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2022年08月25日 16:30 更新

ニキビに漢方薬は効く? 白・黒・赤のニキビって何が違う?<ママのお悩み漢方相談室#21>

コロナ禍のマスク生活では、蒸れやこすれもあってニキビに悩まされている人は多いですよね。思春期に多いニキビですが、年齢を重ねていく中でも、ライフスタイルやストレスなどで何度も繰り返してしまったり…。そんなニキビの対処法について、漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきます。

この記事でお伝えすること

1. ニキビができるメカニズムは?
2. ニキビの対処法は?
3. ニキビの種類とそこから見た体質は?
4. 漢方から見た体質別のニキビの対処法は?
5. ニキビの種類別の漢方薬は?

ニキビができるメカニズムは?

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ずっとニキビに悩まされています。
ニキビはどうしてできるのですか?

ニキビは、多すぎる皮脂や死んだ皮膚細胞で毛穴がつまり、皮脂が毛穴の外に出られなくなることでできます。ニキビ(吹き出物)は思春期だけでなく、ある程度の歳になってもできるものです。

皮脂でふさがった毛穴の中では、アクネ菌が過剰に増殖します。アクネ菌が皮脂を分解して、皮膚に炎症を起こす物質を作るため、皮脂でふさがった毛穴では炎症や化膿が広がり、ひどいニキビになってしまうのです。

毛穴が皮脂でふさがる原因の代表的として、ホルモンバランスの変化があります。思春期には、アンドロゲンという性ホルモンの分泌が増加して皮脂の分泌が過剰になります。また、思春期を過ぎても、
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・生理周期に伴うホルモンバランスの変化
・妊娠、出産に伴うホルモンバランスの変化
・皮膚刺激(合わない化粧品やマスクの刺激、高い湿度など)
・発汗(多汗)
・多嚢胞性卵巣症候群
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などでニキビは起こります。最大40%の女性で、40代までニキビが残ることがあると言われています[*1]。

ニキビの対処法は?

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ニキビを治すには、どうすればいいのでしょうか?

ニキビを改善する上で、基礎となる対処法は、
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・洗顔
・抗菌、殺菌
・保湿
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です。

低刺激の洗顔料で肌を優しく洗い、余計な皮脂を取り除きます。そして、抗菌・殺菌作用のあるお薬などでアクネ菌の数を減らします。最後に、保湿をしっかりすることで、皮膚が乾燥に反応して多すぎる皮脂を出すことを防ぎます

皮膚科を受診すると、過剰な皮脂を抑制する塗り薬などが処方されます。
抗菌・殺菌に関しては、軽度のニキビであれば抗菌薬の塗り薬や炎症止めの塗り薬のみ、中程度〜重度のニキビであれば塗り薬だけでなく抗菌薬の飲み薬も同時に服用します。

洗顔料において、抗菌・殺菌成分を含むものを選ぶと良いですが、人によってお肌に合うもの合わないものがあるため、使った時の刺激感や使用感を確認して、自分に合うものを続けていきましょう。

保湿をする時は、油分の多いものはニキビを悪化させることがあるため、ローションやゲルなど水分主体のものを使うといいでしょう。

早めに皮膚科を受診しよう

自分でできる対応で手詰まりなら、悪化する前に早めに皮膚科を受診するべきです。
なお、抗菌薬の飲み薬を処方された場合、長期間の服用には注意が必要です。長く飲み続けることで、腸内フローラが乱れて、そこから肌の調子を崩す可能性もあるため、必ず皮膚科の医師の指示通りにお薬を続けてください。

ニキビの種類とそこから見た体質は?

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ニキビは、角栓が詰まっただけのものと、赤くなって膿が詰まっているものがあります。どう違うのですか?

ニキビは、大きく分けて3つの段階があります。
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白ニキビ→黒ニキビ→赤ニキビ
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です。漢方の考え方では、なりやすいニキビの種類ごとに体質が異なります。

白ニキビ

白ニキビは、皮脂で毛穴が詰まっているけれど、まだ炎症や化膿はない状態です。漢方の考え方では、
のどや鼻が乾燥しやすい
呼吸器系の弱りがある
体に熱がこもっている
などの状態が白ニキビになりやすいとされています。

また、水の巡りが悪くむくみがちな「水滞(すいたい)」タイプ、肌に栄養を届けるための血が不足している「血虚(けっきょ)」タイプと判断することもあります。

黒ニキビ

黒ニキビは、白ニキビが進行し、毛穴に詰まった皮脂が酸化して、ニキビの芯の先端が黒っぽくなった状態です。漢方の考え方では、
血行が悪く、顔色がくすんだ人
が黒ニキビになりやすいとされています。

この、血行不良で巡りが悪い「瘀血(おけつ)」タイプは、
生理痛がある
目の下にクマができやすい
肌のシミが目立つ
といった特徴があります。

赤ニキビ

赤ニキビは、黒ニキビが進行して炎症・化膿しているニキビです。漢方の考え方では、血(けつ)に余分な熱をもつ「血熱(けつねつ)」タイプは赤ニキビになりやすいとされています。
皮膚が炎症を起こしやすく、赤ら顔
舌が真っ赤で、目が充血する
といった特徴があります。

漢方から見た体質別のニキビの対処法は?

