に繋がります。

小学生|数日前から伝えておく

小学生は、なぜワクチンを打つかを充分理解できる子が多くなるので、学年や理解度、性格や子どもの要望などに応じて、必要性を説明してあげましょう。

小学生の場合、数日前から伝えておくと、子どもの中で心の準備や予定の調整がしやすいかと思います。

「お注射行くよ」と伝えるタイミング、OKとNGは?

年齢ごとにいつ・どのように伝えるかの目安をお伝えしましたが、伝える上では「タイミングがいい時」と「悪い時」もあります。

OK→ 子どもが落ち着いて聞けるタイミング

何歳であっても、親子ともに穏やかで落ち着いて話を聞けそうな時に伝えることが大切です。子どもから疑問や不安が出てもしっかり答えられるよう、時間に余裕があるタイミングを選ぶと良いでしょう。

OK→ ワクチンのニュースが流れた時

昨今はコロナの関係でワクチン関連のニュースにも触れやすいですから、そのような機会に「大切なことだね。今度あなたも○○(ワクチン名)の予防接種をしに行くよ」と伝えるのもいいですね。

NG→ 子どもの機嫌が悪い時

逆に、子どもの機嫌が悪い時や眠い時、別のことで不安を感じているようなタイミングでは、注射のお話は避けた方が無難です。

NG→ 大人の機嫌が悪い時

伝える側がイライラしているときや子どもを叱った後などは、注射が罰のように捉えられてしまうといけないので、やはり避けた方が良いです。

子どもの恐怖心を小さくする6つの「受ける前の事前準備」とは?

ここからは、注射に行くことを伝える際、子どもの恐怖や不安をできるだけ軽減できるような言葉かけについてお話します。

① 注射の必要性をわかりやすく伝える

注射がワクチンの場合は、病気を予防するためのものであるという説明は欠かせません。
「注射で予防できる病気はたくさんあるから、何度も注射に行かなきゃいけないけど、打てば打つほど病気に負けない強い身体になれるよ」
などと伝えられると良いですね。

② 注射の絵本を読んであげる

子どもの興味や年齢に応じて、病気や免疫のことをより詳しく話して理解を深めるのもいいですね。注射をテーマにした絵本を一緒に読むのもおすすめです。
「ワクチンって大切なんだね」
「この◯◯も注射がこわかったけど、がんばったね」

などと、ゆっくり子どもの心に馴染んでいくように諭せるといいですね。

③ 好きなものを挙げてイメージさせる

注射の大切さを説明したとしても、病気になるとどうなるのかまで考えがおよばないこともあるでしょう。そんな場合は、
「今日する注射は、重い病気にならず、毎日元気に遊んだり美味しいものを食べたりできる身体でいるためだよ」
など、子どもが好きな遊びや食べ物を具体的に挙げてお話すると、小さい子にもイメージしやすいです。

④ 痛む時間は限られていることを伝える

子供の中には、まるでずっと痛みがあるように思ってしまう子もいるでしょう。
「ちょっとチクッとするけど、3つ数える間に終わるよ」
などと、どのぐらい我慢したら終わるのかを伝えてあげると、不要な不安から解放されやすくなります。

⑤ 安心できる「お守り」を持参する

不安や緊張が強い子には、安心できるぬいぐるみやおもちゃがあれば、
「それを持っていっていいよ」
「○○も応援してくれてるよ」

と盛り上げるのもいいですね。

⑥ ご褒美の約束をする

注射の重要性を説明して、子どもなりに理解して受けられれば一番ですが、それでもやはり「ご褒美」があるとがんばりやすくなるのも事実です。
「これが終わったら、◯◯ちゃんの好きなお菓子を用意してあるからね」
「今日の夕飯は◯◯くんの大好きなものを作るよ、がんばろう!」

などとささやかでいいので、楽しみにできるものを予告してあげられるといいですね。

脅しや否定的な言葉は逆効果

注射への恐怖を取り除こうとするあまり、別の不安を煽るような声掛けになってしまうのは避けたいところです。
「注射しないと、もっと怖い病気になっちゃうよ」
「これくらい、みんな我慢してるよ」
「もう〇歳でしょ!」

これらの言葉は、子どもに素直な気持ちを言いづらくさせ、より不安を強めかねません。

これは正解? 注射の後のアフターフォローについて

注射前の恐怖が強かった子には特に、無事に注射を終えてからのアフターフォローが大切です。
保護者がやりがちな言動について、それぞれ適切かどうか見ていきましょう。

「がんばったね!」と言葉で褒める

恐怖や痛みに打ち克ってがんばったのですから、それを子どもにも分かりやすい言葉で「がんばったね!」と認めてあげるのは、とても適切な対応です。思いきり褒めてあげましょう

