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2022年09月24日 06:19 更新

うまくいく「放任主義」育児のやりかたとは?5つのメリットとほったらかし育児との違い【教えて保育士さん】

放任主義の子育て法について、聞いたことがありますか? 幼稚園や保育園での子どもへのかかわり方と同じで、子どもの自主性を伸ばす育児方法です。放任主義のメリットや成功のためのポイント、そして最近問題となっている放置子などの「ほったらかし育児」にならないための注意点を紹介します。

幼稚園や保育園では当たり前?! 放任主義の子育て法とは

“放任主義”と字面だけ見ると、「ほったらかすってこと?」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。では、放任主義とはどのような育児法なのでしょうか。

放任主義の目的は「自主性を育てる」

放任主義の目的は、ずばり、”子どもの自主性を育てること”です。
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※幼稚園教育要領や保育所保育指針では、”主体性”と表現されています。両者に多少の違いはありますが、ここでは馴染みのある”自主性・自主的”という言葉を使っていきますね。
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子どもに指示をしたりやろうとしていることに口を出したりせず、子どもの意思を尊重するという育児です。子どもは自分の意思を尊重されることで、いわゆる”生きる力”が自然と身についていきます。

Lazy dummy

”生きる力”とは、2008年に改訂された学習指導要領で打ち出された目標の一つ。
しかし、それ以前から幼稚園や保育園では大切にされてきた考え方です。
(mamaco)

放任主義とほったらかし育児との違い

放任主義の子育てと混同しがちなのが”ほったらかし育児”です。ほったらかし育児とは言葉のままで、子どもが何をしていても干渉せず放っておく育児のこと。それって放任主義と同じでは? と思うかもしれませんが、両者には明確な違いがあります。それについて、よく“愛情があるかどうか”と言われることがありますが、そうでしょうか。愛情があっても、ほったらかし育児になってしまうこともあると思います。

しかし、確実に言えることは、放任主義の子育ては、親が子どもを信じている=子どもを信じられるようなかかわり方をしてきているということではないでしょうか。

おうちで遊んでいるときの場面を例に挙げてみます。

子どもが、少し高いところにあるおもちゃを取ろうとしているとき、すかさず側に行ってとってあげるのは、愛情たっぷりの行動ではありますが、放任主義の子育てではありません

わたしが実際に、自主性を育てるためにやっていた放任主義の育児を紹介しますね。

まずは子どもの様子をうかがい、自分で取ろうとしているなら見守ります(自分でとれたらここで終了です)。
できなくて泣いたり、ママのほうをチラチラ見たり、ママを呼んだりしたら、そのときに初めて「どうしたの」と声をかけます。そして「このおもちゃがほしいの?」「おもちゃがとれなくて悔しいね」などと気持ちを代弁します。
気持ちを代弁したら、「ママにとってって言おうね」「ママを呼んでね」などとどうしたら助けてもらえるかを具体的に伝えます。そして、「はい、どうぞ」とおもちゃをとってあげます。
最後に、「おもちゃがとれなくて困っていたね。でもママに教えてくれたから、ママわかったよ。困ったときは呼んでね。ママが助けるね」と、いつも見守っていること、いつでも助けることを伝えます。

このようなかかわり方の積み重ねが、“子どもを信じられるようなかかわり方をしてきている”ということになるのではないでしょうか。これにより、子どもが困ったとき、自分で解決しようとするのか、助けを求めるのか、自主的に判断して動くことができるようになっていきます。そして、親としては、充分に対処の仕方を伝えてきているので子どもが自分で何かしらアクションを起こしてくれるのを信じて待つことができます。

ここがすごい! 放任主義のメリット5つ

放任主義の育児をすることにより、“生きる力”が育つと言いましたが、具体的には、どのような人間に育つのでしょう。放任主義の子育てをするメリットを紹介していきます。

【1】子どもが個として尊重され、個性を発揮できる

放任主義の子育てでは、社会的にNGなことや命の危機があること以外、ある程度、子どもが自分の意思で自由に考え、判断して行動することができます。

親が子どもの行動を制限したり指示をしたりしないため、指示待ちになったり自分で決められず親に判断してもらったりということが少ないでしょう。このため、自分の意思を大切にされ、尊重されていると感じることができます。これは、子どもが個性を発揮できることにもつながります。