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体質によってなりやすいニキビの種類が違うことがわかりました。
それなら、体質改善でニキビも同時に改善することはできますか?

漢方では、体質別でそれぞれに合う選択(過ごし方、食べ物、お薬等)をすることによって、不調が改善すると考えます。そのためニキビ治療の場合も、体質改善によって状態が良くなっていく場合が多いです。

白ニキビ|水分循環をよくする工夫を

白ニキビの場合は、体に余計な水が溜まりがちなので、湯船に浸かったり、汗ばむ程度の運動をしたりして、体の水分循環をよくすることを心がけましょう。飲み物も、常温もしくは温かいものを飲むようにして、体を冷やさないよう注意が必要です。

また、体から余計な水分を出す食材や、血を補う食材を摂り入れましょう。
水分を出してくれる食材で取り入れやすいのは、豆類、はとむぎ、トマト、きゅうり、とうもろこし、ナス、白菜、レタスなどです。

血を補う食材で手に入りやすいのは、鶏肉、マグロ、黒豆、黒キクラゲ、人参、ほうれん草、レバー、牡蠣、卵、うずらの卵などです。

黒ニキビ|血流を良くする工夫を

黒ニキビの場合は血行不良の状態のため、デスクワークの方は定期的に立ち歩いて体を動かしたり、ぬるめのお湯に入浴したりして、血行を促すことを心がけましょう。ストレッチやヨガなどでゆっくりと体を伸ばしながら動かすこともおすすめです。

また、血流をよくする食材を摂り入れましょう。
手に入れやすい食材は、黒豆、納豆、チンゲンサイ、ニラ、みょうが、いわし、サバ、サンマなどです。

赤ニキビ|体の熱を取り除く工夫を

赤ニキビの場合は、暑い場所を避け、体の熱を取り除く食材を食べることを心がけましょう。ただ冷たいものをたくさん食べるのではなく、食材の特徴を生かしつつ、常温で食べることがおすすめです。

手に入りやすい食材は、はとむぎ、豆腐、アスパラガス、きゅうり、セロリ、チンゲンサイ、白菜、レタス、スイカ、貝類、緑茶などです。

ニキビの種類別の漢方薬は?

ニキビに使われる漢方薬は、ニキビの種類別、また体質別の使い分けが必要です。合うものを選択しないと、十分な効果が期待できません。今回は、ニキビ改善によく使われる漢方薬をご紹介します。

白ニキビ|当帰芍薬散

白ニキビには、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)がおすすめです。
体力がなく、貧血傾向、むくみやすい人向けの漢方薬です。

白朮(びゃくじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)が体の水分代謝を調節、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)が血を補い、当帰と川芎(せんきゅう)が血の巡りを良くします。体を温め、胎児を安定させるので、妊娠中でも飲める漢方薬です。

黒ニキビ|桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸加薏苡仁

黒ニキビには、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)または桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)がおすすめです。顔色がくすみ、目のクマや肩こりがあり、生理の前半で生理痛がひどい人向けの漢方薬です。

桃仁(とうにん)、牡丹皮(ぼたんぴ)が血行を良くして、桂皮(けいひ)が血行改善を助けます。薏苡仁(よくいにん)はハトムギのことで、ハトムギは古くから肌荒れ改善に使われる生薬です。

ただし桂枝茯苓丸も桂枝茯苓丸加薏苡仁も、早産を引き起こす可能性があるため、妊娠中の服用は避けるべきです。

赤ニキビ|黄連解毒湯、十味敗毒湯、排膿散及湯

赤ニキビには、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)がおすすめです。体質別で選択が異なるので、1つずつ説明していきます。

黄連解毒湯は、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)など、体の熱を取り除く生薬が含まれています。そのため、強く炎症を起こしているようなニキビに効果的です。
しかし、体を冷やす生薬が多く含まれる漢方薬なので、胸や下腹を触ってみて冷たかったり、関節が冷えていたりする場合は、使うべきではありません。また、体力があり胃腸が丈夫で、体ががっしりした人向けの漢方薬です。

十味敗毒湯は、桔梗(ききょう)でニキビの膿を出し、独活(どっかつ)や荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)、樸樕(ぼくそく)などで肌を整えます。ニキビが化膿しているだけでなく、皮膚に痒みがある場合に使います。広範囲に化膿したニキビがある時も使われます。
この漢方薬は、黄連解毒湯に向く人ほどではないけれど体力があり、体の冷えはない、胃腸がある程度丈夫な人向けの漢方薬です。

排膿散及湯は、桔梗でニキビの膿を出すのは十味敗毒湯と同じですが、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)など、食用としても使われるような、作用が穏やかな生薬が含まれています。そのため化膿している赤ニキビがあっても、体力がそこまでない人から体力中程度の人まで幅広く活用できます。

まとめ

薬剤師の先生から漢方について学ぶ「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」。第21回の今回は、ニキビに効果のある漢方薬や、ニキビ種類別の対処法についてお伝えしました。ニキビの種類や体質によって、使うべき漢方薬は異なります。自分の体質やニキビの種類をよく把握して漢方薬を選びましょう。

(解説:西﨑れいな)

※画像はイメージです

参考資料
[*1] MSD マニュアル「尋常性ざ瘡(にきび)」


※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、薬剤師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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