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2022年04月11日 11:52 更新

月経前症候群(PMS)治療に漢方薬を選ぶ理由とは?おすすめ3選<ママのお悩み漢方相談室#9>

生理前の時期に、頭痛やむくみなどの体の症状だけでなく、イライラや不安といった心の症状にも悩まされる女性は少なくありません。今回は「月経前症候群(PMS)治療に効果的な漢方薬」について、漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきます。

この記事でお伝えすること

1. 月経前症候群(PMS)ってなに?
2. PMSの原因は?
3. PMSにおすすめの漢方薬は?

1. 月経前症候群(PMS)ってなに?

Lazy dummy

いつも生理前になると肌荒れや便秘がひどくなり、さらにはイライラして、ついパートナーに八つ当たりしてしまい自己嫌悪に陥ります……。

典型的な月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)の症状といえますね。PMSというのは、生理(月経)の1週間前くらいから、心と体にあらゆる不調が現れることを言います。またPMSの特徴は「生理が始まるとこれらの症状がおさまる」ことです。

症状は人によってさまざまで、頭痛やむくみ、おっぱいの張り、便秘や下痢など体に症状が現れる人から、イライラする、気分が落ち込む、やる気がでないといった精神症状が起こる人もいて、ひどい場合は仕事や日常生活に支障をきたすこともあります。症状を抱える女性にとっては、生活の質を下げる大きな悩みの一つです。

PMSに悩む女性

生理痛もそうなのですが、生理に伴う不調は個人差が大きく、同じ人でも月によってばらつきがあったり、加齢や出産を経て、程度が変化したりもします。

質問者さんはイライラしてパートナーに八つ当たりすることを反省しているようですが、こういった症状は女性ホルモンの影響で発症するものであるということを、パートナーやご家族、職場の人などに話し、きちんと理解してもらうことも大切かと思います。

そうすれば、家事の負担を減らす、業務量を調整するなどの配慮もできると思いますし、多少つらく当たってしまったとしても、相手も理解を示してくれるはずです。近年では月経に対する社会の理解も得られてきていると思いますので。

Lazy dummy

確かに、パートナーとの関係性においても大事なことですね。

2. PMSの原因は?

Lazy dummy

私はこれといった体の不快な症状はないのですが、食欲が増して暴飲暴食をしてしまうタイプです。
女性ホルモンという言葉が出ましたが、どういう原理でこのような症状が起こるのですか?

PMSの原因について、実ははっきりとはわかっておらず、生理の周期と深く関わっていることから女性ホルモンの変動が関係しているのではないかと言われています。

女性の体では赤ちゃんの準備をするための、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2つの女性ホルモンが増減するサイクルがあります。排卵後の期間は「黄体期」といい、体内で妊娠が成立していないことがわかった場合に、この黄体期を経て女性ホルモンの量が急降下。そうして生理が始まるのですが、PMSはこの黄体期〜生理までのタイミングで起こっているのです。

根本的な理由はこのホルモンの増減サイクルにありますから、PMSの症状は排卵を抑制することで改善される場合がほとんどです。そのため西洋医学的にはPMSや生理痛の対策として、ホルモンを一定に保って排卵を抑制する低用量ピル、子宮内に装着する小さな器具IUD(子宮内避妊具)などを使用します。生理のサイクルをコントロールできるなどメリットも多いので、うまく活用できるととても楽になります。

ただ、副作用が出てしまったり、体質的に合わない人もいます。また、そもそも妊娠を望んでいる場合は排卵が必要なので、これらで解決することはできませんよね。

Lazy dummy

なるほど、そこで漢方薬の出番なのですね。

3. PMSにおすすめの漢方薬は?

漢方医学では、PMSを含む生理に伴うあらゆるトラブルを、血の異常で引き起こされると考えます。特に、血が滞って流れが悪くなる瘀血(おけつ)は不調の最たる原因です。また生理前は、生命エネルギーである気の流れが悪くなる気滞(きたい)が伴っているとも言われます。

そのため治療には、瘀血を改善する薬である駆瘀血剤(くおけつざい)を使うのが一般的です。

気の巡りをよくして、PMSの症状全般に広く効果が期待できる加味逍遙散(かみしょうようさん)、のぼせやめまい、不安感などが強く症状が限定している場合は女神散(にょしんさん)、興奮しやすく怒りっぽい、イライラするなどの精神が高ぶって引き起こされるような症状には抑肝散(よくかんさん)などがあります。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

【体質、症状】あまり体力がなく、自律神経バランスが乱れて起こる様々な不調に対して有効です。生理前になると頭痛やめまい、肩こり、手足の冷えやイライラなどのあらゆる症状が出て、またその症状が限定していないのが特徴です。
【効能】産婦人科でもPMSの治療に用いられる代表的な漢方薬です。神経を落ち着かせる生薬や、血の巡りを良くする牡丹皮が配合されています。生理前の身体症状、精神症状いずれにも効果を発揮します。
【使われている主な生薬】柴胡、芍薬、蒼朮、当帰、茯苓、山梔子、牡丹皮など

女神散(にょしんさん)

【体質、症状】上半身ののぼせ・ほてりや下半身の冷え、不眠、不安感などの精神症状がある場合に有効です。加味逍遙散は症状が多岐にわたりコロコロ変わる場合に使われますが、女神散は限定した症状が強く出ている場合に使用されます。
【効能】木香や丁子、香附子など気の巡りをよくする生薬が含まれています。女性ホルモンの変動により起こる、気分の落ち込みやイライラなどの精神症状を緩和する効果があります。
【使われている主な生薬】当帰、川芎、香附子、蒼朮、桂皮、黄連、人参など

抑肝散(よくかんさん)

【体質、症状】体力がなく虚弱体質。イライラする、震えがあるなど、神経が高ぶって怒りっぽい場合に有効です。
【効能】もともとは子供の夜泣きやかんしゃくに使われていた漢方薬で、釣藤鈎という生薬の鎮静作用で怒りをおさえ、筋肉の緊張をほぐします。数分で気分が落ち着いてくる即効性のあるお薬です。
【使われている主な生薬】柴胡、釣藤鈎、蒼朮、茯苓、当帰、川芎、甘草

まとめ

薬剤師の先生から漢方について学ぶ「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」。第9回の今回は、月経前症候群(PMS)について学びました。
女性ホルモンの影響で症状が出るPMS。妊娠の予定がなく、症状がひどい場合は低用量ピルなど西洋医学的なアプローチの検討も必要ですまた、イライラや気分が落ち込むような症状は身近な人にも影響大なので、できれば周囲にも伝えて理解を促せるといいですね。

(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、薬剤師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます
  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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