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2024年03月05日 15:46 更新

宋美玄先生解説|愛液が多い・少ない原因とは?危険な愛液の見分け方

女性が性的に興奮したときに分泌されるのが愛液(あいえき)ですが、出産後など女性ホルモンが変化するタイミングによっては興奮していても分泌されづらく、濡れにくいことがあります。また、同じ人でも状況によって増えることも。今回は愛液分泌のメカニズムを産婦人科医の宋美玄先生に伺いました。

愛液ってどんなもの? おりものとの違い

まずは愛液とは何なのかについて、詳しく見ていきましょう。

愛液は腟から染み出す分泌液

愛液とは、腟粘膜から染み出てくる水分のことです。元は血液ですが、腟の粘膜から水分のみが漉されて、愛液となって出てきます。潤滑液や分泌液、ラブジュースと呼ばれることもあります

セックスの時、滑りをなめらかにしてくれる役割が

セックスの時に分泌される愛液の主な役割は、セックスをスムーズにすることです。

「潤滑液がなければ、ペニスと腟の内壁に摩擦が起きて痛みが生じてしまうので、それを防ぐために分泌されます。

『それだけのために?』と思うかもしれませんが、男性の勃起も、挿入をスムーズするためだけに起こる生理現象であることを考えると、それほど不思議なことではないでしょう。」

似てるけど違う、愛液とおりもの

おりものと愛液は同じだと思われていることが多いですが、じつは違う分泌液です。

「潤滑液は腟から分泌されますが、おりものは子宮内膜と腟の両方から分泌されます。

また、セックスによる摩擦を軽減させる潤滑液と異なり、おりものは腟の中に細菌やウイルスなどが入ってくるのを防ぎ、腟内を清潔に保つという役割があります。

おりものと潤滑液には、このような違いがあるのです。」

愛液の量はどんなときに増える?

愛液はセックスの際、腟粘膜が傷つくのを防ぐための防御反応として分泌されますが、特定の条件を満たすと分泌量が増えることがあります。例えば、以下のようなときには、愛液の分泌が増加します。

1.性的興奮を感じたとき

性的に興奮すると、愛液は積極的に分泌されるようになります。

「じゅうぶんに性的興奮を感じていると、潤滑液もたっぷりと分泌されていくことが多いです。

性的興奮が足りないと、潤滑液の分泌が途中で止まり、腟が乾いてしまうこともあります。」

2.生理後〜排卵までの時期

女性ホルモンの影響で、愛液の量が増える時期があります。

「女性ホルモンの一種であるエストロゲン(卵胞ホルモン)には、腟粘膜を厚くしたり、性的興奮時の潤滑液の分泌を増やしたりなど、セックスをスムーズに行うための働きがあります。

そのため、生理(月経)が終わってから排卵日までの期間はエストロゲンの分泌量が多くなるので、潤滑液の量も増えると考えられます。」

3.妊娠中

生理後〜排卵までの時期と同様に、妊娠中もエストロゲンが増えます。そのため愛液の量が増えたと感じる人もいるでしょう。

妊娠中の性行為については以下の記事も参考にしてください。

濡れにくい……愛液の量が少ないのはなぜ?

では反対に、愛液の分泌量が少なくなる、いわゆる「濡れない」状態になるのは、どんなケースが考えられるでしょうか。

1.性的興奮が足りない

愛液が減る原因としてまず考えられるのが、性的興奮の不足です。

「先ほども説明したように、強い性的興奮を感じれば潤滑液も多く分泌されるのが、女性の性反応の基本です。

したがって、性的興奮が足りていないときは、潤滑液の分泌量も少なくなるといえます。」

2.水分が不足している

愛液の元となっている血液は、その大半が水分でできています。なので、乾燥や水分不足も愛液の分泌量を減らし、濡れにくくなる一因となります。

「エストロゲンの分泌量が多い若い世代の女性でも、水分が不足して脱水状態に近くなると体液が分泌されにくくなり、潤滑液が減ることがあります。」

3.生理前でエストロゲンが減っている

定期的に生理がある女性の場合、排卵日を過ぎると女性ホルモンの分泌バランスが変化し、愛液の量に変化を及ぼします。

「排卵後はエストロゲンの分泌量が減り、代わりにプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンが多く分泌されるようになっていきます。