【2】好奇心を潰されず、学ぶ機会が増える

子どもがやろうとしていることを制限されることが少ないため、興味をもったことをやってみる機会を奪われず、学びに繋がります。自ら興味をもって学んだという経験から、より様々なことに興味をもち、好奇心旺盛になります。
好奇心は、学びの基本。今後の学習に対する姿勢の基礎が培われていきます。

【3】自分で考え、臨機応変に行動できる

子どもの自主性を大切にする放任主義の子育てでは、子どもが自分で考えて判断したり行動したりすることができるようにします。そのため、自分で考える力が育ちます。親からの指示で動いていると、想定外の出来事に対応できない場ありがありますが、自分で考える力が育つことで、その場で考え臨機応変に対処していく力が身についていきます。

【4】自己肯定感が高まる

親に否定されたり行動を制限されたりすることがないため、親に信頼されているという安心感をもつことができ、自己肯定感につながります。

わがまま放題な子どもに育ってしまうのでは? と思うかもしれませんが、例えば、「人に迷惑をかけるのはダメなこと」という考えではなく、「人に迷惑をかけたら相手はどんな気持ちか。自分はどうありたいか」と考えることができるようになっていくので、マナーや規範意識をきちんと伝えていれば、わがまま放題になることは少ないでしょう。

【5】他人を認められる

親に信頼してもらい、認めてもらうことで、自己肯定感が高まります。そして、子ども自身も他人を認めることができるようになります。他人を認められることは、多様な価値観を受け入れやすく、相手を尊重することにも繋がります。その結果、コミュニケーションスキルもアップし、良好な人間関係を築きやすくなるでしょう。

ほったらかし育児にならないために必要な4つのこと

放任主義とほったらかし育児の違いというと、よく「愛情があるかどうか」と言われることがあります。しかし、愛情があってもほったらかし育児になってしまっている場合も。
ほったらかし育児にならず、自主性を育てる放任主義の育児をするための注意点を紹介します。

1:下準備をしっかりする

ただ子どもに任せておけばいいというものではありません。子どもが判断するためには、下準備が必要です。

例えば、遊具の順番待ち。何も教えないで、子どもがいつの間にか順番待ちを学ぶことは難しいです。
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・普段から、子どもが見て学べるよう親が順番待ちをしたり、譲ったりする様子を見せる。
・友達が順番に遊んでいる姿を見せる
・幼い頃から、一緒に順番待ちする機会があれば、「順番だね」「じゅんばんこすると楽しいね」などと声をかけ、“順番”という概念を理解していけるようにする(また、順番は待つのが当たり前という習慣がつくようにしておく)
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などが必要となります。

ほかにも、
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子どもがハイハイをし出す時期であれば、子どもの行動範囲を制限するのではなく、危険なものを排除した環境作りをする
子どもが安全に階段を使えるように、年齢に合った上り下りの仕方を教える
公園で自由に遊べるよう、危険なこと(道路に出ない)や他人に迷惑がかかること(他人の持ち物を勝手に触らない、友達を押さない)を、しっかりと繰り返し伝えておく
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などなど、子どもの行動を自由にさせるための下準備がとても大切です。これがないと、何もしつけをしていない・何も教えていないというただのほったらかし育児になってしまいます。

2:信頼関係を築く

放任主義では、子どもの自主性を伸ばすため、子どもを信じて自由に行動させてあげることを大切にします。しかし、大人の信頼が子どもに伝わっていないと、子ども自身が「ほったらかしにされている」と感じることも。子どもが「自分は親に信頼されている」と感じられるように、信頼関係をしっかりと築いておきましょう。

3:安全基地を与える

困ったとき、悩んだとき、どうしたらよいかわからないというとき、ママやパパが子どもの安全基地となり、いつでも戻ってこられる場所・助けてもらえる場所となっていることが大切です。何をしても見てくれない、何もしてくれない、のでは愛情不足のほったらかし育児になってしまいます。子どもの行動に関心をもち、いつでも子どもが助けを求められる存在でいられるといいですね。