「次は泣かないようにしようね」と声をかける

泣くことは悪いことではないので、泣いたことを否定するような声掛けはしない方がよいです。
泣いてしまうくらい嫌だったのに、注射という目的を達成できたことを褒めてあげましょう。

「ご褒美を買ってあげる」と伝える

次につなげるためにも、欲しいものをあげて「がんばったら嬉しいことがある」という体験をさせるのは適切な対応と言えます。

ただし、注射後に揉めないために事前にご褒美にするかを相談して約束しておくと良いです。

「次は来月ね」と次回注射の予定を伝える

これは子どもの性格等にもよりますが、嫌なことをやっと終えて心の疲弊が強い注射直後に次の注射のことを知ると、つらくなってしまう恐れもあります。
子どもから聞かれない限りは伝えない方が無難ですが、子どもの様子を見て大丈夫そうなら「次もがんばれるといいね」などの言葉とともに、伝えることがあってもいいと思います。

「痛くなかったでしょ?」と言う

「痛かった?」と聞くこと自体は問題ないですが、子どもが「痛かった」と言っている時に、「痛くないでしょ」など否定することを言うのは不適切です。「痛かったのによくがんばったね」と返しましょう。

もし、子どもが「痛くなかった」と言っていたら、「すごいね!」などと子どもの反応を肯定してあげましょう。

大人が「注射が怖い」場合、どうすればいい?

大人になっても注射がひどく怖いという人もいますし、それは何もおかしなことではありません。対処法を簡単にご紹介します。

注射で体調不良になった経験がある場合

注射の痛みや不安で血管迷走神経反射が起き、気分が悪くなったり失神したりすることは、それほど珍しいことではありません。一度そうなった経験があると、次の注射がとても怖くなってしまいがちです。

横になって休むことで血管迷走神経反射は治るので、予診の際に経緯を話して横になって注射を受けられるようお願いする等の対応が望まれます。また、注射の前は十分な睡眠をとるようにしましょう。

先端恐怖症や注射恐怖症の場合

恐怖が非常に強く日常生活に支障がでるような場合は、先端恐怖症注射恐怖症ということもあり得ます。正式な診断名は「限局性恐怖症」で、先端恐怖症や注射恐怖症はそれに含まれます。先述の血管迷走神経反射も、恐怖症から来る症状である可能性もあります。

恐怖が強すぎて必要な注射もできずお困りの場合は、心療内科を受診して適切な治療を受けることで改善が可能です。

恐怖症とまでは行かないけれど注射は苦手な場合

「恐怖症とまでは行かないけれど注射は苦手」という人は、少しでも安心して注射に向き合える方法を探ってみてはいかがでしょうか。

✅ 注射が怖い自分を受け入れる

まず、大人なのに注射を怖がる自分を情けなく思う必要はありません。自分の恐怖や苦手感をそのまま受け入れてあげるだけでも、少し楽になるかもしれません。

✅ お守り、ご褒美を準備する

お守りになるような何かを持参したり身に付けたりして行く、注射後のお楽しみを用意するのは、子どもだけでなく大人にも有効です。

✅ 注射の最中に唱える・数える

事前の緊張感よりも注射をしている最中が苦手な方は、心の中で「これで病気のリスクを減らせる」と唱えながら受けたり、数を数えて「たった〇秒だった」と改めて実感して次回の不安軽減につなげたりするのも、悪くない方法です。

✅ 経験を積み重ねる

恐怖症でもそうでなくても、子どもも大人も、怖いからと避け続けるとますます怖くなります。

嫌だけど頑張ってやってみたら何とか乗り切れたという経験を積み重ねていくことが、もっとも着実な対処法です。

まとめ

注射は怖いけれど、健康を保つための大切なものです。だからこそ、子どもなりにその必要性を理解して、「自分の身体のためにがんばるぞ」と前向きに臨めるといいですね。
そのためには周囲の大人のサポートが必要です。だまし討ちのようなことはせず、本当のことを分かりやすくお話して連れていき、注射の後は思いきり褒めてあげましょう。
注射を「頑張ったら嬉しいことがあるイベント」にすることができたら、子どもも連れていく大人の方もきっと楽になります。

(文:うららか相談室 たかだちかこ/構成:マイナビ子育て編集部)

※画像はイメージです

心理カウンセラーが解説「親子の心理学」シリーズの記事はこちら>>>

参考文献
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル アメリカ精神医学会

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、専門家の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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