この時期を『黄体期』と呼ばれ、エストロゲンの低下にともない潤滑液の分泌も少なくなる傾向があります。」

4.出産後でエストロゲンが減っている

出産したあとも、代表的な「濡れにくい時期」です。

「産後は『感じているのに濡れない』という状態になることも少なくありません。

これは、妊娠中に多く分泌されていたエストロゲンが、出産すると同時に急激に低下し、腟の潤滑液の分泌が少なくなるためです。」

5.乳がんの治療の影響

乳がんの治療で薬物療法を行うと、卵巣機能が低下することがあります。すると、それにともなってエストロゲンの分泌量も低下し、愛液の分泌が少ない「濡れにくい状態」になることがあります。

「乳がんの薬物治療で、潤滑液が減るなどして性交痛などを感じる患者さんは少なくありません。

また、エストロゲンは乳がんの発生に関わるホルモンなので、低下した分を補うような治療ができないのです。」

愛液の量が少ない時、どうすればいい?

『感じているのに濡れにくい』『愛液の分泌量が少ない』と感じる場合は、潤滑ゼリーを使って、うるおいを補うのがおすすめです。

「濡れないのに無理をしてセックスをすると、痛みが生じたり、腟の内壁が傷ついてしまったりすることがあります。その結果、腟に炎症が起きることや、セックスが嫌になってしまうことも考えられます。

潤滑ゼリーを使ってうるおいを補うことができれば、少なくとも『濡れないことだけが原因でセックスが嫌になる』ことは避けられるでしょう。」

婦人科によっては潤滑ゼリーの試供品を用意しているところもあるので、一度かかりつけ医に相談してみるのもいいですね。

こんな愛液は危険! 要注意な愛液の状態とは

愛液は基本的に透明でサラサラしていますが、もしもにおいや性状、色などの以上があれば、感染症にかかっている可能性があります。
以下に主な「愛液の状態の異常」を挙げますが、これらがおりもので見られた場合も注意が必要です。

変なにおいがする、くさい

「潤滑液から強い酢のような刺激臭や食べ物が腐ったようなにおいなど、おかしなにおいがするときは、性感染症に感染している可能性があります。」

性感染症は正しく治療すれば治ることがほとんどです。『おかしいな』と思ったら、怖がらずに婦人科を受診し、治療することをおすすめします。

膿のような性状・色をしている

におい同様、形状が異なる場合も性感染症の可能性が考えられます。ドロドロしていたり、緑や黄色などの色をしていたりする場合は、婦人科を受診しましょう。

生理中でもないのに血が混じっている

愛液に血が混じるようなときも、注意が必要です。

「潤滑液は血液が元になっているとはいえ、通常、血液が混じることは考えられません。

生理期間以外で潤滑液に血が混じっている場合は、女性器に何らかのトラブルが生じている可能性があるので、婦人科の受診をおすすめします。」

まとめ

宋先生

愛液はセックスをスムーズに行うために分泌されるもので、性的興奮が高まったり、エストロゲンの分泌量が増えたりすると、愛液も多く分泌される傾向があります。
ただし、産後などエストロゲンが極端に少なくなるときには、性的興奮が高まっていても、じゅうぶんに分泌されないことも。もしも愛液の分泌量が少ないと感じたら、潤滑ゼリーを使うなどしてうるおいを補うのもひとつの方法です。
愛液の状態や分泌量からわかる、自分の体の状態にも目を向け、より快適なセックスライフを送ってください。

(文:山本尚恵/監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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