仕事 仕事
2022年03月17日 07:21 更新

上司が職場の「心理的安全性」をつくるためには?『たった一言で部下が自分から動くすごい伝え方』vol.8

日々忙しく子育てをしながら、職場では部下とのコミュニケーションに悩んでいるパパ&ママへ。12万人のデータを集めて性格タイプを分析し、テレビでも話題になった稲場真由美さんの著書『たった一言で部下が自分から動くすごい伝え方』(WAVE出版)より、性格タイプ診断とタイプ別の伝え方の例を連載でお届けします。

相互理解で「心理的安全性」をつくる

リモートワークでチームの売上118%を達成!

ここでは、実際に部下とのコミュニケーションを変えただけで、リモートワークでもチーム連携を改善し、同時に売上アップもかなえた実例を紹介します。

世界最大級のテクノロジー企業の日本法人に勤務するSさんは、営業チームのリーダーを務めています。
Sさんの仕事は、インサイドセールスからハイタッチセールスまでを一貫してマネジメントすること。インサイドセールスとは、電話やメールを使った内勤営業のこと。ハイタッチセールスとは、インサイドセールスで獲得したアポイントを契約成立までもっていく外勤営業のことをいいます。
2020年3月。緊急事態宣言に伴い、Sさんの会社ではリモートワークが導入されました。直接顔を合わせる機会が急になくなったことで部下とのコミュニケーションが
取りづらくなり、それによって生産性が上がらず売上は低下していきました。
売上目標4億に対して、5~7月のチーム四半期目標達成率は80%。
当時のチームは、売上が達成できないために閉鎖的な雰囲気で、それぞれ自己否定に陥り、Sさんが何を言ってもメンバーには伝わっていないことが明らかでした。
悩んだSさんは、チーム内のコミュニケーションを改善する手段として、個人的に性
格統計学を学び、取り入れることにしました。

その結果、導入後3カ月で、8~10月のチーム四半期目標達成率が118%にまで一気に向上したのです。性格統計学を学んでSさんが取り組んだのが、部下の性格タイプ別にコミュニケーションの取り方を変えること。具体的には主に次の3点を変えました。

・指示の出し方
・ほめ方
・リモート下での関わり方


チームメンバーを診断してみると、Sさんはロジカル。7人の部下はそれぞれ、自分
と同じロジカルが3人、ビジョンが1人、ピースが3人でした。
まずロジカルの部下に指示を出すときは、期限と目標を伝えることを意識しました。
そしてリモートでもコミュニケーションが取りやすいよう、定期的に業務報告のタイミングを設けました。ロジカルは報告のタイミングが決まっていると、そこに向かって動けますし、さらにそのときに具体的に成果をほめることで、モチベーションも上がっていきます。
次にビジョン。特に意識したのはほめることです。
部下が成果を出したときは必ずリアクションを大きめに「すごい!」とほめるように
しました。これがビジョンの原動力になります。
そして指示は細かく出さず基本は任せるように。リモート中も干渉しすぎず、たまに「最近どう?」と聞くくらいの距離感を保ちました。
そして、関わり方を一番工夫したのがピースです。特にSさんにとって気がかりだっ
たのがピースのMさん。
Mさんは自己否定しがちで、本人もなかなか結果を出せずに悩んでいました。
そこでSさんが取り組んだのが、面談の時間を長めに取ることと、事あるごとに「ありがとう」と感謝を伝えることでした。
また定例のチームミーティングでは、「来週の目標が達成できる方法を一緒に考えてみようか」「アポイントを取れたら、案件の発掘は任せてくれていいよ。分担して協力したら最強じゃない?」などとMさんの役割を明確にしながら、チーム一丸となって目標達成していく雰囲気をつくるようにしました。
すると、Mさんのモチベーションはみるみる上がっていきました。その結果、Mさん個人の目標達成率は%から120%を超えるまでに跳ね上がったのです。

部下ごとにコミュニケーションを変えることは、慣れないうちは混乱するかもしれません。ときには反応が今一つのこともあるでしょう。
それでも、部下にとっては「理解してもらえた」だけで安心材料になります。「わかり合えない」と思っていた人が「相談できる人、信頼できる人」に変わるのです。
そうなれば、自然とチームの雰囲気も変わっていくでしょう。

