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2022年04月11日 11:55 更新

漢方薬でダイエットはできる?肥満改善の漢方薬3選<ママのお悩み漢方相談室#6>

ダイエットをしていると、食事制限や運動のほかにもなにか効果的なものはないか気になりますよね。今回は「漢方薬で肥満を改善できるか」について漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきます。

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この記事でお伝えすること

1. 漢方薬でダイエットってできるの?
2. 肥満の医学的な定義とは?
3. 肥満の改善におすすめできる漢方薬は?

1. 漢方薬でダイエットってできるの?

食べ過ぎの女性
Lazy dummy

コロナ禍の運動不足もあってかなり太ってしまいました……。
漢方薬でダイエットはできますか?
また、どの漢方薬がおすすめですか?

はい、よくご相談いただくお悩みの一つですね。

ダイエットといっても、健康になるために少しでも体重を減らしたいとか、サイズダウンして今キツい洋服が着られるようになりたいとか、その目標や目的は様々だと思います。

根本的に「漢方薬でダイエットはできるのか?」という点ですが、これは条件付きのYesといったところです。

後ほど詳しくご説明しますが、「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」や「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」など、肥満の治療薬として使われる漢方薬もあるので、そういう意味ではYesです。

一方で、暴飲暴食や運動不足、睡眠不足など、生活習慣を改善しないで、漢方薬“だけ”でダイエットに成功することは難しいという意味で「条件付き」となります。

Lazy dummy

ちょっと期待をしていただけに、グサッとくる指摘です……何もしなくても漢方薬を服用すればやせるわけではないんですね。

わかりきった回答かもしれませんが、そういうことです。

痩せるために必要なのは、食生活の改善適度な運動習慣、睡眠時間の確保といった、基本的なことです。これらを気にせず、今まで通りの生活をしながら漢方薬だけを飲んだからといって脂肪がスルスル減っていくわけではないのです。

例えるなら、せっせとプロテインだけを飲んでも筋トレなしではマッチョな体が手に入らないように、ダイエットも前提となる食事や運動などの生活習慣の見直しとセットでないと意味がないということです。

漢方薬は医薬品なので、あくまでも治療薬としての扱いです。肥満によって健康を害する場合に、ダイエットの効率を上げて体質改善へと導くものなので、「瘦せ薬」ではないということを理解して服用する必要があります。

2. 医学的な肥満の定義とリスクとは?

Lazy dummy

実際のところ、治療が必要な肥満というのはどのくらい太った状態を言うのでしょうか?

医学的に肥満が問題視されているのは、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)などの多くの生活習慣病リスクが高まるからです。新型コロナウイルス感染でも肥満は重症化のリスク因子になっていますよね。

肥満の判断基準としては、BMI(Body Mass Index)という体格指数が一般的です。WHO(世界保健機関)や日本肥満学会の基準でも、この数値が25を超えると肥満と定義されています。

計算式
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m)の二乗
適正体重 = 身長(m)の二乗×22

身長:(cm)

体重:(kg)

ぽっちゃり程度の軽度肥満から程度の差によってレベルが分かれていますが、適正体重はBMI22です。実際に自分の身長で計算してみると、おそらく適正体重は皆さんが考える「理想の体重」よりもやや上くらいになるのではないでしょうか。

これはBMIの適正体重が「見た目」を基準にしているわけではなく、統計的に「病気になる確率が最も低い数字」を基準にしているからです。

医療現場の肥満治療では、まず第一に食事療法や運動療法といった薬に頼らない方法が用いられます。西洋薬にも肥満症の薬は存在して、食欲を減退させる効果があるのですが、急激な体重の減退はリスクが伴うため、BMIが35以上の高度な肥満に限定されています。条件がいろいろとあって、BMIがそこまで高くない肥満の患者さんにはハードルが高いのです。

そういった意味で漢方薬は軽度肥満の患者さんでも服用でき、市販されているものも多く入手しやすいので、広く活用されています。

肥満症の治療に使われる漢方薬にはいくつか種類があります。以前の記事でお伝えした漢方の不調の原因をはかるものさし「(しょう)」がありましたよね。漢方医学のお薬選びには、これを適切に判断して、身体の状態に合ったものを選ぶことが大事です。

Lazy dummy

証の見極めが大切ということですね!

3. 肥満の改善におすすめできる漢方薬は?

Lazy dummy

肥満の場合、どんな漢方薬が向いているのでしょうか?
体質も関係している……?