4:親自身が自立する

親自身の自立って関係ないのでは? と思うかもしれませんが、実はとても大切。親が自立せず子どもにべったりでは、子どもに自由はありません。
自立した親の姿を見せることで、子ども自身の自立心が育ち、自主的に行動するようになっていきますよ。また、親が自分自身を大切にすることで、子どもを一人の人間として見ることができ、子どもを個として大切にすることに繋がります。

Lazy dummy

放任主義の子育てと聞くと、「なんだか楽そう」と思うかもしれませんが、子どもの意思や判断に任せる代わりに、しつけや環境整備、周りへの配慮や失敗したときのフォローなどなど……実はとても根気が必要なことも。
それでも、三つ子の魂百までということわざがあるように、幼い頃に培った“生きる力”は一生ものです。後々の子育てが楽になることもありますよ!
(mamaco)

ここだけはおさえて! 放任主義の育児を成功させる5つのポイント

メリットたくさんの放任主義の子育てですが、周りからほったらかしと勘違いされることも。また、放任と放置の境界線が曖昧になってしまったり、子どもが愛情不足と感じてしまったりする可能性もあります。

放任主義の育児を成功させるポイントを紹介します!

ポイント1 叱ることを怠らない

子どもの伸び伸びさせすぎると、ほったらかしになってしまいます。放任育児はバランスも大切です。
・人に迷惑がかかること
・命にかかわること

この2つの場面では、きちんと叱りましょう
叱ることはとても労力を使いますし、子どもと向き合う根気も必要です。しかし、怠らないように気をつけたほうがいいでしょう。

ポイント2 マナーやルールは人一倍しっかり伝える

マナーやルールをしっかり守ることは、放任主義の育児をするための大前提です。周り人たちに「ほったらかしにされている子」「迷惑な親子」と思われないためも、子ども自身でもしっかりマナーやルールを守れることが大切です。自由な考えや行動は、マナーやルールを守った先にあるものだということをしっかりと理解できるようにしていきましょう。

マナーやルールは人一倍丁寧に、根気よく、伝えていきましょう。自主的に守れるようにするための伝え方のコツは、「~しなさい」「ダメ」ではなく、どうしてする必要があるのか、どうしていけないのかを理解できるように丁寧に話すことです。

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きちんと挨拶をすることはマナーの基本。周囲の人たちとの円滑なコミュニケーションにもつながるので、習慣にできるといいですね!
(mamaco)

ポイント3 状況に応じてこだわりは捨てる

放任主義で育てたいと思っても、なかなかうまくいかなかったり、周りの人に理解されないこともあります。突き通そうとすることで、放任がデメリットになってしまう場合も。

公園や支援センターにはいろいろなママパパがいます。価値観が違ったり、こちらの意図や話がなかなか通じにくかったりする保護者がいる可能性もありますよね。そんなときは、トラブルを避けるために、臨機応変に対応しましょう。我が子を守れるのはあなただけ。信念も大切ですが、ときには妥協することも必要と思っておくといいかもしれません。

普段の子どもへの対応とどうしてもズレてしまうこともあるかと思いますが、その際は子どもに対して後からしっかりフォローを入れればOKです。

ポイント4 助けを求められたら全力でサポートする

子ども自身で考え、解決することを促す本人主義の育児ですが、子どもが助けを求めた場合は、全力でサポートすることがとても大切です。親が安全基地として存在することで、子どもはさまざまなハードルに挑戦したり、失敗しても立ち直ることができたりします。

ポイント5 子どもが愛情不足と感じないようにする

自由にさせてもらえることで、子どもが「親は自分に関心がない」「愛情不足」と感じてしまうこともあるかもしれません。子どもが愛情不足と感じてしまうのは、大きなデメリットです。そうならないために、子どもの様子を細やかに観察し、子どもの小さな変化にも気づき対応できるようにしておきましょう。「何かあったらママやパパが助けてあげるから、好きにやってみていいんだよ」と言う気持ちがお子さんに伝わるようにしていくといいですね。

まとめ

放任主義のメリットやほったらかし育児との違いについて、ご理解いただけたでしょうか。放任主義はメリットがたくさん! ポイントを押さえてぜひ挑戦してみてくださいね。

(文:mamaco)

※画像はイメージです

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