性格統計学による「心理的安全性」のあるチームづくり

Sさんの事例は「心理的安全性」の効果を実証しています。近年注目されている心理的安全性とは、チームメンバーの一人ひとりが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態のこと。具体的にいえば、チームの中で自分らしく働ける状態や、安心して何でも言い合えるチームを指します。アメリカのGoogleが「効果的なチームを可能とする条件は何か」をリサーチするプロジェクト「ProjectAristotle」を行ったところ、「心理的安全性が生産性の高いチームづくりに最も重要である」ことを発見しました。
そして、これまで紹介してきた性格統計学は、心理的安全性のあるチームづくりに大変役立ちます。

Sさんのように、自分の傾向を自覚し、部下のタイプがわかれば、それぞれ相談しやすい環境や、仕事が進めやすい環境をつくることができるからです。
さらに部下にも性格統計学を共有し、上司である自分のことも理解してもらえれば、チーム全体でお互いを理解し合うことが可能です。そうすれば、自然と誰でも発言しやすく、お互いに相談しやすいチームになっていくでしょう。

今まで「あの人とはウマが合わない」「あの人は何を考えているのかわからない」と思っていた相手が客観的に理解できるようになると、「あの人はピースだから、こうしてほしかったんだな」「上司はビジョンで説明が大雑把になりがちだから、自分から聞きに行こう」とお互いに気遣うことができ、ストレスや不満を減らすことができます。
そのためにも、チームのリーダーなど一部の人だけでなく、性格統計学を会社全体で取り入れることをおすすめしています。
「タイプの違い」を共通認識にすることで、どの性格タイプの人にとっても心理的安全性のある心地よい環境がつくれ、生産性の高い組織になっていくでしょう。

書籍『たった一言で部下が自分から動くすごい伝え方』について

たった一言で部下が自分から動くすごい伝え方
¥ 1,650 (2022/03/17時点)
(2021/12/14 時点)

「頼まないと何もやってくれない」、「指示どおりに動いてくれない」、「メンタルが弱くてすぐ落ち込む」などなど、職場で部下の言動に悩まされていませんか?

実は人はタイプによってうれしいほめ言葉も、動きやすい指示も異なります。
「センスがあるね! 」と言って喜ぶ人もいれば、「ありがとう」が一番の原動力になる人も。細かい指示で動きやすい人もいれば、ざっくり伝えたほうが動きやすい人もいます。
自分自身がもらってうれしい言葉で相手をほめ、自分にとって動きやすい指示の出し方をしていたら、相手にとって真逆の意味になったり、逆に動きづらくなっているかも。

この本では12万人のデータからつくられた「性格統計学」に基づき、人の性格を4タイプに分類。自分と部下のタイプを診断したうえで、よくある場面ごとに「伝わらない理由」と「相手に合った伝え方」が紹介されています。
自分と部下の性格タイプを知れば、職場のコミュニケーションギャップの理由も見えてくるでしょう。ただ「伝え方」を変えるだけで、部下が自分から動いてくれるヒントが詰まった1冊です。

はじめに
Chapter1 「伝え方」を変えるだけで部下が動く
Chapter2 仕事・指示を理解してくれないときの伝え方
Chapter3 自分から動いてくれないときの伝え方
Chapter4 モチベーションが下がっているときの伝え方
Chapter5 悪い癖を直してほしいときの伝え方
Chapter6 相互理解で「心理的安全性」をつくる
おわりに

稲場真由美さんのプロフィール

富山県生まれ。株式会社ジェイ・バン代表取締役。
自身が人間関係の悩みに直面したことから、新しいコミュニケーションメソッドを探求し、16年間、のべ12万人から生のデータを集め「性格統計学」として体系化。以来、このメソッドを「一人でも多くの人に伝え、すべての人を笑顔にしたい」との思いで、セミナーや研修、コンサルティングを通して普及活動を行う。
2018年には「性格統計学」にもとづくアプリ「伝え方ラボ」を開発。その後、さまざまな企業で導入され、職場の人間関係の改善や営業活動にも活用されている。2020年には、Web3時間で履歴書に書ける資格が取れる「伝え方コミュニケーション検定講座」のパッケージ化に成功。現在では認定コンサルタントや認定講師の育成も行う。時代のニーズに対応しながら、企業や自治体、学校まで、全国すべての人のコミュニケーション改善に貢献する活動を続けている。

(稲場真由美・著『たった一言で部下が自分から動くすごい伝え方』(WAVE出版)より一部抜粋/マイナビ子育て編集部)

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-