肥満の治療によく使われる漢方薬としては
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
のふたつが有名です。

防風通聖散は実証(体力がある)、防已黄耆湯は虚証(体力がない)の方に向いていますが、体質に合わないものを選んで飲んでしまうと体重が落ちないどころか、思わぬ不調を引き起こす可能性があります。自分の証に合ったものを選びましょう。

防風通聖散のほかにも、実証の肥満に有効とされる漢方薬が大柴胡湯(だいさいことう)。大柴胡湯の使用のポイントは、胸脇苦満(きょうきょうくまん)といって、肋骨の下部や脇腹を押して痛みを感じるかどうかです。ここに痛みがあるときは、大柴胡湯が向いています。

あまり馴染みがないかもしれませんが、これらの漢方薬は違う商品名で多くの製薬会社から市販されているんですよ。

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

【体質、症状】 おなかに皮下脂肪が多く、体力があり食欲旺盛、便秘がちなもの。
【効能】18種類の生薬がバランスよく作用し、発汗、利尿、排泄を促します。エネルギーの消費を高めることで代謝を促し、体の中に滞っている不要物を排出します。ごくまれですが、肝機能障害などの副作用が報告されていますので、注意が必要です。
【使われている主な生薬】滑石、黄芩、甘草、桔梗、石膏、白朮、大黄、防風、麻黄、連翹、甘草など
【服用のアドバイス】食べすぎ飲みすぎや運動不足を伴う場合が多いため、食事の見直しや運動を適切に行うことでよりダイエットを効率よくすることが大切です。

からあげ

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

【体質、症状】 体力がなく疲れやすい、胃腸の機能が低下し水分代謝が悪いもの。いわゆる「水太り」タイプの方。
【効能】体に溜まった余分な水分を体外へ排出することで、滞った水の流れを促します。また、胃腸の機能を高めて、気(体を動かすエネルギー)を補います。余分な水分が原因で起こる、膝などの関節の痛みをとるために用いられることもあります。
【使われている生薬】防已、黄耆、白朮(蒼朮)、生姜、大棗、甘草
【服用のアドバイス】水分バランスの乱れが原因となるこのタイプの方は、水分の摂りすぎには注意が必要です。食事では甘いもの、油っぽいものを控え、ウォーキングなどの適度な運動を合わせて行うと、よりダイエット効果を期待できます。

足がむくんだ女性

大柴胡湯(だいさいことう)

【体質、症状】
体力があり、胃からお腹あたりが張って苦しく、便秘がちなもの。イライラなどのストレスで食べ過ぎてしまう方
【効能】イライラや興奮状態を落ち着かせ、自律神経のバランスを整えます。イライラに伴う不調が多い場合に有効です。体にこもった余分な熱を取り去り、代謝を促して、体内に滞っている不要物を排出します。
【使われている生薬】柴胡、半夏、黄芩、芍薬、大棗、枳実、生姜、大黄
【服用のアドバイス】自律神経の乱れにより、食べ過ぎや飲み過ぎを引き起こすこのタイプの方は、まず自分なりのストレス解消法を見つけ、趣味やリラックスできる時間を積極的にとるようにしましょう。

イライラに悩む女性
Lazy dummy

こうして学んでみると、肥満解消の大前提はやっぱり食事や運動不足の改善を含めた規則正しい生活、ということになりますね……。

そうですね、それを助けるのがまさに漢方の役割なのです。

意外と重要なのは睡眠。質の良い睡眠のためには適度に疲れることも大切で、自分に合った運動を習慣にすると、よく眠れるようになります。生活リズムを整えることで、自律神経が整い、痩せやすい体質へと変わっていくのです。上手に漢方薬を活用してもらいたいですね。

ちなみに、肥満ほど問題視されることは少ないのですが、栄養が偏ったりして痩せすぎていても、病気のリスクは上がります。日本では特に「女性は細ければ細いほど良い!」みたいな風潮が根強く、医学的には肥満でもないのに痩せようとする人が少なくないんですね。お母さんたちは子育てに体力も必要ですから、くれぐれも過度な食事制限を伴った無理なダイエットは控え、「体調を整える」ために漢方を活用してほしいですね。

運動する女性

まとめ

「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」第6回では肥満に効果のある漢方薬、ダイエットの考え方についてお伝えしました。漢方薬だけに頼るのではなく、食事や運動、睡眠など生活をトータルで見直しながら、健康的な体重・体格を目指したいですね。

(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、薬剤師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます
  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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